TBS日曜劇場「官僚たちの夏」(城山三郎原作)を見ていた。
三国連太郎の息子という表現を完全に脱したといえる佐藤浩一(通産省・重工業局長の風越信吾役)を中心に、現在経産省と名を改めている通産省内での日本産業の在り方を巡る政治ドラマを扱っている。
忘れさられていた貧しくとも未来に夢を描いていた時代、今まさに思い出すべき現在を作った苦闘の時代を扱って、実に新鮮である。
テーマは、第2の黒船対策。自由化という米国からの強い外圧の中で、国内産業の保護と育成をどうしていくかという国家経済戦略の根幹を定める会議である。
そのかじ取りひとつで、繊維産業の、そして自動車を含むその他の重要産業の興廃に直結する重大事案である。
軍の支配を脱し、戦争と戦後の荒廃から立ち直りつつある日本。優秀な一群の官僚が国家利益を代表するという強い自負を維持し、国家を主導する、官僚が最も輝いていた 昭和30年代前半。
私の世代が、子供だった時代だ。東京五輪が始まる直前の日本である。
それから50年の年を経た、2009年、平成21年の夏、毎日新聞は以下伝えている。
「民主党の鳩山由紀夫代表は26日、新潟市内での街頭演説で、政権交代が実現した場合、各省庁の事務方トップに当たる事務次官で構成する「事務次官会議」を廃止する考えを明らかにした。」首相と各閣僚が参加する閣議の前に開かれ、事前調整で実質的に政策が決定されてきたことから、閣議の形骸(けいがい)化を避け、政治主導にするのが目的。
鳩山代表>事務次官会議廃止 11年度から子ども手当満額7月26日 毎日新聞
国家の統治が続く限り、官僚の役割は終わることはない。
だが、官僚が政治をリードしていた「官僚たちの夏」が終わりつつあることははっきりしている。それが「官僚の冬」となるのか、誰も分からない。
官僚が政治に毒されない限り、そして官僚固有の優秀さと有能さを失わない限り、その役割がなくなることはない。