児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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 EU27か国すべてを困惑、痛憤させる次の設問 イギリスは欧州議会選挙を実施するのか 「ゾンビ」的状況の英政治

 実はEUの関係者とEU研究者が一番気をもんでいるのがこの設問だ。

  他の加盟国に影響があるというものの、EUを離脱するのしないのは、基本的にはイギリスの国内での意思決定の問題だが、欧州議会選挙はイギリスを含めて28すべての加盟国にかかわるものである。

 実際、5年に一度の、EU全加盟国の政治に直結するEUの代議制民主主義にかかわる政治的一大重要行事である。

 EU側の対応については、この10日の欧州理事会が当面の結論を出すだろう。

 それにしても、イギリスは国民投票から3年、EU離脱の通告から2年以上の時を経て、EU離脱さえ未決定で、それにより、欧州議会選挙への対応さえ未定という惨憺たる状況だ。

 メイはEUにたいし、630日までの離脱延期を申請した。親英国のオランダルッテ首相も、そのあとの下院議会を含めたビジョンに全く信頼性を置いていない。当事者のメイ自身が、その後の政治動向に全く確信を持てていないから、当たり前だ。

 EU側のフラストレーションはさらに強い。仏大統領のマクロンに至っては、「EUはイギリス政治危機の人質ではない」、とも語っているほどだ。

 3度も下院議会での自身の離脱合意案が否決されながら、メイは辞任もせず、居直りという状況を続けている。もう意地というべきものであろう。保守党の強硬離脱派も合意案を否決しながらも、解散総選挙の実施と、それによる国民の懲罰を恐れて、不信任案には反対するという出鱈目さだ。いずれ選挙では深刻な打撃を受けるだろう。

 他方、強制離脱、合意なき離脱を避けるべく、呼びかけを受けた労働党はメイとの協議に入ったが、進展していない。

労働党は、今になって関税同盟残留や2度目の国民投票を口にしている。労働党のコービン党首は2016年の国民投票で出されたイギリス国民の離脱の意思は最終的なものだと繰り返しいっていた。そんな状況だから、こちらも党内が混乱するだけである。

 実際、EU側はイギリス離脱で生じる同国への配分議席の73議席については、EU条約50条に基づき英メイ政権が欧州理事会にEU離脱を通告した後、欧州議会選挙へのイギリスの参加はないとして、EU側はとうの昔に議員定数について、新たに協議し、すでに人口比を強める形で、再配分している。

 つまり選挙日まで7週間ほどしか残されていない状況で、欧州議会は、イギリスも加わった751という前回の定数での実施となるのか、705というイギリス抜きの、再配分後の定数で実施となるのか、だれもまだわからないという、散々な状況だ。

 当事者となるイギリスの選挙管理委員会については、もっと悲惨だ。

 前回2014年には4650万投票用紙を印刷し、39千か所の投票所を開設したとEurActivは伝えている。つまり限られた時間で、もし欧州議会選挙を実施するとなると、膨大な事務的作業が待っているのである。

 これはイギリスでは政党も同じ状況で、他の加盟国とは違い、離脱自身さえ決められないイギリスは、欧州議会選挙の候補者選定など全く手が付けられていないのである。

 心頭怒りに発しているのがフランスなどのEU加盟国であるが、それがゆえに、イギリス議会が自らの責任を果たしえない惨憺たる状況下で、今度はEU側からイギリスの優柔不断に引導が渡され、強制離脱をEU側が宣告する可能性も見ておいていいのである。

 イギリス側の報道に意をおくわが国のメディアだが、この可能性はほとんど日本では報じられていない。

 イギリスだけを観ていても、EU政治は理解できないということの典型的事例である。

 EurActivは、現下の欧州議会選挙を巡る状況について、保守党議会指導者の言を引用し、「ゾンビ選挙」と表現している。

 腐敗した死体ではあるが、動きまわるあのゾンビである。

 EUの代表民主制を体現する欧州議会と、他の加盟国の欧州議会議員には全く失礼な表現であるが、イギリスのまさにゾンビ的状況を語って至言でもある。

参考記事

On the quiet, UK prepares for ‘zombie’ European elections.EurActiv with AFP ‎2019‎‎4‎‎5‎日。

Emmanuel Macron: EU cannot be ‘hostage’ of British political crisis. EurActiv. 2019年4月2日。

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