児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
欧州理事会での英首相キャメロンの玉砕 欧州委員会の長候補選定の表決 上

  EUを長く研究しているが、EU加盟国間外交において、主要国の首相がかくも無様な敗北をなし、自国の利益を損なったことをみたことがない。

 28の加盟国があるにもかかわらず、わずかにハンガリー1国しかイギリスを支持しないことが明らかであったにもかかわらず。まさに「玉砕」という表題にした理由である。

 もとより今日のテーマは、6月27日に行われた欧州理事会による欧州委員会の長の提案での表決についてである。 

 なお、唯一英国支持に回ったハンガリーといえば、憲法改悪を実践して、現政府による政治支配を強化し、世界の民主勢力から指弾を受けた首相である。

ところでEuropean Voiceなど欧州紙では、欧州理事会による欧州委員会の長候補の選択については、nominateと書いているものもあるが、条約上正確に言えば、欧州理事会ができるのは欧州議会へのpropose提案である。

 しかもこの提案を規定したリスボン版EU条約17条7項については知られているが、14条1項の改正はあまり知られていない。

 欧州議会の権限として新たに行われた条約改正では、欧州委員会の長を欧州議会がelect(選出する)とそれまでの承認権限をストレートに欧州議会の選出権限として書き改めた。すなわち、欧州委員会の長の最終決定権は、欧州理事会ではなく、EU条約上すでに欧州議会に移譲されている。
 ちなみに優れた記事を書く毎日の斎藤義彦ブリュッセル支局長は22日の電子版で「
欧州委員長はEU首脳会議が多数決で候補を決定、欧州議会が承認する。」と書いているが、それは2009年までのことで、正確ではない。EU条約に即して言えば、「欧州理事会が候補を提案し、欧州議会が決定する。」英語で整理すれば以下だ

The President of the Commission is elected by the Parliament by a majority of its members, on a proposal of the European Council acting by qualified majority. The choice of the candidate for the Presidency of the Commission at the European Council should take account of the results of the elections to the European Parliament.

 こうみると、いかに大きく機関間の力関係が変わったかである。それが故にこれを注視していたのである。

 

 歴史をさかのぼれば、今はさる20年前、1994年にマギーこと、マーガレット・サッチャーの子飼いというべきジョン・メージャー英首相がデハーネ・ベルギー首相の欧州委員会の長の就任を阻んでいる。

しかしキャメロンが無知なのは、自分をあたかも20年前と同様にふるまっていることだ。

 1994年に起きたことが20年後にもできると思ったことである。かくも重要なEU条約の改正も知ってか知らずか。

 ことの流れを整理すれば、英保守党内での突き上げを受けて、2017年に同党が政権を維持していたらという条件で、EU離脱の有無を問う国民投票を実施すると公言したことに始まる。

 今回、UKIPの急伸を受けて、「古い連邦主義者」のユンケルを欧州委員会の長にするなら、国民投票を速めざるを得ない。それを行えばEU脱退になるかもしれないと語り、EUの行政府である欧州委員会の長へのユンケルの選出つぶしのため、EU加盟国を「脅迫した」ことによる。

 ところで、キャメロンも、UKIPも、イギリスのメディアも挙げてそうであるが、EU条約では欧州議会が提案する候補から欧州委員会の長を選ばなければならないと何処にも書いていない、といっている。

 百歩譲ってその議論を認めるとしても、同じ論理で次のような質問も英保守党にも返せる。すなわち、イギリスが欧州委員会の長の候補の提案にあって、欧州議会選挙結果を無視してもいいともEU条約には書いていない、と。

 自分の都合のいいように他国も考えてくれるというほど、EUの政治は甘くない。

 キャメロンについていえば、他の主要5党が内部での予備選挙を実施し、その公認候補を決定したが、自らECRでは、それにもかかわらず、そうした行為を行うことがEUの連邦化に手を染めるとして、自らその権利さえ放棄している。

 これは通貨政策と同様の論理でのEUとの連携拒否である。

 通貨について言えば、ユーロの安定化のためのユーロ圏内での安定化条約同様に、ユーロの価値の安定化に重要な財政規律の強化を定めた財政条約(フィスカル・コンパクト)にさえ調印しないということで、独りユーロ防衛のための政策を妨害する態度を貫徹した。それは、同時に、同国のEU政策の崩壊というべき状況を招いている。

 

