児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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マクロン政権成立 進む総選挙準備 仏大統領選挙決選投票の現地調査から一週間

 短期の仏英の出張で、疲労感の残る多忙な一週間が終わろうとしている。

  駆け足でフランスの大統領選挙の開票作業を視察しロンドンを回って帰国して、1週間。

 まだ、どこかに疲労感が残っている。昼夜逆転を体験し、しかも帰国しても、通常の講義や会議、ゼミが当たり前のこととして待っている。

 ただ大学の教員は単に教育だけでなく、調査研究も同様に重要である。研究者としてのプライドと責務があるからこそ、いい歳をして海外にも出かけうる。

 むしろ歴史的局面で、その現場に立てていることで、欧州政治の研究者としての喜びを強くする、そんな出張であった。大学と所属の学部には感謝である。

 実際、今回フランスの大統領選挙は、専門とするEUの将来を左右するという意味で、ここ20年で最も重要なイベントであった。

 しかも今回は、開票の実際を実見できるということで勇んで出かけたのだ。

 マクロン選出のその後のフランス政治を書けば、彼は、直ちに組閣に取り組み、それを発表した。

首相は、共和党からの脱党組ル・アーブル市長で、マクロン同様、国立行政学院(ENA)出身者のエドゥアール・ フィリップ氏(46)を指名。公約通り、男女ほぼ同数で内閣を組織した。

 内閣はフィリップ首相、及び18大臣、4名の副大臣からなり、所属の政治選好の内訳では、左派6、中道3、保守3、市民派11

 またそれにとどまらず、ルペン勢力と真っ向から勝負するように、EU重視を打ち出し、仏外務省の機構改革と名称変更を実施した。

  すなわち、同首相はEU担当副大臣を大臣職に格上げし、欧州議会議員(欧州自民)を務めたMarielle de Sarnez女史を欧州(EU)担当相に据えた。ケドルセLe Quai d’Orsayとして知られる仏外務省の名称は「ヨーロッパ」を加え「ministère de l’Europe et des Affaires étrangères (MEAE)「欧州・外務省」と変更した。そして、オランド政権の防衛大臣だった重鎮Jean-Yves Le Drianを就任させた。また職務については、欧州EU担当相と所管を分担する形にした。 

これは、マクロン大統領の親EU姿勢を反映し、フランスの対EU関係を重視する姿勢を徹底したといえる。

 総選挙関連で言えば、4月にはEn March(前進)という運動体をLa République en Marche(共和国前進)と名を改め、この新たな政党をもって、来月に迫った総選挙に臨むことになり、下院議会の候補者選定が進められた。

 フランス下院議会である国民議会の定数は577だが、すべての選挙区で候補者を擁立する時間がなく、512日付AFPは、仏大統領の政党、共和国前進(LREM)」は11日に下院選の全選挙区577(欧州のフランス領は535海外領42)の内428人にとどまったこと、しかも、政治経験のない候補と女性候補がそれぞれ全体の半数を占めると、報じた。

 それでも、この政党への支持は高く、最近の世論調査では、同党は、57日時点から6ポイント支持を伸ばし32%、支持者が競合する中道右派の共和党は19。これは議席にしてマクロン新党が国民議会で280-300で過半数を制する可能性があるという、世論調査とはいえ、驚きの数字である。

 https://twitter.com/LesSondages2017

わが国では新大統領の未熟さを指摘する論調が多い。だが、政治は常に若者によって新しい時代が切り開かれる。わが国が異様に保守化してしまっている。日本の政治には、マクロンのようなこうした若者がほしい。

 しかも、マクロンは政治の素人ではない。イタリアのレンツィ前首相とも懇意であり、またオランド政権下で経済相を経験し、ドイツ社民のガブリエル外相とも、保守のショイブレ、メルケルとも極めて近い関係を形成しており、凡そ素人ではない。

 私はEUの専門家であり、フランス政治プロパーの研究者ではない。それゆえ専門家に叱られるかもしれないが、あえて私見を言えば、主要政党外からマクロンが当選したということは、1958年のドゴールをもって始まるフランス第5共和政以降、最大の政治的大変革の始まりだと考えている。

 旧来の共和党と社会党の2大政党による統治が完全に終わりを見せ始めているということにある。

 なお敗北したルペンは577議席中、現有議席は2議席であるが、15議席が目標といっている。

 さほどにルペンの国民戦線は下院では泡沫政党である。それもこれも小選挙区制が故である。

 排外主義者ルペンを全く支持するものではないが、イギリス同様、小選挙区制度自体が、民意をいかにゆがめる選挙制度であるかは、大統領決選投票で、34%余、千万票を集めたルペンの国民戦線の数字を前にすると、理解されるはずである。

 小選挙区制度は政治を安定にする制度と教科書にある。カネもかからないともいう。

 ところが、膨大な死票の上に成立する政権は、短期的には安定しても、時間の要素を考えれば、政治に生かされなかった市民の怨念を蓄積し、政治を中期的に緊張させ、敵対の政治を極大化していく制度でしかない。

 教科書の小選挙区制度についての記載はそれゆえ誤記というに等しく、反民主主義的制度であると書き換えられる必要がある。

 参考記事 

France's Macron selects his government from left, right and centre The Guardian, 17 May 2017.

Europe leapfrogs foreign affairs in new French government.EURACTIV.fr ‎2017‎‎5‎‎18‎

Polls suggest parliamentary majority within reach for Macron EURACTIV.com with Reuters

参考ブログ

2017.04.23 Sunday 誰が2位に来るのか ルペンかマクロンか、EU政治を決する仏大統領選挙第1次投票始まる

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4234

2017.04.24 Monday極右ルペン敗れたり マクロン第1次投票、勝利 2017年仏大統領選挙

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4235

2017.04.25 Tuesday 2017年仏大統領選ルペン敗北 追記 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4236

 

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