児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
<< EU離脱の政治 もう1つの保守党分裂 欧州議会の院内会派ECR(欧州保守改革党)の英議員団分裂 | main |  若竹酒造(田主丸)の蔵開きに出むく >>
小選挙区制度を固定化し、厖大な死票を積み上げ、抜本改正をなし崩しにするアダムズ方式に反対する
 選挙制度改正は焦眉の急である。実際、本質的な制度改革の中長期的議論も必要だ。
 そしてアダムズ方式が何かまともなもののように喧伝される。
 果たしてそうだろうかな。
 云われているアダムズ方式の向こうにあるのは何かね。

 アダムズ方式は都道府県の人口比率を反映しやすいのが特長で合理的な方法といわれている。
 「衆院選の選挙制度改革 「アダムズ方式」は一票の格差を埋められるのか」THE PAGE 222日がそれだ。

 だが、何をもって合理的というのか。
 これは、有権者の投じた票の半数以上が虐殺される1人区を本旨とする小選挙区制度を、未来永劫、固定化する極めて危険な方式である。つまり、わが国の選挙制度の、有権者の意思を体現した抜本的改正から遠ざける方式である。それがゆえに、まったく支持できないのである。

 小選挙区を前提とし、人口比で定数を定めれば、人口の大きい東京、神奈川、埼玉などが議席を多数持ち、少数県では限りなく議席がゼロに近づくというだけのことだ。しかも、10年ごとの定数調整という。だがそれは、小選挙区内での議席の調整にしか機能しない。
 1票の格差どころか、全選挙区にわたる小選挙区制度の死票問題こそ憲法違反というべきもので、前々回2012年の総選挙では、小選挙区で投じられた票では、全体で実に56%、3730万票という膨大な死票がでた。この問題については、小選挙区間の調整方式に過ぎないアダムズ方式では、まったく問題にもされない。
 この制度は、一見1票の格差を解消するようにみて、さらに徹底して民意の合法的虐殺状況を固定していく制度である。妖怪映画、「アダムズファミリー」並みの時代錯誤のお化け屋敷と私が評すゆえんである。
 ちなみにアダムズ方式とは19世紀の第6代米大統領(1767-1848)の名からきている。200年ほど前に考案された方式で、小選挙区制度を前提にし、それに割り振るために使用する限り、まさに古色蒼然という方式である。
 
19世紀の時代錯誤の封建遺制を持ち出してこれを改革というのかね。
 問われているのは、21世紀の衆院選挙制度改革である。
 しかもそのアメリカ、下院任期はわずかに2年、人口が3億を超えても、90年近く不変の下院議員定数435では、100万に2人も確保できず、国民の声もはるかに遠い。それがゆえに、格差全開で、人口比で15%が困窮に喘ぐ貧困超大国である。米貧困者4600万人=過去最多、人口比15―2010914  
 行政府が圧倒する大統領だが、選挙は下院選挙同様、いまだに植民地遺制の驚くなかれ、直接選挙でなく間接選挙(投票総数でゴアに負けていたあのブッシュJrを生んだこともある)で、その共和党の有力候補は、特定の宗教をもって、その入国を禁じるなどと大衆迎合丸出しの、憲法感覚を著しく欠く不動産王だ。
 こと国家の政治を決定する選挙制度では、米国は封建遺制の中に眠りこけているという認識を持つ必要がある。
 日本に戻せば、定数是正のたびに地方の代表は削減され、ただでさ、インフラ、モノ、カネをすべて集中的にそして圧倒的に持っている大都市部の議席が積み上げられるだけではないか。そして地方は代表を失い、確実に死滅していく。
 そしてその行き着く先は、イギリスが苦しんでいる完全小選挙区制度へのシフトである。
 比例は民意を完ぺきに反映し、しかも小選挙区制度の厖大な死票を軽減する意味を持っているが、その削減も佐々木調査会さえも提言している。
 メディアが社説を掲げるとすれば、現行の半数を超える国民の声が合法的に死票として抹殺される小選挙区制度の上に立ち、その強化に手を貸し、地方創成どころか、地方総殺に機能するだけの佐々木調査会の答申そのものを問うべきなのである。
参考ブログ
2015.03.11 Wednesday 日経よ、日本の国会議員定数は並? 過小ではないかね 
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3813
2015.02.14 Saturday
アダムズ方式? 「アダムズ・ファミリー」なみの古色蒼然の、子供だましの衆院選制度改革

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3804
2014.12.16 Tuesday
 自民圧勝の虚と怪 これが小選挙区制だ 得票と獲得議席の著しいかい離 全有権者の25%
の支持で76%の議席
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3778
2014.12.18 Thursday
 産経の意味不明の選挙制度関連記事 で、山本記者よ、何をどうしたいのかね

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3780
2014.10.13 Monday
 相変わらず時代錯誤の反民主主義の比例定数削減を唱える民主と維新

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3751
2012.09.02 Sunday
 大手新聞社の政治部記者の選挙認識のレベルに驚く 1-4 毎日用語解説と日経坂本英二編集委員にみる選挙解説の問題 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3259
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3260
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3262
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3262
2012.12.18 Tuesday
これが小選挙区選挙の実態だ 上下 死票は半数以上、3730万票、死票率は実に56.0

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3355
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3356
2012.01.30 Monday
比例80削減は、民意の「扼殺」 1-5 衆参の議席は国権の最高機関の機能の保障であり、財政改革の対象ではおよそない
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3063
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3064
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3065
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3066
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3067
2011.10.04 Tuesday
国会議員定数国際比較についての本ブログ記事への反応
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2947
2011.10.07 Friday
 ウォール街デモに思う 上 貧困大国米市民の悲鳴
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2950
 
| 児玉昌己 | - | 08:49 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 08:49 | - | - |









トラックバック機能は終了しました。

このページの先頭へ