児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
さあどうする自民民主の諸君よ 比例制への転換と国民のTPP支持の世論調査 下
  第2はTPP。日経31日付は世論調査を出している。TPP賛成が45、反対は32%と10%以上の差がついている。
 人口の数%を代表する既得権益の代表の利益か、生産者も含めて、赤ちゃんから高齢者まですべてが消費者でもあるという国民の利益や、海外にも出たいとする意欲ある農業生産者の利益の保護をとるのか。
 コメの780%余の高関税に見られる保護主義をとっても、農業の衰退が進んでいるという現状がある。そのなかで、特定の圧力団体に傾斜した農業助成制度を根底から変え、生産者と、消費者という名のすべての国民の利益の両立を図ることができるとする下記に示した提案も出されている。
 TPPでは、参加すれば、食品等の安全が保証されないような議論が一部でなされている。誇張というべきだ。自国の消費者の健康と安全は国家主権であり、それを損なうような、外交交渉など、初めからあり得ない。
 食品の安全基準がバラバラだったEU加盟国間の交渉に学べばよい。
 それにしても、政権の受け皿となるに一番近い自民のはずだが、「支持率3割を切る」と、同じ日経の調査である。
 民主の守旧派と同じでは、政権奪還は無論、日本の将来も託せないと国民は見ている。みんなの党がよほど21世紀の潮流を踏まえ、先進的ではないか。
 民主自民の諸君よ。さあどうする。  

参考ブログ・記事

 なぜ、アメリカやEUのように「直接支払い」に移行できないのか?「自由貿易」と併用して消費者利益と農業保護の両立を、山下一仁、日経ビジネスon line.20111025  http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111019/223312/ 
TPP
「参加を」
45%、反対上回る 本社世論調査 内閣支持率横ばい58 2011/10/30 22:00 日本経済新聞 電子版 31日付本紙

自民支持率3割切る 世論、対決より協力望む 本社調査 2011/10/30 22:00 日経子版および31日付本紙

| 児玉昌己 | - | 17:43 | comments(0) | trackbacks(0) |
さあどうする自民民主の諸君よ 比例制への転換と国民のTPP支持の世論調査 上
  今日の日経は印象的な記事と意見広告が出ている。まず政治学者として取り上げるべきは、1票の格差是正をめぐり最高裁判事の罷免を求める意見広告だ。
 1票の格差是正に動かない最高裁判事に対する国民審査による罷免を求める意見広告はこれまでも、出されていた。
 だが今回は、今までと違う。
 10月19日付、ブログでも指摘したが、この広告、少し疑義を感じていた。それはではどう是正するのがいいかという、その後のこと、つまり政策論がまるで見えない広告だったからである。
 実際、1票の格差是正を訴えるということだけでは、その方法を間違えば、民主や自民の一部が考えている現行の小選挙区制度を維持したままでの比例定数の大幅削減による、反民主主義的な小選挙区制の強化の方向にも触れかねない。
 そんなゴールの見えない意見広告に見えたからである。
 今回は、1票の格差を解消するという意見広告本来の趣旨に沿って、みんなの党の完全比例代表制への選挙区制度の移行を支持し、民主自民をそれに反対する政党として、比較していることである。
 政治学的にいえば、さらに詳細に選挙学(シフォロジーpsephology)の観点からいえば、1票の格差を解消するのは理論的には実に簡単である。
 完全な全国1区の比例制にすれば、その瞬間に、この積年の問題は完全に解決するのである。 比例代表制度と小選挙区制度では、票計算の仕方に対する概念がまるで違うからである。
 比例は、得票に応じて、数学的に議席を比例させていく、つまり民意を限りなく、議席に反映させていくという考えである。
 他方、小選挙区制度は、10万票でも10万1千票のものに敗れ、選挙区での支持はほぼ半々であるのに、片方の10万はすべて死票となり、勝った側が勝者としてその選挙区の代表者として政治の場にでる。ほぼ同じ片方の有権者の意思をすべて無視して。実に、愚劣かつ欺瞞極まりない制度である。私は、これを民意の虐殺の制度と名付けている。
 小選挙区制度は、投票区を設定し、定数1と当選者を限定する。それゆえ都市部と地方の選挙区の有権者数の多寡により、その問題が顕在化するのである。 
 みんなの党は、最近完全比例制度というべき制度を導入することを公表した。
 その意味で、有
権者との距離を考え、都道府県単位で投票区を残しているが、実にラジカルに1票の格差問題にたいして切り込んだのである。 自民や民主の旧態依然たる小選挙区案を拒否し、はるかに進んだ提案である。
 今日のこの意見広告は、明らかに1票の格差に対する遅れた対応の民、自を批判し、他方、これに積極的なみんなの党の選挙制度への姿勢を評価してのものだ。
 さあとうするかね。自民と民主の諸君よ。

