児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
国際政治シュミレーションゲームの追加案内
 外交ゲームについては、昨日案内を紹介した。
 九州ではおそらく初めての企画となるのだが、宮家先生の「外交ゲーム」については、東シナ海の公海上で海自の艦船に中国の民間船舶が衝突したという想定で行われた。
 そのゲームについては、今年6月12日付朝日新聞朝刊において星浩編集員の筆により、「知的運動神経」というテーマで、立命館大での実見録が書かれている。
 今回は現下の国際政治の最重要案件の1つ、イランの核開発をめぐるものが宮家先生により、提示された。
 本学の学生にも、学部を超えて、いい刺激になることだろう。
なお、宮原先生のブログも参照のこと。 
http://miyaharanobutaka.com/
 かくいう私も初体験で、できも不出来も勉強とおもっているところ。
ダメもと、というより、「失敗も勉強」の精神で取り組む。
 「日本の学校教育ではこうした学習はしてこなかったので、失敗も成功も、それだけでチャレンジの価値があるのです」という宮原信孝文学部教授の言葉を紹介しておきたい。
 以下の想定で大体何をするのか想像していただけるであろう。参加学生にはそれぞれの役があり、その職責を国家や組織の要人として、それぞれの利益にたって、利害の推進および障害の阻止を交渉してもらうことになる。
 学生たちも「将来は何者かになりうる」(沢木耕太郎)可能性を秘めているのだから。
なお、宮原先生のブログも参照のこと。 
http://miyaharanobutaka.com/


10チームの内訳(計32人を想定、多少の増減は可能)
チーム名 プレーヤー1 プレーヤー2 プレーヤー3 プレーヤー4
日本総理官邸 総理 官房長官 官房副長官 総理補佐官
日本政府各省 外務大臣 経産大臣 防衛大臣 ―
日本野党・記者 野党第一党首 野党第一党幹事長 野党第二党首 野党第二党幹事長
米国 大統領 国務長官 国防長官 統合参謀会議議長
ロシア 大統領 外務大臣 国有石油会社社長 ―
中国 党総書記 党対外連絡部長 SINOPEC総経理 ―
アラブ連盟 サウジアラビア代表 アラブ首長国連邦代表 エジプト代表 シリア代表
EU 英国代表 仏代表 独代表 ―
イラン 最高指導者 大統領 外務大臣 改革派指導者
プレス 官邸クラブ記者 NHK記者 朝日新聞記者 NYT記者
| 児玉昌己 | - | 09:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
久留米大学比較文化研究所欧州部会からのお知らせ
 このたび、北九州大学の山本直准教授による「欧州の人権問題」についての講演に続いて、第2弾として、外務省OBで立命館大学客員教授宮家邦彦氏をお招きして、外交シュミレーションゲームの企画をします。
文学部の宮原ゼミ、法学部の児玉ゼミの学生35名強を動員してのイベントとなります。
広く公開します。
見学希望の方は、資料等詳細など、宮原研究室もしくは児玉研究室にお問い合わせください。同日5時半から総括の講評が予定されております。
 

表題
イランの核危機をめぐる国際政治シュミレーションゲーム

日時
11月10日土曜日 午後1時−6時

場所
本学 81Aおよび810-819の10教室

指導 
宮家邦彦氏(立命館大学客員教授/ AOI外交政策研究所代表)


講師略歴】
1953年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業後、外務省入省。外務大臣秘書官、在米国大使館一等書記官、中近東第二課長、中近東第一課長、日米安全保障条約課長、在中華人民共和国大使館公使、在イラク大使館公使、中東アフリカ局参事官を歴任。2005年8月退官。現在、AOI外交政策研究所代表。


