児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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欧州連合を否定しつつEU(欧州同盟)は連邦主義的権限強化に向かう 上 金融財政部門でのリスボン条約改正の動き

  EUは国家連合を意味する欧州連合ではなく、主権移譲の同盟関係を構築し、制度的仕組みが意思決定や、EU法などの制度的に連邦形成に向かうよう内包されている欧州同盟であると15年前から指摘してきた。
 1996年に用語問題に関する英文論文作成し、それを持参し、欧州議会に働き掛け、合理性を認めてもらい、欧州委員会の駐日代表部が使用しているEUの日本語表記の「欧州連合」の使用停止と「欧州同盟」の採用を求めるという、欧州社会党から書簡を出してもらった。
 学会でも、欧州連合を使用する学者が、自らの矛盾にづかずにか、大規模に進む主権の譲渡、つまりEUの連邦化を議論しているという奇妙さだった。
 実際、ヨーロッパ統合の深化、つまり連邦化にたいする加盟国の政治的対応は、まさに国家主権の譲渡についての加盟国国民が素朴に抱く不安感をベースにするものであるのだ。
 EUは、欧州連合などという国家の連合組織ではない。
 欧州連合なら、国家の主権的権限の譲渡もありえないし、現状のように、国家主義者が憤ることもない。わが国だけが、関税同盟、政治同盟、通貨同盟と言いながら、本体を欧州連合とする実に意味もない、恣意的というべき訳語を採用し、EUの本質を曇らせている。
 欧州議会からの欧州連合使用停止についての書面質問書とそれに関する拙稿については以下。

「欧州連合」という日本語表記問題再訪──EU 研究おける言葉と認識の問題

 上記論考及び欧州社会党による書面質問書及び欧州委員会の書面回答書は拙著「欧州議会と欧州統合」成文堂(2004年)巻末付録参照
 学会でも、初代EU学会理事長片山謙二故関西学院大学名誉教授をはじめとして、欧州思想史や哲学、EU経済学で顕著な業績をあげられている沢田昭夫筑波大学名誉教授、内田勝敏同志社大学名誉教授、同志社大学故金丸輝男法学部長、辰巳浅嗣阪南大学学長、最近では慶応大学竹森俊平経済学部教授(吉野作造賞受賞者)など、多くのEU学者が欧州連合の使用を否定し、欧州同盟を使用している。
 欧州連合という邦語表記に疑問を持ち、これを使用せず単にEUとだけ期している学者まで入れると、その数はさらに増える。
 他方、欧州委員会代表部が、およそアカデミックでない一片の回答書でEUを欧州連合と定め、メディアに呼称させることで、アセアンや国連との識別も付かず、そのように理解し、あるいは、一党独裁国家の非民主主義国の中国も入ったたんにFTAにしか過ぎない経済協力機構を、「EU型」東アジア共同体などと称すお粗末極まりない政治指導者さえ出る始末である。
 彼らは、EUが、北朝鮮さえも入っている国際連合とはちがい、加盟条件として、民主主義国家だけを加盟国と認めるという厳しい要件を課し、さらには域内関税の撤廃にとどまらず、対外共通関税さえ構築している関税同盟を基本とするEUの本質もわからないで、「EU型」などという。実に困った状況にある。
 そして今日のテーマ。連邦化にさらに進むEU(欧州同盟)。
 EUでは欧州理事会が閉会した。今回の欧州理事会はいつもそうだが、とりわけ重要だった。特に、金融問題でのEU条約改正が討議されていた。
 ドイツなどが行ったギリシアなどの金融財政支援で、ソブリンローンや、ユーロ危機について、一応危機の回避が成功した。しかしながら、これらの1100億ユーロのギリシア支援と、4400億ユーロのユーロ圏の基金はともに2013年の期限付きのものであった。
 それゆえ危機の再発防止と、危機管理のために必要となる恒常的制度の導入には、たとえば、ドイツ連邦裁判所が条約の改正をもとめており、その対応策の協議が欧州理事会の目的であった。
 追記
2012.5.8 
 wikipedia日本語版の「欧州連合」の項は、この表記について以下書いている。

 「欧州議会の最大会派だった欧州社会党も、同日本人研究者の指摘を受けて、日本語表記を「欧州同盟」に変更することに関する質問書を提出したことがあるが[2]、欧州委員会の側は研究社英和辞典の用例や、「連合王国(United Kingdom)」および「国際連合(United Nations)」などの例を挙げながら、変更する必要はないと返答した。」
 書面質問書と回答については、掲載されているので、ご一読を。英文であり、国際的にも広く読まれるものだが、日本の学術の知性が諸外国から疑われる、あきれるばかりの珍妙な答弁書である。 
 EUという国際統合組織の質が問われているのに、類例のないEUの法と政治に関するイロハの知識もない研究社の辞書の用例をもってきて何になるのか、その一点をしても、如何にずさんに欧州連合という表記が、不透明に、学術の討議を経ずに採用されたかを、知らしめるものである。EUでは常に透明性と説明責任が重視されるのだが。
 実に書いたもののレベルをうかがえる愚劣な記載だ。

追記 2016.7.25.

