児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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欧州司法裁判所と欧州人権裁判所関係でEUの民主的正統性に関するニュース2本

  今日のブログは、欧州司法裁判所と欧州人権裁判所とEUの正統性に関するニュース。

 最初はイギリス。

 こちらは、後述するポーランドの事例とは違い、必ずしも民主的正当性と直結するわけではないが、欧州司法裁判所がもつEU条約の最終解釈者という意味で重要。

 イギリスのEU離脱も3月29日の離脱日が近づき、EUとの離脱交渉も、溝が埋まらないまま、ノーディールで終る可能性が高くなってきた。

 英のメイ政権は、成立直後から、対EU離脱交渉に当たっては、bad deal no deal 「悪い取引なら、取引なし」 といってきた。特にアイルランドと北アイルランドとの国境での貿易監視問題が、当初から指摘されてきた。そして案の定、最大の懸案事項として、未解決のままである。

 EU離脱ついてはイギリスで離脱反対の巻き返しがみられる。

 スコットランドの裁判所は、EU条約50条に関して、イギリス議会が政府の離脱交渉結果を拒否する議決を下した場合、「一方的な交渉結果の破棄」ができるのかを問う先行判決を欧州司法裁判所に求めたというニュースをEUobserverが報じている。おそらく英政府が離脱の通告を公式に取り下げない限り、無理だろう。議会の議決では済まないと私は見ている。

 話を戻せば、スコットランドで圧倒的な影響力を持つスコットランド民族党(SNP)とそれを与党とするスコットランド地方政府はEU離脱反対である。

 野党のEU離脱に対する立場についていえば、英労働党は、第二回の国民投票はやらないと、当初コービン党首が明らかにしていた。 だが、近々第2回投票の実施について、立場を明らかにするという。

 フェイクというべき離脱強硬派の国民投票で展開してきた主張とは違い、EU離脱の影響が、英経済と市民生活に甚大なものとなるという認識が遅まきながら、広がってきているからである。

 私見を言えば、一度EU離脱してほしい。それで離脱派ナショナリストの浅薄なEU認識が暴かれ、ポンドが暴落し、経済がガタガタとなり、EUのありがたさがわかった時にユーロ発行国として再加盟してほしい。

 ともあれ、すでに5月の欧州議会選挙を前に、すべてが英離脱を前提として、粛々とEU政治は動いている。

 

 もう1つは、欧州委員会とポーランド、そして欧州司法裁判所である。

 こちらはEUにおける民主主義の価値擁護にかかわる、さらに重要な問題といえる。

 ハンガリーでは、法と正義党の政権下で行われている司法「改革」で、同国の最高裁の独立性が脅かされているという見方が欧州委員会により昨年から出されていた。

 今日のブログ記事は、EU条約、とくに法の支配原則、民主主義の原則というEU条約第2条の規定への重大な違反が問われており、今回、正式に欧州司法裁判所に提訴を決定したとのニュース。

 ポーランドの司法改革法は、裁判官の人事権に不当に介入し、法改正の対象は、定年を70から65に引き下げることで、最高裁長官を含め28名の裁判官に影響が及ぶという。其の後は、権力とってに都合がいい裁判官を入れることが考えられる。

 ポーランドにたいする欧州委員会による欧州司法裁判所への提訴については上記の通りである。

 ちなみにこれにたいして、ポーランド政府は、もし欧州司法裁判所の判決が出ても我々は服属しないといっている。

 わたしにしてみれば、そうであれば、EUから離脱せよ、といいたくなるが、その度量もない。

 離脱すれば、ロシアからの軍事的圧力を受け、さらには自国通貨ズロチなど、国際的な信用をたちどころに失い、紙くずになるだろう。今となっては、東欧諸国のEU加盟は20年早すぎたということになる。

 EUの価値を巡る欧州委員会の欧州司法裁判所への提訴に触れたついでに、ポーランドと同様に、権威主義政権を構築しているハンガリーでの欧州人権裁判所への提訴の動きも書いておこう。

 移民難民の入国を推進する非政府組織のワルシャワ・オフィスの活動停止させるということで、ハンガリーのオルバン政権の行為に対して、ジョージ・ソロスが設立したOpen Society 財団が、不当な人権侵害であると欧州人権裁判所にたいして提訴したという。 

 EU加盟国にとっては、そしてEU機関にとっても、欧州司法裁判所も欧州人権裁判所も最後の司法判断の砦である。

 欧州人権裁判所はEU機関ではないが、EUの機関である欧州司法裁判所とは姉妹組織といえ、両輪で欧州の民主主義的価値を司法の領域で、監督している。

 欧州人権裁判所は、その名の通り、人権問題ではとくに重要な機関であり、その司法判断は大きな意味を持つ。

 EUが非民主的というものが、極右やナショナリストに多い。これは基本的には誤っている。EUはEU条約に基づいてのみ行動できる。しかもそのEU条約はパンガリーであれ、ポーランドであれ、イギリスであれ、自国政府が調印し、憲法上の規定に従い批准したものである。

 それがゆえに、EUが勝手に政治を独裁しているという大衆迎合政党や極右政党のEU認識は自国政府の責任でEUに服属しているということからすれば、そしてEUは多数決で議決しているということからしても、問題外である。

 EU加盟国は自国の主権的権限における立法行為の正統性と正当性については、EU条約の守護者としての存在する欧州委員会により、例えば第7条によって、民主主義擁護の観点から、日々監視されており、EU条約と二次立法の最終解釈者として存在する欧州司法裁判所によって、EU加盟国は司法審査の対象となっていることを我々は忘れてはならない。

 政治における価値論でいうと、一国的ナショナリズムと、多元主義的フェデラリズムが民主主義の価値を巡り激しく衝突しているということである。

参考記事

EU court asked to rule on halting Brexit.EUobserver.24 Sept.2018.

Rule of Law: European Commission refers Poland to the European Court of Justice to protect the independence of the Polish Supreme Court. European Commission - Press release. Brussels, 24 September 2018.

参考ブログ

2016.02.28 Sunday 英のEU離脱 個人的には賛成である(最大の皮肉を込めて)

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3985

| 児玉昌己 | - | 01:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
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