NHKの昼のニュースは、エジプトかアジアカップかどちらをトップにするかで、局中枢の見出しの担当者は、一瞬迷ったかもしれない。アジアカップ優勝がトップに来た。エジプトはしばらく情勢が混とんとするだろうから、それでいい。
とはいえ、エジプト情勢はわが国にも大きな影響を及ぼすという基本は変らないし、北アフリカで起きつつある政治状況の変化は、しっかりと認識しておかねばならない。
エジプト情勢がムラバク30年支配を打破する勢いで、市民革命の様相を呈している。邦人観光客500名余も空港で足止めされているとして、懸念される。
「ムバラク大統領の独裁の象徴だった与党・国民民主党(NDP)本部ビルはあっという間に炎に包まれ、数千人が雄たけびをあげた」と、読売新聞1月29日(土)で田尾茂樹特派員が伝えている。
NY株価は166ドルも大きく下げた。米国が中東アフリカ外交の基軸としている国家を脅かす、そうした不安を強く市場が共有しているからだろう。特に、サウジなど大産油国への影響を案じていることは明確だ。
他方、北京からは同じく読売の佐伯聡士が「中国政権、エジプトデモ「反体制」波及を警戒」2011年1月29日 と発信して来た。
反体制の民主化運動こそが北京が最も恐れるものである。外国の民主化を求めるうねりは、それを一党支配で抑え込んでいる共産党支配の中国のとって、最大の警戒材料であることは間違いない。
ことの発端は、北アフリカのチュニジアで起きた民主化革命運動だ。1月18日、23年に及ぶベンアリ大統領の独裁体制が崩壊した。この運動がどのように決着していくのか、政治学的にはいかなる統治形態をとるのかまだふめいであるが まさにチュニジアにおける独裁打倒の民主化の動きがエジプトを直撃した。
米国の中東政策におけるエジプトの存在は格別なものがあり、これが激震に見舞われているからであり、米国の懸念は大きい。
だが、独裁者と独裁体制を結果として支持する形での中東アフリカ政策こそがむしろ問われるべきだろう。米国外交はあれだけの費用と人的資源を投入し、その見返りが恐ろしく低い。
金融資本主義お得意の損得勘定と国際貢献でアメリカ外交を格付けすれば、AAAどころか、CCCというべきと私は評価している。もとより最悪の大統領と評価されているブッシュ前大統領がまいた種だと見ている。
ブッシュ政治の負の遺産を背負込んで、登場時からみれば、支持率を大幅に下げているオバマ大統領にも酷なことだ。