英下院議席ゼロだった英独立党(UKIP)が10月の補欠選挙に続いて今月またしても保守党からの離脱組のマーク・レックレスMark Recklessが42%を集め、16,867で、13,947の保守党候補を2,920票差で破り、2議席目を獲得した。ちなみに3位は労働党候補で6,713。投票率は50.67%。
英保守党は2015年5月でに行われる選挙で、この反EU政党に食われて、来年の総選挙では、野に下りそうな気配だ。
比例制の欧州議会でEUを批判しながら、得票を伸ばしたのがこのUKIPである。
EUから離脱すれば、反EUの単一争点政党がその争点を失い、かつイギリス政治で小選挙区制度に阻まれ、ただの泡沫政党に逆戻りだとおもいつつ、これをみていた。
少しはEUと比例代表制で民意を正確に組み上げるEUの民主的な選挙システムを構築している欧州議会に感謝せよという気持ちだ。
日曜発行の「ザ・メイル」が掲載したSurvationの世論調査では、これを次期総選挙に当てはめれば、 100議席以上を取得するとのことである。もっともイギリス下院は小選挙区制であるがゆえに、25議席程度ともいわれている。
ところで、今日このブログで指摘したかったのは、このUKIPの下院進出や当選者の獲得票でだけではおよそない。欧州やイギリスを研究することは同時に日本を見ることである。
指摘したいのは、UKIPに関連して、日本の選挙制度の異様さについてである。
まず、イギリスの下院では、上記にみるように、1万6千票程度で国会議員に当選するという事実である。そしてイギリスと比較して、日本では当選にはどれだけの票がいるかということである。
実際、日本では先の2012年の衆院選の落選者をいえば、東京3区で、12万票でも落選している。
ちなみに、総選挙で最低得票で当選したものの事例を言えば、前回の2012年高知1区の自民前職で、44,027である。イギリスの3倍近くの票が当選に必要である。
12万票で落選するということは、膨大な死票を出しているということである。わが国の小選挙区がいかにグロテスクかをこれは示している。
すなわち、一部の欧州政治の知識を大きく欠く政治学者、巨大メディア、維新などの政党が、デマゴーグみたいに垂れ流す議席過大論と削減論とは違い、わが国は1億2500万もの人口がいながら、衆院定員が人口比ではイギリスの半分以下の、わずか480でしかない。イギリス風に言えば、1300名の議員がいてもいい勘定である。しかるにただでさえ少ない議席数を比例とで分けているために小選挙区での有権者数が肥大化し、そのため死票も半端でなくなる。
その結果、日本で選挙をすれば何が起きるかといえば、各選挙区での膨大な死票の発生である。しかもそれが合法的に行われている。
小選挙区で投じられた半数以上の票が死票になる。以下ブログしたところである。
死票は3730万票、死票率56.0% 虚構の2大政党制
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3356
これこそ最高裁がまさに憲法違反とすべき状況である。
その深刻さは、最高裁が問題としている特定の選挙区の問題にとどまらず、全体に及んでいるというから深刻さが分かろうというものである。
最高裁がはその審理に際して前提とする現在の制度に乗ったまま、違憲判決を出しているが、地域を標準化する議論では、事態は永久に解決できない。
それをやると、地方が代表を失い、確実に死ぬからである。最高裁もその判決のもつ政治的衝撃と意味を考えるべきである。
他方、イギリスでは同じ小選挙区制度とはいえ、人口6100万程度で議員は650(650の選挙区)もいるため、議員は、1.5万で当選できている。もとより、イギリスとて、各選挙区で死票を膨大に積み上げていることには変わりがない。
最低でもドイツ型の比例代表制に転換すれば、わが国やイギリスの死票の問題は解決できる。政権がコロコロ変わり、前政権の政策が覆されるいわゆる敵対の政治による政治の不安定さも解決できる。
見よ、中選挙区制廃止と小選挙区導入後の、わが国の政治の不安定さを。
如何にわが国の選挙制度がグロテスクな小選挙区制度であるか理解できるというものである。
政治家よメディアよ、国会議員定数過大論が出鱈目であるという事実に加え、財政再建のためという削減という主張が、実に愚昧な議論かということである。
国民の代表を減らして民主主義国家をどこに持っていこうとするのかである。寡頭制の非民主的国家にするつもりか。
民主よ、維新よ。名前だけは立派だが、民主は、相変わらず定数削減を唱え、まさに民意を虐殺する非民主党である。
国家の革命に命を懸けた維新の志士(その結果自らの士族階級も滅ぶほどだった)たちは、21世紀にあって、その名だけを冠したこの政治集団について、維新とは真逆のその大衆迎合の後進性について、泣いているよ。
比例代表に傾く大幅な定数削減を是として、結果として、小選挙区の強化と地方殺しの論に加担する産経新聞も西日本新聞も同様だ。西日本新聞については以下ブログで批判した。
西日本新聞よ、貴紙は民主のメディア支部かね 1 バランスを欠く選挙制度(議席削減)の社説
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3053
財政再建なら政党助成の大幅削減で十分である。なぜ政党は定数削減をいうのか。
実際、議員は国民に代表であり、およそ代表削減といったテーマは民主主義の根幹にかかわるもので、財政再建論で扱われるようなものではない。
いい加減、各政党は、そしてそれに安易に乗った巨大メディアはデマゴーギというべき主張をやめるべきである。同じ小選挙区でも、1.6万で当選するまだ庶民に近いイギリスの議員と12万でも落選するわが国の異様な選挙制度のグロテスクさをである。
定数の据え置きもしくは拡大と、本格的な比例代表制への転換でもってしか、この問題は解決できない。比例に置き換えれば、問題となっている一票の格差など瞬時に解消する。
ねじれも起きないし、連立形成時のごたごたはあるとしても、いったん政権を構築すれば、安定した政治が続く。 言われていることとは全く違うのである。
ドイツの政権は、社民政権と保守政権が入れ替わりつつ、自民や緑を取り込みつつ、あるいは大連立で、安定した政権を運営している。
何より比例が民意を反映しているからである。
参考記事・ブログ
UKIP wins second seat in Westminster EurActiv 21/11/2014
前回2012年の総選挙の最低得票当選者と最高得票落選者については以下。
得票数、最多は自民・河野氏 9万票超で落選・4万票強で当選 日経 2012/12/17
http://www.nikkei.com/article/DGXDASFS1700Q
_X11C12A2EB1000/
2010.05.25 Tuesday 議員歳費と議席の削減論について 4 先進11カ国の人口比別国会議員定数
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2364