児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
 木漏れ日に感じる秋の訪れ それを詠む 海鳴庵児玉

 朝夕はめっきりと秋めいて、薄着ならば肌寒さを感じるほどだ。朝、階下に降りると、揺らめく光は秋そのもの。それを詠む

 



  窓越しに 花を飾りし 食卓の 揺らめく光 秋を宿して

                       海鳴庵児玉 



2013.09.13 Friday
 海鳴庵児玉昌己句歌集2013年後半

 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3511

| 児玉昌己 | - | 22:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
脇圭平先生をご自宅に訪ね、同志社でのEU研究会で学ぶ

新大阪のホテルにいる。
 昨日から 上洛。
 同志社での研究会での梅津實先生(名誉教授)のご報告を拝聴。
 この研究会は恩師、金丸輝男先生が主催され、先生ご他界後も、同志社の梅津先生や鷲江先生、阪南大学現学長の辰巳浅嗣先生などにより継続的に続けられ、30年余の歴史を持つものだ。
 知的刺激で、知の道場ともいえる場所で、いつもながら、大いに刺激を受けた。
  EU立法における加盟国議会の関与強化をめぐるもので、元来イギリス政治の研究者であられる先生がEU議会である欧州議会を語られること自体が、欧州議会とEUの権限と影響の漸次的拡大を知らしめるので、実に印象的であった。
 その会議の前、下鴨にお住まいの脇圭平先生のご自宅を訪ね、ご挨拶申し上げた。奥さまも交えた、静かで、貴重な時間をあれこれ昔話で過ごさせていただいた。
  89歳におなりの先生のご長命を、心よりお喜びする訪問であった。
 奥様からよろしかったらと、先生の著書も数冊頂いて、内一冊には先生直々にペン書きの御署までいただいた。
 また京都名物のちりめん山椒もいただき、深く御礼を申し上げ、ご自宅を辞した次第であった。
 なお、若い人は知らないかもしれないが、脇圭平先生は、日本を代表する昭和の政治学者丸山眞男先生の愛弟子で、同志社で多くの院生を指導された。
 73年「知識人と政治」で吉野作造賞を受賞。

 

追悼

2015.01.13 Tuesday脇圭平先生ご逝去の報に接するhttp://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3793

 


参考ブログ

「国家須要の人材」、大学院奨学金と脇圭平先生のこと 2006.07.23 Sunday

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=229

日 脇圭平先生と蔵書 上下2正月09 2009.01.02 Friday

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1641

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1642

 

 

 

 

 

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 07:06 | comments(0) | - |
過半数以下で大勝と産経特派員が書くドイツの総選挙と選挙制度に学ぶ 産経、宮下ベルリン特派員の記事に寄せて2

 わが国では、比例がわずかに尾ひれとしてのみついて、小選挙区が完全に比例と分離されている並立型の小選挙区制度を採っている。
 それゆえ、小選挙区のウエートが突出して高く、しかも並立で、比例の結果がまるで反映されない。それで、1人区ではわずか4割程度の得票で、議席の8割を得る異常な状況がある。

これにたいし、ドイツでは、比例の結果で大勢が決定する。
 すなわち
比例で全体の得票を政党に配分するごとく、大勢がまず比例で決まる。別途、州ごとの区分された投票区である1人区で投じられた別の一票の総計で一人区の当選者が決定していく。
 分かりやすい解説はドイツ連邦議会」の項目の中の選挙制度で書かれている以下参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%
84%E9%80%A3%E9%82%A6%E8%AD%B0%E4%BC%9A

 ドイツにおける過半に満たない、この311議席という数字は、記者が正しく伝えるように、実質、大勝なのである。
 何よりドイツのように、比例選挙を採る国家では、連立政権が常態であり、連立を前提とする政治文化が根付いている。
 その意味
では、単独過半数に5議席不足するという状況は、まさに大勝に値し、小党の参加を得れば、安定政権が確実なものとなるのである。

その際、ドイツでは、わが国のように、政権奪取のために、主義主張を捨て去りし、何が何でも政権をという、わが国の民主にみた異様な野合的政党が出現する必然性もない。
 その本質において、並立制はドイツの併用制(連用制)とはまるで別物である。

