児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
九州EU研究会に学ぶ
 朝から大学病院。随分ガタがきたポンコツ車みたいだが、おかげで、メディカルチェックも無事終了。先生の診断と、各種データでは、「ホラー」チェックにならずに済みそうで安堵している。

 その後、食事もそこそこに、時間を気にしながら、西鉄大牟田線で天神まで特急で、その後は地下鉄を乗りついで、西新の西南学院へ。
 サブプライム後の欧州経済をどう見るかということで、西南学院大の国際金融専門家で、研究会の会長でもある尾上修悟先生の熱のこもったご報告と、それを継いだ同じくEU金融論の岩田健治九大教授の補足的報告に一堂大いに触発され、活発な議論が交わされた。

 またそれに先立ち、WTOルールEUの共通農業政策の整合性の問題を今春熊本学園大学に着任された浪本先生が報告された。
 実に緻密な報告で、指導教授は誰かと思いきや、懇親会の席で、
個人的にはベルギー時代から懇意にさせていただいている小室程夫神戸大学教授だということで、納得した次第だった。
 懇親会は、恒例の、近くの居酒屋「ジャガイモ」。出席者は実に研究会出席者の8割を超えるものとなり、学び、懇談し、実に楽しい時間であった。
九州にもEUプロパーの若手研究者が徐々に着任して、レベルの高い研究会になりつつあるのは、幹事としても喜ばしいことである。

 

| 児玉昌己 | - | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
久留米・福岡の慌ただしい往来

担当しているヨーロッパ地域研究の試験の監督を終えて、慌ただしく西鉄久留米発福岡天神行きの電車に乗り、アクロス福岡での公開講座を済ませてきた。
 最大80名の教室だが、60名ほど入っておられて、EUの現状を話す。

明日は大学病院でメディカル・チェック。たけしの番組みたいにホラーチェックにならなければよいが。

熟年世代となって、あちこち痛んでいる。しかし西南学院大学を主催校として毎年2回行っている九州EU研究会の定例の研究会もあり、これまた今日と同じように、久留米から福岡市内にある西南学院に向かわねばならない。貧乏暇なし。

| 児玉昌己 | - | 21:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
緩やかな夜の終わりは南佳孝 「スローなブギにしてくれ」で過ごす
 深夜、南佳孝「スローなブギにしてくれ(1981年)」を聴きながら、一日の終わりの緩やかな時間をブランディで過ごしている。
 実にアメリカ的な、カントリーの雰囲気のある歌だ。プレスリーにでも歌わせてもおかしくない曲だ。よくもこれだけ日本離れした曲を作れるものだ。
 しかも、歌詞もメロディにつにマッチして、この曲の雰囲気を鮮烈にしている。名曲とはこれをいう。

米国といえば、午後は、在福岡米国領事館の関係者が来学。総選挙関係について、研究室でアレコレ意見交換。

先週は大雨を衝いて、脇坂紀行朝日新聞論説委員が本学研究所の主催の講演で来福。お話し頂いた。
 明日は、同じくアクロス福岡の本学の公開講座で、今度は、私の担当。

「世界情勢を読む ―前編―」と題して、4名の講師で行うシリーズの1回で、木村汎北大名誉教授(北大元スラブ研究所長)がロシア情勢を、そして韓国情勢は、毎日新聞元ソウル支局長の古野喜政先生がすでに務められている。人気あるシリーズで、すぐに受講希望者で定員が埋まったと聞いている。

ヘビーウエィトの両先生の後、役不足だが、欧州の政治情勢をEUを中心に私が話させていただくことにしている。

 

| 児玉昌己 | - | 23:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
待たれる8月入り

 小中高は夏休みに入ってずいぶんになるが、勤務校では、学部での講義がようやく終わり、試験期間。その後に夏休み入りだ。
 以前は講義はもとより、試験も採点も7月までにすべて終わっていた。今は7月の下旬までしっかり講義。

