児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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本来離脱しているはずだったイギリス 欧州議会選挙参加の可能性大

 皮肉なことだ。20166月のキャメロンによる大博打の結果、僅差でEU離脱となったイギリス。

 それから3年、そしてリスボン条約50条に基づき、EU離脱を欧州理事会に通告して2年が経った。

 離脱通告後2年後には本来、イギリスはEUから離脱しているはずだった。当事者のイギリスとEUの誰にとってもまさかの展開といってよい。

 なによりEU側はイギリスの離脱を前提として、40日後の5月23日から実施される欧州議会の議員定数の再配分を実施してさえいたのだから。

 2週間ほど前の329日の離脱予定の日、ロンドンはウエストミンスターの議会広場にいた。

 本来イギリスはこの日離脱していたのだ。そしてそれを見越して、私もロンドンに出張したのだった。

しかしながら、イギリスはこの日離脱できずにいて、私といえば、議会前広場で、怒り心頭のEU即時離脱派の大デモ行進の模様をデジカメで接写していた。

 そしてこの10日に1つの重要な動きがあった。欧州理事会である。

 EUではメイが申請した2度目の離脱延期要請について欧州理事会は紛糾した。

 EU加盟以降、80万以上が移住し同国で働いているポーランドの出身者として、欧州理事会議長のトゥスクは、イギリスとの関係を重要してきた。それゆえ、彼は1年にわたる長期の離脱延長を提案した。

 他方、マクロンは無原則に引き延ばすことに反対した。結局、イギリスのEU離脱の期限は10月末までとした。

EU研究者としてここ30年研究の軸足をイギリスから移している私にとって、EU離脱以上に重要だったのは、目下作成中の論稿のテーマである欧州議会の選挙への参加の有無だった。

 この点について、欧州理事会は、イギリスが欧州議会選挙に参加しないなら、EUはイギリスに61日にEUからの強制離脱となると言い添えたのである。これで欧州議会選挙参加は濃厚となったといえる。

欧州議会選挙日は23-26日まで4日間だが、もしイギリスが欧州議会選挙を実施するならの初日の23日となる予定だ。イギリスは伝統的に木曜が選挙日となっているからだ。

 メイとしては欧州議会選挙への参加はしたくなかったが、結局EUの条件を飲むことになった。飲まないと、十分な下院での審議の時間的余裕も与えられないのだから。

 もう一ついえば、イギリスはEU加盟国である限り、メイ首相自身が口にしたように、EU条約に従い、EUに対する義務と責任をすべて負っているのである。

 イギリスについては、離脱を英議会が批准すれば、その瞬間にEUからの離脱となることを確認したものの、欧州議会選挙への参加となれば、選挙の準備が要る。

 イギリスでは15日に選挙公示を出すとのことだが、実のところ、選管も政党も大慌てだ。

 第一、政党は保守党も労働党もその他の政党も、ブレグジットだけに関心が行き、最近まで欧州議会選挙への参加など考えてもいなかったから、候補者選定についてはまさに泥縄的に取り組む始末だ。

 しかも候補者はたとえ当選しても、イギリスが離脱すれば、その瞬間から失職だ。

ゾンビ選挙とは保守党出身で、ECRの英議員団長を務める欧州議会議員アシュリー・フォックスの言葉だが、国民投票ではEU離脱を先導したUKIPのファラージュなど亡霊みたいに蘇り、選挙を戦うという。

 だが、離脱が前提なら、時間稼ぎのためだけの議員をわざわざ多額の費用をかけて、選出することになりかねない。選挙はただではないのだから。すでに相当の損失を出しているイギリスだが、さらに支出が求められる。

 欧州議会選挙がゾンビではなく、イギリスの対EU政治がゾンビそのものだ。まだまだ何が飛び出してくるのか全く予測もつかない。70年にわたるEU史上では初となる加盟国の離脱の事例で、今後の起こるかもしれない離脱についての事例ともなる。それがBrexitである。

 特にハンガリーや、ポーランド、イタリアなど、反EU主義的国家の政府は英離脱の過程とあの無残極まりない英下院の事態を注視しているが、イギリスの政治はまさにブラックホールだ。

 ちなみにデイリーミラー紙の、国民投票の結果を受けた3年前の6月のあの日の表紙はブラックホールの絵を掲げていたはずだ。

 ブラックホールは、3年前は想像上のことでしかなかった。だが、天体観測で得られ世界に報じられたそれは、実写である。イギリス政治のブラックホール、こちらも現実である。

 なお欧州議会選挙に参加すれば、メイの政権与党で、混乱を極めている保守党は大敗するとの予測が出ている。

 追記

 ドイツZDFのニュースではメイ首相は欧州理事会で、今後のEUの決定を妨害しないとの約束もしたという英国メディアでは流していない内容を伝えていた。保守党強硬派の中には欧州議会選挙で、議員を送り込んでEUの決定を妨害することを叫んでいるものがいるのである。

参考記事 

On the quiet, UK prepares for ‘zombie’ European elections.EurActiv with AFP 201945日。

Poll: Tories facing crushing defeat if UK holds EU elections.EurActiv. 2019410

UK almost certain to contest EU elections as May prepares to make new concession. EurActiv201949日。

参考ブログ

2019.04.08 Monday  EU27か国すべてを困惑、痛憤させる次の設問 イギリスは欧州議会選挙を実施するのか 「ゾンビ」的状況の英政治

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4492

2019.03.11 Monday 混乱の極みのEU離脱での英政局

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4480

 

 

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