 今も維新や民主の一部に、そうした政党の党是をまるで無視した野合政党再現のもくろみがある。だが、それを不可とするみんなの渡辺代表こそが、このいびつな選挙制度の中で、政党の在り方として、健全な姿であり、主張である。
 第一民主の例のように、出てくる閣僚ごとに外交政策や、内政の思想と行動がまるで異なるという馬鹿げたことを我々は観てきた。諸悪の根源である小選挙区制度がなせる技であった。

 独自のイデオロギーを持つ政党間で、政策協定を結び、それで連立を組む。
 実際ドイツでは、中道と保守の、あるいは緑と社民のといった連立が一般的である。今回は、大連立さえも、再び起きる可能性を示唆している。
 すなわち、比例制度を取る国家であるドイツでは、安定した政権がメルケルの下で、可能となったのである。
 他方、得票率と獲得議席にグロテスクなかい離が出るイギリスや、日本のような小選挙区制度の国家では、膨大な死票が出て、その結果、死票と化した有権者の意志が、強い不満を常に内部に秘めて、次の国政選挙で政権与党に批判の矢となって、候補者に突き刺さり、大量の現職が屍をさらすことになる。

それが小選挙区制度がそのうちに本質的に内在させる「敵対の政治」の結果として生じる「ねじれ」の本質である。
 だが、ドイツのように比例制度に立つ政権は、有権者の多様な声を反映した政党が形成され、その差異を前提としつつも、野合政党を形成することなく、政策協定で連立政権を作り、より安定したものとなる。

小選挙区制度は政治を安定させるなどということは、一時的にそうであるだけで、長期的にはまるで、ナンセンスな理解でしかない。また比例は不安定にするというのも全くの誤った理解である。
 産経の記事に戻れば、産経新聞社自身が、異様なほどに完全小選挙区制度を是としているようであるから、選挙制度の相違が生む、圧勝の意味について、意図して、宮下特派員も十分書かないのかと疑ってしまうのである。

実際、5%ルールについては、漠然と触れているものの、宮下記者はドイツの選挙制度については、そして彼我の制度の相違については、見事というべくも、触れていないのである。

一般に教科書では、小選挙区制度のメリットとして、政治の安定が確保できるという。
 だが、わずかな期間に限定して、そうであっても、中長期的にみれば、小選挙区制度が政治の安定をもたらすなど、全くの誤りである。
 そのことを、我々日本人は、この数回の国政選挙の結果で、知っている。
 自民、民主、自民とわずか3年余りで、200議席を超える議席の変動をうむわが国の小選挙区制度の現状よりも、ドイツような比例代表制度が、格段に安定した政治をもたらしうることを、我々はドイツの事例を通して、知るのである。
 そして、ドイツの比例制度は、超過議席などの問題を抱えながらも、小選挙区制度と比較し決定的に死票を軽減し、民意を政治に反映させる点ではるかに優れていること。そして、比例で欧州安定政権を連立として可能にしていること、そして政権与党と最大野党による大連立でさえ可能であるという事実を我々は知るのである。

すなわち、国民の声をより正確に吸い上げ、議席に反映させうる比例代表制度こそが、政治の王道であることを、我々は改めてドイツの事例で確認できるのである。

小選挙制度を特定の政党つぶしのために強引に主導し、それがゆえに地元岩手を含め、自党の候補者をことごとく失ったのが小沢一郎氏である。
 そして、先の国政選挙でこの制度がいかに小党に過酷に働くか、自身の経験で知ったはずである。
 だが、いまだに野合的な政界再編の願望と完全小選挙区制度を捨てていないようである。
 産経も、小選挙区制度がいいという時代錯誤の認識を改めていないようである。

だが、小選挙区制度は、国民の政治的意思をグロテスクにゆがめ、それがゆえに政治を不安定にする、実に19世紀の遺物であることを確認しよう。
 そしてドイツの事例にあるように、比例であるがゆえに、小選挙区制度よりもはるかに安定した政権運営が可能である。
 そのことを、比例を否定し、小選挙区制度を是とする産経の記事が、極めて皮肉にも無意識のうちに、教訓として我々に教えているのである。
 最後にドイツ型の制度の欠点と改革の動きについて、超過議席が与える公平性の問題があることを指摘するものもいる。確かにそれはある。
 だが、それはわが国の12年の総選挙でみた死票3700万強、死票率56%という、これぞ憲法違反というべき、惨憺たる状況の問題とは、その質とレベルにおいて、比較にもならない段階での問題であるといえる。