参考ブログ
自民と民2011.10.19 Wednesday
 みんなの党の比例代表選挙制度提案を大いに評価する 上 議員定数削減を除きだが
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2959

2011.02.27 Sunday 内紛続く「野合的」民主政権は選挙制度がなさしめるもの 7 イギリスの現状

http://masami-kodhttp://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2710

| 児玉昌己 | - | 08:07 | comments(0) | trackbacks(0) |
仏大統領サルコジの嘆き―ギリシアソブリン債危機と「後の祭り」

   パリから読売の三井美奈記者が興味深い記事を発信している。

以下がそれだ。ギリシャのユーロ加入「誤りだった」…仏大統領読売新聞 1028()2351

それは以下伝えている。

 大統領は、ギリシャは2001年のユーロ圏入りに際し、「間違った(経済統計の)数字を使った。本当は(参加の)準備ができていなかった」と指摘。「決定時、メルケル独首相と私は共に職務についていなかった」と弁明した。その上で、26日にユーロ圏首脳が債務削減などのギリシャ救済策を決めたことについて、「ほかに道がなかった」と語り、仏国民に理解を求めた。
 以上引用

 かつての指導者の「失策」についての批判が思わず出たということだ。ギリシアがユーロ加盟した10年前といえば、サルコジはもとより大統領ではない。彼は、1999年欧州議会選で惨敗し、ゴーリスト党のRPRの暫定党首としての責任を取り、表舞台から退く。2002年に内務大臣、そして財務大臣になるのは2004年と時を要した。大統領になったのが20075月のことである。

 他方ドイツの女性宰相メルケルは、2000年には第7代目のCDU党首に就任したばかりで、野党党首の時期だ。すなわち、ギリシアのユーロ加盟は、SPDのシュレーダー政権(1998年-2005年)下のことである。ギリシアのユーロ圏入りから5年後、2005年にSPDから政権を奪還し、第1次メルケル内閣を組織している。

 フランスに戻っていえば、ギシア発のソブリン債危機に振り回され、有力銀行のソシエテ・ジェネラルの株価が8月からわずか1カ月で半値まで下がる状況に至っている。

 同国の大統領サルコジとしては、憤懣やるかたない、その気持ちがまさに読売紙の見出しに表現されている。

 民間投資家もギリシアのソブリン債の半減ともいわれる「ヘアカット」(債務元本の減免)を飲まされる状況に至り、関係者がひとしく抱いている気持ちだろう。

 実際、その記事が言うように、ギリシアが2002年からの現金流通を前にして、土壇場の飛び込みでユーロ圏入りを果たした。だが、その際、ユーロ入りの3条件の1つである長期の公的債務GDP60%以内という要件について、数字の操作がなされたのではないかという疑念は、有力投資銀行がその「粉飾」操作に関わったという噂と同様、当初から存在した。
 だが、リーマン・ショックまで、比較的順調にきたユーロだったがゆえに、そのことも顕在化しないで済んだ。
 だが、
2010
に入り、ギリシアの政府自らが債務問題の深刻さを口にして、ユーロ圏のみならず、世界経済全体を不安定にさせた。
 その後、各国の政府、金融関係者、そして投資家を一喜一憂させている。

