児玉昌己研究室
内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
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2008.06.30 Monday
貴州省暴動で想うこと
中国報道の専門社Record Chinaが以下伝えてきた。
女子中学生殺害>事件のもみ消し、住民数万人の暴動に―貴州省
「6月30日6時20分配信 それによると、28日、貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州甕安県で住民数万人の暴動が発生、政府庁舎が燃やされる事態にまで発展した。女子中学生の暴行殺害事件を警察がもみ消したとのうわさが広がったことが原因と見られる。」
社会主義国家の一番の問題は、指導政党(多くが共産党)が、社会における価値を一元的に支配するということにある。価値を支配するということは、価値を判断するだけでなくそれを強制する政治装置を構築するということである。
国家ということであれば、それは当然、公安警察とか、軍隊という暴力装置を伴うものである。
問題は、価値を決めるものが腐敗すれば、権力という暴力装置を持っているために、これを覆すのが実に困難になる。上記の貴州省のケースは、これによる鬱積した不満の爆発であるといえる。
警察権力が街の腐敗分子と結託しているという最悪の政治状況を背景としているようだ。 それにしても、万単位の暴動とは驚くべきだ。これだけ問題が大きく、深刻になると、政府も党も、「一部の外部勢力の仕業」だとはいえなくなるだろう。
チベット暴動につづいてのもの。北京五輪で発展を祝うべきこの年にである。
戦前、抗日戦線で広く民族主義を糾合し、国民の支持を集めた共産党も、抗日戦に勝利し、あるいは国民党との戦いに勝利し、内外で敵を失うにつれて、皮肉にも内部腐敗を強め、市民の不満を昂進させていることは、つとに報道されてきた。
だが、改めて万単位の暴動、しかも十分に理解できる状況での、貴州省での公権力にたいする人民蜂起の事実を突きつけられると、それほどに官憲の腐敗はひどいのかと思い知らされる。一党独裁下で、私有権が広がるにつれ、不正と腐敗は拡大する。
1949年内戦に勝利し、国民党を駆逐し、中国革命は成就し、国家は樹立できたものの、ソ連同様に金属疲労を起こしつつあるのだろう。
一党独裁と指導的政党の地位を享受してきた共産党が、急速に進む中国の資本主義化の過程で、腐敗し、堕落し、そして国民の怨嗟の対象となっているというのは、実に寒心に耐えない。そして打倒される対象が共産党になりつつあるとすれば、なんとも言葉を失う。
サーアクトンは、「絶対権力は絶対的に腐敗する」という統治に関する重要な政治的格言を残している。歴史は繰り返されるということだ。
日本でも、散々叩かれる政党政治であるが、それでも断然、一党独裁よりも複数政党制による政党政治がよいのである。
複数政党制度での民主主義には確かに時間もエネルギーも、そして金もかかる。それは事実である。だが、それでもなお、それは国民の不満を暴動に発展させる要素を解消させ、回避する手段でもある。そのことを、しっかり理解しておこう。
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2008.06.30 Monday
公開講座抽選に関する意見が届く
本学、および久留米市と共催のエールピアでの公開講座に関するコメントが届く。
抽選にもれて、参加できなかったとのこと、申し訳ないことでした。会場の受け入れ規模の問題があり、大変失礼しました。80人程度の部屋の次は250名ということもあり、少ない方で、事務方が準備したようです。
当選者の中でも、当日急用等で欠席される方もおられます。久留米大学の公開講座担当の教育学習支援センターか、講演者本人に直接、問い合わせていただければ、対処できる余地はあるかと思います。
改めて、不手際をお詫び申し上げます。アクロス福岡で「欧州統合−過去、現在、未来」の3回シリーズをやります。そちらでまたお会いできればと思います。
今後ともよろしくお願いします。
