児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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反EUの亡霊、英独立党のファラージュ、ドイツAfD党の集会に徘徊す

 英ガーディアン紙9月7日付はナイジェル・ファラージュが総選挙を前に、ドイツ入りし、AfDの集会に顔を出したと報じた。

 この集会にはヒトラー政権の財務大臣Lutz von Krosigkの孫娘が出ていたことと合わせて、ガーディアンの注目を引いたようだ。

 この記事見出しで、理解できる人は相当の欧州政治通だといえる。少し解説を加えてみよう。

 まず、ファラージュは、イギリス独立党の元党首で創設者である。

 イギリス独立党(UKIP)という名自体が、イギリスのEUからの独立を意味しており、反EU政党であることがわかる。この政党、EUがイギリスの主権を奪っているという認識を党名にするというほど、EU嫌いの政党だ。

 ただし、先のメイ政権のブレグジットを問う総選挙では、650議席の定数のうち議席ゼロであった。メイ政権を支える保守党も労働党に食われて、勢力がむしろ意図とは違い、後退した。

 もととも完全小選挙区制度の下では、15%程度の投票があっても、議席には結びつかない。我が国の皮相かつ軽薄というべき政治の教科書がいうのとは違い、膨大な死票を出し、政治を不安定にするのが小選挙区制度である。実際、比例が尾ひれでしかない日本はその例で、当初の宣伝されていた2大政党にはなっていないし、仮になっても、野合政党の形成で、民進みたいに、右か左かさっぱり分からない、いかがわしい政党となる。

 現代の選挙の原則が民意の限りない議席と政治への反映という観点からすると、全く前近代的な制度でしかない。

 ちなみにスコットランド民族党(SNP)はその典型的事例で、前々回となる2015年には4.7%でスコットランド選挙区で56議席という定数の9割以上を得るという離れ業をやってのけた。特定の地域で圧倒的な支持を得ているが故である。

 なお直近の2017年のイギリス下院議会選挙では、保守317で13減、労働262で30増、SNP35で21減。

 UKIPに戻っていえば、下院で全く力がない泡沫政党であるが、そんな政党ながら、極めて大きな力を欧州で持っている。

 ファラージュであれ、フランスのルペンであれ、国内議会では全く泡沫政党のレベルなのに何故、力を持っているかというと、その答えは欧州議会にある。

 わが国ではほとんどだれも知らないが、この欧州議会、EU28か国を統べるEUの議会であり、定数751。議席は人口比で配分されている。また選挙制度もドント式完全比例制度である。

 近年、欧州議会は、政府代表からなる理事会とともに共同立法権者としてゆるぎない地位を確立している。その欧州議会でファラージュのUKIPも、フランスのルペンも自国の第一党をしのぐ議席を得ている。

 たとえば、イギリスのUKIP20議席、フランス・ルペンの国民戦線も20議席を得て、欧州議会内の極右会派EFDDを率いている。

 ともあれ、そんな反EU主義者のファラージュが、招かれたこととはいえ、ドイツまで出かけ、同じく極右排外主義政党であるADの集会で演説しているのである。

 ファラージュはイギリスのEU離脱運動の首謀者の1人でそれを成功に導いた政治家だったが、彼の妻女はドイツ人で、彼自身ドイツ国籍を取得するのではないかとも一部にいわれているほどである。

 私にしてみれば、イギリスのEU離脱が明白となり、ファラージュがよって立つEUと欧州議会の基盤を自ら崩壊させた今、唯一その声を拾ってきた、民主的な選挙制度を採る欧州議会レベルでの国家横断的政党EFDDの存在が消滅することが時間の問題となっている。

 その意味で、すでにまったく政治的影響力も失ったファラージュがドイツでADの集会に出ていること自体、反EUの亡霊がヨーロッパを彷徨っているということである。

 次に指摘すべきはAfDである。

   AfDは「ドイツのための選択肢」という名の政党である。

 2013年に反ユーロを掲げる政党として登場し、現在は極右反イスラム排外主義運動団体ペギータをその支持に取り込みつつ、その立場を完全に反EUと反イスラム移民へと移している。

 この党は、支持率は14%程度あった。だが、この党が党勢拡大の栄養剤としてきたのが、移民難民問題である。

 昨年16年でドイツだけで史上最高規模となる30万人を超える流入があった。

 だが、今年に入り、資格外の移民の送還が進み始め、国民の間に安ど感が広がり、それでAfDは支持率を落とし、現在同紙によると、8ー11%程度である。

  このAfDでいえば、この9月24日の選挙で5%条項をクリアし、戦後ドイツ政治史上初めてこれを是とし、善としてきた欧州統合とEUに反旗を掲げた政党がドイツ連邦下院(議員定数630、超過議席制で若干変動する)に議席を得ることになりそうだということで注目されているのである。

 いったん5%をクリアすると、比例代表制であるがゆえに、ゼロから、一挙に30から50程度の議席を獲得することになる。

 私事だが、24日のドイツ総選挙にはベルリンに出張し、そのあたりのことも見聞きしてこようと思っている。

 ファラージュのADでの集会をカバーした記事で面白いのは、ナチス財政大臣の孫娘がAfDのメンバーで連邦下院に進出する可能性があるということに加えて、ファラージュ自身がドイツでイギリスのEU離脱ブレグジットが関心にないことに困惑しているということだ。

 この記事を読んで思ったのは、ファラージュもEU政治がさっぱり分かっていないということだ。 

 ドイツにとって英離脱問題は、イギリスが払うべき離婚費用を渋っている程度のことであり、すでに終わった話でしかない。

 考えても見るがいい。すでにEUから離脱することになっているイギリスにとっては、ドイツ政治すなわち、ドイツの総選挙にはインテリ以外、関心がないのと全く同じことだ。 ドイツにとって、イギリスのEU離脱はすでに織り込み積みだということだ。

 それが独仏の関係と英独、英仏の関係との決定的相違である。

 独仏はイギリスがEU加盟を果たす20年も前から、EUの中核としてその前身である欧州石炭鉄鋼共同体の形成に協力した国家である。

 ファラージュの悲しさは、イギリスがヨーロッパの中心であるという思考を維持していることを示している。

 かつて英労働党政権を率いたブレアはイギリスはEUの心臓になると胸を張ったが、およそ心臓ではなく、ユーロ圏外の国家でしかなく、手足というべくも周辺化している。

 その意味では、昨年の国民投票を主導した前英首相キャメロンや、結果的にイギリスの国益に壊滅的打撃を及ぼすhardブレグジッターと全く同じ政治的なマインドでしかない。

 言い換えれば、イギリスからだけでヨーロッパとEU政治をみているもののコメントは、全くマトが外れるということになる。

 ともあれ、イギリスではすでに居場所を完全になくし、あろうことか、ドイツに行って、反EU政党の集会で、現地のブレグジットへの関心度の低さを嘆く。実に、ファラージュのEU認識のお粗末さ、それが印象的だった。

 そしてこの政治家が根っからの人種差別主義者だということを改めて認識させる記事だった。

 蛇足だが、さらに言えば、イタリアには、ソフィアローレンの姪で、ムッソリーニの孫娘アレッサンドラもいて、強烈なナショナリスト政治家であり、欧州議会に議席をもっている。歴史は続くということだ。

参考記事

 Nigel Farage to address far-right rally in GermanyFormer Ukip leader was invited to speak at event held by AfD party by the granddaughter of Hitler’s finance minister. The Guardian 7 September 2017

議院内閣制に接近 久留米大教授 児玉昌己氏 2016/11/20付日本経済新聞 朝刊

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO09753180Z11

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参考ブログ

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