産経新聞は、「メルケル与党、大勝 独総選挙 中道左派に大連立打診」と題して、最近実施されたドイツの総選挙について、宮下特派員が24日付で記事を送っている。
この記事、非常に興味深い記述があるので、今日はこれを取り上げたい。
宮下記者は言う。
22日投票のドイツ連邦議会(下院)選挙は即日開票され、選管最終集計(暫定)によると、アンゲラ・メルケル首相(59)の保守系与党、キリスト教民主・社会同盟が総議席数630中311議席を獲得、大勝し、首相続投は確実となった。
意識しないと気付かないかもしれないが、総議席は同記者が言うように、630。それゆえ、過半数は316議席である。
ところが、CDU/CSUが獲得したのは311。 実は政権与党は、316の過半数も取れていないとうことになる。しかるに、宮下記者は与党が「大勝し」とし、首相続投確実と、書いている。
なぜ、過半数にも達していないのに、大勝となるのか。これは、誤記なのか。これが今日のブログのポイントである。
結論を言えば、宮下氏が書き送った記事は誤記ではない。与党大勝という分析は正しいのである。
ちなみに前回は239議席。もとよりそれとの比較でも70議席以上増やしたので勝利ではあるが、ポイントはそこではない。
日本も含めて一般的に、選挙での勝ち負けは、ある政党が過半数を獲得すること、そして政権の安定を持っていう。
すなわち、単独過半数をもって、我々は勝利したと判断するように、選挙での判断のポイントは、過半数に達成しているのかということになる。しかるに過半数に達していずとも、産経記者は大勝と書いている点が、この記事の興味深いところである。
この記事に問題があるとすれば、読者に対して、過半数もとれていないのに、なぜ「大勝」なのかという疑問に答えていないことからくる。実際、過半数にも満たない議席数でなぜ大勝といいうるのか、という理由について、この記事自体は、答えていないのである。
別言すれば、その疑問は、ドイツの選挙制度が、小選挙区制ではなく、比例制度をとっているという事実についての記述がないが故である。
比例制であれば、有権者の票は、当然、バラける。
選挙があっても、1党が100%近い票を得る漫画的な選挙となる北朝鮮など独裁国家があるが、これらを除けば、多元的価値が許され、当然のことされる民主主義国家では、特定の政党が単独で7割の票を獲得するようなことは、まずありえない。
実際、今回その記事が言うように、メルケル女史率いるドイツの政権与党は、41%の得票である。これは大変なことである。それで、47%程度の議席を獲得している。
参考ブログ
2011.07.09 Saturdayドイツの小選挙区比例代表併用制の選挙制度について 上下
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2868
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2869