児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
アクロス福岡での久留米大学公開講座 中川茂報道本部長(西日本新聞)講演

 北部九州は梅雨入りが遅れている。昨年は612日という。四国も、そして関東甲信も梅雨入りと発表された。
 今日は終日雨。
  さて金曜日、昨日「メディアと世界」ということで、天神のアクロス福岡に出かけた。 現役の記者や、また大学に移籍した海外特派員経験者を招いて、アクロス福岡にある久留米大学のサテライト教室で公開講座を開いている。その司会のため。
 昨日は雨を衝いて第3回。初回が朝日の脇阪元ブリュッセル支局長(現論説委員)。同氏についてはこのブログでもたびたび触れている。
 先週は西日本新聞元パリ支局長で、現編集センター長の井手季彦氏。

次期大統領選の有力候補とされたドミニク・ストロスカーン国際通貨基金(IMF)前専務理事の逮捕劇など、混迷のフランス大統領候補の最新事情や、同国での匿名出産の現状などお話し頂いた。
 井手さんは兄が佐世保北の同級生。私のベルギーでの在外研究と同じ時期にパリ勤務され、ベルギーのブルージュにいた私と、未完となった欧州憲法条約の調印(200410月)について記事を共同して書かせてもらっている。
 そして昨日が同じく西日本新聞社中川茂報道本部長の、「東アジア大交流時代」ということでお話しいただいた。
 中川茂氏についていえば、佐世保北の同級生で、芥川作家の村上龍とも近い。大学を出て、それぞれの道を歩み、疎遠にしていた。
 15年以上も前になるだろうか。前任校にいたとき、ゼミ生が、西日本新聞の前北京支局長の中川さんが村上龍と同級生だと書いていましたよという。先生も同級生でしょう。中川さんご存知ですかと。 
 私の知る中川姓は彼しかいない。それで、彼が新聞社に勤務しているのを知った次第だった。
 直ちに同社に電話を入れ、連絡を取り、私も10年前に久留米に移籍して、以降、現在の親交がある。
 昨日は、震災と原発禍による九州での被害について現状を紹介された後、人口が増えているのは福岡であり、製造業の発展で北九州に遅れをとっていたが、ソフトの時代の到来に合わせて、福岡が躍進したことを聞く。
 現在、海外との交流がある事業者の数や、海外に出る人の数などなど、九州のみならず、東北、中部地区などを凌ぐ勢いがある話をして頂いた。
 さらに50くらいの表現でいいから、釜山みたいに、中国語や、ハングルを話せるようすれば、さらに集客力がアップするという話。震災で沈みがちだが、福岡の経済圏にいるものとしては、久しぶり元気の出る話だった。
 次回は昨年県立長崎シーボルト大(現長崎県立大学)から名古屋大学大学院に移籍した共同通信元ウィーン支局長経験者の中村登志哉教授をお招して、講演をして頂くことにしている。
 同氏は偶然だが、同志社のOBでもある。人の縁とは不可思議で、そのご縁の上に、こうした講座を開くことができている。有り難いことである。
参考ブログ

2006.04.03 Monday 新刊紹介 脇坂紀行「大欧州の時代」岩波新書

 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=42

 

| 児玉昌己 | - | 17:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
2カ月経過も原発禍の始まりと東電の対応について保安院も内閣もなにも把握できていない無責任 下
  東電は全データ公表をと不信感と怒りあらわにしたとの枝野官房長官である。実際、MOXの3号機もあるというのに、ヨウ素とセシウムのみで、強毒性のプルトニウムの情報がなぜなのかというほどにも出されていない。
 だが、氏自ら、3.11直後のあの最初期の、原発の重大事態の発生という危機的状況時において、正確、かつ豊富な情報の提供という最も大事な点でまるで意味なさない記者会見を延々と続けていた。あのBBCが伝えた大爆発にもかかわらず、保安院の官僚答弁の丸読みというべき「爆発的事象」などという馬鹿げた言葉もこの時発されていた。

