児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
月の変りを夜風に感じて それを詠む 海鳴庵児玉
  今日で7月も終わり。明日から8月。葉月だ。本来は陰暦で葉月とは9月上旬から10月初旬をいうのだが、新暦でも葉月は用例として定着している。

 夜ウォーキングをして、しっかりかいた汗は、ぬるま湯の風呂で流す。これが実に気持ちいい。



   宵の風 熱き大地を 冷さましあり 吹きぬく風に 五体預けて
                                 海鳴庵児玉
 
     
 


 

| 児玉昌己 | - | 21:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
23回参院選その後 勝ち組みんな 下手な野合は将来を過つ

参院選の勝ち組として、先にブログで、みんなの党を挙げた。ここにきて、幹事長と渡辺代表の確執が伝えられている。残念なことだ。
 この党についてはっきりしていることは、衆院選、都議選、そして参院選と着実にその支持を議席に反映させていることだ。
 自民党の要職から脱党し、たった一人の反乱でこれまで党を発展させた渡辺代表の政治指導は評価に値する。 
  実際、「賞味期限切れ」として自民を出た鳩山邦夫氏は、腐ったものをまた食すのか、との陰口の中、再度、「賞味期限切れ」の自民に戻った。また時代の役割を終えたと、2010年同じく党を出て、新党を結成した桝添氏は、先の参院選での出馬をせず、政界を引退した。
 

 渡辺氏のみんなの党はよくぞ小選挙区制度の中で、ここまでやっていると、傍から見ているだけだが、評価している。
 共闘の話に戻れば、維新はカリスマ性がすっかり泥にまみれた大阪市長に依存していることで、これ以上の展開はない。実際、都議選と参院選に惨敗したが、都議選敗北以降、辞任も言うばかりで、慰留されて結局残留。指導者の責任の所在もうやむや。

 そんな中でのみんなの次のステップ。国民の信がないことを証明された政党と一緒にやるなど論外だ。まして、政策やその背後にある政治思想も違う。
 政治は数だということで言えば、維新との連携を模索する江田幹事長の言い分もわからないではない。だが、野合はいけない。
 論客揃いのみんなの党の指導者の資質は、先に政権を担って、驚くべき政治指導を展開し、有権者からの厳しい懲罰を受けた民主のそれと比較にならないほど高い。今は着実な政治こそ、有権者が期待している。

 選挙戦の直前に、石原代表も、そこまでいっちゃ、といわしめた慰安婦認識と、国際的感覚のなさを自ら実証したこの党の指導者である。
 それゆえ、選挙共闘で、みんなには得があったかといえば、まったくのネガティブで、距離を置いたことで、有権者の支持を維持できたと、私は見ている。

 維新は、徹頭徹尾、地域政党であること、そして脱却できない状況が、衆院、都議選、参院選ではっきりした。
 実際、辞任劇を見ていても、彼の代わりがいないのが、この政党である。橋本氏の個人商店といわれる通りである。
 しかも「暴走老人」を自認する復古主義者の石原共同代表と、憲法認識を含め、全くイデオロギー的整合性を欠きつつ、党を維持している。ちなみに、「この人終ったね」とまで石原氏に言わしめている。
 維新について言えば、その政治手法は大衆迎合丸出しである。
 議会の子である渡辺代表のみんなの党とは、異質である。政治を決定づける選挙制度についても、両党は全く共通性がない。みんなは完全比例制を打ち出すなど、有権者の声、膨大な死票の存在について、理解ができている。
 維新は、制度改革については、参院廃止と、衆院半減、つまりあろうことか、500議席余の消滅を平気で口にする。選挙前には公約から落とすという無責任さを演じたが。まさに、反議会政党である。

 ちなみに、欧米でのポピュリスト政党の重要な要素の1つは、それゆえそのタイプの政党の定義ともいえるが、反議会主義である。
 下手な野合は、第二の民主、民主党の政治の再来で、先は見えている。
 江田幹事長に贈る言葉があるとすれば、急がば回れである。


