児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
黄金週間の始まり ベトナム出張のことなど 下

   戦前、インドシナを支配していたのが、フランスだ。

 わが国は明治維新という偉業を経て、幸いにして、植民地になることはなかった。むしろ、その後は、後発の帝国主義勢力として、中国分割や朝鮮支配に手を染めた。
 植民地化されたベトナムは仏領インドシナという名前で残った。そして、数千万の単位という空前の死傷者を出した欧州を多く戦場とする第次大戦でも、10万の単位で若き兵士が、被支配民として縁もゆかりもない戦争で命を落とした。
 フランスが、ディエンビエンフーの戦闘で、大敗してアジアから撤退したのが、1954年7月。仏領インドシナの時代が終焉した瞬間だった。しかしベトナムの植民地支配はそれで終わらなかった。
 フランスと入れ替わり、今度は米国の軍事介入。

 1965年からは北爆が本格化して、50万を超える兵を投入。
 ダイオキシンの枯葉剤など使用し、共産主義と民族主義を同一視した米国の道義的、イデオロギー上での失敗と敗北となり、反戦運動の高まりとともに、米国の民主主義が厳しく問われ、米国経済はこの不毛の戦争で大きく力を落とす。
 そして、1975年のサイゴン陥落。ここに異民族支配は終焉した。

 ただし、ベトナムの戦争は終わらなかった。
 その後、中国と79年には中越戦争が勃発。92年の正常化までさらに13年の歳月を要した。
 フランスとは93年に和解。95年に米国との国交正常化。この年にアセアン7番目の加盟国となる。
 訪問予定先の1つがハノイ国立大学。正式にはベトナム国家大学ハノイ校。英文名は以下。

Faculty of International Studies, University of Social Sciences and Humanities (Vietnam National University, Hanoi所属) 国際学部。設立が1995年。
 http://ussh.edu.vn/en/faculties-and-departments/faculty-of-international-studies
 まさにベトナムの平和と国際社会への進出と同じくして、その大学は設立されている。
 大学も新たな動きを踏み出していることを知る。

 アジアとEUという問題に関心を持っているが、関係者にお会いして、21世紀におけるベトナムにおけるEU研究のことなど、わが国に紹介できればと思っている。

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 10:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
黄金週間の始まり ベトナム出張のことなど 上

4月の最終日。すでに昨日から黄金週間に入っている。夏の電力不足で生産が阻害されるを回避するために、日立のフォークリフトやパワーシャベルの工場などは、この連休を一部返上して、生産を挙げるとしていた。
 私も震災で皆さん同様に、心を痛め、さらにのどまで痛めているが、なんとか1カ月の大学での講義生活を乗り切りホッとしている。
 震災後初めての大型連休多く若者が、ボランティアで被災地に入っている。嬉しいことだ。誰にとっても、日常はあるし、続く。
 それぞれが、もてる力で、そして自己の職責を全うすることこそが、復興につながる。そう信じよう。
 子供の通う東京の大学は、連休明けからだという。夏にずれこむから、教職員も学生も大変だ。
 まさに「学事暦通りの幸せ」(中村民雄早大教授、私的Eメイル)ということだ。
 連休は、今年度本学国際交流委員長の地位にある宮原信孝文学部教授(外務省元中東2課長)と、ハノイに海外出張することになっている。飛行機の中で寝ることを含めれば、4泊。
 東南アジアは私にとって処女地。ようやくこの地を踏める。若干の感慨がある。ベトナムだ。
 すでに他界しているが、近藤紘一(こういち)、開高健(かいこうけん)、小田実(まこと)のことなどを想う。近藤紘一は産経記者としてサイゴン(現ホーチミン市)から傑出したルポを個人体験を通して、発信した。
 1986年胃がんで、45歳で他界。葬儀では哀惜をこめた葬送の辞を司馬遼太郎が読んでいる。司馬自身はその10年後に他界。
 開高健も物書きとして、小田は運動家として、それぞれのベトナムを書いた。
 ベ平連という時代だ。ベトナムに平和をという反戦運動で、必然的に反米、反基地闘争となった。1960年代後半から70年代初頭のことだ。40年も前になってしまった。
 若い人は、上記の人々については、読み方さえわからないかもしれない。
  ベトナムといえば、戦後、いわゆる植民地支配を継続する帝国主義勢力を駆逐したが、さらに隣の超大国、中国との中越戦争を経て、完全に戦争のない時代を享受できるようになったは、1990年代のことである。
 わが国が原爆を2つ投下され、無条件降伏したのが1945年だから、ベトナムは完全な平和を獲得するまで、さらに40年余の時を必要としたのである。

