児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
メイ首相のEU離脱合意案での狂騒というべき混迷のイギリス政局2

 以下の、前編に続く。

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4452

 

 保守党の動きは書いた。(前編参照) 他方、労働党はどうであろうか。

 この政党こそ、政権奪取のチャンスだが、対EU政策については、組合出身のコービン党首はまるで国際的センスを欠き、離脱問題では、言っていることがさっぱりわからない。

 コービン自体、そして彼を支持した労働党の下部党員については、全般的にEUに対して懐疑的であった。 いかなるEU離脱が望ましいか、それが重要だが、同党は、解散は言っても、対案もない。

 労働党のなかで、EUのキーマンとしてEUの仕組みを熟知している欧州議会の議員としてリチャード・コルベット氏がいる。 私も個人的に2度ほどお会いし、面識がある。

 若いころ、20年以上も前の1995年9月のことだが、まだ同氏がイギリス労働党員として欧州議会で自党が加盟している欧州社会党の党官僚だったころ、議会開催中だったストラスブールの欧州議会に同氏を訪ねた。

 その時、 「欧州連合」というEUの日本語表記の不適切さを指摘した。

 其の後、その論理と主張を認めていただき、翌1996年3月、欧州社会党から欧州連合の表記の使用停止と、当時5名の日本EU学会理事長経験者が適切としていた「欧州同盟」への変更を求める書面質問書を、グリンフォード議員の名で、欧州委員会に出していただいた。(拙著『欧州統合と欧州統合』成文堂2004年に掲示)

  ちなみに、私の英語論文を観てコルベット氏の最初の質問は、Economic and Monetary Union(経済通貨同盟)はどう訳していますか、ということだった。経済通貨同盟を同盟とし、他方、組織の総体を欧州連合とする、現地欧州では考えられない訳語の恣意的使用法を瞬時に理解していただいたのだ。

 あの時点から加盟国のEU法への服属の程度はさらに進んでいる。国家連合と連邦を識別する重要な指標はこの連邦法の優位性にある。

 ちなみに、国立国会図書館のEU法の解説を含め、多くの解説書がEUでは主権的権限の「一部」が移譲と書いている。

国立国会図書館の解説は以下だ。

EUは、欧州連合条約(EU条約)をはじめとするEUの基本条約によって設立、運営される超国家機関です。EUでは、基本条約によって加盟国の主権の一部がEUへ移譲され、主権が移譲された政策分野においては、加盟国に代わってEUが権限を行使します。そのため、EUの法体系は、国際法とも、また加盟国の国内法とも異なる独自の体系となっています。

https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/eu-law.php

 だが、私に言えば、EUへの主権的権限は、大規模に移譲されているというべきであろう。

 権限の移譲という言葉が使われるが、英語ではTransfer。それは「所有権の移転」の事例にある如く、EUに譲渡されている。

 欧州司法裁判所の判例もそう書いている。「主権の共有」など、EU法を知らないものの文学的な表現だ。

 ユーロ圏では国家主権の核心部分の予算編成権限にまで及んでいることがその何よりの証左だ。これは一部という表現では足らない。連邦的統合がさらに深化しているのが、EUの実態である。

 当然予測されていたことだが、わが国独自の「欧州連合」という表記(中国語表記は欧州聯盟)、年ごとにますます実態と乖離していくという悪しき状況にある。

 周知のごとく、加盟国においては自民族の価値を一番とするハンガリーのオルバンなど国家主権至上主義者やイタリアの五つ星にみる大衆迎合政党、さらにはフランスのルペンの国民連合(旧党名国民戦線)、ドイツのAfDといった極右勢力が台頭している。

 それは、まさにEUとヨーロッパ統合のこの連邦主義の深化が故にである。国家主権を未だ国家が大規模に維持した欧州連合であれば、 EU離脱のごとき問題は起きなかった。今後ナショナリストとの対立はさらに先鋭化することは必至だ。

 そのコルベット氏は欧州政党の上級党官僚を経て欧州議会議員(Yorkshire & Humber選挙区選出)となり、さらに落選時には初代欧州理事会議長となったファンロンパイの顧問をし、2014年の欧州議会選挙で返り咲きを果たした。