 中国もその例外ではない。外貨準備に占めるユーロ建て資産の保有額は8000億ドルを超えているといわれるが、その減価も著しい。

 ともあれ、後の祭りである。
ちなみに、祭は祭事、すなわち、古代にあっては、政治と同義語である。

 政治は結果責任だ。自己が預かり知らない前政権の失策を問われるのは当事者は不本意で、堪らないことだろう。ブッシュの大失政のツケで、今もその負債に苦しむ米大統領オバマもその例だ。
 だが、政治家の決断は、後に影響を及ぼす。
 ギリシアについてはEUがギリシア・ローマを文明をその精神的基礎としている限り、歴史のギリシアと現在の同国は別物ということを知りつつも、ギリシアのユーロ加盟を認めたのであり、それ自身が経済合理性にたつ決定ではなく、政治的判断でなされたのである。
 ソブリン債危機を巡る一連の動きは、悪しき決定が、如何に後で国民に祟るかということを示して、実に政治の本質を示す事件として興味深い。
 さらに、また政治的決定は、政治的判断でトラブルシューティングされるほかはないということも示しているのである。

| 児玉昌己 | - | 13:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
庭の黒松を詠む 海鳴庵/児玉

 10月最後の週末。慌ただしい週を終えて、ほっとする。季節はくる時を忘れず、朝夕、風も冷い。その中に黒松が悠然と立つ。

 

 

黒松は 庭の主なり その威厳 黄の石蕗 (ツワブキ)も 従えて立ち

                    海鳴庵/児玉

海鳴庵/児玉昌己句歌集2011年後半
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2893

| 児玉昌己 | - | 08:54 | comments(0) | trackbacks(0) |
356人と75円 TPP問題、国家の将来を考えよう 維新開国に学べ

 今日のタイトルは数字だ。
何の数字かおわかりだろうか。奇しくもネットでは以下の数字が踊っている。前者はJAが公表した反TPP議員、もしくは消極派の数だ。後者は史上最高値となった円の数値。
以下その記事
賛同議員、356人公表=TPP反対請願―JA全中 時事1025
一時7573銭=最高値更新〔NY外為)時事通信1026
 ため息の出る2つの数字ではある。

 アジアのタイでは大洪水。我々日は如何に多数の日本企業が大小を問わず、国外に生産拠点を移しているかを知るだろう。タイ中部の工業団地だけで、被災した日系企業は450社にのぼる。
 
民主政権のTPP交渉入りをめぐる、いつもながらの閣内不統一と党内のドタバタに見る政治無策、円高無策。政権与党は、外交も内政も、国家の重要な基本政策さえ、まるで意思統一を欠いている。政権奪取2年を経て、一致していたのは、わずかに「反自民」のスローガンだけであったという現状を目にしている。もっとも、TPPでは自民も同様だが。
 こんなわが国では、製造企業は自己防衛のため、やむを得ず日本から生産の拠点を移すことを余儀なくされている。その度に雇用の機会が失われていく。  
 以前インタビュを受けた仏有力週刊誌ヌーベル・オプセルバトゥールの記者から、民主党について、労働者寄りを示す「中道左派政権」だが、と切り出されたのである。
 実態は、人事院勧告を無視し、超円高を放置し、雇用の確保さえ無関心な政党というべきだろう。
 FTAの一種であるTPP(農産品も対象としている意味で、EPAより影響大)を含め、その最大の眼目である関税引き下げは世界的趨勢で、わが国だけが逃れることはできない。
 であれば、如何にしてそれを乗り切るかを考える必要がある。幕末維新の黒船の時代同様、国家的な危機の時代である。
 尊王攘夷派よろしく、反対、反対で国難を乗り切れる時代ではおよそない。開国に踏み出した維新期の先人の知恵と経験、そして決断に学べということである。

 それに無関税化、すなわちFTA圏創設の傾向は世界的で、米国であれ、韓国であれ、どの国も、自国産業が痛まない国家は存在しないということも理解すべきである。
 ユーロ危機で苦境に立つ側面が強調されるEUだが、その域内では無関税の空間による経済効果がEUを発展させた。21世紀に入った現在、TPPで大騒ぎしている日本だが、EUFTAの経済統合レベルをはるかに超え関税同盟を形成させてさえいる。1968年のことで、43年も前にである。
 6カ国で始められた単一経済空間の創設の試みは、少なくとも27カ国、市場規模、5億人の空間までに拡大させたのである。EUの農業政策然り。