参考記事

理念と政策の一致を」野党再編で渡辺氏、維新に反発:産経2013/07/23
みんなの党>渡辺氏と江田氏、歩み寄りできず毎日新聞2013年726

 みんな渡辺氏「政界再編は拙速」に江田氏が皮肉 読売新聞 2013年726

「橋下人気」どこへ? 福岡遊説、聴衆は大幅減少 産経2013/07/01

石原共同代表>「大阪の本家は憲法について寝ぼけてる」毎日新聞 2013626

慎太郎氏が橋下市長に「終わったね…この人」スポーツ報知2013 619

参考ブログ
2013.07.22 Monday
 第23回参議院選挙終わる 3 勝者はだれか 重要性を増す公明

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3500

2012.08.27 Monday大阪維新の衆院定数半減論 大衆迎合そのもの 下 議員削減でなく完全比例に舵をとれ

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3255

2012.12.26 Wednesday 政策に一貫性がない維新 2012年総選挙雑感

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20121226

2011.02.27 Sunday 内紛続く「野合的」民主政権は選挙制度がなさしめるもの 5

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2706

| 児玉昌己 | - | 09:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
深紅の薔薇を詠む 海鳴庵児玉

 午後、洗剤を買い出る。階下の花屋でバラを買う。花を買うために出かけたというのが正直なところだ。深紅のバラだ。炎暑の夏には深紅のバラが合う。

 

 朦朧の 真夏の午後は 深紅(あか)い薔薇 深紅き色こそ 
 暑気を削(そ)ぎしや
                 海鳴庵児玉

                    
                 

| 児玉昌己 | - | 23:30 | comments(0) | trackbacks(0) |
 野合政党民主の衆院、都議選、参院選大惨敗 その後の断末魔 同情にも値しない

民主の野合性については以前からこのブログで指摘してきた。

その野合性がまさに、今、内部において質されようとしている。

実際、この政権、消費税や基地問題等々にみられるように、内政、外交にまるで党内の意思が統一されていず、無様な政治指導を経て、総選挙、都議選、参院選と国民から厳しい懲罰を与えられた。

4年前の20099月の総選挙では308議席を誇った巨大政党であったが、2大政党の一方の雄どころか、その他大勢(one of them)と萎みに萎んでしまった。462012年衆院選では 57(自民294)参院では59(自民115)という無残な数字だ。

ちなみに、議席の変動を自民と民主でいえば、45回の2009年がそれぞれ119308議席、44回が296113だった。
 実に3回の衆院選をみるだけでも、最大で両党間で、250議席余の幅で議席がコロコロと変動している。

小選挙区制度がいかに政治を不安定にさせるか、如実に示している。民主はさらに比例を80削減するという暴論を主張し、現状でも膨大に出る死票を、さらに極大化しようとしていた。

ともあれ、2009年の総選挙ではこれまでにない圧勝の状況で総理になった鳩山氏は、反米、米国除外の東アジア共同体を提唱していた。
 以下がそれを報じた時事の記事見出しである。
米国は加えず=「東アジア共同体」で外相表明 時事通信社2009年10月7日
 戦後の西側陣営に米国とともに立つという日本外交の基軸を大きく損ね、対米関係を決定的に悪化させた瞬間であった。実際、この後オバマ政権はこの首相をクルクルパー(loopy)と評したことをワシントンポストが伝えた。これについては以下のブログとWPの英文記事参照。
 我々は鳩山氏が行おうとした愚劣な外交指導をしっかりと記録しておく必要がある。
 揚句、沖縄の基地問題では、「最低でも県外」と自ら言いつつ、何一つできず、メディアから指摘されると目が泳ぐというように、有言不実行の愚劣な政治指導に終始し、「最低以下の政治家」といわれたのは記憶に新しい。 
 
脱党しても、海保、海自の諸君が、領海の最前線で、体を張って尖閣の警備、防衛にあたっている中で、反国家的言辞を振りまいている。

 鳩山の辞任の後を襲った菅直人首相については、拒否すれば除名もあるとの離党勧告が出されようとしている。

菅氏はあろうことか、先の参院選で非公認候補の応援に乗り出し、共倒れするという反党行為をなした。党のトップが反党的行動を行うなどの事例は、後にも先にも歴代の政権与党で聞いたことがない。
 福島原発大爆発に伴う危機管理で、官房長官に、「ただちに危険はない」といわせ続けた。決定的状況において、自ら名乗っていた市民運動家が被災住民に背を向けるというその無能さを露呈し、その対応については、今なお、党内外から厳しく指弾されている。
 2006年に代表を務めた小沢氏は党の最重要政策である消費税をめぐり、さっさと子飼の議員を引き連れ、党外に出た。(2012年7月党除名)。