| 児玉昌己 | - | 08:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
迫力ある国会質問 江田憲司幹事長(みんなの党) 下
  極めつけは復興会議だ。哲学者の梅原猛先生が言うごとく、原発を入れない復興などありえない。それさえわかっていないか、分かっていて、そうしているというような対応だ。
 実際、この復興会議、議論もしない初日当日から、会議の議長、役人のパペット(操り人形)かというごとくも、選挙で選出された国民の代表でもないのに、開会冒頭、復興税を言にする無様さで、不遜極まりないことであった。
 その一点にもみられるように、この首相とこの政権与党、掲げている看板は「国民第一」だが、羊頭狗肉とはこのことだというほどに、それに反する政治を行っている。
 その結果が、連戦、連敗という選挙結果。しかも、その責任も誰一人とらずに、国民無視の政治を続けている。
 民主党という政党の無残さは、国民の支持がおよそなく、連戦連敗を続ける自党のトップの首をかえるに当たって、鳩山、小沢氏以外、誰もその役割を果たすものがいないということにもある。
 彼らも同様に国民から、国会から「退場処分」をうけたものたちではないか。
 ともあれ、心も打たず、「評価を受けております」と居直る菅直人首相だが、いったい誰からの評価かねと問いたい。そして放射能禍ならぬ、無責任の垂れ流しの「政治禍」が続いている。
 震災復興の補償費は収束がつかない限り、この瞬間にも日々拡大しつつある。
  この政治の中で、震災復興の喫緊の財政、特に財源について、みんなの党の江田議員、実に活き活きした言葉で、首相と財務大臣を質していた。
 復興議論は、同議員が指摘するように、政党を超えたものでならねばならない。
 江田幹事長の予算委員会(だったと思うが)昨日午後の委員会質問、橋本内閣時代首相秘書官も歴任し、通産官僚として財政を熟知し、実に重みを持っていて、偶然だが、聴いていて、いつになく、心に強く残るものであった。

 参考記事
 小沢・鳩山両氏、政権批判の声明準備 党内抗争が再燃 朝日
2011413

大震災日本を立て直す(4)一橋大学名誉教授野中郁次郎氏、現場の「実践知」生かせ。日経20110420

参考ブログ
201104.16 Saturday
住めない住宅発言
上 被災者国民と直接向き合わない首相と官邸のなせるわざ
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2798

| 児玉昌己 | - | 21:34 | comments(0) | trackbacks(0) |
迫力ある国会質問 江田憲司幹事長(みんなの党) 上
  昨日午後の国会質問、車のテレビで偶然みたが、みんなの党の江田憲司幹事長が菅直人政権の首相と主要閣僚を前に、実に迫力ある質問をしていた。
 復興資金を増税で行うということを現政権考えているようだが、この危機的状況では、国民を疲弊させるだけであり、国債発行と償還を増税で賄うというのは、「小役人的愚策」で、特別会計の剰余金で行えという趣旨のものだった(と思う)が、近年まれにみる迫力のある質問だった。
 みんなの党については、選挙制度改革議論、特に議員削減論による小選挙区制度への接近の議論は全く評価できないと思っている。
 だが、財政についてはじつに説得力のある議論だった。
 震災復興の過程でまるで心を打たない現総理とその政権である。しかも、東電と政府の原発炉の重大事故と海のチェルノブイリといいうるレベル7の失態を招き、その収束の見通しもいまだ立たないままで、雪だるま式
に増え続ける補償費を国民に増税としてつけ回ししようとさえしている。
 加えて、被災地での面会も、なんと恣意的に事前に人数や家族を特定しているという。実に驚くべきことだ。
 かくも権威主義的政治家見たことがない。特に市民運動の経験者を看板にしていたからないさらだ。まさに政治による救済を待つ被災者さえ遠ざけるように、ソサクサと避難所を後にしようとして、被災市民に叱責される始末だ。
 実際、この首相の政治指導にはあきれる局面が多々ある。
 その1つが、多数の責任逃れのように、屋上に屋を重ねる各種の会議や政府部署。