 これは国内でもただでは済まない。反EU的姿勢を強めれば、スコットランドは動揺する。彼らは親EU的姿勢を持っているからである。

 イギリス政治の文献では、しばらく前からサッカーよろしくイングランド、スコットランドなどと分権を意識した表現が目立つようになっている。

 そしてスコットランドのイギリスからの分離独立を問う国民(住民)投票もこの9月18日に迫っている。以前は問題にもされなかったこの国民投票だが、実はキャメロンが反EU政策を強硬化するのと比例して、賛否が接近し始めている。

 キャメロン英政権の、すなわちイングランドの極端な反EU政策は、UKとしてのイギリスの墓堀人ともなりかねない危険もはらみつつ、その孤立とヨーロッパにおけるイギリスの影響力の低下を一層濃くしつつある。

 

| 児玉昌己 | - | 17:13 | comments(0) | trackbacks(0) |
2014年議会選挙余滴3 反ユーロ政党AfDについて 反ユーロ政党は反EU政党である

 イギリスのUKIPのこと、そしてフランスの極右の国民戦線のマリーヌ・ルペンの新会派結成の蹉跌については書いた。彼女は院内会派失敗を、一時的後退setbackで失敗ではないと強弁している。

 先の欧州議会選挙ではドイツでも重要な現象がみられた。余滴第3弾としてAlternative für Deutschlandのことを書こう。

 この政党は欧州議会選挙ドイツ選挙区(定数96)史上初めて反EU政策を掲げて、7議席を得た。市場統合に朝野を上げてまい進してきたドイツにおいて、これは特記すべきことである。

 厳密な議論をすると、ヒトラーのナチズムに内外で威信を失ったドイツでは、戦後ドイツ社会民主党は必ずしも欧州統合に賛成であったわけではない。

 なぜなら、それが西側にコミットすることになり、ドイツ社民はヨーロッパ統合が東西分裂したドイツの再統一の妨げになるとの考えからであった。

だが、冷戦の激化もあり、親EU路線へと転換することになった。その後は、ドイツの2大政党はともにヨーロッパ統合の推進者としてまぎれもなくそれにまい進してきた。

 2014年の欧州議会選挙でドイツに意味があったとすれば、いわば国是として存在してきた親EU路線から外れた初めての反ユーロ政党の「ドイツのための選択党」が初めて欧州議会に議席を得たことだろう。

 ちなみにこの政党の躍進は欧州議会選挙法のドイツ実施細則で5%の敷居値をドイツ連邦憲法裁判所が合理性がないとし、さらに妥協案の3%案も不可とし、完全撤廃させたこともその躍進の理由である。このため欧州議会選挙で議席を得た政党は前回の7から15に増えている。

 この政党については、ウィキペディア(英文版)では反ユーロ政党ではあっても、反EU政党ではないと記載している。

 書きたかったことはこの認識が果たして正しいのかということである。

 反ユーロであることと親EUが成り立つのかということである。

私に言わせれば、反ユーロはまさしく反EU勢力だと規定しておくのがいいと思っている。

 なぜならユーロこそがEUの核心部分であり、すでに18か国が採用し、今後も20か国を超えていくことが明確だからである。

 ドイツの税金がギリシアなどの放漫財政の象徴であるソブリンローンの付けを払わされるというのが言い分である。それはそれで理解できる主張であるが、では、マルクに戻ることができるかということである。ドイツがマルクに戻れば、輸出価格は急騰する。他国の市場も収縮し、EU間の貿易自体に大きな影響を及ぼす。

 また逆も真なりで、南欧諸国でも別の衝撃が走る。 

 ギリシア他南欧諸国が格も厳しい緊縮を求められ、国内の労働市場は25%という空前の若年労働者の失業率を記録したにもかかわらず、ユーロから離脱できないのは、たとえばギリシアが旧通貨ドラクマに戻っても国際的信用のない通貨を国際市場ではだれも相手にしなということであり、さらにギリシアの債務がユーロ建てとなり、その実質的負債額は天文学的数値に跳ね上がるという冷厳な事実に負う。

 メルケルは早くも2011年10月ユーロ危機の只中、「ユーロが死ねば、ヨーロッパは死ぬ。そうはさせない。」"If the euro fails, Europe fails. We can't let that happen."と語っている。

 メルケルにとって、そしてドイツにとってユーロから旧貨幣マルクに戻るとは全く考えられないことで、それはECBを頂点とするEUの金融構造を1993年のマーストリヒト条約以前に戻し、外国為替の極端な上下を繰り返し、欧州の金融危機を慢性化させていた以前の状況に戻すことになるからである。