 かくして、結党とその後の党と政権運営にかかわった民主の3人の首脳はことごとく、党と関係を悪化させている。政権末期、政党支持率の惨状のなかで、2大政党制の虚勢を張っていた最後の首相の野田氏も動向さえ聞くこともない。
 これを無様といわずに何を無様というかだ。
 指導者間にまるで思想的統一がなされていない政党が政権奪取だけを目的として結成され、外交内政に驚くべき混乱を招き、しかも、連合など労働者の利益を代表する旧社会党の勢力を含んでいるのにかかわらず、あろうことか、民意を合法的に大量に抹殺する反民主主義の小選挙区制度を推進していたのである。
この思想的堕落についてもこのブログで以前数度指摘した。

 ともあれ、今後、この政党、政党のスタンスを、保守におくのか、社民主義に置くのかそれが定まらない限り、確実に他の党にとって代わられていくだろう。

この党の惨敗には何らの同情もしていない。
 だが、日本の政治という観点でみれば、この党で、10年またしても遅れたという意味で、実に悲しむべきことだとは思っている。
 それもこれも、小選挙区制度は、民意を虐殺し、怨念を選挙後に高め、そしてそれによる敵対の政治を昂進させるということである。私も同業者だが、政治学者の飯尾教授の認識とはまるで異なり、小選挙区制度こそが諸悪の根源である、と理解している。
 小選挙区制度は、教科書で言われていることと全く異なり、政治を決定的に不安定にする。実に、時代錯誤の政治装置である。
 民意をくみ上げず、膨大な死票を積み上げる選挙制度で成立する政権と政治が安定するわけなどないのである。
 なにより、本源的に政権の正統性を確保できていないからである。
 
 

参考記事

民主・松原氏ら、菅元首相の処分検討を申し入れ TBS系(JNN 723
鳩山元首相に抗議へ=尖閣発言、処分は断念―民主時事通信 724

参考ブログ

2012.01.16 Monday 諸悪の根源は小選挙区制度である 6 政治学者の選挙制度認識を質す

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3050

2010.05.29 Saturday 政治不信も極まれり「最低」さえ守れない「最低以下」の鳩山首相の続投表明 上
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2367
2009.10.10 Saturday定義なき東アジア共同体鳩山構想の危険1-12
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2062

| 児玉昌己 | - | 22:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
日経清水編集委員の選挙制度認識の問題 下 政治アカデメイアの記事に関連して

 大負け大勝ちを生む小選挙区制度など、21世紀の民意に基づく政治と合意形成にあっては、不正義の極みであり、結局のところ、教科書にあるような政治の安定化をもたらすという記述とはまったく異なり、国家の政治を決定的に不安定にする。
 1996年以降の総選挙と参院選の経験で、我々が見てきたとおりである。
 小選挙区制度度はまさに19世紀の遺物である。

単純小選挙区制度の元祖イギリスは昨年、否決はされたが小選挙区制の弊害打破のため、連立を組んでいる英自民の意思を入れ、AV方式での国民投票の実施を行うなど、小選挙区制度の脱却に苦闘している。
 アメリカは、ますます国民と政治が遠ざかるという意味で、国民に対する不利益の選挙制度を維持している。高々やっていることといえば、投票区間での票の格差の調整だけにすぎない。小選挙区制度の膨大な死票の発生は、この制度を残している限り、本質的解決は不可能である。都市部が生き残り、過疎化が進む地方は死滅する。
 わが国の1票の格差是正論者も、それを知る必要がある。
 そして、米下院では議員定数を人口が3億超と3倍近くになっても、1929年以降435議席に据え置き、結果、人口100万人に2議席も提供できない、大統領優位の寡頭制の議会政治を許している。
 しかも、米下院任期は2年でしかなく、国家行政などまるで眼中になく、地域限定的などぶ板政治による近視眼的な議会政治を許している。
 そしてますます行政権力が肥大化する必然性を抱えた21世紀の政治にあって、大統領制が議会に優位に立ち、しかも、その大統領制とて、封建遺制そのものの間接選挙制度の大統領制を抱えている。結果は、公的医療保険制度も未整備で、貧困大国と格差社会、銃社会、そして個人情報監視の社会が維持されている。
 米議会は行政府の政策を追認し、行政府の下僕というべき状況である。
 米国については、東アジアの国際政治をみるとき、わが国との同盟関係の重要性を疑うことなどおよそない。だが、その政治について言えば、米国は、まさに政治生活の根幹部分である選挙制度において、封建遺制の中に眠りこけているという状況だ。