 同じ大学教員といえども、講義も休講も驚くほど安易だった40年ほど前の、私どもが習った大学教師とは別物となっている。
 山口九州北部豪雨と命名されたあの雨に祟られた7月ももうすぐ終わる。いろいろあったものの、振り返るゆとりもない。8月の休みが待たれるこの頃だ。
 8月に入れば、公示も近まり、衆院議員選挙の立候補者は死に物狂いの月になるのだろう。われわれ有権者はこの時ばかりは、「消費者は神様」という表現に倣って言えば、「有権者は神様」となり、知りもしない候補者から、頭を下げ続けられる王様となる。
 候補者は、現参院議長江田五月氏の表現を借りていえば、赤じゅうたんをめざした真夏の就職活動である。
 われわれは、通常の真夏の日々。唯一大学教員として許されているのが、8月から9月中旬までのオフ。
 この期間は、海の家のオーナーのごとく、われわれにとって、かき入れ時。ただしお金のことではない。
  講義や業務からしばし離れ、書きたい論文、読みたい書物など集中して取り組める、貴重な知的生産の仕事「休暇」である。

なお大学教員の日常については、以下のブログ参照

2006.05.15 Monday 大学教員への道
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=75

| 児玉昌己 | - | 21:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
驚くべきも不適切な民主の公約の財政的裏付け 下

 鳩山代表、公約実現との関係で、なってもいない総理職の辞任などを軽々に口にする。
 そのことが、生活費などに困らない特権的環境にあることを示していて、実に貴族的な人である。

 「身を削る」という陳腐な常とう文句と同じく、不具合が出ればやめると軽々にいうことは、実に、貴族的議員の無責任な発言であることに気が付いていないのだろうか。
 政権政党であればなおさらだ。そうでなくとも、解党しない限り、公党として、その責務は続く。
 不可能なことは言わない。それが不誠実な言葉に満ち満ちた政治における真の誠実さでもある。

 報道が正しいとすれば、民主の公約の財源については極めて問題のある内容である。 
 民主の政策は、財源の当てのない単なるバラマキでしかないといわれても反論ができない。

 それにしても、これで自民からの財源の裏付けのない民主という反撃に格好の材料を与えると考えないとすれば、よほどこの提案をした党関係者は、ナイーブか、あるいは有権者をなめているかということである。

もう少しましな財源論を提起するかと思っていたが、期待が裏切られるとはこのことである。

数字に細かい長妻君などに聞いてみたい。民主は大いに政策経費の財源の根拠を示す義務がある。 
 もとより、これをもって、放漫財政を続け、政府債務を危機的なまでに膨らませ、しかも内紛に明け暮れ、いまだマニフェストさえ出来ていない自民の幹部諸君が、アレコレいうレベルでもないことは付言しておく。

| 児玉昌己 | - | 20:59 | comments(0) | trackbacks(1) |
驚くべきも不適切な民主の公約の財政的裏付け 中
  同様に、問題なのは以下だ。
 政策経費を賄うための不足分として計上しているのが、財政投融資特別会計の運用益と政府資産売却という。その額、実に5兆円という。財投特会、いわゆる埋蔵金については、その活用といっても、政府資産の活用で十分な収益を上げられる保証はない。

その数値の根拠が聞きたい。
 しかも、国有財産である政府資産については、売却と言っている。いかなる規模で、何をどう売却するのか。
 いったん売却消費すれば、もう二度と活用不可能な一時的措置であり、継続的に実施される政策財源にこれらを充てると仮定してとすれば、笑止千万である。

無駄をなくして生じる9兆円と、運用益および売却で5兆円というが、5年以降は、穴埋めをどうするつもりなのだろう。
 ただでさえ自民の長期政権による長年にわたる放漫財政で、巨額政府債務を抱える現状で、景気回復も税収の伸びも不透明だ。
 由紀夫氏は、かりに総理になった後は出馬しないとその姿勢を明らかにしたという。また公約が果たされなければ、それまた辞任という。
 だが、はっきり言って、一政治家の去就など、一般国民にはどうでもよいことだ。
 言ったことができなかったではなく、いい加減なことは言わない。不手際となりそうなら、それは事前に回避する。
 そしてひとたび行えば、誠心誠意、これを成功に導くために努める。というのが、本来、責任ある政治家として発するべき言葉ではないか。
 庶民にとって、一政治家の覚悟とは無関係に、生活は続いていく。
 仕事など、体調にもかかわららず、生活のために、やめたくてもやめられないのが庶民ではないか。
 

| 児玉昌己 | - | 20:25 | comments(0) | trackbacks(0) |
驚くべきも不適切な民主の公約の財政的裏付け上

  選挙戦も実質的にスタートしているが、民主の公約が発表された。子供手当の創設、公立高校の無料化、高速道路料金の無料化などなどを打ち出している。しかし最も重要な財源については、実に問題が大きい。
 
