児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
3月も終わる
  3月は別れの季節だ。子供を持つ家庭では、卒業や進級、そして就職と環境の変化を迎えられたことだろう。
 実際入試に、進級、卒業、就職と、子供たちの環境も、親同様に、実に厳しい。うまくいけば嬉しいし、うまくいかない場合でも、それに親子で対処していかねばならない。
 3月の別れの季節。私自身も当事者である。子供たちが無事卒業し、社会に巣立つ、その日を迎えられた親御さんは、心から安堵されていることだろう。 
 そして明日から4月。去りゆく者を、残って送るものとしては、感傷的な気分もあるが、明日から気分一新し、フレッシュな気持ちで迎えよう。新たに多くの若者が希望を胸に入学してくる。 与えられた職責を淡々とこなしていくだけである。
 気温の高低の激しさにもかかわらず、桜も九州北部は満開だ。

 
| 児玉昌己 | - | 18:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
大家重夫久留米大学名誉教授(著作権法)のホームページ

 私が日頃助言などを請い、アレコレご教示いただいてきた大家重夫法学部教授が3月31日で、特任の5年間も終えられ、完全リタイアされる。
 とはいえ、著作権法での先生の多大なご業績とご貢献は学界にその足跡を確実に残し、また今後もご活躍は続く。

 大学のホームページから離れられるのを機に、新たなホームページを私の教え子でITに詳しいN君のヘルプで、別途立ち上げられた。それを紹介しておこう。
http://ohie-shigeo.sakura.ne.jp/link.html

| 児玉昌己 | - | 23:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
箱根塔の沢、環翆楼に遊ぶ 海鳴庵/児玉
  金曜日26日の箱根では気温はさらに下がり、翌日、雪で樹木も薄化粧していた。3月も終わろうとするこの時期にである。
 宿は、環翆楼。ここは、大正ロマンを感じさせる箱根、塔の沢の宿。17世紀からあるという老舗中の老舗の宿だ。
 スタッフは宿に似て、オールドだが、施設の古さと合わせて、むしろこの老舗旅館の味わいだろう。
 新しい施設を求める向きにはお勧めできないが、大正の浪漫を感じたいと思う人には、お薦めしたい旅館である。
 実際、入った瞬間から、インターネット利用など頭から消えたほどの、異次元の空間。 館内のあちこちに飾られている大鏡には、「ル―ビンリキ」などと反対側から横書きされていて、レトロそのもの。皇女和宮や伊藤博文など貴顕を始め、内外の多数のお客をもてなした時間の長さを感じさせる。
 環翆楼はその名の如く、まさに箱根の草深き山間の樹木に囲まれて、瀬音が静かに響く高台にそびえたつ。到着して初めてその名を体感したことだった。
 塔の沢のこの宿を詠む。

 瀬音あり 翠(みどり)の宿は 大正の 浪漫残して 静かに建てり

 静寂を 破る川の音 箱根宿(やど)湯けむり濡れて 古きぞ趣たり
                      海鳴庵/児玉

 

 直、宿のホームページでは 環翠楼の前身は「元湯」と称した。国の有形登録文化財に指定されており、元湯の歴史は古く慶長19年(1614)の開湯にはじまり箱根七湯の一つとして知られて、明治の元勲伊藤博文や西園寺公望など政界の大物や島崎藤村などの文人が多く訪れた。とある。

