フランスの政治情勢の分析に忙しくしていたが、昨日木曜日にイギリスで始まった総選挙の投票は、日本時間9日朝6時に投票が終了し、開票が始まった。有権者数は4850万。650議席を争い、過半数は326議席。
昨年6月にEU離脱を国民投票で決定して、1年後、いかなるEU離脱を行うか、その内実を問う選挙。
EUが欧州の加盟国政治に圧倒的に影響を与えている証拠である。EUを語らずにヨーロッパ各国の政治は語れない。EU政治の研究者であってよかったということだ。
BBCは現地時間8日2200で、 the NOP/Ipsos MORI poll for BBC/ITV/Skyの出口調査として、保守314(−17)、労働266(+34)、自民14(+6)、スコットランド民族党34(−22)、英独立0(−1) を掲示している。
まさに選挙はやってみないとわからない。
2週間前はメイの楽勝が言われていたが、マンチェスターでのテロ以降、見る見るうちに保守党の支持率が下がり、僅差の勝利が言われていた。そしてそれが当たる気配だ。
総選挙の結果によるEU離脱交渉のシナリオについては、ブルームバーグは昨日8日付で5つを提示していた。「いよいよ投票、英総選挙−シナリオは5つ」ブルームバーグ 2017 6/8 原題:Thomas Penny, Svenja O'Donnell, Britain Votes as Narrowing Polls Indicate These Five Scenarios.
1 保守圧勝 100以上の過半数 メイの政権の安泰
2 保守勝利 50以上の過半数 党内反EU強硬派の意見大 EU離脱交渉に支障
3 保守僅差 半数を超えるが10以下 メイの離脱交渉 困難
4 痛み分け 保守、労働ともに過半数割れ、 労働党による親EU連立の可能性 離脱の行方不明
5 労働党勝利 労働党の単独過半 EU離脱交渉の延期 19年3月の離脱は先送り
あくまでも出口の結果でしかないが、現状の予測では、4で、EU離脱交渉についていえば、微妙な位置に置かれることになる。
ベルギー人で、欧州委員会に勤務経験のある欧州大学院大学同期のピーターは短く、以下Eメイルしてきた。
「メイは過半数取れそうにないようだけど、離脱自身が(国民投票)でとわれるのかな」
So, May does not seem to have a majority. Now Brexit again on the table?
イギリス人政治学者で友人のスティーブン・デイ(大分大学)と朝電話すると、さすがに当事者であるから興奮気味で、保守党の圧勝を安易に指摘していた者たちは謝罪ものだということだった。
興味深いコメントを紹介すれば、若い世代の投票動向が関心がある、メイ政権を含め保守党やサンやメイルといった反EUタブロイドがコービンはテロの友人だとか個人攻撃を強める一方、コービンがそれには乗らなかったこと、そして、内政において、ソーシャルケアなどに、きわめて社会民主主義的政策を提起していたこと、これを有権者がどう判断したかが関心だと言っていた。
SNPの敗北予測について聞くと、10年SNPはスコットランド議会で中心勢力を維持してきて、今回、大幅に議席を減らすとはいえ、前回とりすぎを考えると、一定の議席を維持していることでは必ずしも敗北ではないとみているとのことだ。
実は今日は久留米大学公開講座で私が座長をしている「国際政治経済をみる目」の初回が3時から始まる。
当然、この結果をライブで伝えることになる。
BBCではコービン労働党党首自身の選挙区での勝利演説の映像が流れている。
追記
これを書いている間に、02:16現地時間で、上記で示した数字から保守党が322(−9)と議席獲得の予想を上方修正している。
保守党が326の過半数に届くかが見ものとなる。しかしメイが予想した党内基盤の盤石化のための総選挙という観点で見れば、メイ保守党政権苦戦のブログタイトルは変わらない。
ちなみに労働党は、下方修正で261(+29)。確定したらまた書くことにしよう。