                         (文責 法学部教授 児玉昌己)
| 児玉昌己 | - | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
開けられたもう一つのパンドラの箱−クルドとトルコ 
 ブッシュはイラクの軍事作戦と戦後統治が簡単にいくと思って、大失敗をした。パリ解放程度や日本の占領統治の認識でバグダッドを攻めた。
 まさに帝国主義時代のビッグステック政策(こん棒政策)さながらに。ちなみに、これは頭を棒でたたけば相手がいうことを聞くというカーボーイの短絡さに由来する米外交の特色を表現したものである。
 ラムズフェルドらの、無様きわまる中東政治認識で、結果はご覧の通り、イラク情勢は、無残極まりない。高まる宗派間の対立と、治安の悪化や米軍の誤爆等で数十万単位で死傷し、米軍将兵の死傷者も万単位に上りつつある(死者だけで3500を超えている)。ベトナムのあの泥沼の再来を日々演じている。これがあけられたパンドラの箱の1つ。
 タイトルに書いたもうひとつは、イラク国境のクルド。トルコ国内に1000万はいるといわれ、世界では、2500万もいるといわれる世界最大の国家なき民族である。91年までトルコ国内でのクルド語は厳しく禁じられて、その存在も公式には否定されていた。EU加盟協議の過程で、随分、状況は改善されてきたところである。ちなみにトルコにおけるクルド問題は少し古くなるが、名著「トルコのもう一つの顔 」(中公新書) 小島 剛一 (1991/2)が優れた情報を提供している。
 米国がイラク統治でのクルドの重要性に配慮して、クルド過激派の取締りを放置し、トルコ国境線はすでに大規模戦闘が始まっている。
 トルコ内での1000万の数字はお分かりか。7000万国家においてその数の意味が。日本に置き換えれば、1700万の住民が、別の人種だということを考えれば、少しはその意味は分かるだろう。
 トルコはEU加盟をめざして、クルドの人権状況の改善に取り組んできた。
 だが、EU加盟国から見れば、トルコの越境攻撃で、トルコの加盟問題は決着が付いた、加盟はありえない話となり、終わりだというものもでてくるはずだ。
 だが、トルコ国民と政治指導者が米国とEUに裏切られたと感じれば、NATOの重要なメンバーであるこの親西側イスラム世俗主義国家の屋台骨が揺らぎかねない。それは中東情勢で唯一の安定した親米勢力を失い、米国はイランへのにらみを失うことにもなる。
 自他共に許すCレベルの大統領を選んだ米国国民の国際政治上のツケは、どこまでも大きい。
 第3のパンドラ箱、(これは今開けられそうな箱であるのだが)、は北朝鮮による日本人拉致を置き去りにした、テロ支援解除に突き進んだ場合の、日本となるかもしれない。
 もっともこちらは、ドンパチではなく、深く沈潜した米国への失望と、反米感情の広がりとなるであろうが。J・トーマス・シーファー駐日米国大使は、それが予見できている数少ない知日派の政治家である。
| 児玉昌己 | - | 11:58 | comments(0) | trackbacks(0) |
10月も最終週
 時間がたつのは、早い。司馬先生ではないが、飛ぶが如し。10月のビッグイベントの学会での司会が終わり、つかの間来月は私の報告。
 しばしくつろぎたいが、そうもさせてはくれない。水曜日はお世話になっている地元企業関係者との懇談会。それも就職担当教員としての業務である。
 宮原ゼミとの外交ゲームもある。これは次回書くことにしよう。
 ワールドシリーズの松坂の2点タイムリーは皆さん、よかったですね。先頭バッターの松井との対決も。