 日経ビジネスにいい記事がある。この情報も有り難いことに、大学関係者にご教示頂いた。
 その記事の指摘は、コメにたいする778%の高関税の事例に見られるように関税による国内保護政策の継続にもかかわらず、農業が衰退して来たという現状を指摘し、農協の役割を論じ、小選挙区というわが国の選挙制度がもたらす悪弊という日本の政治の深層にも踏み込み、実に見事である。
 以下山下一仁論文、引用
「なぜEUでは農政改革が進み、日本では進まないのか−EUは加盟国が27カ国に上り、合意形成は相当困難なはずなのに、価格支持から直接支払いへという改革を着実に実施している。なぜEUでは農政改革が進み、日本では進まないのだろうか。日本の農協の収益が高い農産物価格とリンクしていることが原因だ。」

 国難を前に与党も野党もない。あるのは現在の国民と将来の国民の利益の確保のみである。 政治家諸君よ、自らに知恵がなければ、専門家の声に虚心に耳を傾けよである。
 参考記事
なぜ、アメリカやEUのように「直接支払い」に移行できないのか?「自由貿易」と併用して消費者利益と農業保護の両立を、山下一仁、日経ビジネスon line.20111025  http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111019/223312/ 

TPP交渉、実際は離脱困難と官房長官読売新聞1024

「離脱」は不穏当な表現=TPPで不快感―米倉経団連会長時事通信 1024

| 児玉昌己 | - | 08:37 | comments(0) | trackbacks(0) |
ゼミもネット時代 パワーポイントの競い合い
  大学は演習という名の授業形態がある。いわゆるゼミだ。ゼミナールという言葉からきている。
 インターネット時代の到来からもう20年にはなるのか、インターネット時代の演習など手探りしつつ進めている。今日はパワーポイントでのプレゼンテーションのことを書こう。
 講義では、多数の受講者ということで、パワポなど、なかなかその活用がままならない。教室を暗くしなけれいけないし、一方的になり、注意力が散漫になる学生諸君もいるからだ。
 だが、12-15人前後のゼミは機動的に動ける。
 今は、プレゼンテーション時代。プレゼン、パワポなど、省略言葉は嫌いで使いたくないが、そういう。会社ではごく自然な言葉だろう。後者は横文字でPPTなどということもあるようだ。
 それでゼミでは、パワーポイントでそれぞれのテーマで、作成する時間を設けた。高校でも、教科としてやっているところもあるかもしれないが、高校は小さな演習はないだろうし、学科の特性も大学はあるので、それとは違ったものとなる。
 今年初めての企画だ。いろいろ添付ファイルで送られてきて、その関心の広さは、実に興味深い。以前はソフトもパソコンも高価だったから、こうしたこともなかなかできなかった。ノートパソコンもソフトも家電並みになり、いい時代になってきた。
 プレゼンでは中身もだが、外見も重要。見た目の美しさ、説得力、インパクトなど、助言しているところだ。
 初心者もいるし、手慣れた学生さんもいる。
 かくいう私も、パワーポイントに注目したのは10年ほど前。その活用を始めたのは、ここ5-6年のことだ。講演での必要性とその簡便さ、美しさにあった。言葉で話すより、映像や図などは実に効果的である。
  一般の前で、活用したのは、もう5年ほどにもなるか、鹿児島は大口市で開催された、水のシンポジウム講演のときだったように思う。 その時は、法科大学院に進んだゼミ生からむしろ指導助言を受けた。私は現代版デジタル紙芝居と位置付けている。
 あちこちの学会の報告でも、もうごく自然に使われている。
 日頃は当然として使っているこのパワポ。だが、考えてみると、凄いことだ。スケーリングも自動だし、簡単なレイアウト機能も、色の選択などもでき、実に簡便で、正直、感心している。
 ただし、パワポについては、問題がないわけではない。
 作り手のレベルを反映し、フローチャート風のものでは、作り手の独善が反映され、別の可能性と広がりはないのかね、と思うものがある。もとよりソフトの問題ではなく、作り手の問題だ。
  ベルギーはブルージュにある母校欧州大学院大学(College of Europe)での在外研究の頃だ。 ドイツ人で行政学科長マンケ教授の助手をしていたミシャイルと、パワポの話になり、マサミは使うのか、と問われて、そんな話をすると、わが意を得たりと、彼も同じことを口にした。
 やはり、最後は、作り手のレベルの問題がその成否を決する。
 結論はそのように落ち着いた次第だった。

