児玉昌己 研究室

久留米大学法学部国際政治学科教授
ギリシャ総選挙余滴 4 急進左翼党首の笑みの行方 そしてドロール

  5月6日に総選挙が終わり、わずか11日。実に劇的に事態が推移している。政治学者から見れば、実に得難い教材が、日々、提供されている。
 ギリシアの新政権の組閣が不可能となり、再選挙が確定した。ここ2日で注目している記事を以下に示した。
 日経菅野のユーロ離脱、ドラクマ復帰の記事は、すでに書いたが、良かった。

 政治学者として気になるのは、勝者で、再選挙でも1位を窺いそうな、急進左翼連合シリザの若き党首のあの「勝者の笑顔」である。
 実に連立交渉の最後の段階で、預金の引き出しが715億円という巨額に上ったことを大統領が明らかにしたが、あの笑顔が、事態の伸展(悪化)次第では、陰鬱でうなだれた顔に変化することになる可能性も高いということだ。
  国民は、常に必ず正義であるとは限らない。正義の定義も難しい。
 正義に変えて、合理的選択が出来うるかという設問に変えてもよい。 
たとえば、巨額な財政赤字は困るし財政再建はしてほしいが、増税は絶対いやだという議論がまさにそれである。
 表面的正義を口にする政治家は、国民を取り込みやすい。だが、その結果は国民が負うことになる。
 人口比で日本風にいうと、7千億の預金が1日で、引き出されたというのである。

 ユーロ離脱反対が8割近くあるにもかかわらず、緊縮策反対を言う左右両翼を国民が支持しているという事実だが、その事実が、国民の声が正義かというテーマの本質物語っている。制度が民意の正確な表出を保障していない場合もあるし、移ろいやすい世論という世論そのものの不確かさもある。
 実際、世論は移ろいやすい。一夜にして一変することもある。それが国民の声、世論でもある。

  現状では、国際的常識からは、ユーロ離脱はいやだと言いながら、国際公約を反古にするという選択をあり得ない。
 巨額の債権放棄を飲まされた国家や銀行や投資家の側に立てば、ギリシャ国民のこの願望はありえない願望であり、債務免除まで与えてもらい、さらにこれを反古にするのは、ゆるされないということだろう。
 それに何より、ギリシャについていえば、ここ20年の2大政党による政権運営のずさんさにうんざりしているということは十分理解できるが、EU、IMFから突き付けられた緊縮財政も、国民が選んだギリシャ議会が採択したところである。
 ところで、この事態の悪化の方向での進展を予測していたものがいる。
 ミスターヨーロッパであるドロール元欧州委員長である。彼は「EUを殺すものに指を立てる」という過激な見出しを持つEurActiveとのインタビュ記事で痛烈にメルケルのドイツを批判している。
 安定だけに力を注ぎ、成長への配慮を怠ったと財政条約に至るまでの時間を浪費したEUの指導者を非難し、市場も望んでいたユーロ共同債の発行を反古にして重要な事態改善の手立てを失ったとし、ドイツ主導の財政条約について、厳しく批判。
 次のようにシェークスピアを引用して、述べている。

「ヨーロッパは多様性の上にあるが、この多様性の上に生きるか、ドイツ型のルールの上に生きるか、それが問題だ」と。 
 懲罰的方法でなく、高度に緊密な協力方式が採られるべきであった、と。

 しかし事態がここまできてしまうと、ドロールの分析に大いに納得するものの、既にドロールの批判もあまり意味を失う

 緊縮財政要求に関して、ギリシャで譲歩し、財政規律への要求を緩めてしまえば、イタリアやスペイン、ポルトガル、アイルランドに直ぐに波及していく。
 ともあれ、凡庸な欧州委員会バローゾが口にしている、それ自体至極当然の以下のコメントについては私も同意している。
 有権者が、破局的影響について、どれほどの予測されるデータと想像力で受け入れるかである。 

 総選挙での勝者で第2党となった急進左翼連合の党首で、美男の俳優ジョージ・クルーニにも似たあのツィプラス党首の笑みが印象的だが、果たして、今後、同様に笑みをテレビカメラの前でふりまき続けうるのか、それを注視しているところだ。