 

参考記事

メルケル与党、大勝 独総選挙 中道左派に大連立打診と題して、産経新聞 924()755分配信

参考ブログ参考ブログ

2012.12.18 Tuesdayこれが小選挙区選挙の実態だ 下 死票は3730万票、死票率56.0% 虚構の2大政党制



2013.01.14 Monday 森喜朗元総理の日経私の履歴書 比例削減での小沢一郎氏の役割への言及

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3373

 

追記
 ドイツの選挙制度は小選挙区比例代表連用(併用)制とよばれているが、この表記は、小選挙区制度かと誤解されやすく、不正確である。むしろドイツの制度の本質である比例代表制を頭にして、比例代表制小選挙区組み込み型(連用型)と呼ぶのが、より実態を反映し、正確に思われる。
ちなみに、デジタルで見れるこの選挙制度の解説と、最近の動向については、山口和人「ドイツの選挙制度改革」がある。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3499400_po_073702.pdf?contentNo=1

| 児玉昌己 | - | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
過半数以下で大勝と産経特派員が書くドイツの総選挙と比例の選挙制度に学ぶ 産経、宮下ベルリン特派員の記事に寄せて 1
 産経新聞は、「メルケル与党、大勝 独総選挙 中道左派に大連立打診」と題して、最近実施されたドイツの総選挙について、宮下特派員が24日付で記事を送っている。

 この記事、非常に興味深い記述があるので、今日はこれを取り上げたい。

 宮下記者は言う。

22日投票のドイツ連邦議会(下院)選挙は即日開票され、選管最終集計(暫定)によると、アンゲラ・メルケル首相(59)の保守系与党、キリスト教民主・社会同盟が総議席数630中311議席を獲得、大勝し、首相続投は確実となった。

 

意識しないと気付かないかもしれないが、総議席は同記者が言うように、630。それゆえ、過半数は316議席である。
 ところが、CDU/CSUが獲得したのは311 実は政権与党は、316の過半数も取れていないとうことになる。しかるに、宮下記者は与党が「大勝し」とし、首相続投確実と、書いている。

なぜ、過半数にも達していないのに、大勝となるのか。これは、誤記なのか。これが今日のブログのポイントである。 
 結論を言えば、
宮下氏が書き送った記事は誤記ではない。与党大勝という分析は正しいのである。
 ちなみに前回は239議席。もとよりそれとの比較でも70議席以上増やしたので勝利ではあるが、ポイントはそこではない。
 日本も含めて一般的に、選挙での勝ち負けは、ある政党が過半数を獲得すること、そして政権の安定を持っていう。
 すなわち、単独過半数をもって、我々は勝利したと判断するように、選挙での判断のポイントは、過半数に達成しているのかということになる。しかるに過半数に達していずとも、産経記者は大勝と書いている点が、この記事の興味深いところである。

 この記事に問題があるとすれば、読者に対して、過半数もとれていないのに、なぜ「大勝」なのかという疑問に答えていないことからくる。実際、過半数にも満たない議席数でなぜ大勝といいうるのか、という理由について、この記事自体は、答えていないのである。

別言すれば、その疑問は、ドイツの選挙制度が、小選挙区制ではなく、比例制度をとっているという事実についての記述がないが故である。

比例制であれば、有権者の票は、当然、バラける。
 選挙があっても、1党が100%近い票を得る漫画的な選挙となる北朝鮮など独裁国家があるが、これらを除けば、多元的価値が許され、当然のことされる民主主義国家では、特定の政党が単独で7割の票を獲得するようなことは、まずありえない。

実際、今回その記事が言うように、メルケル女史率いるドイツの政権与党は、41%の得票である。これは大変なことである。それで、47%程度の議席を獲得している。

参考ブログ

2011.07.09 Saturdayドイツの小選挙区比例代表併用制の選挙制度について 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2868

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2869

| 児玉昌己 | - | 09:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
史上最高となった半沢直樹視聴率