 傍目から、その中身の薄さをだれもが腹立たしく思って見ていた。
 ようやく、自ら、驚きで、東電のメッセンジャー・ボーイでしかなかったことを、今頃理解されつつあるのかという想いである。

 総理は運命的に首相の地位にあるなどといったが、未曾有の国難にあってこの首相を国家の最高指導者にいただいている事実は、政治の側で、誰一人として責任をとるものがないということとともに、国民にとって実に運命的にも悲劇的であると言わざるを得ない。
 復興支援は最大限協力したい。だが海水注入の決定や、首相が自己の決断でやるとしたベントと背景など、信じるに足る説明責任も全く果たせない政権と、国民の怒りに鈍感で、じつに出鱈目極まりない、隠ぺい体質から未だ抜け出ていない東電のためのしりぬぐいの血税投入だけはお断りである。
 実際、何を信じてよいのかまるで不明な状況で、誰もがそう思っていることだろう。


参考記事
福島第1原発>東電、線量データを一部紛失毎日新聞 527()2156分配信

東京の放射線量「実はもっと高い」 文科省発表値は地上18mだった J-CASTニュース 527()1153分配信

「いったい何だったのか」=二転三転に困惑の笑み―班目委員長時事通信 526()2127

会見直前、抗議押し切る=細野補佐官、班目委員長発言部分時事通信 523()142

海水注入 実際は続行 福島第1 所長が独自判断産経新聞527()755分配信

二転三転「海水注入」…政府は東電に任せきり読売新聞527()852分配信

東電、事故直後の放射線データ一部未公表読売新聞527()185分配信

東電は全データ公表を=不信感と怒りあらわに―枝野官房長官時事通信527()1633分配信

海水注入は継続していた…原発・吉田所長が判断読売新聞 526()1529

止めていない」首相、海水注入中断の指示否定読売新聞 523()1142

福島第1原発:政府報告書 「取材にはノーコメントを」 毎日新聞 2011年 522日 2123

放射性物質「1千万倍」は誤り…東電など訂正読売新327()2042

福島第1原発 東電、ベント着手遅れ 首相「おれが話す」毎日新聞201144 233
参考ブログ
2010.02.23 Tuesday
 仏誌ヌーベル・オプセルバトゥール誌上に日本政治に関する私のコメント掲載さる 上
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2221
11.03.27 Sunday 東電保安院重大発表ミス 国家的恥辱
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2776

| 児玉昌己 | - | 17:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
2カ月経過も原発禍の始まりと東電の対応について保安院も内閣もなにも把握できていない無責任 上

    史上最悪の害毒、半減期2万年を超すプルトニュウムを燃料とする3号機も含め、レベル7という原子炉4機の連続大爆発と燃料棒と炉心の重大損傷と、海のチェルノブイリというべき海への大量漏出から2カ月以上経っても、炉心冷却の海水注入やベント(超高濃度の放射能の大気への大規模放出)という重大決断の経緯について、すなわち原発禍の全体についてまるで政府も保安院も把握していないし、説明責任を果たせていないとは、あきれるばかりだ。
 これが民主菅政権の言う政治指導の実際だ。

 外国なら、当事者による事実の隠ぺいについては、身柄の拘束や逮捕もありうる状況だ。
 この政権は尖閣隠しを平然とやり国民の憲法上の知る権利を重大に侵害した過去がある。今回も、同様の印象をえる。政府がそうでないというなら、その責任において、すべてを、客観的な証拠に基づき、明らかにする必要がある。
 国家の最大の危機を招いた管理状況における出鱈目な発表の繰り返し。安全管理上の劣悪な現場作業員への対応などなど。しかも東電の初期の放射能データの非公表という名の秘匿や紛失が明らかになっている。
 震災とはいえ、一千万の人間の生命と財産を脅かす重大事故を引き起こし、あろうことかその対処について、政府東電は極めて重要なことがらについて説明責任を果たすどころか、子供の遊びのように言を2転、3転する。
 首相は嬉しそうな顔でフランスでのサミットだ。
 だが、誰がこの国の政治を信じるだろうか。信じがたい杜撰極まりない、というより事実の隠ぺいとさえ見えてくるのだが、そんな国家の指導者に対して、政権の持続性についても疑いを持って見ていることだろう。
 仏有力週刊誌ヌーベル・オプセルバトゥ−ルに、昨年1月にこの政権の性格について取材を受けたことがある。
 その時、カステロン記者に問われて 「この中道左派政権は」と切り出され、最高幹部の顔触れから自民脱党者の保守だと定義したが、左翼でも、保守でもない、そんなイデオロギーなどを問うことが無意味なほどにも、ただただ頭から足の先まで、無責任の塊というべき政権であることが明確になりつつある。

