イギリスのEU離脱を問う国民投票は2017年だが、来年、2015年5月の総選挙がその前提となる。
与党が勝てば、EU側と再交渉し 国民投票でその結果を問うという。だが、現状のイギリスの世論の雰囲気を観ると、5月の欧州議会選挙では、独立党がイギリス選挙区で与党と労働党の歴史ある2大政党を凌いで比較第1党に躍り出たように反EU一色というべき状態である。
このように朝野を上げて、EU離脱に傾斜する異様さだ。
しかしイギリスとEUとの関係は共同市場の40年以上の実績で、国際的な銀行業務において顕著である。
たとえば、フィナンシャル・タイムズは8月18日の記事
Possibility of ‘Brexit’ threatens London’s prospects:Dublin seen as alternative for US banks to UK capital. Financial Times. August 18, 2014. でイギリスでは現在250以上の非英系外銀が支店を置いており、英財務省によると、同国の金融サービスは140万を雇用し、2011−12年では、所得税で275億ポンド、全体の12%をカバーしているとして、金融界の中には、EU離脱という最悪のケースに備えて、ダブリンへの移転を考慮している銀行の動きについて書いている。
その記事を受けて、ロイターは、すぐに刺激的に、銀行の「大量出国」(Exodus)の可能性と報じた。
Britain's EU exit could lead to banking exodus -Financial Times. Reuters. Aug 17, 2014.がそれである。
イギリス政治家と国民の、EUへの異様というべき蔑視とEU嫌いは、国家さえ傾かせるという状況を生みつつある。
世の東西を問わず、合理性を欠き、短期的で情緒的な性向をもつ国民と政治家が国家を傾かせることは、大いにある。
わが国にも、イギリスの情報にのみに依拠して、安易にその尻馬に乗り、ユーロメルトダウン(浜矩子)や「EU崩壊」などとする論評や報道がある。
だが、いまだ問題を抱えつつも、ユーロ圏とEUはイギリスを除きは、通貨防衛のためのESM条約と財政条約の2条約を締結し、EU18か国の単一通貨として、政治的には揺るがない。その後の、相対的なユーロの安定がそれを物語っている。
実際、ギリシアはあの惨澹たる緊縮財政の結果でさえも、ユーロ圏を離脱するとは言わない。
強力な輸出産業があるわけでもなく、国際的に信頼のない旧自国通貨ドラクマに戻ると、天文学的数値となるユーロ建ての負債を抱えることになる。その一点を考えただけでも、ばかげた議論である。
実際、ギリシアなどの国家が、米投資銀と組んで、経済データを操作してまで手に入れたユーロ圏入りと、自国通貨となったユーロを簡単に手放すと考えるほうがどうかしている。
イギリスに戻っていえば、もし、EU政治において崩壊があるとすれば、それはイギリスの合理的な対EU政策であるという視点を再度強調せねばならない。
参考ブログ
2014.05.13 Tuesday イギリスだけを観ていてもEUはわからない 上中下 欧州議会選挙 EUの政党政治で行き場を失う英保守党
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=604
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3665
2014.06.10 Tuesday 2014年欧州議会選挙余滴1 UKIP党首のファラージュのこと
http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20140610