 半沢の視聴率は、42%を超え、四半世紀となる平成の歴史で史上最高のものとなった。
 やはり同じことを皆さん考えているようで、続編の要望も高いということだ。
 ミタも話題をさらったが、こちらは家庭にカメラが入っていたが、半沢は大人社会。
 しかも皆がお世話になり、国家さえも左右するのが巨大銀行。関連子会社も入れると、関係者は数十万を超えるメガバンク。それぞれの家族の人生にも直結する、権力構造を持った縦社会、ネクタイの社会なのだ。
 通常は明らかにされない重要会議にカメラが、もとよりドラマなのだが、入ったのが、新鮮だったのだろう。
 悪に対するあのさわやかさが、視聴者の心を見事につかんだのだろう。
 しかもストーリーの展開は、金融庁の検査という国家機関も巻き込んで、半端ではない。
 実際、片岡愛之助など歌舞伎役者、舞台俳優も加わり、芸達者の俳優さんの見事な演技で、プロのレベルを存分に味あわせてもらった。それがこの史上最高となる視聴率を稼いだ理由であろう。
 海外にも反響があることだろう。

関連記事 

「半沢」平成1位の42・2%!ミタもBLも超えた 関西は水戸黄門も抜いて史上1位45・5%デイリースポーツ 924

参考ブログ
2013.09.22 Sunday 日本全国がアア―
、エエと落胆した半沢直樹最終回

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20130922

2013.08.07 Wednesday 絶好調 堺「半沢直樹」(TBS系、日曜日午後9時)
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3512


| 児玉昌己 | - | 05:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
日本全国がアア―、エエと落胆した半沢直樹最終回 

 視聴率は40%を超えたのだろう。そして、最後の、明確な左遷といえる、証券会社への出向の頭取直々の辞令の伝達ではア-、エエ-、ジェジェジェと驚きと落胆の声を上げたことだろう。
 まあ、「それまでに」という頭取の制止を振り切っての半沢の、行員という立場を超えた父の弔い合戦の土下座要求ということだから、則を超えたということであるが。しかし、それはそれで、半沢の人生にとって、譲れない重要な美学だったといえる。

 最後の回はあまりに中身が凝縮されすぎて、時間的制約から、その展開に粗雑さを感じるものとなった。
 ともあれ、取締役会での大和田常務との対決はテレビドラマ史上に名を残す迫力ある名場面となった。
 結局、半沢は頭取に利用されただけのことという見方もあり得る。それなら後味も悪い。ぜひとも、復活劇の続編を期待したいところだ。
 それにしても、架空のこととはいえ、左遷候補地として、なんと私の育った故郷の佐世保の名が挙がったのは、苦笑いしてしまった。東京からはいかにも「遠隔地」ということだろうか。
 佐世保の名誉のために言えば、こんなに空と海がきれいな街も少ない。東京にはない素晴らしい自然がある。


参考ブログ

2013.08.07 Wednesday 絶好調 堺「半沢直樹」(TBS系、日曜日午後9時)

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3512

2013.08.27 Tuesday 半沢直樹追記 強きものと弱きもの 「クライマーズハイ」の堺雅人と滝藤賢一

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| 児玉昌己 | - | 22:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
本学公開講座も佳境入り スコットランドの分離運動の現況を力久昌幸先生(同志社大)に学ぶ

 勤務校の公開講座(国際政治経済)も、佳境入りしてきた。
 先週は渡部恒雄(東京財団)、今週は力久昌幸(同志社大)の両先生を迎えて、それぞれ、アメリカ、イギリスと話をいただいた。
 渡部先生は、米国外交の原則を話していただいた。それぞれが国益を中心に外交を推進しており、わが国政府によるロシアとの接近がオバマによる日米首脳会談の誘い水となったとの認識を示された。
 米国はその軍事的優位性を維持しつつ、国益をかけた独自外交をとりつつあり、わが国も国際関係とは国益を中心とした外交であるという認識に立った外交の必要性がより強くなってくることを指摘された。

 他方、力久教授はイギリスの分離運動としてのスコットランド国民党の動向をお話しいただいた。
 来年の9月19日がスコットランド独立を問う国民投票ということである。時差を考えると、奇しくも来年の今日(20日)なのだ。