 彼のサイトを観てみたが、EU離脱後についてのビジョンが今一判然としない。

 EU離脱が党の基本方針となれば、あれこれ言っても仕方がないと考えているのかもしれない。

 ちなみにイギリスにはもう1人EUを熟知した人がいる。欧州自民党にあってEU条約の改正などをリードしたアンドリュー・ダフ前欧州議会議員(英自民出身)だ。彼も、欧州議会の憲法問題委員会の有力議員であった(返り咲いたコルベット議員とは対照的に2014年欧州議会選で落選)。

 離脱に強い不満を持っているイギリスでは例外的な連邦的EU統合支持者フェデラリストである。

 ダフ議員には直接面識はないが、Eメイルでのやり取りはして、欧州議会選挙法のことで様々にご教示いただいた。

 余談になったが、とりわけ、今の労働党では、かくも重要なEUについて、外部から見ていても、その重要性の認識がほとんど感じられない。労働運動が、ナショナルな強い土壌の上にあって、一国化しているからといえる。

 2014年の欧州委員長候補を選出する欧州社会党内での投票、いわゆる欧州政党内予備選手続(spitzenkandidaten)では、大陸の大多数の社民政党が当時欧州議会議長を務めていたドイツのマルチン・シュルツの選出に動いたが、英労働党の代議員団は大陸諸国の社民政党の動向とは全く無縁に、例外的に棄権に回った。唖然とした次第だ。

 19世紀の経済思想家カール・マルクスは労働者はインターナショナルであるといったが、それは理念の話であり、自身も、家族も、そして言葉のこともあり、自国の工場に縛られている。20世紀最高の政治思想家の一人、ハンナ・アーレントが喝破した如く、労働者は本質的に最もナショナルな存在である。このアーレントの指摘を地で行くのがイギリス労働党である。

 労働党は、保守党の受け皿となるには、コービン党首からして対EU政策のビジョンを欠いており、野党ボケしたとしか言いようがない。

 元来、EU離脱問題はイギリスの国益に直結することであり、政争に使う問題ではない。

 コービンの言説では、一貫していることが1つある。常に、国民投票での離脱は国民の意思の表明だ、すなわち再度の国民投票はないと保守党指導部と同じ見解を示してきた。

  しかし、ここにきて、労働党の中でも国民投票についても再度実施の声も出てきた。

 だが、もし再投票がおこなわれ、そこで、離脱ノー、残留イエスと出れば、両政党とも、どう対処するのか。

 これまでのEUとの間で延々と続いた交渉はどうなるのか。2年前の国民投票の結果は離脱52対残留48という僅差でまさに分断状況にあった。今やれば、残留と出る可能性も高い。

 実にメイ政権と保守党を含めた英下院での国民投票以降の2年半の歳月は茶番劇ともなりかねない。

 特に昨年の総選挙では13議席をメイは失って、最大政党ではあるが、北アイルランドの民主統一党DUPと組んでかろうじて、政権維持を果たしているのである。

 まさに憲法上の危機である。 前首相キャメロンによる国民投票という議会主権を放棄した丸投げというべき「博打」のツケはそれほどに重い。

 ついでに言えば、キャメロンは結果の如何にかかわらず続投するというそれまでの発言をいとも簡単に翻し、首相どころか議員もやめ、安全地帯に「遁走」し、高額の契約料でメモワールを書いている。

 庶民が被るであろう苦境など無関係に。無様とは、彼のためにあるような言葉だ。

 EU側はフランス出身でEUのバルニエ対英EU離脱交渉担当官は、メイ案が考えられる選択のうちベストであり、それ以外の再交渉はない、EUは応じることはないといっている。再度の国民投票の実現可能性についていえば、時間的にもまず不可能となってきた。

 イギリスの議会政治は長年学ぶべき研究対象だと考えてきたが、今、イギリスの政治と政治家は何をやっているのだと問わざるを得ない。 わずかにスコットランド民族党SNPと英自民が、一貫してEU残留の論理的な議論をしており、まともだと思っている。

