かくの如くイギリスなどの10カ国の非ユーロ圏と、17カ国のユーロ圏の同時的存在は、EUの統合の過程で、決定的な亀裂を生みつつあるのである。
ただしこの亀裂を強調することには気をつけた方がいい。分裂ではなく分化というべき動きである。
凝集力があるのはユーロ圏であり、非ユーロ圏にはない。反EU勢力やEU懐疑派にはEUの発展を嫌うというその一点において、ヨーロッパ統合を発展させる制度設計のプランは何もないからである。
ユーロ加盟には意思と能力の問題があり、EUの非ユーロ圏10カ国は能力はあっても意志がないイギリスと、未だ加盟能力がないチェコ、ポーランドなどを除き、多くがユーロ加盟に依然として照準を合わせている。そしてEUは非ユーロ圏のユーロ加盟の条件を着実に整備しつつある。
3)の記事は、ユーロ危機に関連し、ギリシャに見られる放漫財政はEU加盟国の責任であり、EUレベルで加盟国の予算編成権限を含む予算決定権限について、ユーロ圏財務省構想があり、これと連動したEU財務大臣構想である。
このEU財務大臣にユーロ圏加盟国の財政を監視させるということである。
EU統合は連邦的統合であり、邦語訳にある国家連合としての欧州連合を否定しつつ進んでいるというのが私の年来の主張であるが、いよいよ私の主張通り、加盟国の国家の主権的権限の核心部分である予算編成権限にまでEUの権限が及び始めていることを示している。
ヨーロッパ統合はリスボン条約以降、さらに大きな転機を迎えている。
あらゆる社会的存在の中で最も影響を及ぼすのが金融と財政の中心にあるカネの問題である。そのことを、上下にわたって本ブログで紹介した1-3の記事で、理解することができる。
EUは27の加盟国はもとより、欧州社会の中心の問題を左右するところを扱うまでに発展、成長したということである。欧州連合という表記が如何に不適か。
欧州連合という、EUの実態をまるで捉えていない無様極まりない邦語誤表記を否定しつつ、通貨同盟、銀行同盟、財政同盟、政治同盟を強化しつつ、欧州同盟としてEUは連邦的政治組織へのさらなる脱皮しつつある。そのプロセスを、ユーロ圏において、我々は、今この目で、目撃しているということである。
この激動期にEU研究者として私も存在していることから、激変するEUのウオッチャーとして、しっかりその変化を捕捉していきたいと思っている。
参考記事
欧州銀行同盟、EUは非ユーロ圏諸国参加のため策を模索 2012年 10月 18日ブリュッセル 17日 ロイター
ECBによる銀行監督一元化、「法的見地から正当」=バルニエ欧州委員2012年 10月 19日