 世論の動向は必ずしも賛成とはなっていないということである。

 ただし、政治は、わが国では、一寸先は闇ということわざがある。また英国でも A week is a long time in politicsという 。 ハロルド・ウィルソン英首相(11 March 1916 24 May 1995)の言葉である。
 1年後のことはあまりに遠いので、ユーロのメルトダウンなどと2年前に公言した軽薄な評論家がいたが、学者はそのような粗雑なことはいわない。
 だが、もし国民投票でスコットランドの独立となれば、ポンドの使用継続や、石油と天然ガスを生む北海の領有権の地域確定問題、EUとの関係など、内政外交にわたり多方面に影響を及ぼすことが必至となる。
 その点への地域住民の不安を推進母体のSNP(スコットランド国民党)は払拭できていないという指摘であった。それができなければ、UKからの分立独立も無理だろう。
 そうなれば、スコットランドは、イングランドに対し予算配分を積み上げるというように、条件闘争となる。

 イギリスで、もしスコットランドがUKから離脱するとなると、EUとの関係はどうなるかという重要問題が派生する。
 司会をしていてそれをむしろ力久先生から質問を振っていただいた。
 私見を言えば、市場経済、法の支配、民主主義など、EU加盟の条件をもとよりすべて満たしていることから、EU加盟自体は全く問題ないと欧州委員会の側でみるであろうし、スコットランドのEU加盟は粛々と動くと私は見ている。

 ただし、分離独立に伴うイギリス内部の重要問題の解決がむしろ難題で、その場合の焦点となるだろう。
 尖閣、竹島を見る通り、北海油田が係る領地、領海の確定など大変なことだ。
 また私が専門とする欧州議会でいえば、スコットランドが独立すれば、人口500万ということで、13議席を持つデンマーク程度の国家が新たに誕生することになる。
 それで2014年の欧州議会選挙時の議員定数でいうと、イギリスは73から13を引くと60程度の議員定数に低下し、独96、仏73、伊73に大きく劣る定数配分となる。

 イギリスというより、そのときはスコットランドを除く、イングランド、ウェールズ、北アイルランドからなるUKというべきであろうが、そのプライドは大きく傷つくことになる。
 プライドが傷つく程度なら、我慢すればいいが、それでは済まない。現在アシュトン女史が務めるEU外相ポストも失う。
 イギリスのEU政治への影響力は、すなわち大英帝国を誇ったイギリス自体の国際政治での影響力は決定的に後退するといってよい。
 イギリスでは、本ブログでもたびたび書いているように、政権与党であるイギリス保守党内に強いEU脱退論がある。
 もしそれも実現すれば、UKがEUの外に出て、スコットランドが単独でEU残留するというように、可能性としては、状況はさらに複雑になる。その時はスコットランドでは、ポンド継続かユーロへの乗り換えかという問題も生まれる。

 イギリスにおける分離運動は、devolutionという言葉で語られており、実際、イギリスの分離運動を意識して、最近、イギリス関係の英文書籍をみていると、UKという一般的表現から、スコットランド、ウェールズなどと別記する書き方が目につくようになってきた。

 ともあれ、興味深いイギリスにおける分離独立運動であり、来年の国民投票が待たれるところだ。
 われわれ日本人があまり考えたこともない国家の分離が進行しているのが、今のイギリスである。ちなみに日本外務省は英国内で活動する日本企業は約1300社、約13万人の雇用を生み出しているがゆえに、EU脱退は困ると、メモを出し、サンデー・タイムズが「異常干渉」と報じている。(毎日7.21)
 ヨーロッパ情勢は面白い。
 なお来週は、次週は、佐瀬昌盛先生(防衛大名誉教授)、その後は、木村汎先生(北大名誉教授)の番となり、クライマックスを迎える。

参考記事

英国>日本政府「EUに残るべきだ」 “異常干渉”と報道毎日新聞721

参考ブログ

2011.01.06 Thursday苦境に立つクレッグ英自民党とイギリス版「一寸先は闇」

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20110106

2013.01.18 Friday イギリスのEU脱退論EUは「イギリスなきEU」を21年経験上下http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3374

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3375

2009.03.24 Tuesdayブリュッセルミディからスコットランドへ EU遥かなり

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1747


| 児玉昌己 | - | 21:37 | comments(0) | trackbacks(0) |
平田寛九大名誉教授の訃報に接す

 平田寛(ゆたか)先生(九大名誉教授)逝去の報を、福田赳夫元総理夫人の他界を伝えるインターネットの記事を開いて、偶然知った。今月14日だったとのこと。
 平田先生は、九州大学を定年でお辞めになった後、長崎純心大学に移籍された。その時に面識をいただいた。
 長崎港外にある伊王島でのフレッシュマンキャンプで、夕刻、その日の日程を終えた後、島内の居酒屋で交わした会話が、意味のある最初のものだったかと思う。
 話を少し前に戻すと、長崎純心大(当時純心女子短期大学)は、1990年代に入り、短大から人文学部を持つ4年制大学の新設を企画、同時に大学院の立ち上げをも構想し、その申請事務に踏み出しつつあった。
 1988年に着任した私は、19944月を目標にした4大開設の要員として、現在もその職に就いておられる片岡学長や塩崎先生の下で、同僚の先生方とともに、担当していた教務事項を主に準備に入っていた。