追記 無論、覚えていますよ。ブログも見てくださっていて、有難うございます。
以下、コメント。
公開講座の抽選にもれたものです。
回を重ねるごとに希望者が多くなって、先生のお話が聞けるのは宝くじに当たるのと同じでしょうか。
ブログを毎日楽しみに読ませていただいてます。
また、アクロスでの公開講座で受講させていただきます。
よろしくお願いいたします。一度、「えーるぴあ」でお話をさせていただきました。
お忘れかもしれませんが。
| 読者 | 2008/06/30 8:43 AM |
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2008.06.30 Monday
6月最終日 私事とEU議長国の交代時期
忙しい数日が終わり、講義のない週の初めの月曜日。朝は少し楽だ。
久留米での仕事場では、昨日の講演で頂いた花束が華やかだ。百合に向日葵(ひまわり)、花がある暮らしはいい。潤いがある。政治や国際問題と日々格闘していると時に苛立つ。そんな中、自然の香は苛立つ気分を癒してくれる。
今日で6月も終わる。一年の半分がこれで終わることになる。世のサラリーマンや公務員にとって嬉しいのは、ボーナス。この時期から来月にかけて支給となる。もとより企業業績でその増減はあるし、最悪は無支給というところもある。一喜一憂である。
給料は家族と自分が生きていく資金としてあっという間に消費される。それゆえ、ボーナスはそれでは買えない諸々に使え、あるいは貯蓄でき、勤労のご褒美みたいで、なにかしら子供時代のお小遣いの日のようで、嬉しい。
6月の終わりはEU研究者として言えば、EUの(欧州)理事会の議長国の任期終了日でもある。半年で輪番制にしているのが現状だ。今はスロベニア、そして明日7月1日からからはフランス。EUの理事会ではあらゆる会議で、議長がフランスに交代する。
歴史文書化した欧州憲法条約を受け継ぐリスボン条約は、同じく批准過程でアイルランドの国民投票の否決という想定外の事態を迎えている。この条約では、EU大統領制度を導入している。つまり加盟国の急増で、14年に一度程度しか廻ってこなくなる現行の輪番制を改めて、2期5年を最長とする常設議長制度に置き換える。
アイルランド国民投票否決はあったものの、別途、すでに英独仏など18カ国がリスボン条約の議会での批准を終えた。(ドイツは憲法裁判所の判断と、大統領による署名待ち)
このリスボン条約をいかに救済していくのか、フランスサルコジ大統領の采配が見ものである。
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2008.06.29 Sunday
久留米大学公開講座「ヨーロッパと世界」の講演を終える
昨夜遅く京都から戻り、今日は法科大学院の教え子のN君に助けてもらって、資料つくり。その後、2時から久留米市民会館のエールピアで「ヨーロッパと世界」を無事終える。やれやれである。
幸い雨も上がり、80名の受講者にご参集いただき、ありがたい事であった。
150名ほどの応募者から抽選ということで、当選者を中心に来聴されている受講者の皆さんだ。久留米大学としても、市民との交流も積極的に進めており、多数の希望者、参加者があるのは嬉しいことである。
欧州統合は確実に成果を収めつつあり、6カ国で始めた実験は、27カ国に成長している。ヨーロッパは、EUと同義語になりつつある話をした次第だ。また、現下のリスボン条約のアイルランド国民投票否決という事態は、EUがより高次の連邦主義に立つ統合の必要性を前にして、新たな連邦的政治組織の生みの苦しみを経験していること、その中で派生している問題であることなど、休憩と質疑応答を入れて、2時間話をする。
終わって、花束まで頂いたのはありがたい事であった。
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2008.06.29 Sunday
北朝鮮テロ支援国指定解除のブログ記事に関して、読者からのコメント
今朝の、米ブッシュ政権による北朝鮮テロ支援国指定解除に関するブログについて、以下読者から、コメントを頂いた。
■功奏した対北制裁 絶対に安売りは禁物−テロ支援国家指定解除後でも有利になるように立ち回る12の方法!
