NHKスペシャル「ひらがな革命」を見ていた。
古今和歌集(905年)の編纂を命じた藤原時平(ときひら)の別の顔を知る。時平と道真の後世の評価は、天と地との差だ。
都を追放され、大宰府に流されそこで世を終え、そのことがゆえに神になった道真だが、他方、時平は、江戸の歌舞伎で極悪人とされてしまった。
だが、時平こそが、律令制度の放棄、再編過程で、道真に代表されるように、中国文明とそのシンボルの漢字に傾斜してきた日本の貴族たちに文字を通じた、脱中国(唐)の意識革命、つまり「国風文化」を推進した人物であったという説を提示している。実に新鮮だ。
時平は、その後、権力を求めることもなく、左大臣のままであったという。実際、文字と日本文化の確立に関心をおき、漢字で音表記を採っていたそれまでの貴族所有の古歌の提出を求め、これを純粋なひらがなで書かせた。これが時平の古今和歌だが、こうした勅撰和歌集を考案する人間が、権力に関心を持つなどあまり考えられないことだ。1100年の時を越えて、時平のイメージの再検討と再評価が必要なのだろう。
「古今和歌集」を辞書で調べると、広辞苑もマイペディアでも時平の名はない。わずかに、後者では醍醐天皇は出てきているだけで、編者として両者が紀貫之、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)などの名前だけがあるにすぎない。まして律令制度の行き詰まりなどの政治的背景などの記載はさらさらない。いい勉強になった。
歴史家で上智大学名誉教授の平田耿二先生が出演コメントされているが、必ずしも、平田先生のご説とは一致するものではないように感じた。番組脚本家が、この内容に相当影響を与えていると思える。皆さんはどのように見られていましたか。