大型連休。しばし世事から離れて、カメについて語ろう。 我が家には数匹のカメがいる。別段、高価なカメではない。どこにでもいるカメだが、名前まである。ミシシッピアカミミ(ミドリカメ)はバナナ。大型のクサカメはハナコ。 カメをなぜ飼うかは、理由は簡単。ほとんど手がかからないからだ。在外研究でも長期出張でも水さえあれば大丈夫。先ごろCMで有名になったチワワなどと違い、ホテルに預けたり、注射を打ってもらう必要もない。ちなみにチワワは、そのCMの会社の違法取立のあおりを食らい、値段が下がったという。人間の都合で生命の価値が上下するチワワはかわいそう。 しかもカメは癒しの生物だ。ヘビなどと違い人を怖がらせたり、逃げて他人に迷惑をかけることもない。日ごろ、権力闘争だの、クーデターや革命、拉致など人間の醜悪で、本質的側面を扱う政治学者としては、気が休まる。カメは実にのどかである。 餌付けすると首も伸ばすし、ご存知だろうか、カメはあくびもする。日光がさすと手足を全快して、だらしなく横たわっている。気分はまさにワイキキでの日光浴。 冬場、水からあげてカメを土にもぐらせる人がいる。翌年はかわいそうにミイラだ。自然ならいざ知らず、人工的には水が必須。ウミガメを除いて、カメは陸上動物で、おぼれるのである。陸を作ってやろう。そこで日光浴が出来る。甲羅干しは、ミネラルを補給し、細菌を殺してくれるのだ。生命の源は水と日光である。 餌は、我が家は乾燥イワシ。手も汚れない。庭のミミズでもいい。夏場の7月からの3ヶ月猛烈な食欲。水槽も汚れるので、水の入れ替えや手入れは必須。それ以外は、まったく手がかからない。 カメといえば、長命。忘れられない場面がある。TVカメラが10年ほど前熊楠の生家に入っていた。わが国が生んだ世界的な植物学者南方熊楠(みなかたくまぐす1867-1941)の生家にである。だが、ここでは昭和天皇が唯一固有名詞としてその名を詠んだ熊楠の自身のことではない。彼の家の庭の池のカメのことだ。孫に当たるおばあさんが、指差して、こともなく、熊楠の若いころからいますよと。 カメは万年とまではいわなくとも長命。 我が家のカメも私より長生きするかもしれない。実に、おめでたいことである。