こんにちは。北朝鮮への制裁はかなり効いています。ここで手を緩めることはできません。たとえ、アメリカがテロ支援国家指定解除後でも有利になるように立ち回る方法はいくらでもあります。詳細は、私ブログを是非ご覧になってください。
| yutakarlson | 2008/06/29 11:12 AM
それについては、yutakarlsonさんに以下回答したい。
そうです。北朝鮮制裁効果についての認識は私も同様です。国際的制裁が功を奏していたからこそ、それを打ち砕く危険が高いテロ支援国家指定解除に強い危惧を持っているその気持ちを書いた次第です。
実際、EU加盟国でわずかにエストニアとともに北朝鮮と国交樹立をしていないフランスはEU加盟27カ国にあって、人権侵犯へ強い意思を持つ最後の砦ともいうべき国家です。それが米国によるテロ支援国解除という北朝鮮宥和政策の展開を受けて、北朝鮮との外交関係の樹立も口にし始めました。実際、今後の動向では、国家の承認にも動き出すといっているほどの影響を及ぼしています。
もとより、米国の意思や政策転換とは無関係に、拉致の問題、核開発の問題は日本固有の問題です。最大限、北朝鮮を監視し、国際社会に注意を喚起し、これを追い詰めていく必要があります。その点、まったく貴兄と同意見です。
なお、本ブログでは、建設的なコメントについては、ドシドシ掲載していきたいと思います。ささやかなブログながら、この場で、相互に、思想の交流が出来ればと考えています。貴ブログの健闘と発展を祈ります。
なおコメント氏のブログは、以下です。
http://yutakarlson.blogspot.com/
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2008.06.29 Sunday
ブッシュは歴史に名を残せるのか- もとよりネガティブに Oh! Yes 下
さて冒頭の設問に回答するときだ。
ブッシュが歴史に名をとめる、それはいうまでもない。ただし彼の願望とは全く違う形で。
イラクのフセイン政権について、ありもしない大量破壊兵器を、存在すると国際社会にたいして、欺瞞をふりまき、国連を全く無視する形で、イギリスのブレアまで巻き込んで、数十万の兵を送り、そして中東の安全どころか、世界にイスラム原理主義の脅威を拡散させ、不必要に現在の中東の大混乱と石油危機の状況を作った米外交史上最強の大統領と名を残すことは確実である。これについては、欧州の学者や政治家も含めて、異論はない。
ブッシュの「功績」は中東世界だけではない。地理的には世界規模に拡大している。すなわち、アジアについてもこれに加わる。
テロ、麻薬、売春、偽札、拉致、大量破壊兵器の拡散とあらゆる国家的な犯罪に手を染め、かつ核の脅威を確実に高めている「21世紀に残存する最後のスターリン主義国家」(欧州議会)である北朝鮮にたいして、初期の姿勢をあざやかというべきも捨て去り、アジアにおける最も重要な同盟国の願望に背を向け、米国の外交に対する不信感を極度に高めた大統領としてもその名を残すことは確実だ。実に2重の功績(もとより無能な)をもって。
だが問題の深刻さは、たんに対米不信を強めたというではない。不信を強めただけなら、それだけのことだ。問題の深刻さはそれにとどまらないことにある。
アジアにおいて、ライス女史の核開発競争に対する薄っぺらな現状認識と危機感とは全く逆に、北朝鮮の独裁者を延命させ、核の脅威を温存させることにより、第2次大戦以降、平和愛好国でありつづけている日本において、むしろ保守派のみならず、一般国民において、対米不信のみならず、核武装論への傾斜を強めるよう作用したという事実について理解できていないのである。ブッシュ、ライスはアジアの核の競争を北朝鮮への制裁を弱めることで、むしろ促進させる種をまいたといいうる。
実際、戦後日本外交は、国連主義という衣をつけながらも、実は、米国のアジア戦略の一部を、非核勢力として、構成してきた。この日本外交にたいして、むしろ核武装への傾斜にたいする抑制という日本が維持してきた最後の精神的砦を、ライス自らが解除するよう積極的に働きかけたということである。
ここにアメリカ外交の滑稽さと悲惨さがある。もとより、これは日本人である私の対米感情と分析であり、彼らは自らの論理が正しいと強弁するかもしれないが。