参考記事
「もう帰るんですか」避難所訪問の首相に憤慨 
読売新聞421()2051

菅首相「統一選、厳しい結果」震災対応の影響は認めず朝日 2011425

小沢系議員が一斉辞任検討 民主県連幹部、統一選後に共同通信2011/04/23
参考ブログ
 無情なり 花散る日々の この大厄災(ふこう) 君は知りしか 

 彼の地の無念  海鳴庵/児玉
http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20110415


| 児玉昌己 | - | 21:09 | comments(0) | trackbacks(0) |
無能な政治(家)と有能な国民 猪木正道先生と政治学者
  大学では、政治学を3年ぶりに担当している。勤務校では国際政治学科の教員が持ち回りで担当している。
 今期もまた、傑出した政治学者である猪木正道先生の政治学新講(増訂)有信堂を使っている。
実に1962年版で、初版は1956年に出ている。すなわち半世紀以上も昔のものだ。
 政治学の教材では、何を採用するか、いつも困る。最近のものも含めて、他人のものは帯に短したすきに長し。自分で書けばいいのだが、簡単な話ではない。
 なにより、言い訳がましいが、自分で書くには3年に1度いうことで、常時採用できないので、出版社にも迷惑がかかる。
 それに教科書を含め人さまに読んで頂く書を著すのは、当然のことだが、気力、体力、エネルギーを半端でなく消費する。
 先月、3カ月の間、巨大震災をはさんでラジオ第2で放送されたNHKのカルチャーラジオで話をさせていただく機会を得た。その際、新たに書き下ろし、使用した「EUヨーロッパ統合の政治史」で、与えられた執筆期間がわずか4カ月余しかなかった。それもあり、実にあの昨年の猛暑に、髪を振り乱して(とはいえ、振り乱すだけの髪もあまり残っていないのだが)取り組み、目を物理的に痛め、疲弊した。
 ともあれ、猪木正道先生の「政治学新講」、すでに半世紀を超えた著作の改定版であり、若い研究者はその存在すら知らないかもしれない。
 だが、他の書と比較しても、今も政治学のエッセンスを考える上で、貴重で、優れている。
 わが国が誇る政治学者が戦後まもなくして書かれたこの書の改訂版。
 なんと、その書き出しの内容が、「無能な政治(家)と有能な国民」というモチーフである。
 この巨大震災への対処を、戦後処理もあわせ、100対ゼロの大敗を喫した、ノモンハン事変という本格的な対ソ戦での無様、かつ無能極まりない作戦指揮を担当した関東軍と、21世紀の現代の民主菅直人政府と東電と比較したエッセイを現代史家の秦郁彦先生が、産経、正論に書かれている。 
 これについては、本ブログで紹介させていただいた。
 猪木正道先生は、まったく同じことを戦後ほどなくして指摘されている。
 すなわち、秦郁彦先生のノモンハンにみる政治と比較してみると、放射能の重大災害に直面している日本政治を取り巻く状況は、政治的リアリズムをまったく失い神格化、精神化、そして美化されていく日露戦争以降の政治状況と、ここ90年余りまったく状況は変わっていない、ということではないか。
 お粗末極まりない政治家の責任の一端は、我々政治学者にもある。平成の洋学派と自己規定しているが、政治学者としては、実に恥じ入るばかりだ。
 もっとも学者の政治責任を言えば、トイレ(使用済み核燃料処理)なき原発といわれてきた原発の出鱈目さを含め、特定の産業と一体化し、結果として、かくも無様、かつ反人間的な原発の推進を許し、炉心の重大損傷をまえに、延々と過小評価のコメントをテレビで垂れ流していた原子炉工学の専門家はいうにおよばず、費用対効果の観点から見て、経世済民といわれる学問を扱う経済学者も同罪であろう。
 美しい日本と、先輩諸氏が築き上げてきたジャパンブランドの高い評価自身を著しく汚し、震災復興を大きく阻害し、かつ2次被害やいまだ累積汚染値の拡大を止められず、膨れ上がる将来の補償費などを含めると、日本人の生命財産を数十万から最大数百万人単位、数兆から数十兆円の規模で脅かした福島原発の現下の日本の重大事故の状況を前にすれば、Co2削減をいういかなる原発推進派の議論も、許されるものではない。
 実際、福島原発4キロ圏の双葉病院に取り残された患者の悲惨さをカバーした毎日紙の以下の記事は涙なしでは読めない。
 そんな原発とその重大な放射能漏出というものの、反人間性をあますところなく明らかにしている。

