イギリスではたとえば、1987年の総選挙で、労働党と保守党を除く、Liberal/SDP Allianceが22.6%も獲得したにもかかわらず、議席は、驚くべきもわずかに22でしかなく、全体(650)のわずか3.4%でしかなかった。
2005年の直近の総選挙でも、英労働党は35.2%で、全体の55.1%で356議席を得ている。ちなみに保守党は労働党とわずか2.8%の差で、198議席と、実に148議席も差をつけられた。まさに悲惨ともいうべき、得票率と、獲得議席の空前の乖離現象である。
この状況を積極的にわが国に導入しようとしているのが、鳩山民主である。しかも民主の名を冠して。まさにブラックユーモアを超えている。
わずか20%台の得票でも、たとえば、投票所に足を運ばなかった有権者を入れれば、80%の(消極的な)反対票をいわば焼殺して、政権を構築できる。
現代日本でも、4年前の小泉圧勝がわずか40%台で、議席の7割以上を得て、あの格差拡大全開の政治を展開できた。あれはまだ現行制度が持つ比例のために、それでも若干死票が緩和救助されたが、それでもあの状況である。
完全小選挙区になれば、何が起きるか、ブログの読者諸賢にも想像できるというものである。社民や国民新党はもとより、公明も共産もほぼ消滅する。保守系無所属も例外ではない。さらには、自民にも民主にも、候補者には同様な累々たる死票の矢が突き刺さる。
他方、比例についていえば、民意を正確に反映できるという意味で、わが国の民主主義の宝石というべき存在が比例である。
この比例定数を削減廃止しようすることを選挙公約に掲げているのであるから、これほどのウルトラ保守は、今まで存在しなかった。それほどに反動的保守である。
すでに 比例定数は2000年に20議席が削減されており、さらに小沢民主党の時代において、2007年参院選のマニフェストで、衆院比例定数の80削減を明記している。
しかも今回はいよいよ本丸の衆院選挙のマニフェストにおいてである。
選挙制度は、それによって、政治と政策を実践するすべてを決定する前提であり、根幹となる。それが選挙制度である。
かくも国民の、正当に投じられた民意の政治的意思を殺し、その上に政権を構築する危険が濃厚にある選挙制度を公然と打ち上げ、それを促進する鳩山民主党は、この部分については、まごうかたなき、ウルトラ保守政党であるといえる。
最後にもう一度言っておきたい。
選挙制度は、外交、安保、国防、年金、教育、福祉等々、すべての政治と政策の基礎をなす民意を確保する数少ない国政とつなぐ場である。
膨大な死票ををもって、勝者と敗者を意図して強引に生むことが確実な選挙制度を積極的に導入しようとする政党は、保守でさえないと断言しておこう。
英米の政治のデータは以下による。
参考文献・サイト
Duncan Watts, British Government and Politics 2006.
Kevin Harrison and Tony Boyd, The Changing Constitution.2006.
Will Storey, US Government and Politics.2007.
http://en.wikipedia.org/wiki/Scottish_Parliament