| 児玉昌己 | - | 06:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
筑後・久留米の酒フェスティバルを楽しむ
  筑後の酒フェスティバル,筑後SAKEフェスタ」に、蔵元に出す米を精米する業を営む友人のT君と出かけてきた。
 久留米を中心とする筑後地方は、酒どころで、私もこちらに来るまで知らなかったのだが、伏見に次いで蔵元が多い酒処なのである。もとより、筑後川の水と、コメ。それを活用したものだ。
 このフェスティバル、今年から、より大きくということで、2会場をつないで、24の蔵元が参加した催し。
 当日券2千円、前売り1500円の入場料を払うと、しゃれた数種類の柄の久留米絣の小袋に入ったお猪口を受け取り、それで、蔵元の各種のお酒の利き酒が自由に堪能できる。
 こちらに来て10年。懇意にさせて頂いている蔵元さんの顔も少しずつ広がっているが、三井の寿の社長さんからイベントのことを聞いていた。それで、楽しみにしていたものだ。
 同社は、山田錦が全盛となる前の稲の品種、穀良都(こくりょうみやこ)を使った、同名のブランドを開発されている。米の甘みが丸ごと舌に乗ると表現できる名酒である。山の寿(山の寿酒造)もお薦めである。
 会場にズラリと並んだ、蔵元のブランドは、それぞれに特色があり、しかも香り、深みなど同じ蔵元でも異なるから、その数も半端ではない。そのうちのいくつかを賞味して来た。
 享保2年(1717年)で300年近い歴史を誇る八女の老舗高橋酒造は吟醸、繁枡(しげます)が有名だが、大吟醸の「箱入り娘」を頂く。味はもとより、そのブランドの名がいい。精魂込めて育てたお酒だ。いかにも他所に出すのが惜しいという感じで。
 同じく八女は黒木町の旭松酒造(大正5年創業)、専務さんのご夫人によると、先代の名にちなんだという松和を頂く。また上記の友人の親戚が営む酒造の名を冠したブランド、大空(だいくう)も。いずれも、自信作で、結構な味だ。
 歴史の味わいという酒となれば、筑後地方の蔵元として最も歴史があり、創業元禄12年(1699年)という若竹屋酒造の馥郁(ふくいく)元禄之酒。元禄12年といえば、赤穂浪士の討ち入りの3年前のことである。
 その名が示すごとく、創業時代のものを復元した琥珀色の酒。まさにその名のごとく、馥郁とした芳醇な風合いの酒である。
 このほか、ソフトバンク・ホークスの優勝時の鏡割りでも知られる鷹正宗など、多数の銘柄があり、そのごく一部しか紹介できないのが残念である。
 ともあれ、午前中の雨も上がり、午後からは青空が広がり、人の入りもあって、地元の銘酒で楽しいひと時となった。
 ただ、この日曜日、惜しむらくは、八女で開催されていた伊能忠敬の、広い総合体育館を使っての実寸の大地図パネルの展示が同じ日曜日まで。これを見落としたのは、痛いことだった。
 引率児童が、敷きつめられたパネルを踏み歩きつつ、地元の地図も確認しながら、その偉業に素朴に歓声を挙げていたのをニュースで見ていたのである。
 都会暮らしも悪くないだろうが、存外、地方の暮らしもまことに豊かなのである。
| 児玉昌己 | - | 21:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
ソブリン債を巡る英保守党の対EU政策について 欧州連邦への過渡期的性格が生むソブリン債危機 7

 実際、ソブリン債危機は、EUのその過渡期的性格が招いているのである。
 そしてそれにとどまらず、連邦的統合に向かうことを拒否したいイギリスなどの国家群と、連邦的統合を認めることで加盟国が結束をし、これを乗りっ切って行こうとする国家群の、更なる乖離さえ潜在的に秘めた
EUの動きを招来しているである。

 それがゆえにソブリン債危機は政治学者である私には強い関心を引くのである。
 こうしたダイナミックなEUを通して進む欧州統合のドラマさえ、わが国では、欧州連合という表記に阻害されて、十分、理解できない状況にある。
 ソブリン債危機は、財政と金融の一体化を確立する欧州連邦に向かうEUの過渡期的な政治プロセスにおける混乱といえば、実に簡単である。