21世紀は価値の多元化した社会にあり、民意を徹底して組み上げる比例制度が選挙の準則である。

欧州では、21世紀の超国家的議会というべきEUの欧州議会では、比例代表制が選挙の準則で、そのように、欧州議会選挙法にも書かれている。
 改正欧州議会選挙法素案では、ドント式以上に少数政党へ投じられる民意をより吸い上げる方式が検討され、最終的には、サンラグ方式が提唱されている。

欧州議会選挙法との整合性を得るため、イギリスは欧州議会選挙法を改正し、14年前の1999年に国内の総選挙で問題を抱えつつ使用されている単純小選挙区(First Past the Post/FPTP)を捨てて、ドント式比例に変更している。
 それで当時のブレア労働党は、下院同様、欧州議会選挙では、比例制を当初より導入した北アイルランドを除き、小選挙区制度で実施し、欧州議会イギリス選挙区では、過剰代表、すなわち勝ち過ぎの状況もあり、大きく議席を減らす。具体的に言えば、62議席から、29議席へと、33も失った。これは2011年にブログした(以下参照)。
 ブレアはそうすれば、こうなることを知りつつ導入したのである。

まさに言葉の真の意味で「身を削って」選挙制度の民主化に動いたのである。
 日本の政治家の口だけの身を削るとはわけが違う。
 ちなみに欧州議会選挙(イギリス選挙区)では、他のEU加盟国と同一歩調を取り、国内の小選挙区制度を捨てドント方式を採用したがゆえに、20%以上の得票を得ながらも、5%程度の議席占有率に泣いていた英自民党はもとより、極右政党までも欧州議会に議席を得ている。それがFTPTにより長く2大政党制に押し込められていたイギリスの国内政治にも影響を与え、多党化現象の出現に作用している。
 ともあれ、現実から遊離した思弁的記事を書くようでは、現代のアカデミア(大学)とは言い難いし、アカデミアでの成績上位も望みがたいね。

参考ブログ

2011.11.22 Tuesday日経による連用制での試算、民意に反する民主の小選挙区案 下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2999
増税と完全小選挙区制度導入の異様なチキンレースに走る自民と民主1-6

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2395

| 児玉昌己 | - | 09:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
日経清水編集委員の選挙制度認識の問題 中 政治アカデメイアの記事に関連して

 この記事の問題は、もう1つある。

それは、将来の選挙制度のあり方についての記事の上につけられた「多数決か合意形成か」という小見出しに表れている理解である。

「多数決か、合意形成か」といえば、聞こえがいい。

だが、小選挙区制度で、昨年12月の衆院選挙では、実に投じられた56%の票が死票と化した。そうした少数意見の徹底した政治排除の上に形成された多数派が過剰に代表された政治勢力でしかない。

すなわち、小選挙区制度を是とする限り、多数決とは、民意とは大きくかけ離れた議席数による多数決である。
 「民主主義の諸類型」を書いた政治学者レイプハルトの表現で見出しをつけるとすれば、どちらも法案の形成が目的であるので、「多数決か、合意形成方式か」でなく、「少数者排除による決定か、小党も含めた合意形成方式か」と形容すべきである。

政治部の諸君はアカデメイアという表現が好きなようだが、およそアカデミアには似つかない記事だ。

何より事実認識の誤りは、欧州の政治先進国の議員定数とその意味、(人口比で見た議席の相対数)と選挙制度の常識に意を払わないところからくる。国際化を言いながら実は米国見るだけのガラパゴスである。

実際、欧州と比較して、相対的に議席が極めて少ない部類にあるわが国という認識がない。

しかも、国民の代表で、国権の最高機関たる国会の議員定数を、行財政改革の対象とし、カネの問題に意図的に貶め、完全小選挙区制へのシフトを意味する議席削減と選挙制度の矮小化を是とし、2大政党制が善であると考える勢力がある。
 わずかに残った民意の宝石というべき比例定数の80削減を長く掲げていた民主がそうであった。一時期、チキンレースみたいに、比例削減を自民と民主が、維新も加わり、叫んでいた。
 わが国の議院の定数について、先進国中、最悪というべくも国民の代表を欠いている米国についで僅少であることが知られるにつれて、世論も政党も徐々に、そして急速に変わりつつある。
 民主が衆院、都議選、参院選と大敗を続け、解党的状況までへこみ、状況は改善するかもしれない。
 日経は、これら政治勢力とまるで同じ思想に立ち、彼らの手のひらで踊っているようである。遺憾ながら、日経の政治部の諸兄には、こうした選挙制度に関する政治勢力の問題思考に引きずられているだけではないのかと疑いを強くする。

