朝日新聞は、「衆院は中選挙区制に戻すべき」 公明・太田代表2007年08月24日
と、以下伝えた。
公明党の太田代表は24日、衆院の選挙制度について「中選挙区制にすることが非常に大事なことだ」と述べ、中選挙区制を復活させるべきだとの考えを示した。ラジオ番組の中で語った。
公明党の衝撃は相当のものだ。99年の自公連立のときから中選挙区復活を希望していたが、今回の自民党の協力選挙区での全敗がいかに痛かったかを物語っている。
政治学的には、現行の選挙制度は、きわめて小選挙区に傾斜した制度であり、参院選挙の制度も同様である。
有権者の側から見れば、この制度の下では、政党の選択の余地が限りなく、狭くなる。これが、現行の小選挙区比例代表制である。それゆえ、公明が中選挙区制に戻したいのはよく理解できる。中選挙区が、投じられた票が政治に反映できない膨大な死票を緩和、軽減する制度であるというのは、正しい。
1994年に公選法改正で、現行の制度が導入された。この時期、大メディアや在京の学者などが、選挙で費用がかからなくなるという理由で、はじめから予想されていた膨大な死票に目を瞑り、小選挙区制を導入する支持していた。だが、結果は、中選挙区時代と比較すると、その死票の膨大さには驚くべきものがある。
政党関係者に聞くと、むしろ40万を1議席とする異様な小選挙区制で、費用は、地盤を分け合っていた中選挙区に比べて、以前にもまして、かかっているというとだ。
確かに選挙違反は少なくなったが、これは公選法による選挙手続の改正の結果というより、違反への罰則の強化によるものである。
今回の参院選開票当日、日テレ系のNIBで参院選の解説に入っていたが、実質1議席の小選挙区で戦われていた長崎選挙区では、勝利した民主の候補者が352,953票 (49.0%)、他方敗北した自民の公認候補は、331,147票 (46.0%)で、わずかに2万の差。
共産党の女性候補が別途、35,837票(5%)とっており、勝者の得票よりも、死票となった票が多いという状況である。
意地悪く言えば、有権者の半分以上は、選出された代表に投じていないということで、選挙区の意思を半分以下しか反映していないということにもなる。佐賀でも熊本でも、試算していないが状況は同様であろう。
2大政党の候補者が競れば競るほど、膨大な死票が出ている。しかも、少数政党、少数意見が排除されるというのが、小選挙区制である。そして、ここ10年の衆参の国政選挙で、明確になってきた傾向である。実際、投じられた膨大な票が死票と化し、政治に生かされないのは、有権者の意思を殺ぐものであり、民主主義にとっては、きわめて問題である。メディアも学者も、「改革」を掲げ、実際は「改悪」というべき、民意を正確に反映できない反民主主義的選挙制度の出現に手を貸したということである。