とくに美術、音楽、芸術や学術もそうだろうが、こうした分野は、金銭面で、通常の組織に守られている世界とは違う。やりたいこと、やっていることがすぐに衣食を保障してくれるものではおよそないからだ。卑俗にいえば「売れてナンボ」の世界である。
強烈な個人と作品を通した精神のぶつかり合いや交流の中で、人は激しく感動する。そしてそうした作品に出合いつつ、泣き、笑い、人生を送っていく。
マンガ家というのが、かくも苦しく、大変な職業であることを改めて知った。成功すればしたで、忙しくなりアシスタントもいる。
貧乏神の苦しさを知っているがゆえに、次の苦境を想うと、舞い込む仕事を断れない。貧乏神を撃退したと思いきや、その妖力はその後も続く。そして今度は、妖怪イソガシと格闘することになる。
人生そのものが、まさに見えない妖怪との格闘だと皆が実感する、その面白さがこのドラマにはあった。
他方、たまたま祖父母が偉大であったということで、数十億円単位の、世離れた不労所得を得て通常人の金銭感覚をまるで欠いたものが、10円単位に泣き笑いする庶民の生活に対する感覚もなく、人の生死さえ左右する政治のトップに就き、「命を賭して」など浅薄な言葉を使い、平気で約束を破る。「五月晴れが来るでしょう」と表現しつつ。
そんな世襲貴族的な政治家の政治指導と、その破綻と退場を、この朝のドラマと同時進行的にみていた。
ともあれ、御歳88歳、ちょうど父の世代に当たる水木先生、奥様は10の歳の差があるご夫妻だ。しかも戦争で片腕を負傷、切断というごとく、まさに命を賭して、君命招集に従い修羅場をくぐる経験をされている。言葉だけが勇ましい政治家とは、出来そのものが違う。
その努力は、今正当に、真っ当に報いられて、なによりだ。
あの泣き顔がもう見られないのかとおもうと残念な、松下奈緒さんはじめ、俳優さんたち、製作スタッフの皆さんにも、お疲れ様でしたといいたい。
ゲゲゲの女房関係、参考ブログ
2010.05.23 Sunday 土曜日の朝 庭の花ととゲゲゲの女房
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2357
さらば、こみち書房 NHK「ゲゲゲの女房」 2010.07.04 Sunday
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2421
2010.07.10 Saturday 得意分野で勝負をかける ゲゲゲの女房
http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20100710
2010.07.18 Sunday ついに40歳を超えての水木先生受賞 NHKゲゲゲの女房と急展開の竜馬伝
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2446
2010.08.10 Tuesday夏枯れの日 水木先生の妖怪「イソガシ」ジュニアにとり憑かれる
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2475
2010.09.01 Wednesday 妖怪を感じない鬼太郎先生(ゲゲゲの女房)と世論を感じない「魑魅魍魎」の民主の代表選
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2500
終回近いゲゲゲ、父君の死と、戦時下の海兵3号生徒、木田元先生追記
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2512