清水さんよ。素朴な質問だ。

「小選挙区は得票率が51%対49%でも結果は勝者総取り。大負けと大勝ち」を生む選挙制度がいいのかね。
 得票率と獲得議席の異常な乖離をもたらす制度がいいのかね。そこには膨大な死票の存在がある。それは気にならないかね。声なき声の唯一の政治的意思の表出の場である衆院選挙では、56%の声が政治に反映されることなく、合法的に消された。
 膨大な民意の虐殺状況には目をつぶっても、「決定できる政治」がいいのかね。それは、「決定のスピード」という言葉の裏にある行政優位の思想の反映ではないのかね。

 

 

| 児玉昌己 | - | 08:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
日経清水編集委員の選挙制度認識の問題 上 政治アカデメイアの記事に関連して

  今年の312日付で日経の編集委員の清水真人氏が『政党政治のかたち変える「定数削減」の重み』として「政治アカデメイア」で書いているのを知った。

 日経といえば、坂本英二氏の定数削減と選挙制度に関する記事が昨年の9月に出されており、現代選挙の要諦についての認識不足と、丸山真男が嫌った実感信仰の危険を指摘した。

2012.09.02 Sunday 大手新聞社の政治部記者の選挙認識のレベルに驚く2 毎日用語解説と日経坂本英二編集委員にみる選挙解説の問題

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3260

そして半年を隔て今年3月の清水委員の記事だ。タイトルは悪くないが、中身が問題だ。

どうにも日経の政治部の諸君と私の政治選挙制度認識は大きく異なると指摘せざるをえない。しかも、日経の影響力は大きいし、期待可能性だけで記事を書いているからこの記事は問題である。問題は何か。

清水委員はいう。 

「多数決型」か「合意形成型」か

 小選挙区は得票率が51%対49%でも結果は勝者総取り。大勝ちや大負けもしばしばで、多数を形成しやすいが、政権交代も起きやすい。これを導入した1990年代から自民党に対抗する野党の再編が進展。民主党が育って二大勢力が政権を競う形に近づいた。(引用止め)
 

前段は事実認識として間違っていないが、後者は全く問題である。

小選挙区選挙が1994年の公選法改正で導入され、衆院選としては1996年から、民意を大規模に虐殺するという意味で、中選挙区制度からみても、後退した制度が実施されて、昨年12月の第46回まで6度の総選挙が実施された。そして、清水委員の前段にある、民意をまるで反映しない大勝ちや大負けが生まれた。
 余談だが、小泉チルドレン80余名があっという間に霧散し、2009年の大勝し登場した14名の小沢ガールズ全滅も含め、201212月の総選挙で小沢チルドレンは同様に大敗し、消え去った。

この間、特に2009年の総選挙では、民主が196プラスと自民は184マイナスという如く、両党だけで、380議席もスイングが起きた。

小選挙区制度は、敵対の政治を極大化し、議席の大変動を生み、それにとどまらず、政権獲得という一点で、あらゆるイデオロギー的対立を糊塗し形成され巨大野合政党の出現を許した。

清水記者の記事に戻れば、この記事が書かれた20133月時点ではどうか。そしてその後どうなったか。

清水委員は言う。「1990年代から自民党に対抗する野党の再編が進展。民主党が育って二大勢力が政権を競う形に近づいた。」

 冗談だろう。すでに、この記事の1年前、民主の分裂は顕著であった。ウイキによると、この記事のほぼ1年前の2012331日、消費税増税法案が閣議決定されたことについて「増税の前にやるべきことがある」と批判し社会保障・税一体改革関連法案の採決で反対票を投じ、同年7月には同調する議員50人と民主党に離党届を提出、とある。

  言うまでもなく、2006年に民主党の代表だった小沢氏と彼のグループの脱党事件lのことである。
 記事が書かれているときには、民主は分裂状況をますます濃くするという状況であった。

小選挙区制度は、政策も思想も異なる政治集団を、垂涎のアメである政権獲得の名のもとに、無理に1つの政党にする。

その結果、どうなったか。
 党綱領さえまともにない政党を生み、党にとって最重要課題である消費税問題を巡ってさえ、党内に意思統一ができていず、多数の脱党者を出した。そして、同党脱党者を主要な構成員とする生活や、あるいは2大政党に飽き足らない未来、みどりなど、メンバーが誰かも一般に不明な多数の小政党の乱立をみることになる。