| 児玉昌己 | - | 17:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
米国下院議会の選挙区割りに関する大石格日経ワシントン支局長の興味深い記事

  昨日24日付で日経新聞は、「地球回覧」というコラムで、大石ワシントン支局長が興味深い記事を書き送っている。米選挙区の奇妙な形というのがそれだ。
 米国の下院議会は完全小選挙区制度で、10年に一度区割りの見直しをするのだが、その形が面白いというもの。 この論考、「ゲリマンダーという言葉を知っているか」という問いかけから始まる。政治学では、特に選挙学(セフォロジーpsephology)という分野があり、これは重要な学問領域である。
 議員を選ぶ選挙法や区割りの問題は、極めて重要な研究テーマで、私も時にゲリマンダリングについて触れたことがある。
 たとえば以下のブログ。http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1252
 2008.06.14 Saturdayの北朝鮮の記事に関して、触れている。
 ゲリマンダーという言葉は、発音がやっかいで、英米系の人間には、時にゲリマンダーとそのまま発音しても通用しない場合がある。 ウィキペディアでは、表音記号では、ゲリーと表記されている。だが、ジェリーと発音され、ゲリーでは意思の疎通を欠いたことがある。
 マサチューセッツ州知事のエルブリッジ・ゲリーが 自己の都合のよいように選挙区の区割をして、その形が大石支局長が紹介しているように、神話のトカゲ、サラマンダーに似ていることに由来する造語である。
 この出来事は、実に1812年時のことであり、200年の歴史を持つ語である。
 この記事では、学生諸君が、恣意的になりかねない区割り確定の政治的動向に関心を向けていることが紹介され、興味深い。
 また定数1の州が7つあること、すなわちそこでは区割りの必要がないこと、選挙区の区割りは、36州で州議会もしくは州知事の権限であることが、紹介されている。ただ、残りの7つの州ではどうなっているのだろう。せっかくなら、書いて欲しかった。
 このように実にいい記事だ。
 だが、私にとって、より重要だと思われることは、時々の政治力を反映して変動し、それに応じて生じる区割りのその形の奇妙さもさることながら、現在の下院定数435という数字が、人口がこの間、大幅に拡大しても、実に80年以上変動していない事実である。
 すなわち米国の有権者との距離がわずか100名しかいない上院議員とあわせて、驚くほどその数が少なく、したがって、有権者の代弁人であるべき議員と有権者が疎遠となり、寡頭制の権威的政治の様相をさらに濃くしていることである。これに大石支局長が言及していないのが、残念だ。
 たとえば、イギリスでは人口が日本の半分で、下院議会は650程度だから、人口比で言うと、衆院議員は1300いることになる。人口3億をはるかに越える米国だから、いかに人口比で議員定数が少ないか、理解されるところだろう。
 米国では、人口比で見ると、人口増と反比例して確実に減少していく議員定数自体を増やす動きはまったくないのか、区割りの政治性を監視する学生諸君などがどう考えているのか、それを書いて欲しい。
 もしそのような動きがないとすれば、政治参加と民主主義についての米国の有権者の意識がそれだけのものだということだろう。
 つまり、米国から見れば、人口比で5倍から10倍はある議員定数について、ほとんど知ることがないということになる。
 あるいはまた同じく人口比で、自国の下院議員定数が、年々、急速にその比率を下げていること自体、米国の有権者はほとんど無知であることを示しているのかもしれない。
 わが国では、議員定数についていえば、行財政改革の観点で、すなわち「カネ」のことで語られている。そしてアメリカに倣って議員定数削減論を主張するものが多い。
 政治がカネで語られるようになるのは、民主主義にとって危険な兆候だ。しかも世界の議員定数からみたら異常に少ない米国をモデルにしていること自体異常なことだ。
 実際、議員定数を下げることは、有権者と政治を疎遠にするよう確実に機能を果たすことも、わが国の政治家も知る必要がある。