 イギリスのブレグジット狂騒を観つつ、一つのことを確信をもって指摘できる。

 国家が傾くのは、政治家とメディアの質の極端な低下から始まる。 わが国もゆめゆめ、それを忘れるべきではない。

  なお、下院議会では、今月11日、メイ首相合意案の採決がなされることになっており、当面の回答が出る。

 これについては、2016年6月23日の国民投票でのEU離脱決定の意外性の実現の事例を引用しつつ、FTRobert Shrimsley記者が「英国の合意なしEU離脱は絶対にない?」という11月27日付記事で、協定なき、無秩序離脱という最悪の可能性を指摘している。これは日経が翻訳しており、日本語で読める。

 ともあれ、この行方、最悪の可能性の始まりとなるのか、大いに注視したい。

 追記(2018.12.5

 もし協定なきEU離脱となれば、その急先鋒で旗振り役だったボリス・ジョンソン(元ロンドン市長、前外相)がその主張のごとく、メイの後継首相となるべきだろう。

 EU離脱は,UKIPのファラージュ党首同様、イギリスに輝く未来をもたらすとしていた彼の主張がいかほどのものとなるか、みたいものだ。

 国民の怨嗟の中で、その政権は直ちに朽ちていくと思っている。EUの協定なき離脱がもたらすハイパーインフレと、ポンド暴落による壊滅的打撃の中でのみ、対EU関係の再構築を含め、イギリスの新たな未来が開かれていくと私はみている。

 なおコービン労働党党首の対EU態度については彼が1975年の第1次というべきハロルド・ウイルソン首相によるEU(当時EEC)残留を問う国民投票に発し、リスボン条約で、そして2016年の国民投票を含む過去40有余年にわたりEU関係重要議決に際してどう投票し、対応してきたかをコンパクトに書いたブログに接した。

 コービン労働党党首については、結論的にはEUに対して「懐疑派」を越えて徹頭徹尾、反EU派というべきものである。以下参照。

Mark Pack,Jeremy Corbyn’s views on Brexit: a long held stance on Europe.

https://www.markpack.org.uk/153744/jeremy-corbyn-brexit/

 

追記 II(2018.12.10.

メイ政権は12月11日に予定されていた下院でのEU離脱合意案の採決予定を異例中の異例にも延期したとのテレビ報道に接した。現内閣は法案の合意のメドが立たないとの判断に立ったと考えられるが、基本的なメイの置かれた政治情勢は何も変わらない。さらに反対派切り崩しの根回しをやるということだ。労働党のコービンは、メイの合意案は、単に支持されない不備に満たされているというだけで、その無責任さは何ら変わらない。

 

 加筆のため、2分割しました。前編は以下。

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4452

 参考記事

英内閣、ブレグジット合意案を承認 EU離脱相は辞任表明 BBC 20181115

After Brexit: the UK will need to renegotiate at least 759 treaties. Financial times, May 30, 2017.

[FT]英国の合意なしEU離脱は絶対にない?0181127日付 英フィナンシャル・タイムズ紙

AFP時事20181011

参考ブログ

2016.02.28 Sunday英のEU離脱 個人的には賛成である(最大の皮肉を込めて)

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3985

2016.06.11 Saturday マッチポンプのキャメロン、反EUの火をつけて回り、挙句、消火できずに国家が大火災 EU離脱の可能性が高まる英国民投票

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4050

2016.10.22 Saturday「大量出国」を生み始めた英のEU離脱

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4261

 

前編は以下。

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4452

 

 先月のブログアクセス数は以下。

2018年 11

合計:5025

| 児玉昌己 | - | 21:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
節気は大雪 庭では柚子の贈り物 それを詠む 海鳴庵児玉

   たわわに実った柚子を家人と収穫す 

 

 大雪の 心も冷える 節(とき)なれど  色鮮やかに 柚子の実のなる
                          海鳴庵児玉

 

2018年海鳴庵児玉昌己歌集
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4392

| 児玉昌己 | - | 08:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
24節気の大雪を迎え 落ちる柿の葉を詠む 海鳴庵児玉