日本において、これだけ北朝鮮テロ支援解除に反対の意思が表明されているにもかかわらず、しかも米国自身が示した完全な核開発の状況の申告がまるで実践されていない形で、つまり原則を捨て去っての政策転換であった。この無原則ぶりは、朝鮮日報も書いていた。
米政権の無定見な政策転換の影響は中長期的には、日本とアジアの安全保障を考える場合、決定的となると私は見ている。実際、アメリカがやったことを単純に言い換えれば、イラクとは不必要な戦争を不用意に実践し、他方、制裁をし続けねばならない北朝鮮では、その最も重要な局面で、これを解除し腰砕けになったということである。しかもイラクの失敗を北朝鮮で挽回できると信じて。全くナンセンス極まりない。
なにより、このブッシュ政権の対北朝鮮政策の無原則な転換は、日本に対しては、自立的外交安保のいっそうの必要性を強めたことにある。その影響は、わが国においては、長くタブーであった核武装も選択の1つとして想定させうるものでさえある。
米ブッシュ政権は、核武装にまい進する北朝鮮の危険性を過小評価し、これにむしろアメを与えることで、日本に深刻な安全保障への危機意識を高めたという意味で、歴史に名を残すことだろう。
ブッシュ政権の問題は、米国だけでも世界の外交を行うという単独主義にあり、米国だけで世界を動かせるとするブッシュ政権の傲慢さのなせる技である。
それにしても、この状況下でのわが日本。
問責総理、高まる内外の難局のなかで、まるで指導力が見えない。拉致被害者の救済についても、情けないほどに、指導力を見ることが無い。影が薄いだけでなく、この場で、消費税の大幅増税までいってみせた。増税ならだれでもいえる。増税をぶち上げて、勝利した政権など歴史上どこにもない。
世襲的貴族政治家という環境と、ご高齢による精神の摩滅と鈍感さのなせる業であろうか。総選挙での、自民の歴史的な大敗が高い蓋然性を持って予想される。
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2008.06.29 Sunday
ブッシュは歴史に名を残せるのか―もとよりネガティブでOh! Yes上
ブッシュ米政権は26日、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を米議会に通告した。
ブッシュといえば、かつて、母校の式典で、みずからをC(最低の成績)で卒業したことを、「Cでも米大統領になれる」と胸を張ったことがある。TVの映像でこの場面に接したときに、米国の大統領はCでは困るのだと、暗澹たる気持ちを覚えたことを記憶している。
そして8年にわたる政権末期のここ数ヶ月、北朝鮮宥和政策への驚くべき姿勢転換は一体何なのかという疑問がずっとある。
この疑問に対して、政府部内に近い筋から得た情報を総合して、産経のワシントン支局(有元隆志、外信部田北真樹子)が分析する以下の記事を出している。
北のテロ支援国家指定解除 ライス長官、核競争に危機感 産経新聞6月28日
そこでは、側近のライス国務長官が、「アジアにおける核競争の激化の可能性」を危惧したこと、そしてブッシュは、北朝鮮との国交樹立を希望しているということさえ言及している。理由は歴史に名を残したいからだ、とのことだ。
ブッシュは歴史に名を残せるのか。当然イエスである。ただし、彼が熱望している意味とは全く正反対にである。
それについては、あとから触れるが、ネオコンなき後、政府にあって北朝鮮政策を統帥しているブッシュの側近のライスは、もともとソ連専門家であった。それゆえ、アジアのことを全く理解できていないのではないかと感じていたが、それを確認させる全く驚くべき、アジアと、対日認識である。
日本では、北朝鮮という国家はクレディビリティ(信頼性)がゼロという状況を熟知している。その日本にあっては、ライスとヒルが二人三脚で展開する対北朝鮮宥和政策が利敵行為に作用する以外の何ものでもないことを全く理解できていない。
むしろ、国民のことなど無関係に体制延命のために北朝鮮の独裁者が核の開発にまい進しているという事実認識がライスとヒルにはまるでない。国際社会から、単独主義の身勝手な政権だと批判され続けているなかにあって、汚名を挽回し、ブッシュ個人を擁護したいとする、側近としての個人的希望、願望で外交を動かしているようだ。
だがこの側近の2名、その危険な政権を延命させていくことの意味をまるで理解できていない。ましてや、北朝鮮と国交樹立をブッシュが期待していることは、少なくとも日本にとって、そして李明博政権にとって、最悪の選択でしかないことをブッシュはまるで理解できていない。