 時事通信は以下伝える。

「政策実現に必要な予算は、政権交代から4年後の13年度には168兆円になると積算。公共事業、各種補助金見直しなど無駄削減で91兆円、財政投融資特別会計の運用益など埋蔵金活用、政府資産売却で5兆円、所得税配偶者控除廃止などで27兆円を確保するとした。消費税引き上げには触れていない。」

「年31万円の子ども手当=ガソリンなど暫定税率廃止−民主が政権公約  時事通信727

すでに一部のブロガーも指摘しているように、その財源の根拠と見通しについて、極めて問題のある内容である。

何より、消費税について触れていないのが問題である。書かないとすれば、翌年あげるということか、4年は上げないとあれほどいっていたのにである。
 公約にも重要なものとさほどでもないものがあるが、これは民主の政策経費と直結する最重要問題である。

| 児玉昌己 | - | 19:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
TBS日曜劇場「官僚たちの夏」で想うこと 下 米国型の官僚制は排さるべし

 他方、米国とは対照的に、欧州にあっては、イデオロギー的には、社会民主主義という政権政党を形成させるほどにも強力なイデオロギーがある。ドイツの社会民主党、フランス社会党、イギリス労働党いずれも社民主義を背景とし、政権を担当した有力政党である。

米国では、イギリスからの独立という歴史を背景にして、現在では、政権の交代が行われることはあっても、それは、イデオロギー的には、ほとんど変わり映えのしない2大政党制の交代にすぎない。それほどまでに、両党には思想上の差がない。
 にもかかわらず、米国での政権交代は、それに応じて、大量の官僚が入れ替わる、スポイルというpatronage system支援者登用主義というべき政治的慣行があり、21世紀になってもそれは依然として継続されている。
 近代行政、現代官僚制度の発展の歴史からみれば、間接選挙をとる大統領制度と同様に、植民地の遺制ともいうべき遅れた制度である。
 翻って、日本には、日本のシステムがある。長い日本の政治の伝統がある。和をもって貴しとなすという、あの1400年にわたる日本の知恵がある。
 上級公務員の採用試験も明治新政府が導入し、成功した制度である。貧富にかかわりなく、試験で広く一般国民の子弟を優秀であれば、採用する。

 本題に戻っていえば、官僚の恣意的党派的任用、つまり米国型の猟官制度、党人任用制度(spoils system/  patronage system) は、単純小選挙区制同様、日本の政治に報復が報復を呼ぶ「敵対の政治」を招き入れるだけで、絶対に排されるべきである。
  他国のシステムはそれ自体が歴史と文化を背景にしており、それを忘れて、猿真似をしても、必ず弊害を生み、失敗するということをである。
 しかも大統領および両院議員の選出制度、そして官僚制度のいずれをとっても、民意が正確に反映される制度という民主主義の観点からみて、そして官僚の中立性という観点からみて、遅れているといえるのが、米国の特色だ。

 ともあれ、官僚にとって、激変というべき転機が訪れつつあることだけは確かである。
 蛇足だが、ウイキペディア日本版のスポイル制度について、米国とイギリスを同じに書いている個所がある。誤記ともいうべき事実誤認である。イギリスの官僚制度はスポイルとはいえない。米国版でも米国の慣行として記載されている。書き改められるべきである。なおスポイルという名は180年前のNYの上院議員ラリー・マーシーに由来する。
 

 

| 児玉昌己 | - | 11:21 | comments(0) | trackbacks(0) |
TBS日曜劇場「官僚たちの夏」で想うこと 中 米国型の官僚制は排さるべし

 もとより仮定の話だが、もし総選挙に圧勝すれば、議院内閣制の規定で、民主党代表が総理になる。その可能性の高い鳩山由紀夫氏だが、彼に、申し述べたいことがある。
 米国の政治制度は日本には合わないことをである。
 民主が推進する単純小選挙区制度の愚昧さについては、わずかに任期が2年しかない米国下院議会の機能的欠陥と関連させ、多数の記事をこのブログで書いた。
 それで繰り返さないが、今度は米国の政党政治、そして官僚制について、この場で触れておきたい。
 わが国は立憲君主制の国家であり、その制度の根幹において大統領制とは両立しない制度を維持している。