 AfD党幹部の主観的見解が何であれ、結局ドイツの市民の税金を放漫財政に走る国家の財政赤字のしりぬぐいに使うなというドイツだけの視点に立つ極めてナショナルな、つまり反EU的な思考に基づいている。

こうした思想や党の政策が親EU的性格かどうか疑ってかかる必要がある。

 最後にこの反ユーロにして反EU政党、欧州議会選挙でどこと組むかという問題を突き付けられた。 

このドイツ国内から生まれたenfant terribleというべきAfDについていえば、同じく問題児で英首相キャメロンにたいして、ドイツ首相メルケルは彼が主導する欧州保守改革グループECRに入れないようにと、念を押していた。

だが、結局、キャメロンは欧州議会選で敗北することで、大きく議席を減らし、欧州議会院内会派ECR内の主導権をポーランドに渡すことになり、勢力拡大の観点からAfDの受け入れに積極的なポーランドを抑えきれずに、同党をECRに迎えることになった。ここでもキャメロンは敗退している。

私がAFDを反EU政党と規定するのをまさに地で行くかのようなECRへの加盟となった。

 

 

| 児玉昌己 | - | 00:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
2014年欧州議会選挙余滴2 ルペン国民戦線欧州議会内新会派結成ならず

  今回の欧州議会選挙が終わって1か月が過ぎたが、新会派結成の届け出と確定が終わった。

 フランス選挙区で圧勝し、世間を騒がせたのは極右の国民戦線(Front Natonal/FN)であった。25%近くの得票を得て、フランスに配分されている74議席中3分の1余りの24議席を獲得。

 主要各政党の議席は以下のごとくである。

国民戦線は24.95%で24議席を獲得。2位が国民運動連合UMPで、20.7920議席。社会党が13.98%で13議席。続いてAlternative (UDI+MoDem) 9.9%7議席。Europe écologie8.91%で6議席。

1972年結成のこの仏極右の国民戦線を率いたのはマリーヌの父親ジャンマリーだが、その後継者となった彼女は、2012年の大統領選挙では17.9%を獲得していた。すなわち、2014年の欧州議会選挙での躍進は十分想定されていたのである。

 欧州議会選挙が終われば、注目は、院内会派の形成の成否。

 院内会派結成ができないと、発言権、予算で圧倒的に不利に立ち、実質的に欧州議会での議会活動に多くの制約を持つ。すなわち無所属議員では欧州議会では何もできない仕組みとなっている。それゆえ、オランダ自由党のヴィルダースらと組んだ欧州議会での新会派結成が次の焦点となっていた。

極右勢力は本来的に自民族優先主義、国家主権至上主義の思想をその本質とする。それゆえ、この政党が他の国家の類似の政党と組めるか、それは選挙後の一大関心であった。

今回、25名の国会議員は国民戦線一党でほぼ賄える数字を出したが、別途6か国の友党を糾合せねばならない。当初からNFを入れ、5か国の参加は決まっていたが、マルタの議員の後、最後の1か国の議員の獲得に失敗したということである。

欧州議会の院内会派の要件は昨今厳しくなっている。

 7か国25名以上の欧州議会議員を要件とする。まさに欧州議会内2大政党である欧州人民党と欧州社会党などが、欧州統合推進派が極右台頭を予測し、これを阻むという意図をもって国の要件の敷居が高く設定されたのである。

ちなみに以前は1つの国家の政党で欧州議会内の院内会派を形成することが可能であったが、現在は認められていない。1か国ではそれはナショナルであって、ヨーロッパ的ではないという理由によるものであった。

 ともあれ、フランス選挙区単独首位となり、24議席を得ても、欧州議会でこの極右政党の活動が会派形成に失敗したことで、一定限度制約された。
 そのことでは、EU内にもあるヘイトクライムなどの防止のためにも、実に好ましいことであった。

 多くのフランス人がそう思って安堵していることだろう。

 なお仏国民戦線のマリーヌと2枚カードとして前面に出ていたオランダ自由党党首のヴィルダースは欧州議会選挙法で定めている2重議席禁止に対して司法上で問題にしていたが、今回ルペンらとの院内会派形成が不可能となったことで、国会議員として専念することを表明した。欧州司法裁判所もこの彼の提訴を資料不足として不受理とした。

 なお、院内会派の母体となるルペンらの欧州政党はEuropean Alliance for Freedomで、それは以下からなる。

Front National (France, 24 ) 