 24節気では21番目となる大雪を迎えた。久留米も寒い朝だ。庭の柿の落ち葉を詠む。

 

柿の木の 散り去る生命(いのち) 掃き集む 一葉一葉に 色は残れり

                            海鳴庵児玉

 

 

2018年海鳴庵歌集

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4392

| 児玉昌己 | - | 11:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
メイ首相のEU離脱合意案での狂騒というべき混迷のイギリス政局 1

 共同通信が混迷するイギリスについて、以下配信してきた。

 「英EU離脱合意案に反対続出」2018年12月2日

 なによりもまず、EUが国家の政治をかくも揺さぶるほどの存在になっていることをEU政治の研究者として改めて強調したい。

 EU加盟28か国ではすべからく、EUが、良くも悪しくも政治の基軸となっているということである。すなわちEUに言及のない加盟国の政治分析は、あり得ないし、あればクセモノだということだ。

 イタリアなぞ、国家主権の核心部分というべき国家予算の編成権限にまで、クレームがついているのである。大衆迎合政権がとりつつある放漫財政がユーロの危機を助長するということで。

 はたまたハンガリーやポーランドでは、これらの国家の政権の一連の政策がEUの民主主義の価値という観点から問題ありとクレームがついているのである。 

 イギリスのEU離脱の狂騒というべき混乱に話を戻せば、英下院で残留派だったメイの案の離脱案が問題となっている。

 この案の骨子は3つある。すなわち。横韻月という移行期間の設定、▲ぅリスによる350−390億ポンド(約5兆1600億-5兆7500億円)という清算金の額の設定、さらにこれが最も重要だが、0楾坿間後の「英EUの共同単一関税区域」を維持する。この骨子をもつ案である。合意案は実に585頁のものという。

 この精査はイギリス政治の専門家にまかせよう。 ここでは、これを下院が拒否すればどうなるのか、ということである。 

 一般的にいえば、メイ政権に対する不信任案と同様の意味があり、メイ政権は総辞職だろう。それだけでも大混乱だ。

  ではその後はどうなるのか。 メイのEUとの合意案を再度維持する後継者はいないだろう。ではEUと再交渉する素案はあるのか、時間はあるのか。おそらくノーだ。 野党労働党がいう解散総選挙は、保守党が反対するからまずありえない。

 2017年6月に総選挙をやってまだ1年半である。 ちなみに、メイが打って出たこの総選挙では、保守党でいえば、現有議席を13減らし、318議席で過半数(326)を割り込んでいる。

 何よりも重要なことは、メイ案以外に、北アイルランドとアイルランドとの国境障壁問題を回避する案はない。

 北アイルランドにはアイルランドとの合併を主張するIRAに代表される勢力があり、これに反対するアルスター統一党もある。この両方を抱えた中で、EUの同じ加盟国として、聖金曜日協定として知られる1998年の英愛協定を結び、3600人ともいわれる犠牲者を出した長年の紛争に終結をみた。このことを忘れてはならない。

  アイルランドと北アイルランドの国境通過は1年で1億1千万件に及び、毎日1万5千台の車両が往来している。

 欧州大陸とイギリスを結ぶドーバー海峡では、欧州大陸から部材を運ぶトラックはトンネルを使った経路は条件次第では出入り口に審査が発生し、手続きで2分の足止めだけでも、27キロメートル以上の渋滞が生じるとの分析もある。

 もとより、関税同盟を維持すれば、EUルール、EU法の体系に縛られる。全面的なEU離脱を主張する強硬派にはこの案は納得できない。まさに、メイ内閣も、保守党もこれで完全に分断状況である。脱しがたい苦境、British Predicamentである。

 しかし、EU離脱すれば、何が起こるのか。そんなことはEUに加盟した1973年から分かっていたことだ。その時点ですでに、ローマ条約にしたがい、EUは関税同盟を完成させ、農業の共同市場を完成させていた。さらに85年のドロール欧州委員会によって、92年末のEU市場統合として知られる、全経済分野における単一市場の完成に向け本格化していく。

 