 EUは「欧州連合」などではなく、その核心部分は常に欧州連邦を志向する政治体であり、EUは、欧州連合の日本語表記を否定する方向性を常時持っている。
 すなわち、ユーロピアン・ユニオンというEUは、欧州社会党からも、はやくも1996年年時点で、その使用停止を求める書面質問書が出ているように、主権譲渡に合意した条約締約国の「同盟」関係を構築しているのである。
 にもかかわらず、EUの総体を欧州連合とし、他方、関税同盟(customs uion)や、通貨同盟(monetary union)、政治同盟(poitical union)など、同じユニオンを恣意的に、何の整合性もなく訳し分けるという現地欧州でもない出鱈目な使用法を勝手に導入して、混乱を招いている。

 EUは、ユニオンとは欧州統合における連邦主義の研究者のマイケル・バージェスが指摘したように、統合推進派も、そしてEU懐疑派のどちらの側からも使用可能な同盟Unionであって、そうした柔軟性のある用語が採用されれるべきであった。
 このユニオンとは、その意味の柔軟さがゆえに、政治的に中立の訳語であったのである。 
 しかるに、わが国では、欧州連合と、一方的にEUの将来までも固定した用語である連合が採用された。EUの代表部広報部は、EUの中立性さえも侵しているということもできる。
 EU自身が、ヨーロッパ人がそれについて触れていない将来像にまで欧州連合とみるようでは困るのである。
 実際、冒頭に紹介したように、英有力保守新聞のテレグラフが焦燥感を強めるように、EUは特にユーロ圏では、欧州連合を超え、欧州連邦に接近しつつあるのである。それゆえにこそ、連合というEUの組織表記である邦語訳は不適であり、EUは、邦語訳として、欧州同盟と表記されるべきなのである。
 かくして結論を言えば、ソブリン債危機を乗り越えれば、少なくとも、さらに連邦化したEUが、特にユーロ圏で誕生するということになる。
 別言すれば、イギリスなどの不満を残しつつ、EUの多段階統合はさらに進むということになる。

 参考記事

ギリシャで大規模なゼネスト 緊縮策は可決で追加融資へ前進CNN.co.jp 1020

ユーロ圏、財政統合不可欠 欧州委員長の政策演説 日本経済新聞2011/9/28 22:12
参考論文

児玉昌己 EUの日本語表記としての「欧州連合」の使用停止と「欧州同盟」への変更を 求める. 「欧州議会からの書面質問書」と. 「欧州委員会からの答弁書」,及び. 表記問題 に関する R・コルベット. 欧州社会党事務総長代理からの書簡とその経緯.『同志社大学ワールドワイドビジネス・レビュー』第3巻第1号20023
http://www.rcwob.doshisha.ac.jp/review/3_2/3_2_116.pdf
#search='EU

同「欧州連合」という日本語表記問題再訪- EU研究おける言葉と認識の問題同志社大学ワールドワイドビジネス・レビュ―』第3巻第220022746

http://www.rcwob.doshisha.ac.jp/review/3_2/3_2_027.pdf

| 児玉昌己 | - | 07:46 | comments(0) | trackbacks(0) |
ソブリン債を巡る英保守党の対EU政策について 欧州連邦への過渡期的性格が生むソブリン債危機 6