 
| 児玉昌己 | - | 10:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
結局、日曜日も未明まで仕事 大学教師は月月火水木金金?!
 学会の司会役から解放され、10時過ぎまでのんびりしていたが、一杯のコーヒーが作用したのか、他の研究者の司会どころではない、自分の報告はどうだと、突如、緊張感が脳髄に反応し、11月の次の別の学会のために、結局、未明まで草稿の作成に追われていた。
 スマップのshakeどころではないと、脳幹が指令を出し、saturday night feverは一転、一挙に消散していた。
 大体形ができてきたのだが、余分な贅肉をそぎ落とす作業だ。頭が非常に冴えていないとできない作業で、物書きのプロはむしろこの作業こそが一番難しいという。
 学者も、もの書きの端くれだ。史実を追えば、それこそ何百ページも書ける。以前、米国の有名な大学の博士学位論文で、日露戦争について数十万語の膨大な論文の審査を前にして、ある審査委員がわずかに2語、So what?と書き手に発したというエピソードを聞いたことがある。論文の価値と品質管理に関わることだ。
 結局、ものを書くことは、最後は、書く意味、書く積極的な価値、それが要求される。時事的問題は、事実の探査、発見、つまりfact findingsという最低の価値はあるが、それをどう捉えて、論理的に一貫性もたせて意味のあるものに仕上げていくのか、それが次のステップで、学者の仕事となるだろう。史実を追うだけでも厳密には史実の選定で既に価値判断があるが、それが希薄な場合、タダの無機質な事象の羅列となる。
 昔話だが、「お休みのところ申し訳ありませんが」と事務方から電話があり、まじめを絵に書いたような恩師の金丸輝男先生が、「休んどらんのだが」、と受話器を置いて、珍しく反応され、たまたま横にいた私が、おかしくて、「あれは決まり文句で」と茶々を入れたことがある。これについては、以前ブログに書いた。「2006.05.22 Monday大学教員への道8 メディア露出度で測れない研究」
search機能で、このバックナンバーを取り出せます。

 いずれにせよ、大学教師は、帝国海軍の将兵ではないが、月月火水木金金なのである。
| 児玉昌己 | - | 10:48 | comments(0) | trackbacks(0) |
 国際政治学会分科会終わる
 博多港に隣接する国際会議場に出向き、国際政治学会の国際統合分科会を無事終える。 30名ほどの参加者があり、フランスの核戦略の史的展開と特色、および欧州統合の現在、将来に関するデイ准教授の報告があり、活発に質疑を交わした。
 終わって、デイ准教授と天神に出て、2人で会席料理の「よし田」に出向き、店を早めに開けてもらい、杯を上げ、司会と報告者2人だけのささやかな慰労を博多の肴でして、それぞれに分かれた。
 
  明日は休みだ、仕事もない、早起きなんかしなくてもいい。 スマップのshakeが思わず口からこぼれる。
| 児玉昌己 | - | 21:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
明日は国際政治学会
 明日は福岡国際会議場での国際政治学会。福岡で開かれるのは、稀だ。昨年の世界国際政治学会の流れを受けたものだ。
 国際統合分科会の責任者で、報告者2名の司会という役どころ。学会の年次大会はすでに今日から始まっているが、公務も多忙で、明日終日付き合うことになる。
 以前は大学で持ち回りだったが、ここ20年で巨大学会に変貌した。大学で対応できなくなったから、コンベンションセンターを借りて、行っている。
 必ずしも、大学の教員数が増えているわけではないし、まして国際政治学の講座も増えているわけではないが、国際政治の必要性があるからだろうか。
 私の部会では、欧州共同体から50年がテーマだ。懇意にしている大分大学のデイ准教授がEUでの最近の統合ビジョンをめぐる動きと評価、それにパリ大学に席を置く山本さんの報告。こちらはフランスの外交安保の政治分析だ。それを司会する。果たして何人の参加者があるのだろう。
 来月は私が日本EU学会で報告する。あなイソガシヤ。
 
 
| 児玉昌己 | - | 22:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
金大中拉致に関するブログへのコメント有難うございます。
ブログで以下コメントをもらった。
 うーん、ちょっと違うと思います。
 我々は当時からKCIAの仕業だとみんなわかっていて、世論は政府をつきあげていてわけだし、国会で野党もガンガン追及していたわけですよね。それなのに、政府は朴政権をかばってごまかしていたのです。
 今回の調査結果が出て、やっぱり我々の言っていたとおりではないか、どうおとしまえをとるのだ自民党政府という気持ちです。
 政府には日本国民と、もちろん直接の犠牲者である金大中に、謝罪してもらわないと。
| 松尾匡 | 2007