 ところで、ブレグジットを理解するには避けて通れないのが、EUの法規範の重要性である。わが国におけるEU法の理解については、今一度触れておかねばならないのが、連邦的EU法と、それを出すEUの政治的性格とその表記についてである。

 EUは、わが国では「欧州連合」と訳されている。あたかもEUは「国際連合」、あるいは「東南アジア諸国連合」ごとき国家主権を維持した国際組織と同様に訳されている。それが、このEUである。 だが、その本質は、国家連合ではおよそなく、EU法の優位性を基にする「欧州連邦」というべき連邦的政治体である。 

 25年近く前、EUがECだったころに、イギリスのEC法教授ハートレーは、この統合組織の連邦的性格について、司法の分野で最も強大であると、書いている。私の『欧州議会と欧州統合』(成文堂2005)所収の英文論文参照。

T.C. Hartley, a British EC law professor, flatly admits the federal character of the EU by saying that "interestingly federal elements are strongest with regard to the judicial and legal system of the Community" (Hartley, 1994, p. 9, footnote).Hartley, T.C., The foundations of European Community Law. Clarendon 1994, third edition.

 実際、60有余年にわたりEUが培ってきた数十万頁ともいわれるEU条約を頂点とするEUの法体系に全EU加盟国は服属しており、ブレグジットは、連邦法というべきEU法の全体系からの離脱を意味する。 

 もとより、EU法に発しつつも、すでにイギリスの国内法となって、政府がこれを変える意志がないものについては、別であるが。

 冒頭に記したイタリアの予算編成への欧州委員会の関与は、EU条約に発するEU財政規則に、そしてまたポーランド、ハンガリーなどへの関与は、まさしく民主主義の原則をうたったEU設立諸条約第7条の規定に基づく。

 なにより今日のテーマであるイギリスのEU離脱自体、現行EU条約であるリスボン条約第50条に従い進められているのである。

 ちなみにEU法の規範力の凄さについては、米ITの巨大企業、グーグルにEU競争法違反で5700億円を命じるほどのものである。これら米の巨大IT企業の背後には、通商代表部も、商務省も、国務省も、そして大統領府もあるにもかかわらず。

  イギリスがEUから離脱すれば、EU27の加盟国との間では別途FTAを締結せねば、関税が課せられ、また人の自由移動に関する協定を結ばねば、EU市民としてイギリス人が享受してきた自由移動も制限される。

 EUを出た後、新たに必要となるFTAを含めた各種の協定は、EU域外も含めて、なんと759あるとFT紙は述べていた。

 しかも40年以上にわたり通商協定は欧州委員会が所管し、イギリスの政府と官僚機構は通商条約を別途締結する際に必要となる通商法の専門家を著しく欠いた状況にあることもフィナンシャル・タイムズは触れている。

 離脱の影響を最も案じているのは、企業家である。産業界の大半は、ブレグジットは愚策だとみている。打撃を軽減すべく企業や人の大量脱出、すなわちエクソダスも始まっている。

 

 企業で言えば、EU5億人の市場へのフリーアクセスがあっての生産拠点であり、抜けると関税を含む各種障壁に直面する。

 企業がイギリスに拠点を構える必然性は失われる。ゴーン容疑者の巨額脱税事件で揺れる日産など、イギリスに拠点を置く日本の企業もその例外ではない。

 人もそうである。EU共通パスポートがあるがゆえに自由移動が可能となる。これを失えばどうなるか。

 AFP時事10月11日付は、フランス市民権を申請したイギリス人は2015年以降、8倍に増加と伝えている。

 別にフランスだけではなくスウェーデン、デンマークなどなどイギリスからの他のEU加盟国への国籍もしくは市民権取得の動きは加速している。 

 保守党は、元来、パトロンとして企業の利害と共に存在してきが、今や企業利益の代弁者ではなく、国家主権至上主義者がリードする反EUイデオロギーの塊になっている。合理的判断は情緒的なイデオロギーの後景に退いている。

 移行期間がなければ、すなわちNo deal での離脱となれば、直ちに英国経済は8縮小し、住宅価格は3分の1に低下するとBBCは伝え、イングランド銀行はまた、ポンドが25%下落する可能性があると警告した。

