児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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金融、財政面から確実に進むEUの統合深化とEU統合の2スピード化の加速 上

  EU では将来構想を巡り2スピード案がより明確化しているが、それにポーランドなどが抵抗している。以下がその記事だ。

Poland’s Kaczynski warns two-speed Europe leads to ‘breakdown.’ EurActiv.com with AFP ‎201729

 表向きは現れず院政の形で君臨するのが、ポーランドのカチンスキーである。

 彼が率いる現在のポーランドの政権与党の「法と正義党」は、難民政策で強硬主義を主張し、将来を不安視する保守的有権者の心をつかみ、2015年に8年ぶりに政権を奪還した。

 だが、政権樹立後、憲法裁判所の違憲審査に関し、違憲裁判の要件を自党の政策に有利に改正(改悪)し、最高裁の人事にも容喙し、司法権の独立を危うくし、国内民主化と相反する政治にまい進し、EU理念の1つである法の支配を脅かしているとEUの側との緊張を深めている。

 ちなみに、そのEUの欧州理事会の議長トゥスクは、ポーランドの前政権の市民プラットフォームから出ており、2期目の継続問題が浮上している。ポーランドのカチンスキーは、トゥスクの再任は問題外だと反対している。

 本来ならば、EU大統領とも訳され28か国を擁するEUの顔である欧州理事会の議長職にトゥスクが就任している事実は、どれほど国家としてのポーランドの宣伝に役立っているかである。

 しかるに、トゥスクは、カチンスキーにとって反ポーランドに傾斜するEUの側に立つ政治的な敵でしかない。

 本題に戻せば、ハンガリー、ルーマニアも民主主義について似た状況である。

 ポーランドに対して、EUは、EU条約の民主主義擁護に反する国家に対する制裁規定である第7条の適用さえ検討しているほどである。

 欧州議会の議員の中には適用を逡巡すべきではない、もっとEUは圧力をかけるべきと主張するものもいるほどだ。

 旧東欧圏のポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアの4カ国は、現在EUのコンテキストでは、「The Visegrad group」という表現で語られることが多いが、これらの国家は、スターリン主義的独裁国家の時代を長く経験しており、民主主義の歴史が浅い。

 EUに加盟してまだ15年にもならない。

 まだ近代国家の形成途上というべきも、こうした原則を十分に享受せず、ポーランドに至っては、その必要性をむしろ抑える勢力が国家経営にかかわっている。

 他方、EUには、民主主義、法の支配、人権の保護という重大な原則がEU条約に規定されている。

  しかもそれらの諸国は、EU加盟国ではあるがEUのユーロ圏外にあり、その周辺部として、存在する。 言い換えれば、ユーロ圏に入る能力をいまだ持ちえないとされているということでもある。

 その加盟国にとっては、ユーロ圏で進む金融財政統合の深化をうけて、2スピードになるのは、当然だ。

 国家の統治のシステムを打ち砕くのが政治同盟である。

 時に数百万単位で国民に血と死を求める軍事外交など国家主権の統合は、最も困難な課題だが、経済通貨同盟もそうである。通貨は国家そのものでもある。

 EUでは、金融経済財政といよいよ統合の深化で明確になってきた。財政同盟は、サッチャーがナショナリストの側から喝破しているように、国家の財政主権の根幹にかかわる課題で、まさに政治同盟そのものである。

 EU28カ国では、現在19カ国が欧州経済通貨同盟(EMU)の完成に向けて努力している。

 だが、ギリシャ債務危機に見られる、ユーロ圏は、金融政策と財政政策の所管が前者は欧州中央銀行に、後者は加盟国にと分断されており、本質的な脆弱性を抱えている。

 国家にあって、金融と財政の政策権限は、例えばわが国で言えば、日銀と政府とが所管しており、日銀の黒田と首相安倍の関係を見るように、両者は有機的に連携している。

 翻って、この分断状況を抱えるEUでは、両者の一体化は急務となっている。例えば、欧州債務危機の反省に基づく域内の金融安定策として「銀行同盟」の実現は急務となっている。

 銀行同盟の眼目は、銀行監督、破綻処理と預金保険制の整備にある。

 さらに金融危機の際に銀行同盟にとどまらず、EUはユーロ圏危機の背景となっている、各国の債権の金利格差や国家のファンダメンタルスの格差を背景とした銀行の破たんを防ぐために、また積極的には加盟国の経済格差の是正のために、各国の競争・財政政策を監視し、統合的に運営する機関の創設が次なる喫緊の課題となる。

 EUでは、特にユーロ圏を揺るがした財政危機危機の再来を避けるためにも必然的に財政同盟を強化する必然性を持っている。

 具体的に言えば、ドイツのショイブレ金融相が依然として抵抗するEU共同債の発行、EU財務省の設置、欧州理事会にあるユーロ・グループに相応したユーロ圏予算を監督するユーロ圏議会の創設となっていく。

 現在EUではその議論が進められている。EUでは、特にユーロ圏を揺るがした財政危機危機の再来を避けるためにも必然的に財政同盟を強化する必然性を持っている。

 具体的に言えば、ドイツのショイブレ金融相が依然として抵抗するEU共同債の発行、EU財務省の設置、欧州理事会にあるユーロ・グループに相応したユーロ圏予算を監督するユーロ圏議会の創設となっていく。

 現在EUではその議論が進められている。

 しかるに、わが国ではEU崩壊論、EU統合の終焉論が支配的である。 

 その1つが遠藤乾の議論である。ジャック・ドロール論では評価すべき業績を持つ遠藤乾は、『統合の終焉』(岩波書店2013年)を出した。

  彼は、その中で「大文字の欧州統合は終焉した」という。だが、私にすれば、全くナンセンスなEU認識である。

 EUは終焉どころか、財政同盟という政治同盟は確実に進みつつある。

敬称略 

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