東京出張中、日経の瀬能繁記者が母校の欧州大学院大学を記事にしていたことを帰宅して知る。以下がそれだ。
欧州エリート養成、収穫期 欧州大学院大設立60年、EU首脳級輩出 日本経済新聞2012/3/18付 朝刊
私が学んで30年余になるが、その記事見出しが言うように、まさに収穫期である。
欧州大学院大学は欧州統合に貢献した人物の名前を学年名に冠する。レオナルド・ダビンチ学年やモーツアルト学年、ウインストン・チャーチル学年の学生らは、知らぬものがない故に幸せだ。私の学年ジャン・レイ学年。こればかりは学生が選べない。
私の学年は欧州委員長を務めた当地では知られたベルギーの政治家だが、世界的には無名に近い。
それでもこの学年卒業生は学問の世界で秀でている。
シティ・ユニバーシティ・ロンドン教授、パリ政治学院教授、欧州司法裁判所の判事などなど、活躍している。キース、クリスチャン、マルクなどファーストネームで今も呼びあっている。
彼らの多くは、当時1学年で150名足らずで、同じ釜の飯を食べ、机を並べた無名の頃から知っている。
彼らがそれぞれの分野で精進を重ね、出世し、おかげで私も、その余慶、余得にあずかることができる。
オックスフォードやパリ政治学院などがわが国では有名である。これに対して欧州大学院大学は戦後設立された欧州統合専門の大学院である。
それがゆえに、数百年の歴史を持つ上記の名門校と比較すると、日本では無名に近い。
だが、欧州のエリート学生は、上記の名門校を経て、ブルージュにあるこの大学院で、徹底してEUと欧州統合を学ぶ。
わが国では、創設者の1人でもあるブルフマンス先生と懇意であったわが師、故金丸輝男先生が学ばれた。
日本EU学会理事長や、同志社大学法学部長を歴任された金丸教授の命で、留学した。そしてそれから四半世紀をはるかに超えた。
その後、8年前のことだが、在外研究でもブルージュの欧州大学院大学を選んだ。それは母校だったということもある。学んだ学生が大学でEUを講じる立場となり、在外研究で再びその地を踏んだことで、歓迎して頂いた。
学んだ母校がわが国で知られるのは、素朴に嬉しいことだ。
特に格差社会の米国への偏重というべき政治(観)シフトが著しい昨今である。
米国といえば、剥き出しの金融資本主義と社会的な格差を生む極端な自由主義の国家であり、他方、欧州は、社民主義の歴史を誇る政治と政治学の先進地である。
欧州の政治研究は、米国の金融資本主義の思想を「割る」ことができる。
米国は、自由主義陣営という漠たる括りではわが国と共通するとはいえ、わが国との歴史、文化、社会の成り立ちにおいては、相似性に乏しい。
わが国では、特に、小泉以降、対米一辺倒というべき思潮状況があり、それとバランスをとるためにも、欧州はもっと学ばれるべきだと思っている。
だからこそ、素朴に瀬能繁の記事は嬉しいことである。
記事によれば、遺憾ながら、現在のところ、韓国や中国の在校生がいても、日本人学生はいないという。チャレンジに値する留学先だ。もっと出て学んでほしいと思っている。
なお6年前に、脇阪紀行現朝日新聞論説委員がブリュッセル支局長の時代に欧州大学院大学を取材して、ちょうど在外研究でその時期、ブルージュの母校に戻っていた私がそれに協力し、今の知遇、交流を得ている。
その記事「欧州人」国超え育つ. 2005.02.15 朝日新聞朝刊はその後、大きく掲載され、「大欧州の時代」(岩波新書2006年)として収録されている。
参考記事
欧州エリート養成、収穫期 欧州大学院大設立60年、EU首脳級輩出 日本経済新聞2012/3/18付 朝刊
http://www.nikkei.com/access/article/g%3D96959996938
19695E2E5E2E6E08DE3E2E2E1E0E2E3E09180EAE2E2E2
朝日、「欧州人」国超え育つ2005年02月15日脇阪紀行
http://blog.goo.ne.jp/maxikon2006/e/73e31fd15dd8932cc9a
18df7455f20c3
参考ブログ
欧州大学院大学留学記(PDF)
2006.04.03 Monday 新刊紹介 脇坂紀行「大欧州の時代」岩波新書
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=42
2011.01.20 Thursday 2010-11年度メルケルドイツ首相の欧州大学院大学開講式典演説
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2651
2010.11.11 Thursday 母校、欧州大学院大学(College of Europe)在外研究からもう5年
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2589