 それもこれも政治権力が誘導したエネルギー政策の結末だ。
 政治権力をテーマとする猪木政治学。政治学の困難について、それが存在拘束性に起因することや、政治学が、価値を扱う学問であることからくるといわれて、不朽の名作だ。
 この震災大国において、安全神話をばらまき、原発を国家のエネルギーの根幹とし、これを是とした価値が根底から覆った。政治がまさに価値で進められることの証である。そして今その危険極まりない原子力エネルギーを否定するパラダイムシフトが必要である。
 太陽を活用する新エネルギーの徹底的な工学的活用こそが求められる。
 現状分析に逃避する政治学が多い中、権力論と価値論を正面に据えた猪木先生の研究は、アメリカ政治学の浅薄な受け売りにすぎないわが国の政治学の多くの教材の中で、貴重なものとして、継承されるべきだと思っている。

参考記事・ブログ

福島第1原発 苦渋の90人放置 南西4キロの双葉病院毎日新聞426
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110426-00000005-maip-soci
2006.09.13 Wednesday
 政治学のこと 下 教科書に悩む

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=293

2011.04.18 Monday 巨大震災と原発禍のさ中の陸自幹部候補生学校訓練公開に出て、涙する 上下
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2800
 http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20110418

現代史家・秦郁彦 原発処理、もう米国に頼みたい2011.4.12 03:04

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110412/dst11041203040004-n1.htm

| 児玉昌己 | - | 08:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
日本EU学会理事会にでる 神戸大学梅田サテライト教室
  日本EU学会理事長が今期、政治学系から変わった経済学系の久保神戸大学教授ということで、神戸大学が大阪梅田にビジネススクルールの利便性のために構えている梅田教室での理事会。
 学外にサテライト教室を構える大学のケースはよくある。懇意にさせていただいている辰巳先生が学長をされている阪南大学も淀屋橋に教室を持っている。 私の勤務校の久留米大学も福岡の天神に教室を構えて、公開講座や就活の学生諸君に提供している。
 さて、そういうわけで、定例の日本EU学会理事会のために大阪に出張していた。
 2つの発見。
 1つはJR大阪駅の変わりよう。これが大阪かというほどのもの。もう1つは久留米新大阪の乗り換えなしの新幹線。
 実は3.11はまさに九州新幹線開業を祝う予定の日だったのである。九州は3.11辺りに開業記念式典を開催することで、関係の各県の自治体や地場企業は九州浮揚に大いに力を入れていたが、まさにその日に驚天動地、天地驚動の大震災となって、すべてキャンセルになっていた。福島原発を除き、徐々に復旧が進み、東北が落ち着きを取り戻し始め、こちらも徐々に記念すべき九州新幹線開業を祝おうというところだ。
 あいにくの本格的な雨だったが、理事会では、ユーロを語らせれば、右に出るものはない田中素香先生など、名だたるEU研究者の皆さんとお会いでき、楽しい時間だった。
 東大から早稲田に移籍した中村民雄教授とは会議が終わって、別途、帰路、大阪駅で話をする機会を得て、近況を互いに披露、情報交換をしたところだ。EU法を語らせれば、これまたわが国のトップクラスの先生である。
 有意義な理事会であった。

 
| 児玉昌己 | - | 20:20 | comments(0) | trackbacks(0) |
5月5日の英選挙制度での国民投票世論調査 下 Alternative Voteでネガティブに転換
 そして all or nothing でわずかな票差でも一位になったものだけが議席を得る現行の単純小選挙区制度が、いかに2大政党がこの制度の既得権益者として存在しているかを、むしろ物語っている。
 イギリス政治の非民主的性格を改めて、落胆しつつ、確認しているところだ。
イギリスではこの国民投票でクレッグという欧州政治にも詳しく、最も将来のある政治家を失いそうでもある。
 また、わが国の政治への影響を言えば、国内の政治家の中にも、5月5日の国民投票の結果を待って、小選挙区制度の膨大な死票に目をつむり、10万票が9.5万票を死票とする制度が善であり、現地で勝利したと喧伝する危険性もある。
  ともあれ、イギリスから届く、現行の小選挙区が善で優れた制度であるかの如くいう、根拠のない議論が力を得ている最新情勢の報を前にして、正直、実に面白くないことである。
 インディペンデントもガーディアンも、現行制度が如何に出鱈目な制度であるか、もっと論陣を張れといいたところである。
 2010年のイギリス総選挙で2位の労働党と3位の自民党の得票差はわずかに6%。それで労働党と自民の間で、実に201議席も差がついた。そんな制度になんの正当性があろうか。
 そして、保守と労働党という2大政党の得票合計は65%程度である。ここ30年余で急減してきているのにもかかわらず、直近で議席数87%(保306議席/労258議席)を占める制度に、何の正当性があろうかと、改めて指摘しておきたい。
 参考論文および記事