 

| 児玉昌己 | - | 08:37 | comments(0) | trackbacks(0) |
梅雨を想わせる九州北部
 九州南部は昨年より20日早く梅雨入りしたという。
 九州北部も雨。
 今週は雨の予報で、これが続けば、九州北部も梅雨入りということになる。気温も3日前は30度あったが、昨夜は14度まで下がった。半袖半ズボンと夏の格好をして朝過ごしていたために、体が冷えて、風邪気味。慌てて厚手の長袖をとり出した始末だ。
 政治も連日報道され、このブログでも書いているような、原発禍の広がりで、初期の対応を巡る政府の説明不足や無責任の状況で、心も冷えたままである。 
 児玉清さんに続き、奇しくも同じ歳で長門裕之さんが亡くなった。
 テレや映画を介して、身近にさせて頂いた俳優さんであり、ただでさえ、冷たい雨が、さらに冷たく感じるところである。
 
 
| 児玉昌己 | - | 23:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
原発禍の広がりとだれも責任をとらない政治 4
  原発禍にたいする政治における異常さを続けているのは、原発への安全指針が誤りであったと言いつつ、責任をとることなく、依然としてその座にあり続けるトップのゆえにである。まさに、この民主党という異様な党の政府の長の責任回避の姿勢がゆえにである。
 信なくして何の政治か、である。
 しかも、記録の書き換えさえ図りつつあるような動きである。
 この政権は、尖閣でみられた憲法上での国民の知る権利への重大な侵害をなした過去の実績がある。それと同様の、なし崩し的な事実隠しの可能性もある。今後、十分に監視し、吟味、公表される必要がある。

政治責任は、政治権力を行使する者の一挙手一投足は、1億2
500万国民の生命財産に直結する。隣接県にとどまらず、遥か離れた静岡など神奈川県のお茶の汚染の可能性という問題の広がりで一挙に噴出して来た。このように、政治家の責任は一般の市民、つまり個人のゴシップやスキャンダルのレベルの問題ではおよそない。

 総理本人は巨大震災に対して「運命的に」首相の座にあった、それゆえに責任を全うすると語っているが、国民にってそれが悲劇的運命であることが明らかになりつつある。

 北沢防衛相ら閣僚は、当然のことだが首相をかばい、「三権の長の一員が国会で選ばれた首相に直截に辞任をいうのは不適だという。 

 三権の長の1人である西岡参院議長によるこの発言は、たしかに実に異様な事態である。
 だが、指摘されるべきは、この議長の発言が、菅首相とその政権による、無責任の政治の継続という、議長発言以上に異常な出来事の継続を背景になされていることも忘れてはならない。

 実際、この政権まだ2年もならないというのだが、打ち続く選挙では参院選という国政選挙を含め、かつての末期自民党政権の再来の如くも、連戦連敗で、しかも内閣支持率20%台でも、責任があると、世論を無視する。
 そしてできないことを平然とできるかのようにいい、言ったことを平気で撤回し、何の責任もとることなく、居座り、米国有力紙ワシントン・ポスト(2010.4.14)に「クルクルパー、ルーピー」と最悪の形容を受けた前任の鳩山由紀夫氏と同様の無責任の繰り返しである。