 帝大の歴史を誇る九州大学からの先生方の新設大学への着任は、それまで短大としての経験をもつ純心にあって、4大とはなにか、大学院とは何か、研究と教育の両面にわたり、そのスタンダードを直接ご教示いただける絶好の機会であった。それがゆえに、待ちに待った先生方の着任であった。
 実際、純心の首脳陣による4大開設の人選と人事は目を見張るもので、稲垣良典、一番ヶ瀬康子といった錚々たる先生の名があった。その中に平田先生の名もあった。

 平田先生は鎌倉仏教絵画を語らせれば、右に出るものはないという碩学で、著書「絵仏師の時代」で1994年に國華賞、95年に島田賞、そして日本学士院賞を受賞。
 宮中での講書始(はじめ)の儀で、ご進講されたという事実を語れば、先生の学的水準がわかるというものである。

 先生はいつもにこやかにされていて、若い私などにも気さくに声をかけていただいた。
 欧州政治を専門とする私など、仏教美術の分野は全くの未知のエリアで、ただ一方的にお話を伺うだけであった。いつの時代が素晴らしいですかとお尋ねすると、「鎌倉ですね」と、答えられたことを鮮やかに記憶している。

先生との会話でもう1つ思い出すのは、研究者は学問上の業績もさることながら、できるならその顔を見ることだよ、鍛えられた人の顔は風格がある旨のことを話されたことだ。
 訃報に接し、長崎純心大学開学の頃のことを思い出していた。

 ご冥福を心よりお祈りしたい。

| 児玉昌己 | - | 10:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
異常気象が通常になるほどの異常気象 渡月橋の危機をTVで目撃する

 今年度は学会の役員の仕事を離れたこともあり、東京など外に出かけることが前期はゼロに近かった。母校、同志社での研究会もここ3年さっぱりご無沙汰だ。
 それで久しぶり、下旬に研究会出張の計画を入れた。恩師の先生方にもお会いしたい。
 京都といえば、会津から舞台を移したNHK大河ドラマ「八重の桜」の舞台。まさに新島との結婚と同志社創設の舞台である。

 そんな京都だが、昨日の台風による桂川の増水による渡月橋の危機的映像は肝を冷やすものだった。
 鴨川の映像もほしいと思っていた矢先、瞬間的な映像が流れた。あのおとなしい川が濁流となって今にも堰を超えそうな勢いだった。
 鴨川が氾濫すれば、京都の打撃ははかり知れず、それは、京都の市街地の全域に及ぶ。
 幸いにして、今朝は好天が戻り、桂川も水が引き、市内観光も通常を取り戻したという。
 今年は時間100ミリ、降り始めからは300-400ミリというのも珍しくなくなるほどの異常気象。
 これからは、このような気象が通常になる予感がする。そうなれば、それこそ異常なる気象である。
 ともあれ、北部九州は満月。
 京都や関東の被災地の状況からすると、嘘のように澄み渡る秋の九州であり、台風一過の日本列島である。
 被災地の皆様にはお見舞い申し上げます。



| 児玉昌己 | - | 22:24 | comments(0) | trackbacks(0) |
阿蘇の道をドライブ 山賊旅路の団子汁を楽しむ 海鳴庵児玉
 連休中日は、阿蘇方面に家族でドライブ。山賊旅路という道路沿いの郷土料理屋で食事。終わって、鹿本の温泉湯花里(ゆかり)に寄り、アルカリ単純泉を楽しみ、異色の人気テレビドラマ「半沢直樹」が始まる時間に戻る。

 

山賊の だご汁嬉しや 阿蘇の路(みち)

               海鳴庵児玉

| 児玉昌己 | - | 23:48 | comments(0) | trackbacks(0) |

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