 そのことを考えれば「二大勢力が政権を争う形に近づいた」、などというのは、全く事実に反する記述と言わざるを得ない。
 どうしてこうした事実から遊離した記事を書くのかね。

 貴兄の頭にだけある希望的観念を書かれても、読者には迷惑なだけだよ。

むしろ小選挙区制度によって、強引に巨大な野合政党形成が促進され、総選挙を前に四分五裂して、「当初の2大勢力形成に近づく」ではなく、「自民の1VS中小政党に分かれる状況」に至る、と書くべきではなかったのかね。

 

参考ブログ
2008.10.20 Monday 論理に疑義あり 「実は世襲は減っている」山田孝男毎日新聞編集委員に問う 1

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1491
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1492

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1493

| 児玉昌己 | - | 20:37 | comments(0) | trackbacks(0) |
第23回参議院選挙終わる 3 勝者はだれか 重要性を増す公明

23回参院選通常選挙での勝者はもとより自民党である。公明、みんな、共産もそれなりの勝者であろう。
 共産党で言えば、12年ぶりの選挙区選挙での勝利ということで、興奮気味に党幹部が勝利を語っていたのが印象的だった。逆に言えば、いかに退潮を続けていたかということで、党の勝利というよりも、党の消滅を土壇場で食い止めたというのが正確なところだろう。

 政権担当という最も重責を担う自民でいえば、この先、順調にいけば3年は選挙はない。
 しかし、この間明確なことはある。消費増税の実施である。そしてTPP交渉もある。
 増税で生き残った政権はいないというほどの社会的緊張を強いる消費税の値上げが、そしてTPPの扱いが迫っていることである。
 民意の動向に鈍感であれば、そして増税とTPPにかかかる政治の扱いを誤れば、自民党への大量の批判票を生むことになる。
 今日は勝利しても、明日は敗北する。得票と議席に著しい乖離(かいり)現象を生む反民主的な小選挙区制度が導入されて以降、この10年の政治で我々がみてきたところだ。ようやく、ねじれは解消できたばかりである。次回は、政権の運営の実績次第で、誰も予想できない。そうでなくとも、政治は一寸先は闇だ。

それになにより、定員480294を得た先の衆院選とは違い、123の単独過半数を得ているわけではない。憲法改正勢力の獲得の有無は、改憲推進派の産経新聞がじれったい気持ち丸出しで、これを報じていた。 
 有権者のそして国民の切なる願いはデフレの脱却であり、政治的優先順位でいえば、憲法改正など極めて低い。TPPなど最重要な経済課題がある中で、国民にきしみを生じさせる憲法改正問題など、この時期だれも積極的には望んでいない。
 ただただ経済にまい進してくれと思っている。
 何より憲法改正については、維新と自民が似ているほどで、その維新は全く振るわず、責任問題にも蓋をしてやり過ごそうとしている。強引でやってきた橋下氏だけにかれのこの保身の対応では神通力もすでに過去というべきだろう。
 改憲勢力といっても、産経が強引にその陣営としてカウントしているみんなや公明は、維新と違い、憲法問題では積極的ではない。
 その手法も、中身も国防を中心とした自民の改正目標とは全く異なる。みんなは公務員改革を打ち出し、公明は環境権の導入というごとく。国民が望んでいることは経済ということを両党は熟知しているからである。

 もとより不磨の大典とされていた天皇主権を骨幹とする大日本帝国憲法が、2個の原爆と敗戦で吹き飛んでしまったように、現在の憲法も永久不変ではない。
 すでに21世紀に入っており、20世紀の中葉に導入された憲法が明記していない新たな権利なども増えている。人間は、医療の分野では、遺伝子操作で生命まで誕生させうる神の領域にさえ入りつつある。
 しかし、この世紀において、政治の部面で、明確にいえることはある。3分の1もの反対でブロックされるなどという理由で 96条が改正され、国家統治の基本法が軟性憲法へと改正されていいわけはない。3分の1とは重い数字である。
 簡単に変えられる憲法なら、反対政党によって同様に簡単に変更され、政治の決定的不安定化を招くだけでしかない。そんなことは国民のだれも願ってはいない。
 防衛力の充実も、国民の賛意を得て、これまでもそうであったように、着実にやればいいのである。コンセンサスの政治こそが、21世紀の政治の常態である。
 ともあれ、驕ることのない安倍総理の慎重な政権運営と公明の重要性が一段と増してくる。