参考記事
ギリシャ再選挙 連立調停失敗、反緊縮派に勢い産経新聞516()755分配信

預金引き出し715億円=ユーロ離脱の不安反映か―ギリシャ時事通信 516()1016

UPDATE1: ギリシャの連立協議は難航、急進左派連合は大統領による最後の仲介にも参加拒否ロイタ−2012 05 14 08:46 JST

Delors points the finger at Europe's 'killers'EurActiv 29 March 2012

 

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 08:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシャ総選挙余滴 3下 独シュピーゲル誌記事「さらば、アクロポリス」

 ギリシャに戻れば、32の規制緩和の法律があるが、実際は、機能していないと指摘し、また行財政改革では、最近まで国家公務員の数さえまともに把握できていなかったことなどを指摘し、ギリシャという国家の近代性の質について、突っ込んで書いている。

また左右両翼からの「どうせ、ヨーロッパはギリシャの救済に動くさ」という類の言説には、さすがのシュピーゲル誌も堪忍袋の緒が切れたような厳しい状況分析である。

 なお、ロイターは一部の銀行は10年以上前にギリシャがユーロに参加した後も取引システムからドラクマを抹消しておらず、取引通貨をユーロからドラクマに切り替える準備を進めていると述べている。

 またギリシャのドラクマへの変換の予想される手順や影響は日経菅野幹雄が具体的に伝えている。
 有力な輸出産業に乏しい同国で、ドラクマの価値の暴落で、輸出価格下落の利点より、輸入価格の暴騰が経済への打撃を深刻化させるというのは、大方の見方である。
 それにしても最新号のシュピーゲルもフィナンシャル・タイムズも、専門家ならずとも、一般読者が上質の翻訳を介して簡単にアクセスできる。すごい世の中である。
参考記事

ギリシャ、ユーロ離脱なら何が起きるか (真相深層) 通貨暴落、インフレ必至  日経2012/5/15 2:04

焦点:ギリシャのユーロ離脱現実味、金融機関が「ドラクマ復活」の備えロイター2012 05 14日シュピーゲルの英文訳は以下

05/14/2012 11:55 AM

Time to Admit Defeat Greece Can No Longer Delay Euro Zone Exit

言語を直訳すると、アイリッシュタイムズが伝えた“Acropolis, Adieu! Why Greece must leave the euro,”がよりストレートで、上記の英文版タイトルは婉曲的である。
http://www.spiegel.de/international/europe/why-greece-needs-to-leave-the-euro-zone-a-832968.html

Schäuble says Europe is 'ready' for Greek euro exit.The Irish Times - Monday, May 14, 2012  

 

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 22:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシャ総選挙余滴 3 上 独シュピーゲル誌記事「さらば、アクロポリス」

 ギリシア総選挙を受けた同国のデフォルトとユーロ離脱の危険を孕んだ緊縮財政を巡る組閣交渉だが、情勢は混とんとし、ネガティブに推移しているようにさえみえる。結果は破局を意味する。

同じくEU内小国で、経済危機を体験したアイルランドがどう見ているか、サイトを覗いてみた。

まず、国内での経済危機を体験したアイルランドでは、ユーロ圏財政条約の批准の国民投票を今月末に予定されているが、23日のEU首脳会議ではフランスのホランド大統領の成長政策について我々が求めていたものだ、とした同国首相Enda Kennyの発言を伝えている。
 これに関連して、財政条約における成長戦略追加条文という改正をいうフランスでの社会党大統領ホランドの当選や、州議会としてはドイツの最大人口を持つノルトラインウエストファーレン州議会選挙でのメルケル率いるドイツ政権与党(CDU)の大敗の報道を受けて、ユーロ財政条約の改正もありうるとして、批准の国民投票の実施延期も一部の議員が述べている。

 他方、ドイツ。

 ユーロ圏議長ユンケルの後任になる可能性の高いドイツのショイブレ財務大臣のコメントを紹介している。それによれば、個人的はユーロ離脱には反対しているが、EUとしてはユーロ離脱を含むあらゆる可能性について、EUは準備できていると述べている。