| 児玉昌己 | - | 18:16 | comments(0) | trackbacks(0) |
東京出張とオフで、ブログから遠ざかる
 NHK文化センターでの講座と、二男の卒業式で上京していた。講座欧州統合の最終回。 イタリア政治に詳しい八十田博人先生(共立女子大専任講師)に手伝ってもらい、無事所定回数を終了した。
 私にとっては2カ月ぶり。それゆえ、この間のこと、特に私的にリヒャルト・クーデンホーフ・カレルギー伯の独書「パン・オイローパ」原書をオランダの書店でベルギーの友人が発見し、送ってくれ、入手したことをまず話す。
 そして締めとして現在のギリシアの経済危機に対するEUの対処、そして大帝国を支配したローマ法に似た、欧州で着実に広がるEU法の空間の実相をマイクロソフトへのEU競争(独禁)法違反とする巨額の制裁的課徴金や、厳しい数値の環境規制に関するEU法制を事例にして話す。
 新聞でEUという文字が目に入るようになりました、といわれる聴講されたご婦人の感想はなによりであり、鹿島建設卯女社長の秘書を半世紀前に務めたといわれる方との思わぬ出会いも含め、私にも有益で楽しい講座であった。
 欧州統合に関するNHK文化センターでの講座は当面これで終了。要請があれば、また引き受けさせていただくことになるだろう。
 終わってからは、オフ。箱根の環翆楼に投宿し、くつろいでいた。
 この時期としては全く天気に恵まれなかった。卒業式は終日氷雨。花冷えという表現を超えた寒さだった。
| 児玉昌己 | - | 18:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシア経済危機とEU 5

 EUでは、加盟国の財政危機に対しては、非救済条項を設けている。それゆえ、現在の欧州委員会や加盟国政府が考えていると思われる提案はEUの枠組みを崩す動きであり、「財政改革の実行方法が問題である時に、支援を制度化する方法について協議するのは有益ではない」とするウェーバー総裁の言葉に、ドイツ連銀およびEUの通貨当局である欧州中央銀行の立場を物語っている。

 ただ、通貨基金については、欧州中央銀行のトリシエ総裁は、基金を設立し危機に陥った国を支援する欧州の構想について、この問題の微妙さを意識した発言をしている。

トリシエ総裁は、「欧州通貨基金(EMF)と呼ぶことは、必ずしも適切ではない」とし、基金が提供するのは、「金融面での支援ではなく、むしろ財政支援であり、厳格な条件の下での譲与的ではない財政支援だ」と語っている。

なお、EUの政府債務残高については、欧州中央銀行(ECB)によれば、ユーロ圏の政府債務残高をEUが定める国内総生産(GDP)比60パーセント以内に削減するには、20年かかる可能性があるとの調査リポートをまとめている。

冒頭に書いたように、EUは金融と財政が国家とは違い、分断的状況にある。全てはここから発しているのである。 
 EUはこれまでも、多くの危機を克服して来た。そして今日がある。

「危機は統合を促進する」という言葉もある。

さて、いかなる決着をみるのか実に興味深い。
 EU内部についていえば、基本的には、国家がそうであるように、金融財政の一体化を目指す方法で解決、つまり過去60年おける欧州統合の深化の基本的方向である連邦的要素の強化という方向でしかこれを解決できないとみている。
 第2に対外的には、米国発の無秩序な投機的な国際金融資本による投機的資金運用に対する規制の強化である。財政の弱いところを狙ったソブリンローンへの攻勢は今後も続くからである。
 いずれにせよ、財政政策は、租税政策と同様に、国家の主権的権限のもっとも重要な根幹をなす分野である。
 そして加盟国では、政府与党は、そして政治家は、基本的に、有権者の不興を買う増税を控え、むしろ有権者の票を意識し、放漫財政を放置する誘惑に常に駆られている。それゆえ、加盟国では常に放漫財政と財政赤字への転落の可能性は高い。
 個別加盟国ではなく、加盟国27カ国を統べる統合組織として経済通貨同盟をその内に形成しているEU(欧州同盟)において、残されている究極的な選択肢は、財政金融の一体化しかないのである。
 赤字財政を統制できない国家については、ユーロ圏、つまり欧州経済同盟からの離脱を命じる規定の導入の必要性が一部で議論され始めたのは、その動きの延長線上にある。
 もっとも、元来、経済ファンダメンタルズの弱い国家を、ユーロ圏外に置くということは、すでにユーロ圏国家として、圏内に加盟させているところから、政治的にはかなり困難なことであることは間違いない。
 ともあれ、財政、金融政策が分断状況にあるEUの苦悩は続くのである。