 原発の安全が根底から崩壊した後も、しかもなお原発禍が深刻に広がりを見せている現状にあっても、原子力行政と保安関係にかかわる長が、依然としてだれ一人責任をとらず、その座に居すわる。
 その事実自体が、じつに異常事態である。
 それはなにより、首相が当初の重大な対処の誤りに対して、不明をわびながらも、責任をとることをしないという事実に由来しており、首相の言葉を借りれば、それが日本にとって「運命的に」不幸なことだという点で、西岡参院議長に全く同感である。
 
参考記事

政府、首相の関与否定に躍起 注入中断問題 過去の政府資料を訂正産経新聞 521()2313分配信

菅首相「国民に言ったことが違っていた」と陳謝 読売新聞  520()2047

原子力安全委員長、原発の安全指針「間違いだった」 日経2011/5/19 22:52

退陣を求める西岡参院議長:首相に退陣求める毎日新聞 2011519
首相視察前、官邸に予測図=放射性物質の流れ確認?時事通信 519()2216

 

| 児玉昌己 | - | 00:13 | comments(0) | trackbacks(0) |
原発禍の広がりとだれも責任をとらない政治 3
  任命された良心的学者は排除され、別の内閣参与は、無責任な発言をし国家関係を危機に陥れた。人文系の無様極まりない内閣参与2人も採用したのは誰だ。なにより内閣は菅直人政権であり、その名において任命されたのである。

 この指導者の政治的資質については、震災後、日々明らかにされている。実際、被災地にようやく乗り込んでも、「ガンバロー」と、組合運動家か、党の大会でしか使わない語彙しか発せない資質だから、期待できないとはおもいつつも、やはり唖然とするものであった。 

 人もまばらとなった避難所を敢えて選び、質問者など限定しての被災地訪問であったにもかかかわらず、その挙句、被災市民からは「もう帰るのか」とつめよられる無様極まりない始末だった。それはテレビカメラを通して、全国に報じられた。
 この言葉こそ、被災市民とまるで向き合うことをしなかったこの首相について、政治指導者の資質を本質的部分で認識させた言葉であった。

この政権のトップは政治全体に悪影響を及ぼしつつある。それが今日の表題なのだ。

 なによりも、それまでの原発の安全基準が誤りであったという原子力委員会のトップで内閣府原子力安全委員長や保安院長を含め、保安院長全国に2次被害を広げる状況にあって、だれ一人政治の要路にあるものが責任をとることをしない。しかも安全委員長と官邸の間で見苦しくも責任のなすり合いを始めている。 

 巨大震災は、自然災害として、仕方がないことだともいえる。10メートルの2重3重の備えがいとも簡単に破砕された事実こそが、自然災害の人知を超えた脅威を物語る。
 だがそれにせよ、自然災害の巨大さを軽視し、膨大な血税を投入しつつ、原発は安全だと神話を言い続けてきた歴代政府と東京電力をはじめとする電力会社である。それゆえにこそ、原発禍は絶対に許されるものではない。

 ブルームバーグ・ニュースによると、東電原子力設備管理部の小林照明課長は5月19日「モニタリング・ポストが正常に作動していたかどうか、まだ調査している。津波が来る前に放射性物質が出ていた可能性も否定できない」と認めた。すなわち、地震で安全としてきた原子炉が津波ではなく、その前の地震だけで、いとも簡単に破砕された可能性があるという。驚愕すべき発言である。  
 仮にそうでなかったとしても、地震自体で損傷の可能性が指摘されることだけで、如何に杜撰極まりない設計であり、安全管理の問題を抱えていたかということである。
 アカデミズムも原発の神話
に加担していたといえる。初期のあのテレビでの原子力を専門とする大学教授の解説は何であったのかと、今となっては皆が首をかしげる内容だった。
 安全だと思いこみ、こんなことは起きないと事前に確定的に考え、それ以外の可能性を考えることをしなかったのかもしれない。

 参考記事
 福島原発:津波が来る前に放射能漏れの可能性−地震で既に打撃か
(1) 5月19
日(ブルームバーグ)