PVV (Netherlands, 4 )蘭自由党

Northern League (Italy, 5 議席)伊北部同盟

FPÖ (Austria, 4 )オーストリア自由党

Vlaams Belang (Belgium,1議席) ベルギーフラームスベラング(フランドルの利益)

参考ブログ

2014.06.10 Tuesday 2014年欧州議会選挙余滴1 UKIP党首のファラージュのこと

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3684

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 12:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
日本GL敗退 Wカップ

  欧州出張で見ることがなかった今度のW杯サッカー。

 最終戦となった対コロンビア戦だけはかろうじて見ていた。相手が格上ということを見せつける試合で、終わってみれば、最後緊張が外れて、不用意な点も献上していた。ともあれ、長いW杯も終わった。イングランドも1勝もせずに敗退という。イタリアも。簡単には勝たせてもらえない。世界の壁は極めて高い。

 それがW杯ということを改めて知らせてくれた。

残念だが、ともあれ長い行事は終わった。次の世代の成長をみるしかない。

 それにしても、3日か国を回るあわただしい8日間の欧州出張。帰国しても体調がなかなかすぐに戻らない。



| 児玉昌己 | - | 07:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
海鳴庵児玉昌己句歌集2014年前半

 2014.06.19 Thursday 欧州出張 ブルージュとプラハ 2都を詠む 海鳴庵児玉

訪問した欧州の2都を詠む

 

ブルージュは 屋根なき歴史 博物館 誇れし美味は チョコレート 

 

塔ありて 帝都の香り いまもなお 匂うがごとく プラハ輝き

 

 2014.05.26 Monday 2014.05.26 Monday 欧州議会選挙開票の合間に どくだみを詠む 

5年に一度の欧州議会選挙。EU離脱政党のUKIP(英独立党)の躍進と、英自民党の凋落をみて、あのグラッドストーンの政党がというと、英国出身のスティーブン・デイ教授にNothing lasts forever. の言葉を得た。庭ではドクダミが広がっている。

 

どくだみや 枯れた菖蒲に 十の文字 広がる草に 白映えて咲き

どくだみや 菖蒲(あやめ)の後の 白き花 

 

 

2014.05.03 Saturday黄金週間 西長門の紺碧の海に遊ぶ 

 世はまさに黄金週間。私もパソコンを離れて、小倉に泊まり、日本海の紺碧の海をみに友とドライブ。角島を望む西長門リゾートの白砂と北長門の川尻岬の灯台を詠む。

 

西長門 それは異国の そのままに 白いビーチに 海は輝き
 

川尻の 岬は遥か 灯台に 心は躍(おど)る 紺碧の海             

 

2014.04.20 Sunday 17回久留米ツツジマーチ参加を詠む 

さわやかな風を受け、ツツジの久留米を20キロ歩き、1600年の歴史を持つ筑後一之宮高良(こうら)大社に上る。歌3首。

 大社(おやしろ)を 登り登りて ツツジ花 噴き出す汗に 風の清(さや)けき

 

大社(おやしろ)に 春は来たりて ツツジ花 足下の苔に 古(いにしえ)をきく

  

春来たり ツツジの久留米 マーチにて 汗の後には ビイルのマーチ

                           

 

 2014.04.13 Sunday 春はあけぼの 春菊の味噌汁を詠む

 春はあけぼの、そんな新学年の初めての日曜日の遅い朝。春菊のみそ汁が香ばしい。

 

 春菊の お味噌の汁の 苦味みこそ 大人のみ知る 春の味わい

 

                 

 2014.04.04 Friday 入学式 そしてツツジに勢いをみる それを詠む

  庭ではツツジが花をつけ始めた。春本番の到来。誰にとっても、いい日などはわずかな間だが、晴れがましい今日ばかりは、自然の恵み、春を謳歌しよう。

  勢いの ツツジの花に 未来(さき)をみる 幸多かれと この日ばかりは                   

  

2014.04.01 Tuesday 台湾出張 後は春 それを詠む

台湾出張 ひまわり学連の3.18抗議運動に遭遇したこともあり、アジアに生きる欧州政治の研究者の一人として実に有意義な時間でした。庭は桃。学園通りは桜。吹雪いて、実にいい感じです。

 

  台湾の 若きパワーは ひまわりの 黄色で染めて 次世代にたつ 

  台湾の 夏は終わりて 逢うさくら ふぶきと舞いて 我を迎えし                      

 