歴史に名を残すべく、米北朝鮮の国交樹立の可能性についてさえ、ブッシュが望んでいることを先の産経の記事は指摘している。これは重要な箇所である。
ただし産経は、これに言及した米高官の名前を引用してない。産経の記事はこれほどの重要な箇所を書きながら、そのソースを出さないのは、きわめて無責任である。ただ、もし好意的にとるとすれば、それはそれほど重要事項であり、軽々に口に出来ないことであり、関係者から産経の記者がオフレコを求めらているのかもしれないともいえる。
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2008.06.28 Saturday
今日は日帰りの京都での研究会
同志社でのリスボン条約の研究会で、京都出張。一日の梅雨の晴れ間を昨日経験して、久留米は今日も雨だった。
土日の休息日もつぶれる。今日は若手の報告を聞かせてもらうのだが、明日は、私の番。テーマは「ヨーロッパと世界」。久留米市民のための本学主催の公開市民講座、「世界情勢」の4回シリーズの最終日(場所はエールピア)。
それゆえ、深夜には戻り、翌日に備える為に日帰りの旅。福岡―京都は、新幹線も多数あり、日帰りが可能となっている。だが、研究会に出ているよりも、汽車に乗っている時間が長いのが辛いといえばいえる。
行きはEU関係で、リスボン条約の前身の欧州憲法条約についてのアンドルー・ダフの専門書、帰路は古田武彦先生の「古代史を疑う」でも読んで、時間を効果的に使うつもりだ。なお、古田先生は7月5日、来週の土曜日に来学されて、講演をしていただくことになっている。すでに希望者で満杯。先生の熱烈なファンがおおいのだ。
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2008.06.27 Friday
諫早干拓潮受け堤防開門命令の佐賀地裁判決を強く支持する
国の無策や積極策が国民を苦しめることになるケースは時に起こりうる。
無策で、長期にわたり被害者の救済奪還を放置したのが、北朝鮮拉致問題だろう。
積極策が問題を生む例は、強引な行政的手法で、大規模な反対運動が展開され、しかもなお利便性が悪すぎる成田や、今現在も地盤沈下が止まらないで補強工事に億単位の金が継続的に必要な関空、そして今日、潮受け堤防の5年間の調査閉門の判決がでた諫早干拓だろう。
諫早干拓は1989年より「国営諫早湾干拓事業」の工事が行われ、1997年4月14日に潮受け堤防閉門。あれから11年が立つ。堤防閉門の結果、この「宝の海」では、二枚貝タイラギが死滅、大規模な養殖海苔の被害も発生し、有明海全体に汚染が広がった。これらは報道によりよく知られている。実際、上空からの航空写真では、閉門後、外と内との色が明らかに異常というべくも相違を見せた。
干拓といえば、聞こえがいいが、実は干拓の目的も、30年にわたる議論の中では、減反政策のなかで、農地拡大から防災へと揺れて、2転3転している。
特に佐賀地裁の判決で注目されるのは、国家に対しては、「中・長期の開門調査をして干拓と環境変化の因果関係がないことを反証する義務がある」にもかかわらず、これに協力しないことは立証妨害と言っても過言ではないとし、「訴訟上の信義則に反する」と批判していることである。
関空の地盤沈下や、諫早干拓での環境アセスも、国の意向に沿う学者の見解が採用、援用されていて、およそ公平なアセスがなされたとはいいがたい。関空の地盤沈下も、諫早や干拓での閉門による魚介類への悪影響も地元学者からは、深刻な懸念がともに表明されていた。それが無視され、強行され、そしてこの無惨というべき結果である。
膨大な血税を投入して、またしても司法から、その手続に問題があると指摘されている。これは、大型公共工事について、その進め方にレッドカードを裁判所が出したというべきものである。なぜこうしたことが起きたのか、大型公共工事についての真摯な検討が必要であろう。
諫早湾干拓、排水門の5年間開放命じる…佐賀地裁、 読売新聞6月27日10時18分配信
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2008.06.25 Wednesday
海上自衛隊:艦艇「さざなみ」、初の訪中受け入れを歓迎する 下
国民を奴隷状態に置き、テポドンにみられる弾道核ミサイル開発に狂奔し、これを金王朝の独裁体制の延命の道具に利用する北朝鮮こそが、日本の国防の充実を実践的課題として教示したということは、ある意味で、皮肉なことである。
