55対45。直近では分離独立支持が反対を上回る傾向を見せたが、イギリス政府や経済界をはじめとする反対派の巻き返しで、大きな差がついた。
特に女性と、高齢者層で不安が広がったという見方を同志社大学教授で、懇意の力久先生がしていた。今回のスコットランドの住民投開票を現地で取材されていた先生には、この7月本学公開講座で、先取り的にこの問題を受講者の皆さんに話していただいていた。
ともあれ、開けてみれば、大差の独立不支持。これが1―2%の差にとどまっていたら、問題は深刻だったことだろう。
これで1世代はスコットランド独立問題が政治の表舞台になることないとはキャメロンは発言しいていた。表面的にはそうだが、実質的にはそうではなかろう。
2011年にスコットランド議会選挙でSNPが過半数を得た後、12年10月15日に政府と地方政府で協定を結び、この日の住民投票が決まっていた。今後とも、自治権拡大の要求は確実に続く。連邦国家としての相貌をさらに強くすることだろう。
この問題に関しては、EUとNATO関係者はそれまで内政干渉になりかねないのでどちらかといえば沈黙を守っていた。
もっともEUの側からはスコットランドの独立ではEU再加盟交渉の必要があるとか、当面10年はEU加盟はないなど、ウクライナとスコットランド度を意識したファンロンパイの発言など婉曲的だが、ネガティブなコメントは出ていた。
独立不支持が明らかになり関係者は安どの声を上げている。
なによりスコットランド問題は、スペインのカタロニアや、ベルギーフラマン地区の分離独立などの触媒となりかねない動きに発展する危険を持っているからである。
EUの欧州議会選挙法改正でも、改正時の審議に際して、選挙区を一定の人口を持つ国家ではいくつかに分割してもよいが、それはあくまでも国家の代表であって、地域の代表ではないということなども語られていた。
それが地域の分離独立の触媒になりかねないことを意識していたのである。
ともかく、わが国からすれば、遥か彼方のイギリスの、さらに北部スコットランドの開票速報がわが国の選挙のようにNHK他メディアが掲示されていたのは、世界が狭くなったことを感じさせるに十分であった。
イギリスとスコットランドは、米国が独立する以前の300年以上の間、ユニオン(同盟)を形成し、以降一体として近代国家の地域を構成していたものが、特にサッチャーの基幹産業民営化により、強烈な打撃がスコットランドの産業に襲い掛かった。この地を代表する大都市グラスゴーでの独立支持の強さはその怨念というべきだろう。
ともあれ、平和裏に近代国家として形成されたイギリスからスコットランドが分離する高い可能性を世界に示したのだから、世界が注視する価値は十分にあったのであろう。
これでイギリス国債や、ポンドの下落、国際証券、金融、為替市場への影響、EU再加盟問題などを考慮せずに済むということでは、やはり世界はほっとしたことだろう。民族分離運動を抱える欧州諸国や、特に中国、そしてロシアはそうだろう。
参考記事
EU and NATO breathes sigh of relief after Scotland 'No' vote.Euractiv.19/09/2014
スコットランド投票>なぜ独立反対派が勝利したか?同志社大学・力久昌幸教授THE PAGE 9月19日
参考ブログ
Team Scotland vs Team Westminster スコットランド独立支持不支持その差1%
http://masami-kodama.jugem.jp/manage/?mode=write&eid=3733
2014.07.05 Saturday スコットランドの分離運動を学ぶ 本学公開講座で力久同大教授公開講座
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3699
2009.03.24 Tuesday ブリュッセルミディからスコットランドへ EU遥かなり
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1747