震災対応組織、三つの対策本部を軸に整理 読売新聞 2011561316  

人が多すぎて…復興構想会議、運営めぐり危機感 読売新聞424()

| 児玉昌己 | - | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
原発禍の広がりとだれも責任をとらない政治 2

 政府は、原発の重大損傷を受けたら、直ちに東電に政府機能を移し、速やかに一体として行動すべきであった。
 だがやったことといえば、屋上におくを重ねるだけの驚くような行政組織に積み上げによる責任回避的な対応、世界各国の政府やメディアから非難された杜撰極まりない情報公開への消極的姿勢だった。
 政府の震災対応組織が整理され、東電と政府の統合記者会見は最近のことである。
 しかも設置された東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)は討議もされていない初日から増税を言う始末だ。増税は国家の議会で討議されるべき重要案件であるにかかわらず。最初からこれを言わせるだけの会議だったのではないかとさえ疑わせるものだった。
 また、この復興会議、原発は議題から外すとされたことで、梅原猛さんから震災復興で原発問題を離れてはあり得ないと厳しく指弾された。

 なお復興会議議長の五百旗頭真防衛大学校長は、報道によると、3番手の候補であったという。東大の佐々木元総長が一番手。ただし、同氏が東京電力福島第1原発のプラント建設にかかわった東芝の社外取締役ということで駄目、前総長の小宮山氏は東電の監査役で、これまた断念された経緯がある。

 原子力安全委員会の委員長も含め、「国策」ということもあり、東大工学部の原子力エネルギー学系の関係者ともども、東大は国家の最大の財政支援を受ける大学として、東電など原子力エネルギー推進企業との関係は異常というべきも深い。

 政府と東電の関係でいえば、思い出おこせば、3.11の巨大震災で原発の危険が白日のものとされて、以降、枝野官房長官は東電のメッセンジャー・ボーイというべき役割を延々と果たした。
 それも実に粗にして、疎なる中身の薄い会見を延々と続けた。「直ちには被害はない」というあの繰り返されたセリフと共に
 そして2カ月を経た段階で、ようやく1号機についてはメルトダウンという東電の発表だ。

 水素爆発であの堅牢だとされていた原子炉建屋がものの見事に破壊された時点で、そしてセシウム漏出が遠隔地で確認された段階で、原子炉の重大損傷、つまり広義のメルトダウンというべきものであった。
 これに対して保安院は、そして枝野長官は官僚の答弁書の如く「爆発的事象」などという馬鹿げた言葉で、その実態を過小評価し、世界に不信を与えた。
 BBCは映像で見たとおり、巨大爆発Huge Blastと直截的に形容した。

 それは皆さまが実見されて、映像資料としても長く残されるものである。この間、菅首相はまるで他人事みたいに執務室に閉じこもり、被災地訪問さえもしない状況だった。
 一時は悪天候が予測されているその日に設定し、それを理由にキャンセルされるという茶番劇もあった。
 その間、責任を分散回避するかの如く、多数の対策機関を立ち上げ、顧問を内閣参与に雇い入れた。
 そのうちの放射線量を専門とする学者参与は、自己の良心に基づき、乳幼児および学童にたいする放射線量に関し、危険極まりない20ミリシーベルトという、彼の判断では異常に安易な政府設定について、涙の抗議で辞任した。
 他方、原子力のゲの字も知らない別の文学者の参与は、「20年は住めない」と原発禍の被災者を切り捨てる、官邸内部でのやりとりを漏らす発言をした。

 同じくなぜこんなのが、国家の重大事にあってしかも血税から歳費が出る参与なのかといわしめる無様な劇作家参与もいた。
 このものは、無責任にも、よりによって韓国で、トモダチ作戦で活躍してくれた米国を愚弄するかのように、米国の要請による海への汚染水の放出といって対米関係を危うくした。
 汚染水の垂れ流しについて菅政権の責任回避を意味する機能しか果たさない無様な講演をして、内外で批判を浴び、これまた謝罪し、撤回するという唖然とする様だ。
 一体この劇作家、首相は、内閣府は何のために任命したのかね。

