児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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米大統領選挙で「不実の選挙人」の存在を知り驚く

 米大統領選挙やトランプをどう思うかと質問を受けるが、最近は、日本の政治についてもだが、Brexitの分析で手一杯というのが正直のところ。通常の業務に加えて、論考執筆や講演依頼もあり、時間に追われる毎日である。

 ただし、あれもこれもと八方知ったかぶりで話して、墓穴を掘るものも結構いるようで、そうした手合いにはなりたくない。

 ただし、トランプについては、いくつかすでにブログしている。米大統領となる可能性があるから、放っては置けない。

 しかし彼が兵役の義務を果たしてこなかったこと、それでいてモスレムの米兵遺族を中傷したことなど、米国人ならずとも、不愉快極まりない。

 そして今日のブログのテーマだ。 

 政治学者ゆえ米大統領選挙制度には当然関心がある。選挙は政治を決定的に影響づけるのは、英独立党UKIPの事例を引くだけで十分である。

 UKIPは下院(定数650)でわずかに1議席で、比例制を採る欧州議会(同751)でイギリス選挙区定数73では、22名もいるという事実があり、すでに本ブログで何度も、紹介したとおりだ。

 米大統領選挙は直接選挙ではなく、前近代的な間接選挙である。各州に一般の州の有権者がその名も知らない選挙人団がいて、民主共和両党候補で、1票でも多く得た党に選挙人団は投票することになる。

 全く封建遺制も甚だしい遅れに遅れた前近代の選挙制度を21世紀に入っても使っている。これだけでも米国の政治後進性がうかがえる。

 今回、南部ジョージア州の共和党の選挙人団16名の1人のベトナム系米人に、11月の本選挙時に、トランプには投票しないとする造反者が出たということだ。すなわち、トランプは異常で、国を率いる資格がないということだ。

 トランプなどが候補者となること自体米国政治の危機であるが、危機にはこうした特殊なことが起きる。

 党の候補以外に投票する選挙人は「不実な選挙人」(faithless electors)と呼ばれるようだが、不実な選挙人は1948〜2004年に9人しかいないという、読売紙のデータも貴重だ。私にしてみれば、9人もいたのかということだが。

 通常、一般有権者は通常、気にも留めない選挙人だが、彼/彼女らは、例外なしに自動的に、州で勝利した自己の支持政党の、候補者にすべて票が投じるものだと理解していたのだ。

 例外に関する記載を米選挙を扱った和書で見たことがないから、わが国の米国政治研究者の多くも、この「不実の選挙人」の存在をほとんど知らなかったと思われる。

 それにしても、それでは選挙人とは一体何か。自分が投じた一票が、自分の意思と全く無関係の選挙人を介して、 ゆがめられる間接選挙が何故に今存在し続けるのか。

 米国の制度をほめあげ知った風に語る、米国だけの経験で美化して語る知識人もいるようだが、この一点を採っても、米国の後進性を知るべきなのである。

 この異常な、制度での異常事態。

 遅れに遅れているという米国の前近代的間接大統領選挙。これを機に、直接選挙に向けてどうして制度改革に取り組まないのか、といぶかしく思うのである。

 実際、投票総数が、選挙人によって、ゆがめられる場合もある。2000年の大統領選挙では、ブッシュが選ばれてゴアが負けた事例がある。一般投票総数ではゴアが勝利していたのであるのに。大量破壊兵器はないとする国連調査を無視し、まさに私怨によるフセインつぶしなど、統治の受け皿さえ喪失するという、中東での米外交の世紀的大失策も防げていたかもしれない。これはブレアさえ巻き込み、EU政治にも軋みを生じさせた。

 銃社会に苦しむ米国であるが、進んでいるのは、わずかに理数系のみであるとの感を深くする。

 ともあれ、トランプの敗北を望んでいる。

 参考記事

共和党の州「選挙人」、トランプ氏への投票拒否読売新聞 84

参考ブログ

2016.03.30 Wednesday 田舎政治家が米大統領になる可能性への世界的危惧 孤立主義に向かう米

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4005

 

追記(2016.9.1.)

関連英文は以下

Republican threatens to deny Trump Electoral College vote

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/290288-electoral-college-member-may-not-vote-trump

August 03, 2016, 02:33 pm By Mark Hensch

 

 

 

 

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