参考記事
参院選】改憲勢力3分の2届かず 「加憲」公明入れれば到達 産経新聞722
憲法改正派3分の2超す…「加憲」の公明含め 読売新聞
 722()

| 児玉昌己 | - | 17:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
第23回参議院選挙終わる 2 地方の一人区、膨大な死票と最高裁の責任
 ねじれが解消したことで、ねじれという民意を無視した愚昧な参院強大化論や、議会軽視、少数意見軽視、行政優位といった思想が後景に退き、その思想に立つ首相公選制や、一院制の愚昧な主張や論議が、当面、姿を消すことになるだろう。
 これらは維新の会に代表される見解であったが、それが、否定され、少しうれしいことではある。
 それにこの政党、全国への広がりを欠き、徹頭徹尾、近畿のみに支持をもつ地方政党であることが、証明された。
 彼ら、といっても、名ばかりの共同代表で、イデオロギーもまるでちがう保守の野合政党であるのだが、その一方の橋下氏だけで持っている個人商店にすぎない。
 それにしても、またしても、政治は結果責任だといい続けてきたその前言を翻し、政治は数ではないと、自らの政治責任をあいまいにする指導者こそ、この政党の大衆迎合と有言不実行の典型だろう。その鋭い舌鋒とはまるで異なる言行の不一致こそがこの指導者と政党の特色である。
 それについては以下ブログしている。

2012.12.26 Wednesday 政策に一貫性がない維新 2012年総選挙雑感

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20121226
 ともあれ、彼らの主張とは違い、民意をより正確に政治に反映させる比例を軸にした選挙制度への抜本改正こそ導入されるべきだろう。 

  それにしても、面白くないのは、衆院同様、地方に広がる一人区である。
 投票締め切りがなされるとその瞬間に出る当選確実の報の洪水。
 メディアも含め、だれも、敗者の獲得票に目を向けることもない。開票結果が出るのはさらに数時間以上かかるというのにである。

 複数定員の大選挙区となっている都市部と違い、地方ではほとんどが1人区。1議席で、勝つか負けるか。
 僅差でも、負ければ、すべての票が政治に活かされることなく、実質的にまさに死票となり、殺される。僅差であればあるほど、膨大な死票が出ていることに、我々はこれまで以上に注意を向けるべきであろう。

 これまで、民主や自民などの政治と最高裁以下の司法がやってきたことといえば、1票の格差の是正という安直な政治的対応であった。1票の格差の是正が、新たな格差、そして不正義と、国土の荒廃を生むことに全く視座がいっていない。
 議席の再調整は、議院総定数というパイを変えなければ、必然的に、もともと圧倒的に有利な地位にある都市部の議席の積み増しに作用し、国家を裏で支えている地方は削減されるだけでしかない。国土の均衡のとれた持続的発展などありはしない。
 
 みよ。地方の荒廃を。政治がそれを助長している。1票の格差是正の陰で、政治的利益を代表するものが地方から急減しているのである。
 参院選でも、膨大な死票が地方を中心とする一人区で、生じている。これは確定値が出た後で、分析される必要がある。

 民主が愚昧であると指摘してきたが、それは、地方主権を掲げつつ、地方を殺す80議席の比例削減などと公言してきたことにある。
 しかも連合など労働者の利益を代表するといわれる部分をそのうちに抱えつつである政党がである。

 どこが働く者の味方かというごとく。政権もかつて担ったこの民主党、反民主党というべくも、少数者の権利、実は働く者の数からすれば、多数者の権利を自ら縮減する政治を展開してきた。
 
 この結果、メディアも含め、定数削減と小選挙区制度の強化が唱えられる誤った認識が形成されてきたこと、それが問題であった。
 地方が、議席削減の声の影で、一人区という小選挙区制度に、確実に置き換えられていくのは、許しがたいことである。
 まして労働者の利益を守るべき政党によってそれが唱えられることほど、背信行為はない。

 これには、司法の責任も大きい。
 1票の格差の表面的是正を最高裁以下の司法は判断している。そこだけで見れば、一見、合理性がある。だが、実質としては、小選挙区制度を強化し、膨大な死票を拡大生産し、意図せずして、地方の死滅に手を貸す結果になっている。
 