参考記事ブログ

原発周辺「20年住めない」=菅首相が発言、その後否定時事通信 413()1551分配信

福島第1原発>内閣官房参与、抗議の辞任 毎日新聞 429()219分配信

福島第1原発 「米要請で汚染水」平田参与が発言撤回毎日新聞 519()00分政府

東日本大震災:復興構想会議 原発除外に異論が噴出 毎日新聞 2011414日 2105

東大総長経験者の起用希望=復興会議議長、東電との関係で断念―菅首相 時事通信 416()232分配信

ブログ
2011.03.12 Saturday
政府と原子力安全保安院広報の不安昂進だけの無意味な会見 英BBC
が伝える原発大爆発

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2733

 

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原発禍の広がりとだれも責任をとらない政治 1

 雨の日曜日。私は政治学と欧州政党を講じる一学徒にすぎないが、週末は皆さん同様、多忙な、日常の業務から解放される。
 だが、
3.11以降の日々を振り返るにつけ、そんな政治権力の有り様に不快さが増す一方である。

一向に収束しないのが福島原発の放射能危機と原発禍だ。むしろ被害は広がる一方だ。

 3号機 “燃料に水届いておらず”TBSJNN 518日に報じられ、21日には、プルトニウムのMOX燃料を使うプルサーマルの3号機が海水取水口近くにある「ピット」、コンクリート製の穴から、海に流出した高濃度の汚染水の量について、それが20兆ベクレル、限度100倍と報じられた。
 まさに私が4月13日のブログで「海のチェルノブイリ」と形容した表現そのものである。

原発禍は、確実に拡散浸透し、全国ブランドというべき栃木や静岡のお茶まで被害が及んでいる。毎日紙は20日付で「荒茶:検査要請 産地続々拒否へ」と報じた。

それによると、厚生労働省が、生茶葉を乾燥させた「荒茶」の放射能検査を東日本の14都県に求めた問題で、神奈川、埼玉、栃木の3県は19日までに、検査をしない方針を決めた。静岡県の川勝平太知事も18日、検査要請に応じないと表明しており、産地自治体の反発が広がっている、とのことだ。

民主党菅直人政府自身の初期の杜撰な対応がまさに確実に被害を拡散している典型的事例であり、2次被害というべきものである。
 第一、汚染値として、通常の範囲を超える疑いありとして計測依頼が行政から出されれば、その時点で、それがどこのものであれ、だれのものであれ、消費者はそれを購入することを控える。

自己防衛というべき当然の対応なのだから。

 菅内閣の震災当日以降の東電の福島原発に対処するその仕方の杜撰さが連日関係者により語られ、報道されて、その概要が明らかになりつつある。
 要は決定的局面における当事者の連絡不足による情報不足と、それを招いた 東電と官邸の危機対応能力の致命的欠陥の露呈である。

 参考記事・ブログ

3号機 “燃料に水届いておらず”TBS系(JNN 518()1833分配信

福島第1原発>3号機流出は20兆ベクレル限度100倍毎日新聞521()荒茶:検査要請 産地続々拒否へ2011520 247 

栃木産の生茶葉からセシウム、出荷自粛要請読売新聞519()2044分配信

 ブログ
2011.04.13 Wednesday
レベル7 海のチェルノブイリか  福島原発重大事故 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2794
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2795
 

 