2014.03.18 Tuesday カササギの巣作りに春到来を知る それを詠む 

気温は20度もあり、春爛漫の久留米だ。各地も同様で、春本番。人間世界だけでなく、この地域の保護鳥カササギも同様である。

 

 巣つくりの 枝を咥えし カササギの 番(つが)いもありて 春や麗らか

 

 

2014.03.01 Saturday 今日から3月。春は弥生。それを詠む 

 季節は緩やかに、しかし確実に移りゆく。庭の梅の花は散り始め、水仙が花をつけた。

 

敷石に花を散らすは 梅の花 去りゆく季節に 紅を添えてや
 

  朝露に つぼみ濡らすは 水仙の 朝陽(あさひ)の中で
 花は開(ひら)きぬ

                    

  

2014.02.19 Wednesday 久留米の雪と満開の庭の紅梅を詠む

  ソチ五輪一方で東日本の豪雪。九州も時に雪舞う日もあるが、庭の紅梅は満開。近くの幼稚園の雪の情景と庭の紅梅を詠む。

 

   雪の道 飛びては跳ねる 幼児(おさなご)に 寄り添う母の 温もりのよし

  

 燃え出る 緋色の梅や 冬の主 寒の空気を 裂きて咲きたり

                    

 

2014.02.05 Wednesday 立春の紅梅を詠む

  寒さは相変わらず。庭の蝋梅の花は終わりつつあるが、7分咲きの梅は近づく春を知らせてくれる。それがうれしい。

  

 寒む空も 陽光長く なりぬれて 梅の花(か)紅は 輝き増して

 梅の髭 君の笑顔の ようであり  

               

  

2014.01.26 Sunday 3度目の正直 咲いた蝋梅(ろうばい)を詠む 

 5年前のことだが、鴎外先生の墓所のある津和野の永明(ようめい)寺を訪ねた。玄関わきの蝋梅。いまだ春浅く、雪の残る境内だったが、その場所だけが周囲に負けず、凛としてあたりに深い余韻を残していた。

 

冬にあり 春を先駆く 蝋梅の 姿勢(すがた)凛とし 寒風に立つ

 

| 児玉昌己 | - | 01:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
欧州出張 ブルージュとプラハ 2都を詠む 海鳴庵児玉

  慌ただしい1週間の欧州研究出張も終わりを迎え、今日プラハ国際空港から予定通り帰路につきます。訪問した欧州の2都を詠む

 

 

 

ブルージュは 屋根なき歴史 博物館 隠れし美味は ショコラーデ 

 

 


 塔ありて 帝都の香り いまもなお 匂うがごとく プラハ輝き

                     海鳴庵児玉

 

 

 

 

海鳴庵句歌集2014年前半

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3649

 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3674

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 17:07 | comments(0) | - |
プラハより帰途に就きます

 あと1時間ほどぷら市街地のホテルにいて、空港に向かいます。あわただしい3か国出張も無事おわりました。いつもながら大いに勉強させてもらいました。

 今はインターネットの世の中。ありとあらゆる情報を旅行中も取り出せます。

 20年前を思い出すと、まさに別世界。若い人は今が当たり前なので、感謝も薄いことでしょう。

 ともあれ、出張も様変わりです。

 ただし、短期間であちこち飛び回るたびで、さすがに最終段階では緊張が解けて、身体のバランスを崩し、のどを痛めました。

 ホテルのエアコンンのせいか。

 ソウルインチョンでは数時間の待ち、つらい状況で、我慢の帰途です。



| 児玉昌己 | - | 16:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
キャメロン批判 2 ふるっている欧州市民の書き込み キャメロンよ ゲームは終わった プラハにて

 キャメロンは欧州委員会の長のユンケル就任を阻もうと公然とこれに挑戦していることには触れた。だが、EUの他の加盟国と欧州議会では彼の「脅し」を誰もまともに相手にしていない。

 重要な記事はEuractivで以下。

Juncker seen rejecting Cameron’s EU Commission reform plan 17/06/2014 

その記事への書き込みも振るっている。

 イギリスのキャメロンを念頭に、一欧州人というペンネーム氏いわく。

 私の気持ちも代弁してくれているので紹介しよう。

Take in mind that who will be then the Commissioner President when if in any circumstances the President will be "out of service" ?
The English vice President of the commission ?

I would be very careful !!