 違憲立法審査権行使を放棄している最高裁だが、むしろ先の衆院選で記録した56%という空前の、有権者の意思の虐殺こそが、現在審査対象となっている選挙区ごとの1票の格差の問題よりも、その広がりと問題の深さにおいて、はるかに深刻である。
 司法も、提訴された審査対象だけを、審理するので、ほとんど期待できないのだが、小選挙区制度の強化につながる1票の格差の是正が、実は、国民の政治参加の価値を著しく損なっている事実を確認すべきだ。
 個別選挙区の有権者の1票の価値以上に、初めから圧倒的不利に立つ地方と都市部の新たな格差を生みつつ事実をである。
 1票の格差の是正が、実は、小選挙区制を維持する限り、全国的な有権者の政治的意思を広範囲に殺し、地方を殺すという新たな違憲状況を昂進しているという認識こそ、司
法は持つべきであろう。

 
参考ブログ

2012.12.18 Tuesdayこれが小選挙区選挙の実態だ 下 死票は3730万票、死票率56.0% 虚構の2大政党制

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3356

2012.08.27 Monday 大阪維新の衆院定数半減論 大衆迎合そのもの 下 議員削減でなく完全比例に舵をとれ

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3255

 


 

 

 

 

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 08:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
第23回参院選終わる 大選挙区選挙の面白さと小選挙区制度の膨大な死票の無様 幻想の2大政党制 民主への懲罰未だやまず
  なにより大選挙区制度という複数定員の選挙区の選挙の面白さ、そして1人区という、膨大な死票を生む小選挙区制度のつまらなさ、それが第一印象だ。
 ちなみに政治学的には選挙学的にといったほうがいいかもしれないが、日本で使われる中選挙区制度という表記は正確でなく、大選挙区にカテゴリー化されるべき制度である。すなわち選挙区の定員が2以上は大選挙区というのが通常である。
 日本では、慣例的に中選挙区という表現が使用されてきた。
 さて、第二に指摘すべきは、馬鹿な政治をやれば、厳しい懲罰を受けるということである。もとより民主のことだ。

 44の改選議席で、半数はおろか、20議席の獲得も容易でないと予測されている。
 そして2大政党制など全くナンセンスな幻想だということをだ。
  それが昨年の衆院選、そして都議選で相次いで示されている。国民の民主への怒りは未だ「怒髪、天を衝く」ということだろう。

 昨年9月に民主は衆院では大敗したが、無様な原子力危機管理、そして異様な親中反米の、右も左もお口あんぐりの、クルクルパーと米政権に酷評された鳩山政権。尖閣隠しと無様な外交。思い出すだけで、怒りを禁じえない。
 なにより、あの政権は、国民に若干の期待を持たせただけに、官僚をくさすばかりで、実は官僚の知恵と経験さえ使えず、政権担当能力ゼロであることが白日の下に示され、失望も大きかった。

 この党その野合度は、政権をとるためだけに生まれたということを実証し、出てくるトップの政策に関する共通性もなく、外交内政まるで、政策経費の予算的裏付けもなく、でたらめだった。
 いまだ、解党に値すると、有権者は判断しているのだろう。

 民主は、アベノミックスの自民の経済政策を批判しているが、その民主の政権時には日経平均は8千円だったという厳然たる事実を思い出す必要がある。

 それにしても、選挙が面白いのは、複数定員の大選挙区だからである。
 どの党の候補者が激戦の中、這い上がるか。まさに民意がどう判断するのか、それが知れて、面白い。

 他方、膨大な死票を生む、一人区の小選挙区制度がいかに面白くないか。

 激戦でも、僅差でも勝った方が議席を得るall of nothingの小選挙区制度がいかに、民意を反映できない無様で、反民主主義的制度か、これをメディアは伝えるべきだろう。
 民主から生活を作った小沢氏が比例縮小に力があったことは森元総理が日経で書いていたが、小沢氏自身、小選挙区制度がいかに小政党に過酷か、身をもって感じていることだろう。
 因果応報とはこれを言う。小沢氏の指導力について言えば、神話は神話でしかなく、その神話も終りを迎えたということだ。

 参考ブログ
2013.01.14 Monday
 森喜朗元総理の日経私の履歴書 比例削減での小沢一郎氏の役割への言及
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3373

 

 

 

 


 

| 児玉昌己 | - | 23:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

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