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5月のこのころの大学教員の日常 衆院選挙制度(公選法)改革とも関連して
  3月は大震災、4月はその推移に胸を痛めつつ新年度を始めた。5月の黄金週間のハノイ出張。この間、講義やゼミ。
 北海道新聞からは島田記者の取材を受け、5月8日付「ドウシン」にサンデー討論として、泉前最高裁判事をお相手に、1票の格差とくに1人特別枠に対する違憲判決の意味や、現行の日本の選挙制度の問題についての所見を話させて頂いた。
 現行の制度の延長では、地方は確実に衰退する。その認識を民主党はもとより、自民他、各野党の国政を担当する政治家には、現状の取り組みの誤りを理解してもらいたい。
 特に民主が出している現行小選挙区比例代表制を基礎とした21増21減案など、地方主権とはまるで異なり、宮城や岩手など被災地の活力を奪い、大都市だけを栄えさせ、地方を死滅に追いやる愚策であること、比例制を主軸とした選挙制度の抜本改正こそが、日本の民主主義と地方を含めた政治を活性化させ、活力あるものにするるという認識がいる。
  何より議員削減論など、行財政改革というカネの理由で、政治を扱い、議員定数が人口比で見て100万に2人の議員も確保できていないというごとく、異常、異様に少ない米国下院だけに目がいき、米国では、議員任期がわずか2年でしかないことも失念し、その寡頭制の権威主義的政治の本質を見落とtている。
 他方、欧州の国家の議会と議員定数にはまるで無知である。 実際、 議員定数が人口比で日本の3倍以上もある。 こうした政治先進国の欧州政治の現状とはまるで異なり、政治を国民から遠ざける悪しき結果を持つことを理解しておく必要がある。
 そして現状の選挙制度の下での小手先の対応は、膨大な死票を積み増し、政治に敵対的感情を不必要にも持ち込み、現在のねじれをさらに強化するよう作用し、結果、政治を不安定にし、さらには現状でも進行著しい大都市部と地方の不均衡という新たな格差を拡大させるということを知る必要がある。
 ともあれ、新年度が始まり、2ヶ月目、日常が戻り、淡々と日々が過ぎていく。
 イギリスと欧州議会の選挙結果分析と、ヨーロッパにおける極右の党勢拡大に関する2つの論文も1つは刊行され、1つ再校を終えた。
 すでに7月2日には西南学院での公開されるEUお墨付きの九州学術研究会(EUIJ)での、ユーロ問題に関する政治学的観点から見た意義や、8月の勤務校でのオープンキャンパスの模擬講義、さらには、人間ドック、あるいは9月のEUIJの、九州各地の学生を集めた夏の勉強合宿のスケジュールの目白押し。
 コエンザイムやブルーベリーなどのサプリメントや、酒どころ久留米ならではの各種の利き酒会などに顔を出しつつ、東北での被災地復興を祈
念しつつ、精々体調に気を使い、自己の職責をこなしていこうと思っている。
 直参考までに

◇1人別枠廃止の場合の増減

都道府県 現行定数  試算結果  増減
北海道    12    13  +1
青森県     4     3  −1
岩手県     4     3  −1
宮城県     6     5  −1
秋田県     3     2  −1
山形県     3     3   0
福島県     5     5   0
茨城県     7     7   0
栃木県     5     5   0
群馬県     5     5   0
埼玉県    15    17  +2
千葉県    13    15  +2
東京都    25    31  +6
神奈川県   18    21  +3
新潟県     6     6   0
富山県     3     3   0
石川県     3     3   0
福井県     3     2  −1
山梨県     3     2  −1
長野県     5     5   0
岐阜県     5     5   0
静岡県     8     9  +1
愛知県    15    17  +2
三重県     5     4  −1
滋賀県     4     3  −1
京都府     6     6   0
大阪府    19    21  +2
兵庫県    12    13  +1
奈良県     4     3  −1
和歌山県    3     2  −1
鳥取県     2     1  −1
島根県     2     2   0
岡山県     5     5   0
広島県     7     7   0
山口県     4     3  −1
徳島県     3     2  −1
香川県     3     2  −1
愛媛県     4     3  −1
高知県     3     2  −1
福岡県    11    12  +1
佐賀県     3     2  −1
長崎県     4     3  −1
熊本県     5     4  −1
大分県     3     3   0
宮崎県     3     3   0
鹿児島県    5     4  −1
沖縄県     4     3  −1

 

参考記事
21増21減で調整へ=1人別枠方式は廃止−衆院選「1票格差」是正・民主
時事2011/03/25


 
 
| 児玉昌己 | - | 07:48 | comments(0) | trackbacks(0) |

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