 特に興味を引くのは、5月14日付の 有力週刊誌Der Spiegelの記事。そこでは「Akropolis Adieu アクロポリス(ギリシア)よさらば」と見出しを付け、表紙は壊れたユーロコインと、さらに朽ち果てた古代ギリシアの遺跡をあしらっている。

内容を言えば、ギリシア総選挙でIMFEUがまとめたギリシャ救策を支持してきた中道連立が、左右両翼の挟撃を受けて、惨敗したのを見て、同誌はそれまでのギリシャのユーロ圏維持の考えを変えたということだ。
 通貨同盟にその籍を置くだけの資格を欠いた国家と断定し、ギリシャのユーロ離脱はやむを得ないことで、国家の命運は何より国民が決めるとして、その結果にも同国国民次第だということで、ドラクマに戻り、機が熟せば、ユーロ圏に戻ってくることもできるというのがその内容である。

 それにしても、同記事の英文翻訳で見る限り、ギリシャにおける政治家への不信感は最高に達し、職業政治家という言葉は侮辱と同義語とまでいう。
 この点、政治家無能論から不要論、比例削減論をいう、日本でも状況は似通っている。こちらは危険な議論だが。
 

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 20:45 | comments(1) | trackbacks(0) |
5月の杜若(かきつばた)を詠む 海鳴庵児玉

  花では、何が好きかと問われれば、梅も桜もいいが、私は菖蒲(あやめ/綾目)、杜若(カキツバタ/燕子花)を挙げたい。 庭にはアヤメ、杜若、300年の時を超えて、その美を誇る。それを詠む。

 燕子花(かきつばた) 君は不変の タペストリ 元禄の世も 
平成の世も                                                      
                        海鳴庵児玉

参考ブログ

2010.06.13 Sunday 梅雨入りの小栗郷の花菖蒲を詠む 

梅雨入りて 小栗の郷の 紺(あお)や白 競うその美や 
花は菖蒲(あやめ)の

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2388

 

2010.05.14 Friday いずれあやめか かきつばた あやめを詠む 

想えども 季節はいつか移ろいて 癒す青の華 庭や菖蒲(あやめ)の  
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2340 


2012.05.01 Tuesday
 海鳴庵児玉昌己句歌集 2012年前半
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3074

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 17:58 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシャ総選挙について松尾匡立命館大教授からのコメントと筆者の返答
 立命館大学経済学部教授の松尾匡先生から以下ブログへのコメントを頂いた。
長いので、コメント欄ではなく、ブログとして、所見を述べたい。なお、ブログを観て頂いて、感謝である。
 松尾
 急進左翼連合は単一の政党ではなく、政党の連合です。有力メンバーの一つの「左翼運動エコロジー連合」は欧州左翼党のメンバー政党で、したがって統合是認派です。ギリシャ国債を欧州債に転換して、欧州中央銀行が引き受けることを主張しています。
 現実にはドイツも欧州中銀も受け入れることはないと思いますが、純粋マクロ経済的には、ユーロ圏が悪性インフレになる可能性はほとんど考えられないので問題はありません。急進左翼連合の別の参加勢力が何を言っているのかは知りません。
 欧州左翼党全体は、「ギリシャ国債を」とまでは言っているわけではありませんが、やはり欧州債を創設することは主張しています。これは一つの合理的解決の道だと思いますが、整合的になるようにすれば徴税統合までいかざるをえないことだと思います。
 結局、統合の中途半端さが問題の根源で、別の方向としてユーロ離脱論が出るのも、ひとつの筋道だとは思います。

 返答(児玉)
 
