米と北朝鮮の思惑の実現に対する失敗の結果で予測されることは、6者協議が破綻したことの確認であり、北朝鮮の再度の核実験であろう。
やるべきは、取り引きと宥和ではなく、北朝鮮への最大限の国際的制裁と圧力である。西側で失うものはない。
物乞い国家は援助を断たれれば、断末魔の苦しみに襲われるだろう。韓国の親北朝鮮勢力も政権から駆逐され、最後の砦もなくなっている。待っていれば、熟れ柿みたいに、体制は瓦解するだろう。
もっとも、「熟柿論はこれまでもあった。そしていままで待ったが、北朝鮮の独裁体制は延命できたではないか」、というものもいる。だが、情勢はこの10年で激変している。
韓国や国際支援、あるいは国内の独裁擁護勢力の支援を前提として、国家のあらゆる生産資源を核開発に集中し、民生を忘却し、国内での生産を止めてしまっている。
ちなみに東亜日報は、最高会議が明らかにした2005年度の北朝鮮の国家予算と、それに占めるミサイル発射費用について、興味深い試算をしている。それによれば、「国家予算を北朝鮮の公式為替相場(1ドル=150ウォン)ではなく、実際の市場の為替相場(1ドル=3000ウォン)で計算すれば、1億2950万ドル程度とみなし、06年のミサイル発射経費の600億ウォン(約6369万ドル)は、1年間の予算の半分に迫る巨額と試算している。
North Korea’s budget for 2005, released at the third session of the 11th Supreme People’s Assembly in October 2004, was 388.5 billion won in the North Korean currency. If converted to the dollar, not using the North Korea’s official exchange rate of 150 won for a dollar but the actual market exchange rate of 3,000 won per dollar, that figure amounts to $129.5 million. Thus, the 60 billion won or $63.69 million used on the missile test is equivalent to almost half of the country’s annual budget.
「発射費用は600億ウォン…6年間の対北支援金は3兆ウォン」 東亜日報 JULY 11, 2006 (英文タイトルDid North Spend Aid on Missile Test?)
ちなみに人口2300万といわれる北朝鮮の国家予算が実勢で、1.3億ドル(150億円)というこの数字は、自宅のある人口45万の長崎市の一般会計予算は約2000億円、勤務校のある人口30万の久留米市の予算が1100億円であることを提示すれば、その10分の1程度で、その額の意味を感得できるであろう。実に、無残というべき水準である。
実勢レートとは20対1と開きのある公式レートで計算しても、3000億円程度であり、国家というより、我が国の一地方都市の予算規模でしかない。
アフリカの最貧国並と私が言う根拠はこれである。彼らは、政治学的には、縁もゆかりもない「共和国」と自国を礼賛し、将軍様は「地上の楽園」と形容するするが、その実態は、この無様さであり、漫画的でさえある。
いずれにせよ、10年にわたる親北勢力からの援助で、北朝鮮という国家はその自立的な生存力を著しく弱体化させている。
70年続いたソ連崩壊で、我々が学んだことがある。美辞麗句に満ちた体制擁護と抑圧の政治スローガンやイデオロギーに、国民は我慢できても、国家が食料を提供できなければ、その国家の体制は滅ぶことを。