児玉昌己「多党化する欧州議会選挙の英選挙区と2010年英下院議会選挙-欧州統合運動の英議会政治への影響」久留米大学比較文化研究科第20号2011年3月63-86頁
ashdown urges Cameron to condemn Clegg AV attacks19 April 2011 Last updated at 12:30 GMT BBC
 

 http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-13127274

War of words in campaign over UK voting change. BBC 19 April 2011 Last updated at 13:50 GMT
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-13127279

ちなみに激化するニック・クレッグへの個人攻撃とそれに対して元自民党党首のアッシュダウン卿が、そうした陣営からキャメロン保守党党首は距離をとれというのが、上記の記事のタイトルである。

| 児玉昌己 | - | 19:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
5月5日の英選挙制度での国民投票世論調査 上 Alternative Voteでネガティブに転換
 イギリスで非民主的な単純小選挙区制度変更を巡りAlternative Voteを導入するか否かで、5月5日に国民投票が実施される。
 最近のAVを巡る世論調査 (ICM poll)では2月の2%リードが、4月16日の調査では反対が16%リードと逆転した。BBC4月19日付
 ネガティブキャンペーンは、実にスキャンダラスである。人種差別政党BNPがリードするとか、3位が1位になるとか、選挙制度改革協会が特別な利得を得るとか、まるで根拠のない話か、極端な事例ばかりである。また3,4位には益がないとか。しかし、現行では下位の支持政党は3以下現行の制度で徹底的に排除されてきたその事実こそ突きつけられねばならない。
 第一BNP自身がAVに反対している事実が、この議論の欺瞞性をあらわしている。もしAVがBVPを利するならイの一番にAVに飛びつくだろう。
 実際、反対陣営のネガティブキャンペーンは、膨大な死票がでるという現行の単純小選挙区制度の核心部分を隠ぺいする議論である。
 政権与党のキャメロン首相がAV反対を表明して、AV反対陣営を勢いづかせ、クレッグへの個人攻撃を激化させ、結果としてクレッグ副首相外しに加担した感じである。保守党党首の反AV表明は世論に大きな影響を与えたといえる。
 クレッグ自民にしてみれば、キャメロンの首相就任は自民との連立で初めて可能になったわけで、国民投票の結果次第では、連立与党内の感情は決定的に悪化するものと思われる。
 クレッグ自民が推進して来たAVの国民投票で負ければ、連立政権から離脱する可能性もある。
 そうなれば、少数政権に転落する保守党では法案が通らず、解散がみこまれ、また同じ制度で総選挙である。
 同じく、理解しがたいのは、労働党党首ミリバンドだ。 彼は労働党内の多くの有力議員とは異なり、AVに賛成しているものの、国民投票でのAV支持のキャンペーンでは、自民党と距離を置いている。思想が同じなら、同じキャンペーンに入ればよさそうなものだが、党内事情がある。これが、心は同じでも、党利党略を反映する、まさに政治ということだろう。
 国民投票でAVが潰されても、現行の単純小選挙区制度が維持されても、労働党にとって損はないとみているのかもしれない。
 AVはその方式において、表計算の仕方において、厳密にいえば比例制度ではなく(私は疑似比例tと定義しているのだが)、中途半端であり、1999年以降導入したような欧州議会選挙で活用しているドント式にすれば良かったのだろうが、2世紀続いている制度を変えるということが如何に困難かを示している。
 
| 児玉昌己 | - | 07:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
巨大震災と原発禍のさ中の陸自幹部候補生学校訓練公開に出て、涙する 下