 確かに、急進左翼連合は単一の政党ではなく、政党の連合です。実に、コアリションという党名が示唆するように、複雑に構成される、議会内の左翼の統一会派です。より詳しくは、以下参照。
http://en.wikipedia.org/wiki/Coalition_of_the_Radical_Left
 その党の性格について、統合是認派ということでは、私の理解は少し微妙です。
 反緊縮を唱える限り、統合推進とは言い難い現状の厳しさがあります。統合推進派であり、反緊縮であることは、場合によっては両立共存できるかもしれません。ですが、ギリシャが置かれている現実政治の厳しさの中では、両者は、その政治的スタンスで、対峙するものとなっているようです。
 インフレについては、ユーロ圏全体について述べているのでなく、私のブログでは、ユーロ圏離脱後のギリシャの予測される状況について述べています。すなわち、ドラクマに回帰した後のハイパーインフレの危険を指摘しています。
 ギリシャのユーロ離脱の、ユーロ圏全体に及ぼすマクロ経済への影響は、それこそ経済学者の守備範囲の問題で、私が伺いたいところです。
 、現在のユーロの状況については、 「結局、統合の中途半端さが問題の根源」であるということは全く同意見です。
 現在のソブリン債危機とそれに伴うユーロ危機については、このブログでもたびたび指摘しているように、欧州中央銀行が金融政策を監督し、他方加盟国が財政政策を運営するという、国家にあっては本来両者が一体として機動的に運営されている事項が、EUレベルでは、分断状況にあるということで、、ヨーロッパ統合の過渡期的性格を反映した危機だということです、
 この認識では、松尾教授と共通すると思います。
 それゆえ、ユーロ解体を望まない限り、そしてそれは、イギリスなど反統合のメンタリティに満たされた国家などを別とすれば、 ドイツ、フランスなどユーロ圏での総意であるということですが、ユーロ共同債や、加盟国の財政政策を監督するEU(ユーロ圏)財務省創設、そして金融取引税など、連邦的な欧州統合の深化でしか、ソブリン債(国債)危機というユーロ危機の本質は解決できないということでしょう。

 追記(5.14.)
 なお以下の記述は、政治(学)的には松尾教授も認められているように、ありえないことだと思います。
「ギリシャ国債を欧州債に転換して、欧州中央銀行が引き受けることを主張しています。現実にはドイツも欧州中銀も受け入れることはないと思いますが、純粋マクロ経済的には、ユーロ圏が悪性インフレになる可能性はほとんど考えられないので問題はありません。」

 それはEUの財政規律の思想に真っ向から反することだからです。現在のギリシャ国債危機は、欧州と国際の信認がこの国の国債(ソブリン債)にまるでないことにその問題の発端があり、この上に、いかなる条件でECBがこれを買い上げるかというその1点においてです。
 ギリシャの後には、スペイン、イタリアと続きます。
 私が強く危惧するのは、こうした自己中心的な願望としての政治スローガンが、現実政治の上で、結果として招くカタストロフです。
 欧州のギリシャに対する厳しい視線と実に対照的な、あまりの楽観的な国内の左右両翼の認識です。それを「左右両翼の統治能力」の問題とブログしたものでした。


| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 10:22 | comments(3) | trackbacks(0) |
ギリシャ総選挙余滴 2 下 選挙制度が政治と経済を決める
  前回のブログで急進左翼連合が矢面に立つ、と書いたことはそのことであった。
 今は、この急進左翼が、個別の政党利害ではなく、国民的利益の観点に立ち、合理的選択をすることを祈念しつつ、連立協議を見守ることでしかない。
 選挙制度が、政治のすべてを決する、という、従来の私の主張を立証する政治学上の事例となる。
 なおこれを書きつつ、国債発行と民主主義の相関関係について書かれた猪木武徳先生の以下の記事を想起しているところだ。

