児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
パリは燃えている 米トランプパリ条約離脱声明 そして仏マクロンの反撃、新党下院400超えの圧勝予測

 プロジェクト・シンジケート、みなさんご存じだろうか。私もこのメディアの国際組織を知ったのは最近のことで、ここ2年ほどだろうか。

 EUの移民問題での排外主義の高まりに対してなされたドイツのフィシャー元外相の論考で、本学公開講座で長年お世話になっている御年84歳の島村力先生(元中央公論編集長・外交政策センター顧問)に、ご教示いただいた。

フィッシャーは欧米における人種差別主義の高まりについてThe Fascism of the Affluent.Dec 28,2015で「白人世界の衰退への本能的恐怖」という表現を使っていた。

 極右を考える場合、この表現が印象的で、学士会会報での拙稿「大量難民流入とEUへの衝撃反EUナショナリズムの 昂進と統合深化のベクトルNo.918 (平成285月発行)や、ブログで数回にわたり言及している。

 ちなみにプロジェクト・シンジケートは、Wikipediaによると、国際的なNPOであり、各国の新聞をつなぐ組織とある。

 専門家や活動家、ノーベル賞受賞者、政治家、経済学者、政治 思想家、ビジネスから学者にいたる各界のリーダーによる論考や分析を会員の新聞に提供。チェコ共和国のプラハに本拠を置き、現在、150か国・439の新聞が会員になっているという。

私もプロジェクト・シンジケートから、記事の通知が届いていているが、今日は「パリは燃えている」という記事が入ってきた。

 書き手はフランス人の元国連環境会議大使を務めたLaurence Tubiana女史だ。

 当然ながら、例の「fake president」(ウォールストリート・ジャーナル)が、気候温暖化に抗して中国も参加しようやくできた画期的なパリ協定から、アメリカファーストを掲げ、離脱を発表したこと受けての記事だ。

  しかもタイトルは、このブログでも、E・トッド批判で触れたことのある仏英合作映画「パリは燃えているか」(1966Paris brûle-t-il?、英:Is Paris Burning?)をもじったものだ。

 これは、大戦末期、連合軍の到来を前にパリ全市破壊命令を実行したかをドイツ軍パリ駐箚司令官コルテッツに問うヒトラーの言葉からとられたもので、歴史的価値のある映画だ。

 この映画については、以下で書いている。

2015.07.19 Sunday奇妙なる仏のナショナリスト、E・トッドEmmanuel Toddの書、『ドイツ帝国が世界を破滅させる』 文春新書2015年

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3868

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3865

2015.09.29 Tuesday 21世紀に日本でEUを語ることの意味

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3909

実際、例によって、王様みたいなしたり顔のトランプの協定離脱の声明を受けて、協定のホスト国だったフランスは、マクロン大統領がみずから反論した。

 トランプ自身が得意げに使う「Make America great again(アメリカを再び偉大にしよう)」という政治スローガンを使って、「私たちの地球を再び偉大にしよう(Make our planet great again)」と述べた。

 修辞法の効果としては最高のものだ。マクロンの資質の高さを物語るもので、いかにもアメリカが小さく見える言葉だ。

 フランスはようやく、国家の断崖絶壁というべき土壇場で、いい政治家を得た。フランスが内政外交でその力を取り戻し、日ごとに蘇るのを目撃している感じだ。

政治のトップの質で国家の質が決まる。

 またEUとしても独仏伊の3大国がそろって、パリ協定の再交渉には応じないとした。EUの結束が強まってきている。

 なお、フランスは国民議会選挙、この611日が第1回目、18日が決選投票だ。

 マクロンの政党共和国前進(REM)は、5月18日には280-300という世論調査だったが、2週間後の今日現在577議席中、文字通り急拵(ごしら)えの新党ながら、395425をとるという圧勝の予測となっている。

 ちなみに共和党95-110。特に社会党PS25-35で、解党的な激減の予測である。 

 実に、わが国を含む世界中の図書館や書店で並んでいるあらゆるフランスの政治関係書籍を、歴史書に変える革命的というべき地殻変動が進行中である。

 まさにパリは燃えているのである。

https://twitter.com/LesSondages2017

REM 共和国前進 395 à 425 sièges

LR  共和党   95 à 110

PS  社会党   25 à 35

FI  共産党系  10 à 20

FN  国民戦線   5 à 15

参考ブログ

2017.05.19 Friday マクロン政権成立 進む総選挙準備 仏大統領選挙決選投票の現地調査から一週間 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4253

2017.02.28 Tuesday 関心高まる仏大統領選挙 エマニュエル・マクロンへの期待

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4206

 

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