児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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英解散総選挙を対EU関係でどう見るか 3つの視座

 九大名誉教授で懇意にさせていただいている数学者の吉川敦先生から以下どう考えるかを3点、問われたので、私見を披露しました。すこし書き足しています。

 1)総選挙の結果は、英国の交渉力を増すものなのでしょうか

 それはイギリス内部のEU離脱への抵抗を鎮めるという意味でのみ、意味を持ちます。
 対EU関係ではいえば、メイの勝利によってメイ政権の基盤は安定するでしょうが、
基本的には対EU交渉力が強化されるなどありえません。むしろ名首相の基盤の安定化によって、ハードブレグジットの姿勢に傾斜し、EUとの交渉は難航し、イギリスが打撃を受けることになるでしょう。

 あくまでも、解散、総選挙そしてその結果は、すべからくイギリスの内輪の話です。

 EUが大切にし、譲らないとしているヒト、モノ、カネ、サービスの自由移動の原則を、メイの勝利で崩されるなどありえません。

 一部にそう言う報道がありますが、EUの譲れない原則と、イギリスの立場の決定的劣勢状況を知らないもののコメントです。EUは上記の4つの自由の原則をその根本的基礎とした連邦組織であり、EUと主要加盟国がその原則を譲ることなどありません。

 なぜなら、イギリスの「つまみ食い」を許せば、EU加盟各国に波及します。それはEUの崩壊につながります。

 逆に保守党が議席を大きく減らせば、EU離脱回避という、今現在ではありえない動きになる可能性があります。ただし労働党が全く魅力を欠いているので、その可能性は、特にイギリスの前近代的な小選挙区制度ではありえないでしょう。もし、保守党が惨敗した場合も、イギリスの混迷が続くということになります。

 すでにイギリス内外資系金融機関の脱出が始まっていて、世界最古の再保険会社ロイズもブリュッセルに本部を移す決定を下しました。 

2)北アイルランドや、スコットランドの分離傾向に歯止めがかかる方向になるのでしょうか。

 これも基本的には歯止めがかかることはないということです。もっともスコットランド民族党が大きく議席を減らせば別ですが。

 北アイルランドやスコットランドの利害がEU離脱で減じられれば、当然反発するでしょうから。

 すなわちEU解体ではなく、イギリス解体に扉を開くものです。その意味で、イギリスのEU離脱は、保守党の反EUナショナリストや英独立党のファラージュが描くバラ色の将来の始まりではおよそないとみています。まさに「世紀の愚行」といえます。イギリスの国力をそぎ、国益を決定的に損なうでしょう。

 国家の将来をギャンブルにしたキャメロン前首相は対ナチ融和政策で知られるチェンバレンを超えて、愚昧な首相としてイギリス政治史に名を遺すでしょう。

 ただし、EU離脱を主導した富裕なエリート層は何であれ、生き残るでしょう。その富裕層に属する前首相でいえば、億単位となる自伝を準備中です。首相職はもとより、早々に議員さえ辞職し、早い晩年を迎える彼は、高額な年金と合わせて、その生活はいささかも痛まないでしょう。

 結局、EU離脱に反対した48%の人々も含め、国民が愚昧な政治による打撃のつけを払うことになります。

 イギリスのEU加盟は1973年です。EUは創設が1952年。欧州石炭鉄鋼共同体でいえば、それから20年以上もイギリスなしの状況を経験したことをもう一度思い出すべきでしょう。

 加盟国政治へのEUの影響は巨大で、今回のメイの発表もEUを理由とするものでした。そして、株もポンドも大きく下振れしました。すでに2年前でいえば、200円ほどしていたポンドは130円台後半に下落しています。ポンド価値の下落による深刻なインフレが広がっていくでしょう。

 上述のごとく、世界最古の再保険会社ロイズが本部をブリュッセルに移す決定をしたことにみるように、すでに在英外国企業のエクソダスは始まっています。

 

3)欧州は、仏独英と重要な選挙が続きますが、フランスの結果が引き続く選挙に影響を及ぼし得るのでしょうか。

  すでに御承知の通り、極右勢力は、オーストリアの大統領選挙、オランダの総選挙で極右が期待していた成果を収めていません。ルペンにとっては期待が大きかっただけに衝撃だと思います。

 フランスについていえば、マクロンの登場で状況は様変わりしています。

 マクロンやフィヨンが2位につけても、決選投票では極右ルペンは勝てません。ルペンは欧州議会に対してフランス司直がEU予算の、例えば秘書やボデーガードへの不正流用疑惑で、免責特権を停止するよう求めており、決選投票直前に欧州議会は彼女の免責特権の停止に関する聴聞会を開く意思を明らかにしています。

 仏大統領候補ルペン氏、決選投票直前に欧州議会招致か 資金疑惑でロイター 2017 04 17 

もとより彼女は政治的策謀だと非難していますが。

 国内では国民戦線FNが銀行融資を得られない状況です。

 実際、 FNは2014年、ロシアの銀行「第1チェコ・ロシア銀行」(その後破産)から約900万ユーロ(約11億円)の融資を受けたと報じられています。

 <仏大統領選>「EU離脱で国民投票、公約に」ルペン党首毎日新聞 4/11

 クリミア占領でウクライナとの関係を悪化させている、権威主義的独裁を深めるプーチンロシアから資金を得るなど、EUの側からは許されないことです。融資はロシアの政治的意図があることは明白で、それゆえにEU切り崩しのカードとしてFNが使われているといえるわけです。

 国民戦線など極右についていえば、冷戦下のソ連の時代の反共右翼では考えられなかったことですが、モスクワとも資金提供を受けるなど、そのいかがわしさが伝えられており、確信的ルペン支持者を除いて、彼女にとってはアゲンストの風となっています。

 第一次投票で、マクロンが一位になれば、決選投票はマクロン圧勝が決定的となり、形だけのものとなるでしょう。これについては5月に現地入りし、欧州大学院大学同窓のパリ政治学院のクリスチャン・ルケンヌと意見交換します。 

 以下は、ロイターの分析です。
決選投票では、マクロン氏対ルペン氏の場合、63%対37%でマクロン氏勝利、フィヨン氏対ルペン氏の場合、59%対41%でフィヨン氏勝利となる見込み。
仏大統領選の決選投票、マクロン氏63%・ルペン氏37%=世論調査 ロイター2017 04 13

2017.04.03 Monday英のEU離脱Bexit をタイタニック沈没になぞらえた動画

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4225

 

 

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