欧州委員会の長が(英の脱退の可能性で)いつでも「サービス停止」となる状況にある時に、誰が欧州委員会の長になるかについては、心したほうがいい。

イギリス出身の副欧州委員長だって。

(すぐに消えるから)要注意だよ。

最後の副委員長のことには注釈がいる。

キャメロン改革案に、欧州委員会を、大国の委員と小国出身のジュニア委員とに分けるアイデアがあり、それを受けたものだ。

なお、イタリアが 2014年後半の理事会議長国だが、形成を見ていた同国首相はユンケル支持を表明。

自国の公的債務がGDPの130%の公的債務という厳しい状況にあるイタリアは、議長国として、自国とEU全体の景気浮揚と財政赤字の解消の取り組みで今後忙殺されていく。

意見が入れられないならEUから出るという、具体策を全く欠いた、反連邦主義のムードとしてだけの要求をしているイングランドの政治家、キャメロンの「恫喝」にかまっている暇はないのである。

 イタリアのレンツィ首相は、欧州委員会の長となるであろうユンケルを認める条件として、その点を支持の取引としたようだ。

ともあれ、これでゲームオバー。

大山鳴動で、キャメロン1人、あるいはせいぜいスウェーデンとオランダだけの支持ということだ。

予想されたことではあれ、無残なことだ。

キャメロンは、スコットランドによるイギリスからの分離運動の国民投票も迫っており、今後厳しい状況を国内で迎えることになるだろう。

 だが自らまいた種だ。

それにしてもわが国で言うEU崩壊論などいかにばかばかしいか、ということだ。

いかに加盟国の国内政治にヨーロッパ統合が巨大な影響を及ぼしているかを、わが国の軽薄な評論家は知るべきであろう。

浜矩子女史が得意とする「EUメルトダウン」などは実に皮相かつ軽薄な表現でしかない。

参考記事

Italy shifts to pro-Juncker camp, dealing further blow to Cameron 18/06/2014

| 児玉昌己 | - | 20:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
再びキャメロンの対EU政策批判 孤立化を深める英保守党政権 プラハにて

 再びキャメロン批判 

 キャメロンは、早ければ6月27日に行われる欧州理事会での欧州委員会の長の提案について、特定多数決での票固めに失敗しそうだ。すなわち、彼の言う「改革」とその言い分にたいして、まるで支持が広がらないからである。

 もしい彼の言い分が通らなければ、他のEUからの脱退もあると加盟国を脅し、国内に彼の力を誇示したいとする思惑が実現できないと擦れば、それは国内政治における彼の政治指導を決定的に後退させることを意味する。

 それもこれも彼がまともな対EU政策を持たないことからくる。

 彼はいう。EUの改革が必要だと。しかし中身がまるでない。我々専門家も含んて、誰も彼のいう改革の中身の正体をいまだ知らないである。

 言われていることを述べれば、欧州委員会の委員について、スパーコミッショナーを導入し、大国に比重を持たせること、移民導入政策の抑制や社会政策を言う。そのほかは、EU条約前文にある「一層緊密な同盟」ever closer union という文言を削除せよという程度のことである。

 確かにこれは、EUのユニオンが「連合」ではなく、「同盟」と訳すべき連邦的統合がEUの本質であり、EUを他のすべての国際協力組織と分かつEUの無期限的性格をいう言葉である。

 EUがEECとよばれていた時代から55年にわたり、すなわちイギリスが未加盟の時代からEU関係者が大切にしてきたヨーロッパ統合の基本的認識である。

しかしながら提案は、あれはダメこれはダメとネガティブなものにとどまり、わずかに外交での協力は言うものの、キャメロンには統合組織としてのEUを推進する統合構想などまるでない。

実際、すでにEUの4大加盟国のうち、唯一ユーロにも、シェンゲンにも未加盟である。ユーロ一つとっても、単一通貨ユーロの防衛と価値の安定のために、銀行同盟から、EU共同債権まで視野にいれる財政同盟をしつつある。だが、イギリスにはまったく論外のことである。

 EUの将来構想などさらさら持ち合わせていないから、他のEU加盟国が誰も相手にしないのである。

結成当初より秘めているEUの連邦的統合の深化に反対し、欧州の国家による主権を維持したままの欧州連合にとどまるというその意思のみである。 

 彼のいうEUとは何か。

 EUは自由貿易圏にとどまるべきであるという類のことだ。しかもEUはすでに1968年に関税同盟を形成して自由貿易圏でさえない。

 それによって、イギリスは無関税の広大な市場を丸どりできたという自覚と学習さえない。

 産業小国は関税同盟が故に、EUの域外にあれば形成できる関税障壁を構築できず、打撃を受けるままとなる。それを緩和するのがEU予算である。それさえ十分理解できていない。