  翻ってわが国。
 欧州連合という、問題の邦語表記を導入することに関与したとされる研究者たちは、イギリスの反EU的雰囲気な研究にだけ依拠し、それに幻惑されて、EUを国家の連合体とみていたのだということもできる。
 日経新聞10月14日付春秋がそのコラムで、EUのユニオンについて、連邦と連合という言葉で語っている。春秋の執筆者といえば社の顔というべき存在だろう。
 だが、日経の春秋氏自身、かつての取材先のスロバキアで出会った「買い物かごをもったおばあさん」のEU理解のことは書いても、わが国において、欧州議会の最大会派(当時)の欧州社会党を代表する議員からその使用停止の書面質問書が出て、EU学会の少なくとも5名の理事長経験者が、それを不可としているような、EUを欧州連合とする問題表記の導入の経緯や、その背景、由来が十分に理解できていないようである。
 それはソブリン債危機の本質の理解とも直結してくる。おそらく優れた記事を連日送っているベルリンの菅野幹雄記者が、よりよく理解していると感じられるのだが。
 ちなみに日経は、その出版部から出している「闘う中央銀行」において、著者、竹森俊平慶大経済学部教授(吉野作造賞受賞者)がEU表記を「欧州同盟」としているにもかかわらず、その書の帯では、「欧州連合」として、著者の意図を汲んでいない。あたかも言葉狩りをしているかのようでさえある。
 同氏はEUは、主権国家の同盟関係の構築物とみておられ、EUを欧州連合であるという見方(表記)はされていない。 
 2011年8月24日付の「経済教室」での論考「問われる国家の信認―ユーロの構造問題、前面に」という紙面の半分を使った実に含蓄に富む記事でも、EUを欧州同盟の表記を維持されている。
 だが、日経はこの記事の中で、同教授が使用する「欧州同盟」には、EUであることを示す括弧書きさえ付されていない始末である。
 考えてもみるがよい。単一通貨、そして通貨の供給と金利について、一元的に管理する中央銀行、ECBの存在は、それ自体が国家形成のシンボルなのであるのだから。
 そして財政と金融の分断自体が国家の金融経済政策の統一的運用という国家の機能からみた場合、初めから問題があるというその冷厳な事実を。

 少なくとも、ユーロ圏内の動きで見てわかるとおり、すでにEUは、欧州連合が示唆する国家の連合体を否定しつつ、財政統合という言葉そのものが指し示すように、連邦ヨーロッパに確実に歩を進めている。それがEUである。
 そして、それがゆえにイギリス保守派がEUから脱退する国民投票さえ議会に上程しようとする動きを示しているのである。

 

| 児玉昌己 | - | 09:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
ソブリン債を巡る英保守党の対EU政策について 欧州連邦への過渡期的性格が生むソブリン債危機 5
 今日のテーマに戻って、イギリスの保守系反EU新聞のテレグラフは、保守党の党首でキャメロンがイギリスお得意のプラグマテックな対応をしているが、これは対EU融和策であること、それが腹立たしいとみているのであり、それはEU(当時EC)加盟をもたらしたEU加盟時の保守党党首で首相だったエドワード・ヒースより悪質であるというのである。
 イギリスもユーロが崩壊してしまえば、ポンドの不安定を招くことは必定である。
 本ブログで書いているように、下院議会に上程される予定の国民投票の問いは、EUの加盟継続の可否である。キャメロン首相はその異常さがゆえに、現実政治のかじ取りを日々求められるものとして、党議拘束をしてまで、これを阻止したいと考えているのである。

 仮にイギリスがEUを離れたとしよう。どうなるか。
 金融国家であると同時に、工業産品輸出国でもあるイギリスだが、そのイギリスは関税同盟から離れることになり、FTAを最低でも維持しておかない限り、自国メーカーは無関税の広大な市場をその瞬間に失う。そしてEUからの対外共通関税賦課の対象国となる。

 実にテレグラフ紙も感情的議論である。経済を感情で語ると経済合理性を失う。そう思うのである。
 EUはサッチャーの時代の「コモン・マーケット」の状況をはるか以前に脱しているのである。
 イギリスでは、今もEUをコモン・マーケット(共同市場)と、過小評価しそれを否定的に呼ぶ雰囲気がある。主権譲渡など冗談ではないというのが、1951年のEUの前身である欧州石炭鉄鋼共同体条約予備交渉時代からの一貫した立場であった。

 既にみたとおり、EUは、とりわけ、ユーロ圏にあっては、軍事部門と同様、国家主権の最後の砦、すなわち国家主権の核心部分というべき財政部門の統合にさえ踏み出しつつある。それがEUで語られる政治同盟なのである。
 だが、欧州共同体に加盟したのも、保守党政権であり、通貨同盟と単一通貨ユーロを導入したEU設立条約(俗称としてのマーストリヒト条約)を締結したのも、保守党政権であったということを、テレグラフ紙も思いだすべきだろう。
 そうしたEUと欧州統合の中心からはるかに遠く、EUを未だにコモンマーケットとしてとらえたいというような雰囲気のあるイギリスである。

 


 

 

 

| 児玉昌己 | - | 09:06 | comments(0) | trackbacks(0) |

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