 実際、巨大震災と大津波は、東電の安全神話を簡単に打ち砕き、1号機から4号機のことごとく建屋を含む原子炉の大爆発を誘発、炉心の損壊をもたらし、放射能のヨウ素131とセシウム137を総量にして3月23日の時点で、約10万テラ・ベクレル(テラは1兆倍)も放出させ、海のチェルノブイリというべき、レベル7を引き起こす大失態を生むにいたった。
 そして、あろうことか、炉心損傷の決定的瞬間では、「国民第一」とは言葉ばかりで、被災の現場にも身を置かず、無様さをさらける中央の政治家や、原発の当事者の東電や安全委員会など、無能極まりない「管理」者をみるにいたる。
 他方で、防護服に身を包み、黙々と、被爆の危険のなかで、自衛官らは身体を張っている。それが国家の公務員としての自衛官である。
 中央の政治は、この巨大震災と、それに伴う原子炉の重大損傷による放射能禍という状況にあって、その対処の重大な失態を隠すかのように、つとめて平常を装う。
 だがセシウムとヨウ素を除き、半減期2万年のプルトニウムなど、今もって、報道統制を疑わせるように、原子核の種別も知る限り、ほとんど公表されていない。プレスやメディアは、国民の生命と財産に直結する汚染の核心部分にたいし、国民が抱く素朴な疑問点をただすべきだろう。
 しかも、行方不明者は、震災発生から40日になろうとするのに、実に15千名余という、気の遠くなる数である。被爆の危険で長期の自宅からの退避を余儀なくされている市民もその数すくなくとも5万余。よくも普段の生活をと、いえたものである。
 国民は、現状こそが、ありえないと歴代政府と原子力発電所を推進し、大学人を含む産業界と関係者がいい続けた原子力の重大災害の実際に起きている反人間的な大厄災の全てであると、今こそ肝に銘じる必要がある。
 無能な当事者と、被災地の復旧にあたる国民と精勤する公務員。実に対照的である。
 不明被災者の捜索と遺体の収容、瓦礫の撤去と居住空間確保のためのインフラの復旧の任に警察、海保、消防の皆さんとともに、当たっている。彼らの存在を、今ほど、心強く思ったこともない。
 21世紀にあり、平和主義を国是とする民主国家にあって、普通の一般家庭から送り出されてきた若き士官候補生たちの、凛々しい分隊行進を、涙しつつみていた。
 参考記事・ブログ

死者、行方不明2万7931人に 17日午後6時現在 警察庁産経新聞417()2152分配信
<原子力安全委>委員ようやく福島入り 知事とは会わず毎日新聞
417()2332分配信

福島第1原発 4号機原子炉建屋も浸水 プール補強遅延も毎日新聞418

福島第1原発:放射線抑制6〜9カ月 年内帰宅難しく毎日新聞 2011417日 2032
3号機で高放射能、保安院「内部作業困難」読売新聞
 418
2011.04.13 Wednesdayレベル7 海のチェルノブイリか  福島原発重大事故
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2794

現代史家・秦郁彦 原発処理、もう米国に頼みたい2011.4.12 03:04 1/3ページ) ≪ノモンハンに似る福島の戦い

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110412/dst11041203040004-n1.htm


| 児玉昌己 | - | 16:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
巨大震災と原発禍のさ中の陸自幹部候補生学校訓練公開に出て、涙する 上

 どこの地もそれぞれに誇れるものがあるが、久留米といえば、他の都市同様、誇れるものがたくさんある。
 歴史を育み歴史の場となった豊かな九州最大の大河、筑後川、それを活用した米と水で伏見につぐ造り酒屋の数を誇る酒造業。今鮮やかに咲き誇るツツジ。響きのいい名の、白と黒のカチガラス。ちなみにこの地域にしかいず、河を越えた佐賀の県鳥に指定されている。

 そして、日本に1つしかない陸上自衛隊幹部候補生学校。日曜日、福岡地本の招きで、開講式の行事に出かけてきた。
 本来なら晴れがましい第57期の入校記念式典だが、3.11の巨大震災により、祝賀色を排し訓練公開とした、簡素なもの。
 式は、不明者も入れると実に3万にも上る震災犠牲者への黙祷ではじまった。
 久留米大学に移籍して10年になる。もとより幹候補生学校については聞いていた。なにより、ゼミの卒業生も海自幹部候補生学校の江田島にいる。姉妹校というべき、陸の幹部学校の所在は聞いていた。
 だが、同じ久留米で、日本の防衛と災害復旧の根幹を担う幹部を養成するこの学校を訪問するのは初めてであった。
 災害出動で活躍する自衛隊で、隣接する特科連(高射砲部隊)からも車輛が多数東日本の復興活動の任に当たるため出動している。
 防衛大学校や一般大学を出て、幹部自衛官に進む唯一の教育訓練機関で、陸自の幹部候補生は、ここを経て各地の部隊に配属され、自衛官としての人生を送っていく。言い換えれば、陸自幹部で久留米のこの学校を知らないものはいない、ということである。
 災害活動に従事する先輩諸官に負けじと、はやる心を抑えつつ、入って間もない新入生が分隊行進を見事になし終えて、静かな中にも秘められた意気の高さを感じていた。
 



 

| 児玉昌己 | - | 07:22 | comments(0) | trackbacks(0) |

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