 民主党の一部には、米国留学組が影響力を持ち、あの無責任な自由放任の経済制度を是とするかのように、米国の政治制度が優れているとみなし、これに倣うことを善とする一群の政治家がいるようにみえる。
 米国の政治を振り返れば、経済にあっては、レッセフェールが、サブプライムを推進した金融工学という名の出鱈目な住宅金融政策を生み世界経済を混乱に陥れた。

また外交にあっては、対テロ戦争という名の、イスラムに対する一種、異様な敵対的思想を背景とした感のあるイラク戦争も含めて、ブッシュの行政府の内政と外交が展開され、単独主義として世界の他の先進諸国の眉をひそめさせた。

それがオバマ以前の8年の米国政治であった。

そして米国議会にあっては、そのブッシュ政治を追認し、あたかもその下僕であったかのような実績を示したことは歴史が示している。
 米国にあっては、民主、共和の2大政党制があるのは周知のことであるが、この両党、結党期の歴史を振り返れば、合衆国としての連邦形成の推進を目的とした共和党、他方、州の利益を擁護し、地域の農業利益を代表する民主党という歴史をもって存在した。
  イデオロギー的にいえば、米国では英国の支配から離脱して国家を形成したその歴史が示すように、権力は抑圧するものというとらえ方が濃厚で、あらゆる権力を極力排するという思想が根底にある。
 そして経済政策でも自由放任主義の思想が、国家イデオロギーというべきも圧倒的である。

そしてソーシャルという語は、 社会主義に通じる思想は反米的として、多くリベラルという言葉でいいかえられてきた実績がある。
  実際、建国以来230年余を経て、為政者による権力を悪だとして徹底して封じ込めるよう作った憲法であったが、大統領権力は、極めて皮肉にも、途方もなく巨大化し、ブッシュ政権では、ネオコンという名の新保守主義の、一種米帝国教というべき極めて排他的で、一方的な原理に引きずられ、イスラム憎悪を一方的に煽り、他国との緊張感を深め、米国の一般国民の意思に反し、国民を抑圧するという逆説的状況が進行した。

| 児玉昌己 | - | 10:24 | comments(0) | trackbacks(0) |
TBS日曜劇場「官僚たちの夏」で想うこと  上
  TBS日曜劇場「官僚たちの夏」(城山三郎原作)を見ていた。

三国連太郎の息子という表現を完全に脱したといえる佐藤浩一(通産省・重工業局長の風越信吾役)を中心に、現在経産省と名を改めている通産省内での日本産業の在り方を巡る政治ドラマを扱っている。
 忘れさられていた貧しくとも未来に夢を描いていた時代、今まさに思い出すべき現在を作った苦闘の時代を扱って、実に新鮮である。

テーマは、第2の黒船対策。自由化という米国からの強い外圧の中で、国内産業の保護と育成をどうしていくかという国家経済戦略の根幹を定める会議である。
 そのかじ取りひとつで、繊維産業の、そして自動車を含むその他の重要産業の興廃に直結する重大事案である。

軍の支配を脱し、戦争と戦後の荒廃から立ち直りつつある日本。優秀な一群の官僚が国家利益を代表するという強い自負を維持し、国家を主導する、官僚が最も輝いていた 昭和30年代前半。 
 私の世代が、子供だった時代だ。東京五輪が始まる直前の日本である。
 それから50年の年を経た、2009年、平成21年の夏、毎日新聞は以下伝えている。

 「民主党の鳩山由紀夫代表は26日、新潟市内での街頭演説で、政権交代が実現した場合、各省庁の事務方トップに当たる事務次官で構成する「事務次官会議」を廃止する考えを明らかにした。」首相と各閣僚が参加する閣議の前に開かれ、事前調整で実質的に政策が決定されてきたことから、閣議の形骸(けいがい)化を避け、政治主導にするのが目的。

 鳩山代表>事務次官会議廃止 11年度から子ども手当満額726 毎日新聞
  
国家の統治が続く限り、官僚の役割は終わることはない。
 だが、官僚が政治をリードしていた「官僚たちの夏」が終わりつつあることははっきりしている。それが「官僚の冬」となるのか、誰も分からない。
 官僚が政治に毒されない限り、そして官僚固有の優秀さと有能さを失わない限り、その役割がなくなることはない。

 

 

| 児玉昌己 | - | 23:01 | comments(0) | trackbacks(0) |

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