 参考記事 以下和文はすべてロイター

欧州の救済基金構想は非生産的=ウェーバー独連銀総裁2010 03 10

ユーロ圏の政府債務残高、削減に20年かかる可能性も=ECB311

ECB、欧州の基金創設構想を否定せず=トリシェ総裁2010 03 11

欧州諸国が新救済基金創設案を支持、ECBは難色示す2010 03 9 Commission backs European Monetary Fund.By Jim Brunsden and Simon Taylor.08.03.2010 2010 European Voice.

| 児玉昌己 | - | 15:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシア経済危機とEU 4

ギリシアの財政危機が如何に問題であったかは、財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率は2009年は、3%以内というEU基準にもかかわらず、12.7%であったと報じられていることに端的に現れている。

この数値の異常な高さこそが問題の発端である。ギリシアの政府はこの数値を、2012年までに2.8%へ引き下げることを目指というが、それは大変なことで、緊縮財政を発表して、ゼネストに見舞われているのは皆さんも承知のことだろう。

 ギリシャが逼迫した財政事情を続けると、4~5月に、約220億ユーロ(約27000億円)の資金を調達する必要があるといわれている。

 ギリシャが、3月初旬にシンジケート団を通して行った50億ユーロの10年国債の発行に際しては、表面利率は6.25%と高めの設定を迫られている。ちなみに5年物の米国債は2.4%程度の利率である。

 そして今回ブログのテーマであるEUのギリシアの財政危機にたいする新たな動き、つまり欧州通貨基金創設をめぐる欧州中央銀行と、いくつかの加盟国や加盟国の意向を受けて動く欧州委員会との軋轢である。

 現状で欧州通貨基金を作れば、EUの通貨当局である欧州中央銀行からすると、ギリシアのような放漫財政に手をつけることに消極だった加盟国が、これを積極的に抑制するように動かず、しかも、EUの財政規律に反する可能性(危険性)を生むという。

 実際、欧州通貨基金の創設については、欧州中央銀行(ECB)のシュタルク専務理事も、 ECB理事会メンバーのウェーバー独連邦銀行総裁も、財政問題に直面した国の支援に向けた欧州通貨基金は、加盟国の救済を行わないEU規則に逆行する非生産的な構想であるとみている。

 

| 児玉昌己 | - | 21:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシア経済危機とEU 3
 この問題で興味深いのは、トラブルシューティングの仕方にある。

EU通貨統合の前提となっている財政政策に一義的に権限を持つ加盟国の協議機関であるEUの加盟国を代表する経済担当理事会において、新たに欧州通貨基金を策定しようとする動きが出された。

EUが単なる国家の連合体としての協議機関ならば、欧州通貨基金の設立を歓迎し、すぐにでも対処できるが、EUではこれに反対する勢力がある。

欧州中央銀行がそれであり、極めてネガティブな対応をしている。基本的にドイツ連銀を模して造られている欧州中央銀行である。くしくもドイツ連銀も欧州中央銀行と同じ立場である。

元来、EUはユーロの安定化のためには、ユーロ加盟の条件として、加盟国の財政規律について一定の枠をはめている。国家の累積債務のGDP比率60%以下、財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率3%以下などそうである。

もともとユーロ加盟にあたり、ギリシアは公式のデータを操作し、2002年のユーロ加盟のために不正に数値を操作し、これを果たしたということは公然の事実となっていた。

ギリシアについていえば、とくにリーマンショック以降、同国の資金の枯渇が顕在化し、長期の国債の返済と、新規の国際的な借入に対し高率を要求され、コスト高を求められたのが、今回のギリシア問題の発端だ。