さらにEUは今世紀に入り、念願の単一通貨さえ導入した。ユーロ圏でない大国はわずかにイギリスだけだ。

通貨統合は国家の主権的権限のEUへの譲渡と放棄を前提としている。まさに政治統合そのものである。

 ユーロ参加国は20を超えていくことが確実だ。すなわち、現在未加盟の国家も10ほどあるが、彼らは能力があっても意思がないイギリスを除けば、加盟する意思はあるのだが、能力のない国家が大半である。能力が整えば、加盟するのは明らかだ。

 イギリスの盟友としてユーロ圏外にあるデンマークも社民への政権交代を機にその意思を明らかにしつつある。

通貨の安定には欧州中央銀行が国家の銀行がそうであるように、財政と金融の一体化を必然とする。すなわち金融上の連邦制度強化は不可避、必然となる。

にもかかわらず彼はEUの改革という。

EUの改革は、キャメロンとはまるで異なり、更なる連邦主義の強化であるが、彼のEU改革はEUの連邦主義への傾斜に対する単なる無意味な反対でしかない。

すでに書いたが、ユンケルこそが緊縮財政を断行し、ギリシア他の南欧の諸国民に多大の苦痛を強いたまさにキャメロンが望んだ政策を実行した人物であったのにもかかわらず。

 ユーロ圏には単一通貨ユーロの強化という連邦主義を求めつつ、今度は連邦主義はダメだという。自己矛盾はまさにドイツ有力週刊誌が言う「決定の時、嫌なら、出でよ」である。

 1993年にマーストリヒト条約ができ、2002年からEU加盟国のユーロ発行国で通貨同盟が形成されたその時点から、EUは分断された。というより、より正確に言えば、EUからイギリスが自らの意志でその中核から離れた。

 ともあれ、彼はこの20年の条約改正から何も学んでいない。すでに1994年に可能であったマギーことマーガレット・サッチャーの時代ではないということだ。

確かに彼女は、最近死去したベルギーのリュックデハーネ首相の欧州委員会の長就任を拒否権で覆した。

しかし、それは20年前の話だ。

2009年には欧州委員会の長の決定まで加盟国の拒否権という国家主権の行使をEUは拒否し、加重特定多数決にした。すなわち必要な票を集めない限り、キャメロンは欧州議会の結果を受けた、すなわちEUレベルでの代表民主主義を受けた候補を阻めないのである。

 彼は言う。UKIPのファラージュもFT記者のギデオン同様に。誰も欧州委員会の長候補者のユンケルを知らないと。投票用紙にも名がなかったという。イギリス保守党の欧州議会での院内会派は、候補者選定さえせずに選挙区的不戦敗を実践した。

 欧州自民民党や欧州社会党、欧州自民、欧州緑、欧州左翼5つの院内会派は正当な予備選挙手続で候補者を選出している。

 なすべきことも放棄してた君が言う資格があるのかねと。

 欧州大陸の小国の市民に逆にキャメロンやファラージュを知っているか、あるいは一時期候補者として名が挙がっていたIMF専務理事のラガルドを知っているかと問うと、結果は、ユンケル同様に無名だろう。

 知名度を言えば、サッカー選手を政治家にせよということになる。

 EUとヨーロッパ統合は人というより制度を通して、さらにはEU条約を通してを進められているのである。ポピュリズムが入る余地がない。イギリスも、ユーロ安定化所などユーロに関する以外すべての条約に積極的に合意し調印し、発酵させてきた。

 ともあれ、いよいよ欧州委員会の長候補を提案する欧州理事会が迫ってきた。負けても、イギリスだけの問題でしかない。それほどにEUとイギリスの距離は開いたということである。

 ちなみに日本外務省も覚書で1300社、13万の雇用をEU離脱は脅かすとしている。

 キャメロンはイギリスの内部からの解体に無意識に手を貸しつつある。

 反EUを唱えれば唱えるほど、イングランドとは違い、EUにたいし親しみを持つスコットランドには厳しい状況を招く。

 スコットランドの政治家は、EUをイングランドより以上に理解できているからである。

すなわち、イギリスを代表するイングランドの政治家は、スコットランドの分離運動を刺激しつつある。イングランドのキャメロンは、全体としてのイギリスの墓堀人となりつつある。

