児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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ブレグジット現地調査で 離脱派の大デモ行進と時差、ブルージュ・グループのことなど

 昨日3月29日金曜日は、ウエストミンスターの議会広場に出かけて、EU離脱派の大行進を取材してきた。今回の出張の最大のハイライトとなった。

 EU研究者として生のイギリスの反EU派、EU離脱派の顔と雰囲気を確認できたこと、これが個人的には最大の収穫だろう。

 だが、EU条約50条に基づくEU離脱の通告取り消しを求める580万の議会への請願にみるEU残留派の苦り切った表情も、同時に記憶されるべきであろう。ちなみに2016年6月の国民投票では1500万人が残留を良しとした(離脱は1700万票)

  それに何より、私が思うに、離脱派が使っている「WTOで結構」というプラカードの意味が分かっているのかねということだ。

 関税率がゼロから、通商条約上ではWTO水準は最低、つまり最悪の額に引きあがるということだ。

   FTAを精力的に締結していかない限り、27か国、EUだけで5億の広大な無関税の空間を失うことになる。

 イギリスは国民投票での離脱決定から3年たっても、そして政府による離脱通告から2年がたっても、EUからの離脱協定ができないばかりか、離脱後の協定もさっぱり決められない。それが、2019年3月29日のイギリスの現状だ。

 イギリスといえば、EU離脱後、安倍首相が推進してこのほど条約が発効したTPPへの加盟もメイ政権は言及しているが、EU離脱に決着がついた後の話なのだ。

 イギリスはEUからの離脱が決定するまで、EU司法裁判所の裁判管轄権が適用され、現在進めているFTAの条約交渉については、あくまで離脱決定を前提とした暫定協定案でしかないのである。

  このブログで何度も触れて来たが、フィナンシャル・タイムズの2017530日の記事によると、ブレグジット後にイギリス政府が必要となる通商協定を含めた各種条約は、実に168か国、759に上る。EUとの関係がかくも密接であるということ、そんな基本的なことも、一般国民も、ましてや離脱強硬派の議員たちもわかっていなかったのだ。

  こんなにEU離脱が困難か思っていもみなかったという市民のコメントも見受けられたが、そんな程度でEU離脱に投票したのだ。EUを舐めきっていたとしか言いようがない。

 ブレグジットの影響についてさらにいえば、イギリスは農業生産力は微々たるもので、ほとんど輸入だ。すなわち輸入物価の高騰が待っている。それはこのデモの参加者自身の生活全般を苦しめる。

  製造業もそうだ。ホンダがいい例だ。電気自動車への経営資源の集中という表向きの理由とは別に、本質を言えば、サプライチェーンが寸断され、不要だった通関業務が加わる。型式も別途EUに申請を強いられる。製造業にとって、離脱でいいことなど何もないのだ。

 早朝6時過ぎに目が覚めると、日本ではもう夕刻前の3時過ぎ。この感覚が不思議でもどかしい。意識的に日本時間を消そうとしているが、頭の中にまだ日本の感覚がどこかに残っている。

 イギリスモードにようやくなっているのだが、帰国時には時差というジェットラグに苦しむことになるのかも。

 これを経験した人は多いことだろうが、結構辛いのである。

  移動での時差を気にしているのは、特派員の諸君だろう。特派員経験者23人に聞いたことが、市販薬でみな機内で調整しているとのことだった。

  仕事上でも時差についてはもっと深刻かも。

 ファイナンスは24時間眠らないが特派員諸氏は日本の新聞社の記事の締め切りがあり、ビッグニュースが出稿後に飛び込んで慌てることも度々だろう。

  私もEU離脱支持派の大デモ行進を最終到着地でカバーしていて、メイのEUとの合意案の下院審議での3度目の否決をホテルに戻って知った。

 離脱後の新協定の大枠を定めた政治宣言を切り離したトリッキーな案だったのだが、それでさえ58票差で否決された。

  さて最終日の今日は、Barrister法廷弁護士経験者との面談。彼は欧州大学院大学同期。 ロンドン出張中で、キングスクロスのホテルで会うことになった。若い時、彼のレスタシャターの自宅へも遊びに行ったことがある。ホームバーもあるアッパーミドルに属するファミリーの出身だ。

 EU統合推進派のシンボルとして名高いベルギーのブルージュのCollege of Europeの卒業生は秀才ぞろいで、EUの圧倒的な影響力を背景にしてEU機関や各国政府はもとより、大学などのアカデミックスを含め、経済や社会の各方面で活躍している。

 ちなみにイギリスではブルージュという地名に由来する言葉は別の意味がある。故マーガレット・サッチャー英首相が広めた。

 彼女は、ミスターヨーロッパとしてなお残すジャックドロール欧州委員長に対峙し、反EU的態度をその政治の後半、特に深めたが、出色というべきメモワールを残した。

 それについては、私もNHKのラジオ講座(2011年1月-3月)を担当した際の書下ろしのテキストを基礎とした以下の書で触れている。『欧州統合の政治史−EU誕生の成功と苦悩』芦書房2015年。

  現在の保守党内の反EU派、離脱派の主たるメンバーは、彼女が1988年に行ったブルージュの 欧州大学院大学で行った挑戦的な演説をとって、ブルージュ・グループという名を冠している。

 大博打というべきEU離脱の大混乱を招いた国民投票を主導した前首相キャメロンも、そして強硬離脱派の多くの保守党議員も、まさにこの思想集団の系譜に属する。

 もとより、EU研究最古の学術教育機関である本家、欧州大学院大学からみれば、この換骨奪胎というべきブルージュの使われ方については同大学院の同窓会はこれに強く反発したのだが。

  ともあれ、今日でアイルランド・イギリス出張も終わる。明日はフライトまでの時間を活かして、有力な邦字紙の欧州問題担当の記者さんとワーキングランチの予定。日本ではなかなか会えない人たちで、あれこれ情報を交換し、海外出張の実を最後まで上げたい。

 なお国民投票で離脱が決まった3年前の当日に本ブログで書いたものは以下。

2016.06.24 Friday EU離脱でこれからイギリスに起きること

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4063

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4064

 参考ブログ

2013.04.09 Tuesdayサッチャ―元首相死去

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3437

2018.05.31 Thursday イギリスの対EU離脱問題で、最近の動き 関税同盟残留?

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4395

2016.09.15 Thursday EU離脱は英の論理だけでは動かない 欧州議会によるベルギー元首相の交渉担当指名の意味

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4124

2016.06.11 Saturday

マッチポンプのキャメロン、反EUの火をつけて回り、挙句、消火できずに国家が大火災 EU離脱の可能性が高まる英国民投票

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4050

 

 

| 児玉昌己 | - | 16:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
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