2017.06.11 Sunday
仏議会選挙第1回投票開始 EUと欧州統合の動向分析では、英より仏国民議会(下院)選挙が重要
イギリスの下院議会選挙が終わったばかりで、メディアはまだ十分報じていないが、フランスの国民議会選挙の第1回投票が、日本時間の午後3時から始まった。 EUと欧州統合の動向分析という観点で言えば、英の総選挙よりこちらの方がより重要となっている。特にユーロの動向をウオッチしている金融関係者は特にそうである。 イギリスではメイ首相が過半数を取れなくなって、宙づりの議会、すなわちハングパーリアメントの状態となり、対EU交渉に不透明感が出てきている。 しかしイギリスでは保守党も労働党も、ともにEU離脱を問う再度の国民投票は実施しないということでは、先の総選挙でもEU離脱のベクトルは動かない。 他方、フランスでは、大統領に選出されたとはいえ、下院議会に自身の政党の基盤が全くないマクロンの新党がどれほど議席をとるかは、マクロン政権の安定と政権運営、とりわけ欧州統合の連邦的深化につながるユーロ圏議会やユーロ圏財務担当相導入の構想の実現に直結してくるのである。 とくに、反EUで、ユーロ離脱、フラン復帰を求めた排外主義者のマリーヌ・ルペンが先の大統領選挙で一千万票をとっていることを考えると、なおさらである。 フランスについては、わが国ではイギリスの総選挙関係記事と比較して、日経の白石パリ支局長以外、あまり記事を見ない。 わが国ではいまだイギリスを中心に欧州政治が語られる傾向が強い。 英語に特化して欧州を語る傾向の強いわが国の学者については特にそうであえる。 だが、すでにイギリスは、3月29日にリスボン条約50条に基づき、欧州理事会に離脱の通告をして以降、みずからEUの中心勢力から完全に離脱している。 したがって、イギリスの政治だけを見ていても、EUはおろか欧州統合の政治は見えてこない。言い換えれば、仏独の政治状況をみずには、仏語や独語メディアをフォローしない限り、欧州政治を十分には語れない。 なによりEUは仏独とベネルクスの6か国が創設したものであり、イギリス自身は21年遅れてEUに加盟した。しかもサッチャー以降、イギリスでは、特に保守党はEUの連邦的統合深化に一貫して反対してきた。そしてキャメロンはEU離脱を国民投票という政治的ギャンブルに賭け、52対48という僅差で、イギリスはそのEUからの離脱を決した。 他方、フランスについていえば、目下、マクロン新党の圧勝が現地の世論調査で示されており、大きな政治変動が進行中である。 それについては、8日前、フランスの世論調査の結果を受けて、私のブログで以下に記した。 「実に、わが国を含む世界中の図書館や書店で並んでいるあらゆるフランスの政治関係書籍を、歴史書に変える革命的というべき地殻変動が進行中である。 まさにパリは燃えているのである。」 2017.06.03 Saturdayパリは燃えている 米トランプパリ条約離脱声明 そして仏マクロンの反撃、新党下院400超えの圧勝予測 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4259 私のブログから1週間後の6月10日ルモンドでは、1年前には存在すらしなかった共和国前進という名のマクロン新党の圧勝の予測をだし、超巨大地震を言うマグニチュード9という表現をしている。また経済紙レゼコーは同じく8日付で400議席も可能という数字を出している。 すなわちここ1か月の世論調査で示されたマクロン新党勝利の基調は、ほぼ動いていないということである。 Législatives : profond renouvellement en perspectiveLE MONDE | 10.06.2017 Par Patrick Roger Sondage législatives : En Marche pourrait compter jusqu'à 400 députés. LesEchos. 08/06. フランスの国民議会の定数は577。過半数は289。400といえば、過半数どころか、7割に近い議席ということになる。 フランス議会は2回投票制の小選挙区制度。第1回の動向でほぼ決選投票での予測がつくことになる。 政局混迷に顔を曇らせるイギリスと、若干39の、トランプにも果敢に挑戦する新鋭大統領を戴くフランスとが好対照のヨーロッパ政治である。 決選投票の結果が出る来週日曜日以降、フランス国民議会史上初となる多数の女性議員を含む新人議員で、議場が埋め尽くされる場面を目撃することになる。 参考ブログ 2017.05.13 Saturday ユーロ圏議会構想をマクロンとショイブレが協議 EU懐疑論者を青ざめさせるユーロ圏における連邦通貨主権創造への一歩 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4250 2017.02.04 Saturday トランプのアメリカ第一主義の政治はEUの結束と連邦的統合を強化する http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20170204 2017.05.09 Tuesday フランス大統領選挙2017年余話 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4247 |