今年の3月12日付で日経の編集委員の清水真人氏が『政党政治のかたち変える「定数削減」の重み』として「政治アカデメイア」で書いているのを知った。
日経といえば、坂本英二氏の定数削減と選挙制度に関する記事が昨年の9月に出されており、現代選挙の要諦についての認識不足と、丸山真男が嫌った実感信仰の危険を指摘した。
2012.09.02 Sunday 大手新聞社の政治部記者の選挙認識のレベルに驚く2 毎日用語解説と日経坂本英二編集委員にみる選挙解説の問題
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3260
そして半年を隔て今年3月の清水委員の記事だ。タイトルは悪くないが、中身が問題だ。
どうにも日経の政治部の諸君と私の政治選挙制度認識は大きく異なると指摘せざるをえない。しかも、日経の影響力は大きいし、期待可能性だけで記事を書いているからこの記事は問題である。問題は何か。
清水委員はいう。
「多数決型」か「合意形成型」か
小選挙区は得票率が51%対49%でも結果は勝者総取り。大勝ちや大負けもしばしばで、多数を形成しやすいが、政権交代も起きやすい。これを導入した1990年代から自民党に対抗する野党の再編が進展。民主党が育って二大勢力が政権を競う形に近づいた。(引用止め)
前段は事実認識として間違っていないが、後者は全く問題である。
小選挙区選挙が1994年の公選法改正で導入され、衆院選としては1996年から、民意を大規模に虐殺するという意味で、中選挙区制度からみても、後退した制度が実施されて、昨年12月の第46回まで6度の総選挙が実施された。そして、清水委員の前段にある、民意をまるで反映しない大勝ちや大負けが生まれた。
余談だが、小泉チルドレン80余名があっという間に霧散し、2009年の大勝し登場した14名の小沢ガールズ全滅も含め、2012年12月の総選挙で小沢チルドレンは同様に大敗し、消え去った。
この間、特に2009年の総選挙では、民主が196プラスと自民は184マイナスという如く、両党だけで、380議席もスイングが起きた。
小選挙区制度は、敵対の政治を極大化し、議席の大変動を生み、それにとどまらず、政権獲得という一点で、あらゆるイデオロギー的対立を糊塗し形成され巨大野合政党の出現を許した。
清水記者の記事に戻れば、この記事が書かれた2013年3月時点ではどうか。そしてその後どうなったか。
清水委員は言う。「1990年代から自民党に対抗する野党の再編が進展。民主党が育って二大勢力が政権を競う形に近づいた。」
冗談だろう。すでに、この記事の1年前、民主の分裂は顕著であった。ウイキによると、この記事のほぼ1年前の2012年3月31日、消費税増税法案が閣議決定されたことについて「増税の前にやるべきことがある」と批判し社会保障・税一体改革関連法案の採決で反対票を投じ、同年7月には同調する議員50人と民主党に離党届を提出、とある。
言うまでもなく、2006年に民主党の代表だった小沢氏と彼のグループの脱党事件lのことである。
記事が書かれているときには、民主は分裂状況をますます濃くするという状況であった。
小選挙区制度は、政策も思想も異なる政治集団を、垂涎のアメである政権獲得の名のもとに、無理に1つの政党にする。
その結果、どうなったか。
党綱領さえまともにない政党を生み、党にとって最重要課題である消費税問題を巡ってさえ、党内に意思統一ができていず、多数の脱党者を出した。そして、同党脱党者を主要な構成員とする生活や、あるいは2大政党に飽き足らない未来、みどりなど、メンバーが誰かも一般に不明な多数の小政党の乱立をみることになる。
そのことを考えれば「二大勢力が政権を争う形に近づいた」、などというのは、全く事実に反する記述と言わざるを得ない。
どうしてこうした事実から遊離した記事を書くのかね。
貴兄の頭にだけある希望的観念を書かれても、読者には迷惑なだけだよ。
むしろ小選挙区制度によって、強引に巨大な野合政党形成が促進され、総選挙を前に四分五裂して、「当初の2大勢力形成に近づく」ではなく、「自民の1強VS中小政党に分かれる状況」に至る、と書くべきではなかったのかね。
参考ブログ
2008.10.20 Monday 論理に疑義あり 「実は世襲は減っている」山田孝男毎日新聞編集委員に問う 1
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1491
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1492
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1493