児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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田舎政治家が米大統領になる可能性への世界的危惧 孤立主義に向かう米
  政治学には、国家と国民そして政治家の関係について述べた至言がある。
   「政治を軽蔑するものは軽蔑に値する政治しか持てない」、と。 もう1つは、「国民は、その質以上の政治家や国家を持つことはできない」というものである。
 アメリカの共和党の大統領候補指名争いで独走しているトランプだ。この政治家の発言を聴いていると、まさに上記の至言を思い起こす。
 すなわち田舎政治家の登場で、戦後70年をリードしてきた米国が、田舎国家に退化するということである。
 米国が世界国家であることをやめ、新孤立主義に向かい始めたということだ。
 ブッシュジュニアに続いて、こんなレベルの政治家を大統領候補として共和党が送り出しているということこそ、国民も国家も、余裕を失ってきたことの証だが、かくも国際感覚のないポピュリスト政治家もいない。
 しかも大統領の最有力候補というから恐れ入る。
 おそらく外国語の素養もまともにないだろうし、外国に友人を持つとか、外国にも意味のある形で出かけたこともないのだろう。
 かつてNHKの解説員が米下院議員の国際感覚について触れ、その半数はパスポートも持っていないということを口にしていたことがあったが、この不動産屋のお金持ちは、国際感覚において、おそらくそのたぐいのものだろう。
 日米安保と、米韓安保の解消を口にし、日本の核武装まで口にする有様だ。彼が当選するとは考えられないが、民主党がイスタブリッシュメントを絵に描いたあのヒラリー・クリントンでは、万一の場合のことも我々は考えておく必要があるだろう。
 もっとも、米国の戦後の基本方針を大転換することの影響の大きさについては、無知なる憂さ晴らしの有権者の意識はさておき、国務省、国防総省など政府機関も熟知している。
 それゆえ、彼が大統領に選出された場合でさえ簡単には動かないと考えられる。なにより、イスラム教徒の入国を禁止するとか、ブッシュ政権下で行われ、中東での対米不信を強めた、拷問、水攻めを復活するなど、人権と憲法感覚自体を疑わせる発言を連発しているのだから。
 トランプが無能な孤立主義を決め込めば、国際関係に悪影響が出ることは必至だ。
 米国外交が下手を打つ場合の影響については、我々は知っている。
 実際、国連を無視し、独仏を「古い欧州」と痛罵し、英首相ブレアを誘って、私怨というべきフセインつぶしを断行し、あげく統治機構を喪失させ、現在のISを生み出したブッシュの事例や、シリア介入の必要時に公約に反して無策を決め込んだオバマの中東外交の大失敗が現状の中東の大混乱を招いた事例がある。
 さらには、オバマ米外交の無策が尖閣に押し出す中国や、クリミアへのロシアの軍事侵攻を許すことになった。それで我々は米外交の影響の程度を経験済みである。
 米国は、そして世界は、トランプ選出となれば、そんな事態の再来を経験することにもなりかねない。
 またテロリスト集団やテロ支援国家に隙を与えることにもなる。
 それを考えるだけで、トランプを選出することのツケは、高くつくどころの話ではなくなる。
 わが国の安保反対論については、わが国の左翼陣営も今までのように、米国の傘の下で安易にできたように、安直なことは言っておれない。腹をくくっていくしかなくなる。
 わが国の防衛の根幹にあった日米安保の解消、実は80年代まで、左翼陣営は多くそれを主張してきたのであるが、安保解消の後、日本の防衛をどうするかということをである。
 日米同盟が解消され、核の傘を失えば、無法国家や覇権国家に対して、何をもって対抗するのかということも実践的に考える必要がある。
  21世紀にあっても共産党独裁のもとにあり、言論を封殺し軍拡と覇権に走る中国や、縁もゆかりもない「共和国」を僭称しつつ核開発に狂奔する3代世襲の金王朝の北朝鮮が跋扈するアジアである。
 それを前に、まさか非武装中立をとるなどということも、もはやありえないことである。
 憲法前文がうたう「諸国民の公正と信義に信頼して」など、到底期待できない状況なのであるのだから。
 トランプの脅威は、韓国も同様だろう。いやこちらの方が我々より百倍大きいだろう。
 米国に国家を救済されるという歴史にありながら、自由と民主主義の陣営にいることも忘れ、中国にすり寄るなどしていたこの国家こそ、北朝鮮の脅威に真っ先に曝される。
   この国の無責任な北朝鮮擁護派の反米野党の動きも、フォローする必要がある。
 この国の特に左翼は、米国の孤立主義回帰の傾向については、内心、「時はきた」というのではなく、無責任な反米、反権力の言説が、今後軽々にできなくなることへの恐怖があるのかと推測される。
 また対外的にも、対日不信にもとづき、今のところはあり得ない、日本の核武装の動向にもおびえることになると思われる。
 その意味では、米国なき場合の国家政策が、かの国にも、我が国同様、問われ始めたということである。 すなわち、あらゆることが起り得る状況を想定し、これに対処すべくシュミレーションしておく必要があるという時代に入りつつあるということだ。
 トランプに戻れば、その世界観について、当事者である米国の最有力紙ニューヨーク・タイムズが26日に出した記事見出しを掲げておこう。
 「米国第1主義、他のすべてのものは金を払え」 America Comes First, and Everybody Else Pays
 もとより、ここでいう他のすべてのものとは、アジアの同盟国家だけでなく、欧州、すなわち、EUNatoについても同じであり、我々はコミットメントを再考すると言っているのである。
 「もう戦後と」いう言葉が1960年代半ばに流行った。そして、戦後71年を経た2016年にして、いよいよ「無敵の」米国の時代、すなわちそれに支えられた戦後は、真の意味で終わるという予感を持たせる大統領選挙での田舎政治家トランプの登場である。
 参考記事
In Donald Trump’s Worldview, America Comes First, and Everybody Else Pays. MARCH 26, 2016 The New York Times.
2006.07.27 Thursday
 歴史から学ばない盧武鉉政権 
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=242
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=245


 追記 4.20.
 なお、米大統領候補者トランプの政治家としての資質について、その醜悪さ、愚劣さを、英有力紙Financial Timesの記者フィリップス・ティーブンスが記事を出し、Jbプレスが秀逸な翻訳を掲載している。

以下がそれだ。
「トランプ現象を笑えない欧州 議論を非難に、事実を偏見にすり替えるポピュリストたち」2016.3.15JBプレス。なお原タイトルは Populists replace argument with blame, facts with prejudicePhilip Stephens, Financial Times. March 10, 2016
   こんなことが起こるのは米国だけだ。ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補指名を獲得しようとする中、ほかの国々は、困惑したり、唖然としたりしながら見守っている。友好国の反応には、見下したような雰囲気がかすかに混じることがある、と言って構わないだろう。国のトップの公職を目指す人物が自分のペニスのサイズを公の場で自慢するなどということは、目を見張るほど低俗な米国をおいてほかにどこで起き得るだろうか?
| 児玉昌己 | - | 22:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
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