松尾匡先生
コメント有難うございます。本ブログに注意を払っていただき、感謝申し上げます。
 (ちなみに、誰ぞやと思われる向きには、経済学部に所属されている同僚で、話して楽しく、懇意にさせていただいている理論経済学の専門家です。)
 わが意を十分に表現しなかった私の責任かもしれません。
 私は韓国側の事情と論理を書いたわけです。特段拉致事件以降の、日本政府の対応、つまり田中内閣の対応がよかったとは思いませんし、言ってもいません。この点で、むしろ全く先生と同意見です。
 当時の毎日新聞ソウル支局長だった古野喜政先生もこの事件に対する日韓交渉の過程で、田中首相側に、3億円が流れたというウワサに言及されていること、も承知しています。ちなみに古野先生の著書は本ブログで紹介しています。このブログで検索なさってください。
 何より事件当時の73年は私も、大学4年生で、韓国の当時の民主化運動は日本から見ても応援していたものでした。当時の事件処理はきわめて政治的でそれも実見しております。
 一点付加すれば、日本政府は、金大中の来日という事実は、彼がKCIAに拉致されるまで十分に把握されていなかったという警察関係者の証言もあります。その後ご承知の経緯を経て、政治決着はしたのですが、捜査は30年以上を経ても、まだ継続中の事案でもあります。
 それにしても韓国はその後民主化し、文民政権になったことは祝すべきですが、対北朝鮮の関係で言えば、圧政下に置かれている同胞を見捨て全体主義の独裁者を擁護し、政権の延命に手を貸す政権に変質して、驚くばかりです。 
 最後ですが、拉致の謝罪については、金大中は今のままでは拒否すると幕引きを嫌っているのをご承知ですか。国内政治の切り札を失いたくないと思っているのでしょう。
 民主化の闘士としての役割は高く評価しているのですが、その後の政治は全く批判的です。560億円ともいえる財閥の資金で買ったノーベル賞を返上せよといいたいところです。所得税法も、外国為替法も、何もあったものではないレベルの政治です。

| 児玉昌己 | - | 10:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
よき記事と悪しき報道1 金大中拉致謝罪の毎日の記事
 金大中の拉致では、毎日新聞が「金大中事件:韓国、世論対応に苦慮 隠ぺいの日本にも責任」ソウル堀山明子が伝えてきている。毎日新聞 2007年10月25日 東京朝刊 
 その記事がいい。
 盧武鉉は自分が設置した過去究明委員会で検討させ、この報告書を出させ、しかも日本への謝罪が国際法上を求めらる結論となり、今度は、調査委員会の報告で、政府のものではないという。信じがたい2重基準である。
 まったく唖然とする子供だましの政権の対応だことよ。国際社会と国際法上、そうした2重基準が通用すると思っているのは、盧武鉉とそれを支える北朝鮮の全体主義を支援する幼稚な「左翼」イデオログーだけだ。
 では当時の外交官身分の拉致の実行犯の引渡しと訴追、刑事罰の認定ということになる。こんな程度だから北朝鮮に残されたままの10万を超える国軍捕虜の帰還などどうでもよいということになる。一事が万事とはこれをいう。
 調査委員会には、北朝鮮シンパの左翼活動家がいる。彼らの論理を、毎日のソウル支局堀内明子が伝えていて、それがいい。その記事のさわりは以下だ。
 
  民主化運動活動家らが加わる調査委には「日本政府も事件後の隠ぺいに加担した責任があり、韓国政府が謝罪する必要はない」(調査委メンバー)との認識が強い。報告書には日本政府への遺憾表明も盛り込まれたため、謝罪を促す圧力にはならなかった。
 公式に謝罪するシナリオは発表前夜まで模索されたが、最終的には金前大統領が事件の幕引きを望んでいないことが確認され、青瓦台は謝罪に慎重になったとみられる。
 金前大統領側が24日発表した論評は、日韓両政府の責任を指摘。金前大統領の救援運動をしてきた「拉致事件真相糾明のための市民の会」(代表・韓勝憲(ハンスンホン)弁護士)は「真相を隠ぺいした日本政府は、被害者と韓国国民に謝罪すべきだ」と訴える声明を出しており、韓国世論が日本政府への謝罪論に向かう雰囲気は醸成されていない。