 以下を欧州議会欧州社会党からの書面質問と欧州委員会による書面回答を提示します。

資料1 グリン・フォード議員(欧州社会党)からの欧州委員会への書面質問書
 

WRITTEN QUESTION E0138/96
by Glyn Ford
PSE
to the Commission
Subject : Japanese translation of the term ‘European Union’
Can the Commission confirm that its information office in Tokyo is using the expression ‘Oushu Rengou’ as the Japanese equivalent of ‘European Union’ and that this term has, as a consequence, been taken up by the Japanese press?
Is the Commission aware that the term ‘Rengou’ means ‘Association’ and not ‘Union’? Is the Commission aware that ‘Oushu Doumei’ would be a more appropriate term and that this has been used in the only Japanese translation of the Treaty of Maastricht
published by the semigovernmental organization JETRO under the supervision of Pr. Kanamaru, former President of the Japan Association of EC Studies? Is the Commission aware that the term ‘Rengou’ causes conceptual confusion in the Japanese media, when reporting, for instance, on the association
agreements signed by the EU with Central and Eastern European countries, it being difficult to explain how an ‘association’ has association agreements with associates who are not members of the association?
Will the Commission instruct its Tokyo office to use the correct term ‘Oushu Doumei’ and cease to use the inappropriate and confusing term ‘Oushu Rengou’?

 

資料2 欧州委員会を代表してレオン・ブリタン卿からの答弁書

Answer given by Sir Leon Brittan

on behalf of the Commission

22 February 1996

When the need arises for the translation of a new, hitherto unknown, expression into Japanese, the Commission and in particular its delegation in Japan undertake the necessary checks and consultation of language experts in order to ensure that the proposed translation suits the required purpose.

The Kenkyûsha dictionaryJapanese-English)(standard reference dictionary used for translation of modern, in particular official Japaneselists the following entries :

rengô(連合)=combination, union, incorporation, league confederacy

dômei(同盟)=alliance, league, union confederacy

The Kenkyûsha dictionaryEnglish-Japanesgives as translations for the following expressions:

Union 結合(ketsugô),連合(rengô

United Kingdom:連合王国(rengô ôkoku

United Nations:国際連合,国連(kokusai rengô, kokuren

The translation of Englishor other European languageexpressions in Japanese is often difficult and can not be undertaken solely on the basis of an equivalent expression.The above examples can only give an indication of what a proper translation of the word Union would be in Japanese.

 

Two essential problems can be distinguished :

a. Foreign official terms, when translated into Japanese, are in fact translated into Sino-Japanese expressions, i.e. combinations of characters. These characters are, as the expression Sino-Japanese shows, of Chinese origin. Even when the dictionary entry for a given Japanese word, such as dômei, is translated as union at first, the character combination used

may not necessarily carry the same association as the word union does in English.

A particular side-effect of this is that the meaning of a given Japanese word may not cover exactly the same ground as the English word used for its translation. For instance, rengô can be used to translate association in association agreement, but it can not be used to translate association as in shopkeepers’ association. The correct word in this case would be rengôkai(連合会)

b. Expression, such as are created in the Community to give a name to new Europeanas opposed to nationalinstitutions, are by definition new also in the Community e.g. European Commission. This has taken on a meaning of its own, and is now associated with“bureaucracy,

large administration, etc”This is quite different from the meaning associated with

“parliamentary commission”based on the traditional meaning. Similarly, in Japanese, the words used to translate European Commissionôshû iinkai,欧州委員会)are not self explanatory, but must be explained and understood as an expression ‘sui generis’.

The translator of ‘Europeak’ expressions into Japanese is therefore faced not only with the difficulty mentioned under a., but also with the necessity to invent a new Japaneseor Sino-Japaneseexpression that is as close as possible to the intended meaning of the European words.

| 児玉昌己 | - | 00:30 | comments(2) | trackbacks(0) |
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日本語ではallianceもconfederationは連合であり、連邦federationという意味を持たない。
 ヨーロッパ統合の本質である主権的権限の大規模な譲渡はa federal unionの形成を目的とする側面を持ち、それがゆえに反EU勢力の強い反発を受けているところです。
 EUはallianceやconfedeearationの範疇を超えているというその側面の意味が訳出できないということです。
たとえば日本語ではUNは国際連合EUを欧州連合と表記し、その組織原理の大きな相違、識別もつきません。
 単に国際協力機関にすぎない国際連合と大規模な主権的権限の加盟国による積極的同意による国家統合組織のEUの両者の差は、権限関係を見れば歴然としているということです。
また本場の欧州ではEUにおけるunionの使用法では、通貨同盟でも、関税同盟でも、政治同盟でも、仏語でも英語でも一貫した使用法がなされているのに対して、わが国では駐日EU代表部を通してですが、恣意的に 本体を、欧州連合とし、それを構成する通貨同盟、経済同盟、政治同盟と使い分けています。
 EU本体とEUを実質化する各政策領域の構成要素を身勝手に使い分けるなどの使用法は、存在しないということです。
 すでに1996年に、EUの認識を誤る誤訳として、欧州社会党の議員から、欧州連合の使用停止と欧州同盟の採用を求める書簡が出ています。以下を熟読されることを期待します。

「欧州連合」という日本語表記問題再訪──EU 研究おける言葉と認識の問題

http://doors.doshisha.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=UC12166037&elmid=Body&lfname=038003020002.pdf
| 児玉昌己 | 2014/01/22 11:49 AM |
私は US citizen です。あなたが言いたいことは、Union とAlliance の密接さの程度についてということですか?

つまり、密接度(統治機構的な権限においてです)が高い順に、日本語で並べると、同盟(EUに対して使うべき)が一番密接であり、同盟(軍事同盟など)が二番目であり、連合が3番目だという主張ですか?

| timothy | 2014/01/17 10:37 AM |









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