慌ただしい3月だった。西海岸に初めて旅行して戻り、子供の卒業式での再度の上京と忙しかった。もうすぐ4月だ。
この間、 司法は、高裁レベルで先の総選挙で1票の格差を審理していたが、広島高裁では、選挙無効と、従来の判断を超えた判決を下している。もしこれが即時適用されたら31の選挙区すなわち31名の議員の失職となる。
司法のいら立ちを示しているが、私に言わせれば、最大格差が2.43倍となっている千葉4区と高知3区、あるいは広島1区と高知3区の個別選挙区での単なる1票の格差の判断というよりも、小選挙区制度自体に対する司法による批判といってよい。
ちなみに中選挙区下ではかくも深刻な1票の格差は生じなかった。
その中選挙区を変更し小選挙区を導入したのが、1994年の公選法改正であった。
この法改正では、本来はリクルートの金銭スキャンダル、いわゆる金権腐敗があり、こうした政権の腐敗にたいしては、腐敗防止法や政治資金規正法の強化で対応すべきであった。
だが、政党自らの不決断でしかなかった「決まらない政治」を強調し、意思決定のコストを最上位に起き、中選挙区制度の欠陥という議論にすり替え、民意の反映を軽視し、それゆえに「敵対の政治」を増幅させる小選挙区制度を推進した。
これを推進した政治家と政治学者、そしてメディアの責任は極めて大きいと言わざるを得ない。
当事者の政治家はたとえば、河野洋平氏など、失敗したと公言するくらいだから、論外である。細川政権にあって秘書官として現行制度をもたらす公選法改革法案成立を支えた成田憲彦氏も、小選挙区制度導入に伴う「敵対の政治」がかくも大きいとは予想できなかったという。小選挙区制度のイギリスを実見してれば、十分に予見できたはずだ。
政治に失敗のツケを、その後長期にわたり払わされるのは国民であり、国家である。
「すみません失敗しました」では済まない。その倍の努力で、小選挙区制度の廃止に動くべきだろう。
司法の無効判決が提起した小選挙区制度下での1票の格差だが、小選挙区制度を維持する限り、大都市部の止まらぬ膨張と、地方の過疎化が同時進行的に進むことが阻止できない限り、小選挙区制度は大都市部の議員定数の積み上げと、他方で地方の定数削減という地方殺しを無慈悲な形で進めることになる。
すなわち、現行の小選挙区制度を維持し、定数削減を言い続ける限り、代表を失う地方は、圧倒的優位に立つ大都市部の繁栄の一方で、予算配分機能からして、議員を失い地方の劣化が進むことになる。
ちなみに、経済学者で竜谷大学の竹中正治教授は「衆院一票の格差を是正しないと日本の経済資源配分は歪んだまま」という考察で、貴重な分析を行っている。
すなわち、1票の格差の結果、選挙人口に比べて国会により多くの議員を送り出している府県ほど、人口一人当たりより多くの地方交付金(総額8.2兆円、平成21年度)を受けていることを実証している。
議員定数と地方の権益確保とは、実に密接な関係を持っていることが地方交付税という、地方財源に直結する予算分配の数字の上からもいえるのである。
だが、この数字は、注意を要する。
それだから、都市部への積み増しを図れという議論となれば、それは地方殺しに作用するネガティブな意義をもっているからである。
竹中先生は経済で政治を観る必要を言われているが、経済で政治を観ることの限界もまさにこの手法は示しているともいえる。
参考記事
一票の格差 最高裁、統一判断へ 「無効」なら31選挙区失職 産経新聞3月27日
衆院一票の格差を是正しないと日本の経済資源配分は歪んだまま 竹中正治 龍谷大学(経済学部)教授2013年3月12日
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/20130312-00023848/
参考ブログ
2012.09.08 Saturdayかつての当事者が認める小選挙区制度の失敗 過則勿憚改 上下
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3268
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3269
2012.01.16 Monday諸悪の根源は小選挙区制度である1-5政治学者の選挙制度認識を質す
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3045
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3046
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3047
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3048
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3049