| 児玉昌己 | - | 22:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシア経済危機とEU 2

 EUにとってのギリシア問題とは何か。簡単である。
 EUがもつ統治構造上の過渡期的性格、つまり中途半端な現状で引き起こされた問題であり、簡単にいえば、国家とは違い、財政政策と金融政策が分断されていることに起因する。
 EUは欧州中央銀行を設立し、ユーロ加盟国にあっては(イギリスなどの非ユーロ諸国もあるが)、統一的な金融政策を実施できるものの、税制を含めた財政政策は未だ加盟国の国家主権の掌中にある。
 EU
が連邦的統合組織としての機能と内実をもって進められているのはだれも否定できない事実である。LSEのEU法教授ハートレーが喝破するごとく、法の分野では最もEUの連邦的性格が明らかである。
 EUは連邦組織としての機構を整備させつつある中で、国家の主権的権限が、財政野決定権限の分野において確保されているように、国家連合的組織の残滓を依然として内包している。その一点において今回の問題が起きた。
 ギリシア問題とはEUにとって、
金融と財政の政策の分断的状況を前提としたものであり、それがもたらす動揺であり、緊張である。そこが国際的投機筋の標的とされたのである。
 それゆえ、組織原理的には今回の問題は、ギリシアでなくとも、放漫財政を抱える加盟国を震源として、EU域内では今後とも十分起こりうる問題であるということである。
 

| 児玉昌己 | - | 11:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシア経済危機とEU 1
  EUは面白い。人類の統治形態を巡る実践を日々おこなっているのだから。

 ギリシアの経済危機は広く報道された。しかもEU危機として当然ネガティブに。外国為替市場もユーロ安に触れているのもその表れである。ただし、これは特殊EUの問題というより米国のむき出しの金融資本主義の投機的性格と、垂れ流し的な財政赤字に強化された米国発の金融危機の危機の一環と見るべきだろう。
 ギリシア政府がアメリカにEUにデリバティブの投機の規制を求めたのはまさに問題の核心をついている。

 もとより、ギリシア問題に戻っていえば、ギリシア政府自身の放漫な財政運用にあることは間違いなく、それがデリバティブという名に代表される投棄筋に狙われたということだろう。狙われた標的はソブリンローン。つまり、国債である。
 ソブリンとは「主権の及ぶ」という形容詞、それにローンがつく。すなわち国家の主権に属する債権が標的とされたことが、今回の問題のすべてを物語っている。ユーロが狙われたわけではないのである。ユーロ安は派生的、副次的に起こった問題であるということに注目されねばならない。

 統治機関としてEUも、これにたいしては相当動揺した。今も動揺している。統治の機構それ自身が痛撃されたのだから、当面、この動きは継続するだろう。

| 児玉昌己 | - | 09:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
久留米大学比較文化研究所欧州部会講演会のお知らせ
 平成22 年3月
各 位
久留米大学比較文化研究所
久留米大学比較文化研究所欧州部会講演会
「EU リスボン条約と人権保障の実際」
本学比較文化研究所欧州部会では、EU の人権研究で業績を上げられている、
山本直北九州市立大学准教授をお迎えして、下記要領で講演会を実施します。
聴講は無料です。ふるってご参加のほどお願い申し上げます。

講 師:山本 直(北九州市立大学外国語学部准教授)
略 歴:(やまもと ただし)1972年生まれ。1995年同志社大学法
学部卒業、2004年同大学院法学研究科単位取得。北九州市立大
学外国語学部講師、テュービンゲン大学(ドイツ)政治学研究所客
員研究員などを経て、現職
著 書:『EUとグローバル・ガバナンス』(共著、早稲田大学出版会、20
09年)、リスボン条約による欧州統合の新展開―EU の新基本条約
(ミネルバ2009 年)、EU 欧州統合の現在(創元社2008 年)「EU基
本権憲章における『解説文』の作成と意義」『公益学研究』9巻1号、
2009年、「EUにおける人権と民主主義」『日本EU学会年報』
22号、2002年など
会 場:久留米大学福岡サテライト
(福岡県福岡市中央区天神1-1-1 東オフィス5階)
講 座:日 時:平成22年3月19日(金)
時 間:15時〜17時 (含む質疑応答20分)
申込法 :参加料:無料・直接会場へおこしください。
文責)児玉 昌己 法学部教授(比較文化研究所欧州部会長)
| 児玉昌己 | - | 10:54 | comments(0) | trackbacks(0) |

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