勤務校で懇意にさせていただいき、2年前より立命館大に移籍された経済学者の松尾匡教授から近著「不況は人災です」が届く。
いわゆるマル経も近経にも詳しい数理経済学者だが、実に平易に日本経済が直面する当面の課題を解説されている。しかも今の日本の左翼政党の化石化した経済認識などもアナクロとして一蹴されている。
先生の論は、政府は日銀はデフレ克服のためにインフレ目標を設定し、インフレに誘導と総需要の拡大に踏み出しなさいということだ。
この至極当然の議論も、実は、インフレバスター、物価安定がその使命であるとして、それを金看板にし、金科玉条としてきた日銀からは、十分馴染みのない政策提言である。
政府日銀が、むしろデフレを加速しているとの認識で、政府日銀の怠慢と、政府と政権与党であった自民党の不見識を指摘する。
他方で、景気対策を公共工事の利権拡大とネガティブに捉える習性があるわが国の左翼政党にも、現在のデフレの状況の下で、物価の安定を説くなど、1970年代の、つまり30年前の以上もまえの現状認識に終始しているとする。
そして、EUの議会である欧州議会の、2大政党で、中道左派勢力を代表する欧州社会党の考え方を対比的に披歴し、返す刀で、日本の左翼政党の状況認識を、時代錯誤であるとして、両断する。
もっとも、ご本人は、生活弱者の側に立つ(と思われる)左翼のためだと、愛の鞭のご心境のことだろうが。