「民主制は国債に流れる」自由と安定、膨張許す 選択の責任は国民に日本経済新聞 朝刊2012/5/8
以下、ギリシャ議会の政党勢力をまとめてみた。


  政党

党首

議席

新民主主義(91前回)中道右派 旧連立与党

サマラス

108 

急進左翼連合(13)中道左派 反緊縮

ツィピラス 

52

全ギリシャ社会主義運動(160)中道道左派旧連立与党   

ベニゼロス

41

独立ギリシャ 0中道右派  反緊縮  ND分派新党

カメノス

33

ギリシア共産党21 左翼  反緊縮

パパリガ

26

黄金の夜明け0  極右   反緊縮

ミチャロリアコス 

21

民主左翼  0       反緊縮  分派新党

クベリス

19



参考記事

ギリシャで政権樹立目指し土壇場の協議、再選挙回避は困難かロイター 51172

3党、左派の協力で前進=再選挙回避で調整大詰めギリシャ時事通信 511624

急進左派、支持率急伸=再選挙なら逆転首位も―ギリシャ世論調査時事通信 511610分ギリシャ>第3党党首が組閣作業に着手 毎日新聞 510()2122

ギリシャ急進左派連合が組閣断念、再選挙の可能性高まる ロイター 510418
参考ブログ

2012.05.08 Tuesday ギリシア総選挙結果と連立交渉の挫折 問われる左右両翼と統治能力
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3134

参考記事

ギリシャの無秩序なデフォルト懸念、深刻さ薄れた有力議員ロイター5月10日

ギリシャで政権樹立目指し土壇場の協議、再選挙回避は困難かロイター 5117総選挙結果と連立交渉の挫折 問われる左右両翼と統治能力
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3134

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 11:20 | comments(1) | trackbacks(0) |
ギリシャ総選挙余滴 2  上 選挙制度が政治と経済を決める

 ギリシャでの総選挙の後、組閣のための連立交渉は、さまざまに行われているが、この段階でその実現をみないでいる。
 この間、第2党に躍進した急進左翼連合が世論調査では支持率1位となった。
 これはEUとユーロ安定に腐心する側からみれば、深刻な事態である。 なぜなら連立交渉が不調になれば、再選挙となる。再選挙が問題でなく、問題は選挙制度にある。
 この国は比例代表制をとっている。比例制は、選挙が民意を正確に反映するべきであるという近代選挙原則からみれば、最も優れた制度である。
 だがこの国の比例制度には、他国に見られない民意をゆがめる要素がある。
 すなわち得票数1位の政党に、16.6%が加算、50議席のボーナスがつくという、第1位の政党に極端に有利になるような恣意的な議席配分がなされる異様な選挙制度となっていることである。
 これは、政治の安定のための措置とみられるが、再選挙となれば、これが、現在支持率急上昇中の急進左翼に圧倒的に有利に働くことになる。
 民意を正確に反映した比例制度ではないことからくる、ゆがめられた選挙結果を引き起こす危険があるということだ。

 元よりこれまでもそうであったのだが、この局面ではこの制度の影響はとりわけ大きくなる。
 連立交渉が失敗し、再選挙となれば、そして急進左翼が首位に立てば、同党が希望するEUとIMFとの交渉では、選択の余地が、限りなく狭まってくる。何より再交渉の余地などないとEUIMF側はいっている。すでに関係国と銀行は巨額の債権放棄を飲まされて、2次支援となっているのである。
 ギリシャのソブリン危機は深刻化し、この国の国家的な破局に向かう公算が強くなるということである。
 ただし、EU側への影響については、「無秩序なデフォルトに対する懸念は薄れた。なぜならユーロ圏諸国はここ数カ月、ひたすらそのような事態に対する備えをしてきた」と語った独自民の有力議員の言葉も付け加えておこう。
 EUはギリシャのソブリン債危機を契機に、最大7500億ドルの財政安全網を可能にする欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)を準備し、さらにそれを恒常的に稼働できる通貨安定メカニズム(ESM)に発展、拡充させる財政条約を2月に調印したことを受けた発言である。
 今後は、急進左翼連合が、ギリシャが置かれている国際支援の意味と、ユーロ離脱の危機の深刻さを理解するか否かということが焦点となる。

 ギリシア国債のデフォルト回避のための国際支援の前提となる公約を破棄できるほどの立場はこの国にはもはやない。
 選挙前の連立与党が、政治家ではない欧州中央銀行副総裁のルーカス・パパデモスを政権のトップに立ててでも、支援の前提条件となっている国内の緊縮政策を断行してきたという事実こそが、その深刻さを物語る。
 第2次支援額1300億ユーロ(約13兆5千億円)というその規模を想起してみるだけでいい。
 日本の10分の1の人口の国家である。日本に当てはめていうと、130兆円以上の支援を外部から必要とする事の重大さを読者も理解できるであろう。
 ちなみに数年前まで700兆円といっていた日本の国債と借入金と政府短期証券を合わせた国家の借金は12年末に1085兆円になると試算している。3年をもうすぐ終える民主政権下で100兆円単位で、軽く積み上がることになる。