北朝鮮を長く無批判にも擁護してきた革新勢力は、拉致事実の露見と、核開発の一端としての1998年8月31日のテポドンの太平洋着水という衝撃的事件を受けて、決定的に国民の支持を失った。この事実は、革新勢力がもつ観念的国際政治認識の底の浅さを同時に示すものであった。
彼らは、拉致を間接的に隠蔽し、被害者の救済を大幅に遅らせたことで、これ以降、倫理的にも破綻し、政治の指導力を決定的に後退させたのである。
「21世紀最後の未改革のスターリン主義国家」(欧州議会)といわれる陰険極まりない北朝鮮については、この国家が世襲独裁者の死とともに崩壊しない限り、最大の警戒を続ける必要があるし、北朝鮮の脅威に対しては、十分の備えを持つ必要がある。この北朝鮮を除いて、隣国同士が不必要にいがみ合うことはない。
特に中国とは2千年付き合ってきたし、お互い引越しすることもできない。言うべきことは言いつつも、良好な関係こそが一番である。
三矢事件に戻っていえば、当時はまだ戦後20年余り、国家総動員法と戦時体制のイメージが一般にまだ強く意識され記憶されていたのだが、民主国家が成立して、60有余年。平和国家であることと、防衛力整備の必要性は両立するものとようやく受け入れられる時代となり、市民社会の常識となっている。
戦時にあって平和を構想することの重要性と同様に、平時にあって戦時のことを構想することの必要性については、戦後の傑出する国際政治学者、永井陽之助(東工大教授)が1960年代後半から指摘していた。
国家の安全という問題のほかに、国家という枠を陳腐化させるほどの地球温暖化と深刻な地球環境の悪化というグローバルな問題も提示されつつある。
21世紀の新たな時代の到来の中で、日本の海自の艦船の中国入りというニュースを受けて、これら、日本を取り巻く環境の変化を感じつつ、往時茫々という言葉を今思い起こしている。
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児玉昌己
著書(共著)やお薦め書物
現代欧州統合論 EUの連邦的統合の深化とイギリス (久留米大学法政叢書 21) [ 児玉 昌己 ]
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EU 欧州統合の現在 鷲江義勝/編著
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アジアの国際協力と地域共同体を考える [ 児玉昌己 ]
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欧州統合の政治史―EU誕生の成功と苦悩
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児玉 昌己
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NHKカルチャーラジオ 歴史再発見 EU・ヨーロッパ統合の政治史―その成功と苦悩 (NHKシリーズ)
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リスボン条約による欧州統合の新展開―EUの新基本条約
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鷲江 義勝
児玉昌己も入った同志社チームによるリスボン条約の翻訳と解説の決定版。アムステルダム条約、ニース条約と比較対照し統合の連邦的深化を理解できるように工夫されている。外国にも類書を見ない画期的企画。
著書(共著)やお薦め書物
欧州議会と欧州統合―EUにおける議会制民主主義の形成と展開
(JUGEMレビュー »)
児玉 昌己
日本におけるEU認識と欧州議会研究の現状と課題、欧州統合の制度形成と欧州議会の権限拡大、EU政治における議会制民主主義の展開、EUの統治構造と国民投票制度の問題など、欧州議会の役割についての論考をまとめる。
著書(共著)やお薦め書物
ヨーロッパ統合の政治史―人物を通して見たあゆみ
(JUGEMレビュー »)
金丸 輝男
共著
1996年3月
金丸輝男編著 『ヨーロッパ統合の政治史』
有斐閣
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