 日本への謝罪要求とは、笑止千万だ。韓国の国家権力による拉致がなければ、最初から日本政府の対応もありはしないのだ。日帝支配に憤るのはいい。もっとも、他国の文句ばかりでなく、国家を滅ぼされた自国政権と政治指導者の無能さも時には反省し、検証すべきだろうが。だが、戦後の1973年に起こった国家的なあからさま、かつ悪辣な主権侵犯など、日帝支配とは無縁の韓国の政権が行った日本に対する蛮行で、公然たる国際法違反である。
 北朝鮮の国家機関による拉致といい、韓国といいまったくウンザリする隣国の政権だことよ。広辞苑の新規採用語を借りれば、ウザイことだ。
 夜郎自大で、井の中の蛙とは、この韓国の政権に巣くう北朝鮮シンパとそれを設置した盧武鉉に、送る言葉だ。
 町村官房長官がこの時期の韓国側の公表の意図が分からないというが、昨日本ブログで書いた通り、韓国の大統領選がらみ、つまりハンナラ落しであることは明瞭だ。
 いずれにせよ、毎日新聞、ソウルの堀内の記事は他社の記事より、金大中拉致に関する謝罪問題で、盧武鉉政権内部の反日イデオロギーの中身まで踏み込んで摘した点で、悪くない。






| 児玉昌己 | - | 09:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
政治的意図を感じさせるこの時期の盧武鉉政権のアレコレ
 韓国の大統領選挙が目前に迫ってきた。韓国大統領選挙では、全体主義国家に好意を寄せる2代、10年続いた勢力が、この間、野党第一党に甘んじてきたハンナラに政権を奪われそうだ。
 奪われると、「敵対の政治」Adversary politicsが実行されるのが、この国家だ。この言葉は、かつてイギリス政治で使われた言葉である。
 前政権が実績としてなしたアレコレの政治を一挙に新政権が覆していくということだ。たとえば、1970年代に労働党が政権を奪還すると、保守党の政治を全否定していき、保守が労働党に替われば、また同じくというごとく。イギリスの政治を勉強していたその頃、このすさまじいばかりの敵対の政治を実見して、自民党の長期政権を改めて、政治の安定的継続とコストという観点から、むしろ再評価したことを覚えている。
 韓国では、イギリスよりこの敵対の政治、徹底している。前大統領に対して、死刑も新政権は求刑するほどだ。
 盧武鉉の政権末期の突出した次期大統領選挙を意識した政治介入は、南北首脳会談などにその典型をみる。わずか2ヶ月しか任期のない大統領が、10万以上の自国民捕虜の救助には動かず、全体主義国家の指導者を褒め称え、自分が責任も持てない6兆円もの支援の約束を行い、金大中の2匹目のドジョウよろしく、国内でのイメージの建て直しを図るなど、露骨な政治的意図を感じないわけにはいかない。
 幸いなことには、韓国国民はそれに幻惑されていない。実際、世論調査では、盧武鉉の期待を裏切る形で、李明博(イ・ミョンバク)ハンナラ党大統領候補の優位は動かない。
 今日は金大中拉致事件の真相についての政府報告書が発表された。
 これも、盧武鉉政権による同様の意図を感じさせる。軍事独裁政権だった朴正熙とハンナラの関係を国民に連想させるにはいい素材だ。ただし、日本での金大中のKCIAによる公然の拉致、つまり主権侵害を認めれば、「日本とは一度対決したい」と反日感情をむき出しにしていた盧武鉉は、もっとも嫌いなわが国に謝罪することを迫られるという「痛い」矛盾を抱えた素材ではあるのだが。
 大統領が次の選挙に、自分を肯定する後継候補者の当選を意図して、露骨に政治に介入することほど恥ずべきことはない。そんな盧武鉉の末期の画策に、その政治的な未成熟さの典型を感じさせる韓国政治である。



 
| 児玉昌己 | - | 14:31 | comments(0) | trackbacks(0) |

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