参考記事

ギリシャの無秩序なデフォルト懸念、深刻さ薄れた独有力議員ロイター510

11年度末の国の借金959兆円、過去最大=財務省 ロイター 5101635

ギリシャ 第三党に組閣要請 ユーロ圏は融資一部保留産経新聞 511755

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 09:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシャ総選挙余滴 ニューズウィーク(日本語)の正確さを欠く記事見出し

 ギリシャ総選挙は連立工作に失敗した第1党が組閣を断念して、ギリシャ政局は混迷しそうだ。事態が事態ゆえに、再選挙まで3カ月もという猶予はないであろう。あるとすれば、1カ月程度をおいての再選挙の可能性も言われている。
 調べると1989年に5か月の時を置き、再選挙した過去がある。
 それにしても、ロイターが伝え、ニューズウィークが掲示した記事見出しは、およそ、その内容を適切に表現したものではなかった。
 以下がそれだ。与党がユーロ離脱を積極的に主張しているように見える。中身はそうではない。


 6日のギリシャ総選挙、結果次第ではユーロ圏離脱も=与党党首

20120505日(土)0855

 

http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2012/05/72204.php
 
 私風にやりかえるとすれば、以下だ。

 6日のギリシャ総選挙、結果次第でユーロ離脱の危険、その愚を強調=与党党首

 どうだろう。ニュアンスがまるで違ってくる。記事内容は、与党党首はユーロ離脱を言っているのではなく、逆である。
 離脱賛成派に投票することは、国家を危機に曝す、それゆえ冷静に投票を、と言っているのである。
 ユーロ離脱を与党が強調しているような記事見出しである。編集者の思いこみか、一方的予断か主観的判断を交えたものとなっている。
 翻訳と見出しにロイターが責任を負うのか、ニューズウィークが責任を負うのか、外部には判然としない。
 字数制限の問題ではない。主語が明確に与党党首となっているから、疑いもなく問題である。 
 このように、見出しが中身と全く違ったものとなる。要注意ということだ。
 この手の記事見出しは、邦字紙にも時に見られる。
 たとえば、大学で現在検討されている秋入試について、書かれたものに見かけた。秋入試に反対しているわけではない識者のコメントで埋められているのに、秋入試反対という記事見出しになっていた。
 日頃、ロイターもニューズウィークも、学ばせて頂き、敬意を表するメディアだ。しっかりした見出しで対応してもらいたいものである。

参考記事

ギリシャ急進左派連合が組閣断念、再選挙の可能性高まる ロイター 510()418分配信

 

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 08:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシア総選挙結果と連立交渉の挫折 問われる左右両翼と統治能力
  「2つの選挙 仏大統領選とギリシャ総選挙」というテーマで2つ記事を書いた。 
 ギリシャについて、その後を書けば、連立がかろうじて維持されるとした先のロイターの希望的記事を覆して、151の過半数を連立与党が確保できずに、149に終わり、反緊縮派の左右の両翼が伸張した。
 具体的にいえば、第1党の新民主主義党(ND)が108、最大与党のPASOKは前回の160議席から119議席を減らし、41議席と激減し3位に後退。
 左右両翼は、急進左派連合が11議席から52議席に増やし、第二党に躍進。 移民排斥を訴える極右・「黄金の夜明け党」も21議席を獲得し初の国政参加を果たしている。(産経)

 それにとどまらず、ギリシャ総選挙で第1党となった右派・新民主主義党(ND)のサマラス党首がパプリアス大統領から要請を受けた連立政権樹立に向けた各党との調整に失敗し、再選挙の可能性が出てきている、と時事が報じている。

 EUIMFが要求した緊縮策を受け入れたと連立与党を非難し、組閣協力を拒否したSYRIZAのツィプラス党首が、権力を眼前にして、矢面に立つことになる。

 野党であるときには安気に政権与党の攻撃を行えば済む。
 だが、一端政権を担うとなるとそうはいかない。今の日本の民主党が日々苦痛で体験しているところだろう。
 第2党のギリシャの左翼政党の対応いかんでは、ユーロ危機の前に、たとえユーロ離脱しても、そしてかつての自国通貨ドラクマを導入しても、国家財政の破たんを来たすことだろう。ユーロ建てがゆえに、さらに膨らむ巨額の対外債務を抱え、国際的に信認をまるで得ない通貨ドラクマで、ハイパーインフレがこの国を襲う。
 右翼が掲げる党名「黄金の夜明け」とは、常識的にみれば、願望であって、現実ではありえない。明けるかも定かでない長く暗い闇となる危険もある。