 さてはて。

| 児玉昌己 | - | 14:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
EUでいま最も重要な言葉 それはSpitzenkandidaten

  母校欧州大学院大学のあるベルギーはブルージュ入りし、これを書いています。

 シュピーゲルは、以下の記事を出している。

 

 Trouble for Merkel: Berlin Divided in Spat over EU Commmission By SPIEGEL Staff June 07, 2014 これだけでは一般の人には意味不明だろう。

EUで関心を集めている最大の話題とは、Spitzenkandidat

語源的には、「選挙名簿の筆頭者」を意味するドイツ語。Spitzenとは「筆頭の」、kandidatとは「候補者」である。ありていにいえば、EUの行政府の長である欧州委員会の長に誰が就任するのかということである。

複数形がSpitzenkandidaten(leading candidates)という言葉であり、現下のEUの最大の懸案となっている。

キャメロンが欧州議会の結果を受けて浮上してきたユンケル・ルクセンブルグ首相に強い難色を示しているのである。

今はさる20年前の1994年に同じ事が起きた。

マーガレット・サッチャーの引退後その職に就いたジョン・メージャーの時代、連邦主義的すぎるとしてベルギーのデハーネ首相の欧州委員会の長の就任を阻んだことがある。結局ルクセンブルグのジャックサンテールがその職に就くことになったのだが。

欧州委員会の長については、かつて加盟国が圧倒的な決定権を持っていた。

だが、時代は変わり、EU条約の改正により、欧州理事会が持つ提案権は2重、3重の制限を受けている。

 欧州議会の地位が高まり、EUの行政府である欧州委員会の長を国家が自由に決定できる時代は終わっている。私に言わせれば、ドイツ有力週刊誌のシュピーゲルも私と同じ考えなのだが、キャメロンはそれが全く理解できていないようだ。

  とはいえ、欧州理事会はその候補者の提案権を持っている。問題は、欧州議会の選挙結果をどれだけ欧州理事会が尊重するかということである。

  欧州人民党が議席を減らしたものの、相対的に見て勝利し、その党が選んだ正当な候補者のユンケルをキャメロンが引きずりおろせるのか、キャメロンのイギリス内での立場をかけて、激しい綱引きがなされている。

 欧州理事会での欧州委員会の候補者選定に関する議決は特定多数決という様式で最終的には決まる。今月内にはそれが行われるとみられる。

  またそれで終わりではない。欧州理事会が決めた候補者は、最終的に欧州議会において採決が必要とされる。

  欧州理事会が提案する候補者選定の現段階ではドイツのメルケルがすべてのカギを握っている。

  今回の問題の発端はキャメロンの連邦的統合への消極姿勢のなせる技なのであるが、メルケルもEUの中での独英関係で放置できない。キャメロンにとっても反ユンケルの票固めに失敗すれば、彼の立場はUKIPの勢力の高まりを背景にして、決定的に悪くなる。

イギリスのキャメロンがユンケル外しに失敗したときには、政治的地震が起きるという。しかし、私にいわせれば、キャメロンの問題は、イギリス一国の問題でしかない。

 しかも、キャメロンについていえば、彼は全く理不尽なことを述べている。

 彼が望んだユーロ危機終息では彼のユンケル批判とはまったく異なり、ユンケルが欧州理事会内のユーロ使用国からなる別動隊というべきユーロ・グループの長として果たした実績はそれなりに評価されるべきことであった。

それをキャメロンを含めて、みなが忘れている。

  もしEU条約の規定を無視したキャメロンという一EU加盟国の国益擁護に立った我儘が通るとすれば、「欧州議会選挙結果を考慮する」というリスボン条約でなされた欧州委員会の長の選出についての条約改正の意味も全く不明になり、加盟国政府の拒否権の再来、再現になる。 

   EUをもって進む欧州統合は、それが連邦的統合を目指すものであり、EUがそれをもって進む限り、加盟国の主権的権限との激しいぶつかり合いと確執を必然的に生む。

  欧州連合を否定して進むのが欧州統合であり、それがEUの連邦主義的組織の本質である。EUを欧州連合とする邦語表記が誤っているということの証左でもある。

  現下のEUが直面している欧州委員会の長の選出をめぐる問題は、欧州議会の代表民主主義とEUの正統性がまさに試されているということなのである。

 

  なおブラジルでのW杯初戦は逆転負けとの報に接し、残念なことでした。

| 児玉昌己 | - | 15:34 | comments(0) | trackbacks(0) |

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