Bank warns no-deal could see UK sink into recession. BBC News28 November 2018

 ちなみに、ドイツ最大のシンクタンク、ベルテルスマン(Bertelsmann AG) は国民投票の前年の2015年4月、今は去る3年半も前にEU離脱により英国はGDPの14%を失うとまで指摘していたことも合わせて書いておこう。

 

加筆のため、2分割しました。 後編は以下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4453

 

 参考記事

英内閣、ブレグジット合意案を承認 EU離脱相は辞任表明 BBC 20181115

After Brexit: the UK will need to renegotiate at least 759 treaties. Financial times, May 30, 2017.

[FT]英国の合意なしEU離脱は絶対にない?0181127日付 英フィナンシャル・タイムズ紙

AFP時事20181011

 

参考ブログ

2016.02.28 Sunday英のEU離脱 個人的には賛成である(最大の皮肉を込めて)

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3985

2016.06.11 Saturday マッチポンプのキャメロン、反EUの火をつけて回り、挙句、消火できずに国家が大火災 EU離脱の可能性が高まる英国民投票

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4050

2016.10.22 Saturday「大量出国」を生み始めた英のEU離脱

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=41442018.07.24

2018.07.24 Tuesday EU終焉論の虚妄 欧州委員会米グーグルに制裁金5700億円 EU法の強制力の強烈さ

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4411

 後編は以下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4453

| 児玉昌己 | - | 21:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
日産トップゴーン逮捕 それを詠む 海鳴庵児玉

 霜月も下旬、平成最後となる師走もそう遠くない。除夜の鐘にかけて詠む

 

邪鬼払う 鐘がゴーンで なかりせば いかに日の本 産まれましょうぞ

                      海鳴庵児玉

ソニーの創業者とは品格が違う。

経済紙レ・ゼコーも「カルロス・ゴーン、独房での沈黙と孤独の日々」と22日付で書いている。

Dans la prison de Carlos Ghosn, un quotidien de silence et de solitude.Les Echos. 22/11/2018 .

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 13:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
庭には蝋梅の蕾 球根6個を植える それを詠む 海鳴庵児玉

 

蝋梅の 蕾もみえて 冬来り 球根買いて 春を待つなり

                    海鳴庵児玉

 

2014.01.26 Sunday

 冬にあり 春を先駆く 蝋梅の 姿勢(すがた)凛とし 寒風に立つ

 

参考2018年海鳴庵歌集

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4392

 

| 児玉昌己 | - | 00:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
 安倍総理よ、2島先行返還、冗談だろう、択捉が一部入る面積等分論が出発点だよ(2016.10.03再録)
 安倍総理よ、2島先行返還、冗談だろう、択捉が一部入る面積等分論が出発点だよ

 テレビで衆院予算委員会の中継録画を見ていたが、当然であるはずの4島のわが国の帰属さえまともに答えられないあの岸田外相と、安倍総理の無様ぶりには皆さんも驚かれたことだろう。

 あんな国会答弁では2島返還だけですべてを終えることを考えているのではないか、とむしろ内外から強く疑われることになる。

 4島が我が国の固有の領土であることは、常識であり、国是である。

2島返還で手を打ち、国民の税金を投入し、大規模な経済協力をし、平和条約を済ませ、後の交渉に待つというなら、永遠に国後、択捉の2島は帰らない。国家を売るようなものだ。

 なによりソ連が、大戦の最末期、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、ソ満(現中国東北部)国境を超え、北方領土を奪取したのが、歴史的事実ではないか。世界はそれを知っている。ロシアもである。

 ちなみに米国は占領した領土を、小笠原、沖縄と返還した。

 面積等分論なら、最も面積の大きい択捉の一部が入る。形としては、4島全部ではなくとも、国後、択捉と4島返還の名分は立つ。2島なら全体のわずか、2割程度でしかない。

 面積等分論、それで、中国、ノルウェーと、ロシアは懸案の国境問題を解決していったのである。

 そしてエストニアとの国境問題も確定させ、残るは極東の経済大国わがジャパンとだけが残っている。

 「資源の呪縛」(木村汎北大名誉教授)にとらわれ自前の技術革新ができないロシアは、それがゆえに、わがジャパンの世界最高水準の技術が喉から手が出るほどほしい。加えて、クリミア編入と東部ウクライナ侵攻で、EUから制裁を受けて苦しんでいる。