 急激な緊縮政策で膨大な失業を出している現実を観ると、反EU派、反緊縮派の主張も理解できないわけではないが、しかしである。
 左翼であろうが右翼であろうが、前政権が結んだ国際条約には国際公約として責任を負う、それが国家というものである。
 洋の東西を問わず、国家とは、そしてその政権は過去の栄光も恥辱もすべて引き受けて、存在する。
特に国民が選出する民主国家にあっては、対外的な責任は重い。

 左翼、右翼も含めて、政治というものの決断の重さを感じていることだろう。
 我々にとっても対岸の火事ではおよそない。政治というものの生きた教材を今我々は眼前にしている。


参考記事
再選挙の可能性強まる=第
1党党首、連立樹立を断念―ギリシャ時事通信 58

ギリシャ、ユーロ圏離脱も 極左・極右の伸長鮮明産経新聞58
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2つの選挙 仏大統領選とギリシア総選挙 続報
  一夜あけると、仏大統領選については、メディアの予測通りの結果だ。
 仏では、オランド優勢、現職のサルコジ劣勢の事前予測が覆ることはなかった。17年ぶりの中道右派からの社会党による大統領職の奪還である。
 他方、ギリシアでは、ユーロ圏維持のための緊縮財政に合意している連立与党がかろうじてこれを維持できそうだとロイターが伝えてきた。
 最大与党の全ギリシア社会主義運動(PASOK)は、議席を大幅に減らし、第3党に転落するとのことだが、代りに新民主主義党(ND)が首位となった。
 ただし、EUIMFによる対外的なギリシア支援に応える緊縮財政の継続については、これを堅持すると語っている。ちなみに、151議席が同国議会における過半数である。
 EU関係者は、1740億ユーロの第2次ギリシア支援の条件である55億ユーロの国内の歳出削減という対外公約を実践できる政治体制ができるかいなか、それを見守っていることだろう。
 その他注目される点といえば、極右の進出である。
 日本のメディアもこの点を伝えていたが、依然としてどれだけの議席を得るのか現段階で不明で、確定値が待たれる。
 注目点は極右の動向もだが、今回、急進左派連合(SYRIZA)が得票で3倍増にして、第2党に躍進するということだ。左翼政党の躍進である。党首のAlexis Tsiprasは弱冠38歳で、緊縮財政への強い不満の受け皿となった。
 いずれにせよ、どの国も厳しい状況にある。
 ただわが国と違う点は、選挙制度が民意が正確に議席に反映される比例代表制である点だ。
 膨大な死票の上に構築される正統性を著しく欠く政権が政治を壟断するわが国のような状況ではおよそない。しかもギリシアは、1100万人の人口で、九州くらいの人口規模。そこに議席数が300ある。日本風にいうと、3000名余の国政担当者がいるということである。
 21世紀の民主主義の時代の政治にあっては、国民の意思こそがすべてであり、得票と獲得議席を数学的に保障する選挙制度が如何に重要かが、こうした経済苦境にあっては、特に確認されるところである。
 比例の大幅削減と議員定数の削減を言う日本の政治家諸君よ、欧州の政治と選挙制度は比例代表制が準則であること、日本の国政担当者の数は逆に全く少ないという欧州の常識を直視せよということである。

参考記事

オランド氏支持者、深夜まで歓喜=「責任は私に」とサルコジ氏―仏大統領選時事通信57()549分配信

Greek politicians suffer backlash to austerity.By Kerin Hope in Athens. Financial Times May 6, 2012. 7:46 pm.

連立与党が過半数も=緊縮反対の野党躍進―ギリシャ総選挙時事通信57()412分配信

| 児玉昌己 We are a sturdy nation we don't give up | - | 08:17 | comments(0) | trackbacks(0) |

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