 択捉の一部が入る面積等分論という方式は、何より3年前プーチンが、提起した案でもある。

それを2島返還に後退させることなど論外である。

 以下の記事を見よ。現状を垂れ流すだけでなく、メディアはしっかり相手と過去の経緯を報道せよ、ということだ。外務省も、政府、自民の政治家も、同じく、相手と過去の経緯を頭に叩き込み、交渉に当たれということだ。

  安倍総理よ、「ウラジミール」などと、ロンヤスでもないのに、ファーストネームで語る必要はない。

 アベノミックスもパッとしないから、何とか外交で挽回したいのだろうが、外交に、とりわけ対ロシア外交には、パーフォーマンスは不要だ。

 自然体で歴史的事実に立ち、淡々と、あるべき理と国益を主張しなさいということだ。

 なお わが国は敗戦国家でもある。ロシアとの領土外交では、実効支配が進んでいるゆえ、当然不利になる。

 領土問題を考えるたび、彼我の戦力の差もわからない指導者を戴いて、しかも結果、領土を奪われ、国家と国民の生命財産を奪う大惨禍をもたらす戦争は、それゆえ、してはいけないとつくづく思うのである。

 参考記事

日露首脳会談>プーチン氏から「領土」 面積等分切り出す毎日新聞2013430

ロ大統領「面積等分」言及 北方領土問題念頭か ロ首脳会談 中ロ国境画定など例示 日経2013/4/30

| 児玉昌己 | - | 12:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
年賀欠礼で、外務省OBの川崎晴朗先生の訃報に接する

  遠慮しつつ日常に戻りつつあります。

帰宅すると、年賀欠礼。外務省OBで退官後は、外交関係史を専門とされ、大学教授も務められた川崎晴朗先生の訃報を知らせる奥様からのもの。

先生を知るのは私が2005年に欧州議会の学術専門書を出した時のことだ。

 先生は若き日、外交官としてフランスに駐在されており、記憶違いでなければ、1960年代にストラスブールの日本総領事館で、出来て間もない欧州議会を捕捉していたということで、私の欧州議会の書、懐かしく、手に取ったという内容のメッセージが届いたのだ。

 気持ちを入れて書いた学術研究書が故に、草創期の欧州議会を知る外交官であり研究者でもある川崎先生からの「熱い想い」のある本だというコメントは実に嬉しいことだった。

 その後、先生とは、直接お会いすることはなかったが、EUと北朝鮮関係の研究や欧州議会のことで、電話や手紙で交流させていただいた。

 私といえば、欧州議会の権限の分析をとおしてEUの統治構造をみるというのがライフワークだが、欧州議会の対外的権能として北朝鮮をケースにしたEUの議会外交というテーマも同時にもっている。

 それで先生のご論稿も使わせていただき、今も外国も含めあまり研究がない、EUからみた北朝鮮という視座で論考を書いた。

 先生の研究論文の続編には私の論考も引用されており、これもうれしいことだった。

 日本外交の実践とその研究に長年尽力され、尊敬申し上げていた元外交官が他界された。享年84。ここに記して、追悼としたい。

 合掌。

 なお、先生には『幕末の駐日外交官・領事官 』(東西交流叢書 第4巻雄松堂出版 (1988/3/1))がある。

参考論文

児玉昌己「EU の北朝鮮政策ーEU 外交の可能性と限界」 日本EU学会年報第28号2008年4

参考ブログ

2014.05.29 Thursday川崎晴朗先生(外務省OB)からEU北朝鮮関係論文をご恵贈いただく

ttp://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3675

 2015.07.30 Thursday 北朝鮮関係文献の書評をパリ政治学院が出している国際誌に掲載しました

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3876

| 児玉昌己 | - | 09:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
非日常の空間を詠む 海鳴庵児玉

  1週間ほど、日常の暮らし、娑婆を離れてます。寄付講座の出版打ち合わせなどでの東京出張から戻り、慌しいばかり。予定されていたことですが。

 

高楼の 病棟隅に 我はあり 痛めし目をば しばし労(いたわ)

 

パリにあり 左岸といえば 絵になるも 左眼のことでは 様にもならじ

追記 

パリの左岸とはセーヌ川の左岸を言い、ソルボンヌ大学のあるカルチェ・ラタン(ラテン地区)やサンジェルマンなど、知識人にかかわる地区のこと ちなみに右岸は金融などビジネスのエリア。

 

| 児玉昌己 | - | 13:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
2018年海鳴庵歌集

佳子さまも 学ばれたるや リーズ大 わが子の一報  「存外寒し」 

 

寮入りて 毛布求めし 愛娘 学ぶはリーズ  アルビオンの地                      

                      (アルビオンとはイギリスの雅名)

 

 

2018.09.09 Sunday 夏は劇的に終わる それを詠む

 

いつ果てる ともなき炎夏 終わりける 劇的涼風 季節一変

 

 

連日の 炎熱地獄に ゆであがり クールジャパンは アニメの世界

 

 

若き日の 夏に恋した 日々や過去 冷涼巴里(パリ)の 枯葉恋しや

 

 

2018.08.23 Thursday 耶馬渓の青の洞門にあそび、なかま温泉に浸かる それを詠む 

処暑来たり 傾く夏に 光さし 青の洞門 青さ浮き出で

 

耶馬渓の 暮泥(なず)む空 鐘響き 湯舟の面て 優しく揺れて  

 

 

2018.07.22 Sunday 酷暑の久留米を脱す それを詠む  海鳴庵児玉

 久留米より しばし逃れて 長崎の 海風(かぜ)に包まれ 涼夜のひと時

 

  

2018.07.06 Friday 広がる特別警報 鳴りやまぬ携帯 それを詠む

勧告を 遥かかき消す 大雨に 避難指示いう 携帯やまず  

昨日(きのう)から 半端ない雨 街浸し 警報多発 不気味さ増す闇(よ)

やんぬるか やり過ごすしか すべなきや 豪雨の闇に 止まぬ携帯

 

 

2018.05.27 Sunday 初孫にまみえて、歌を詠む 

 

生を得て 手足動かす その乳児(あかご) 名前は凛と 名づけられおり

胎動も 嬉しかるべき ものなれど さらに嬉しや 紅葉手の初孫(まご)

 

 

2018.04.03 Tuesday夏日の久留米 春の庭を詠む 

 厳冬も 今や幻 紋白の 優雅に舞いて ツツジ咲おり

わが庭に 注ぐ陽光 カナヘビも 嬉々たるごとく 駆け回るなり

 

 

2018.03.21 Wednesday寒の戻りと庭の紅梅を詠む 

  艶やかな 紅梅撮りて 春来ると 思えば冷える 寒の戻りや 

 春来り FB飾る 紅梅の 寒の戻りで 散りて艶(あで)やか

 

 

2018.03.06 Tuesday 春の到来 庭の紅梅が辺りを染め上げる それを詠む 

 弥生来て 夢やうつつか 香り立つ 風もふくらみ 紅梅の舞う

 

 

2018.02.26 Monday 五輪 如月 去り行く季節 それを詠む 

 紅梅も メダルも輝く 如月の 酷寒の日々 ついに去りゆく 

 ソダネーと 話す道産子 カー娘(むすめ) 五輪の冬も 銅々と往く

 

 2017年後半海鳴庵児玉昌己句歌集

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4294

 

海鳴庵(かいめいあん)とは、歌を詠むときの号。

海に近いところで生まれたこともあり、海が好きで、世界に広がる海です。その潮騒響く岬に突き出た庵(いおり)の住人を私としてはイメージしています。海の街佐世保で育ちました。

8月のブログヒットは 合計:5130

| 児玉昌己 | - | 01:15 | comments(0) | trackbacks(0) |

このページの先頭へ