児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
ワイツゼッカーRichard von Weizsäcker統一ドイツ初代大統領の死去の報に接す

毎日新聞が<訃報>ワイツゼッカー統一ドイツ初代大統領=94歳と伝えてきた。

毎日新聞もその記事の冒頭に記したように、「過去に目を閉ざす者は、現在も見えなくなる」という名言で世界にドイツの戦後の在り方を示した文人政治家だ。

 70周年談話で「侵略」や「支配」という語を消すことを考えているという安倍総理だが、ドイツ大統領の歴史的重みをもつ言葉を一度かみしめてもらいたいところである。
 ワイツゼッカー(ヴァイツゼッカーが原音に近いが)元大統領には個人的に一度、直接お会いしている。長崎でのことだ。毎日新聞大阪本社が招待して、長崎でも講演された時のことだ。

話は前後するが、1999年3月、 前任校の長崎純心大学で、姉妹校のドイツのアイヒシュテット・カトリック大学KATHOLISCHE UNIVERSITAT EICHSTATTに学生さんを連れて、研修に行ったことがある。この大学は、ほとんどが国立大学であるドイツとしては、珍しくもカトリックの私立大学である。
 バイエルン州の工業都市で、名車を産するアウディの工場もあるインゴルシュタットにメイン・キャンパスがある。ここの経済学部は定評がある。大学名となっているアイヒシュテットは、実に小さな町で、こちらで研修した。英語で、ドイツ史や社会を学ぶ研修であった。ドイツで学位を取った宮坂教授が手掛けられたものだが、今もこのプログラムあるのだろうか。

 この地については、ドナウ川の、ローマ教皇ベネディクト16世が神学を教授した教会のあるレーゲンスブルグに近いという方が分かりやすいかもしれない。そこで、現地の学生さんに外国に出たいかいと問うと、「我が麗しのバイエルン」というように、ここが一番といっていた。
 ドイツでの研修から戻ってた同年、414日、すでに80歳に近い御歳であったワイツゼッカー元大統領の長崎訪問が実現し、その講演会があった。 

開学したばかりの県立シーボルト大学(現長崎県立大学シーボルト校)や、長崎大学医学部の関係者などの肝いりで、純心にも呼びかけがあり、多くの学生が参加した。その講演で、著名な知識人でもある同氏は、「もっと外国に出よう」と講演されたのである。
 その時、指名されて、広い市民会館の会場のフロアーから、ワイツゼッカーさんに質問する機会があった。それで存じ上げているのだ。
 同氏への質問は、保守化する若者ということで、次のようなものだった。

「日本の若者もなかなか外国に出たがりませんが、アイヒシュテットの学生さんも、似たようなものでしたよ。豊かになった先進国の若者は、どこも保守化し、外国には出たくないのかも知れません」と。先のドイツのアイヒシュテットでの研修での経験を質問したのであった。

元大統領は、ユーモアを交えて、「(児玉)先生が、同じバイエルンでも、もし学生の意欲がもっと旺盛なミュンヘン大学に行かれたら、ドイツ人学生の返答は違っていたかもしれませんね」と、返されたのであった。
 なお、ワイツゼッカーさんの日本講演記録は、冊子として毎日新聞から刊行されている。有り難いことに、上述のやり取りは、講演要旨とともに、幸いにも収録されている。私の貴重な思い出である。

ご冥福をお祈りしたい。合掌

参考文献

『平和への対話:ワイツゼッカー氏来日全発言』毎日新聞社招致大阪実行委員会1999

参考記事<訃報>ワイツゼッカー統一ドイツ初代大統領=94歳 毎日新聞131

 

| 児玉昌己 | - | 22:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
Je suis Charlie et Je suis Kenji 宗教とは無縁のテロ
  いわゆるイスラム国に人質となって人命の危険が時間と隣り合わせになっている。情報は錯そうとし、様々な情報が飛び交い、情勢は混とんとしている。

Je suis Charlie.という言葉が飛び交い、それを使ったのはほんの2週間ほど前のことだったが、今はJe suis Kenji( I am Kenji.)という言葉だ。

こうした非道、卑劣さは許されない。人間の救済のためにあるはずの宗教とは無縁のものだと思っている。歴史的にもそうであったが、政治が宗教を語るとき、我々は、注意し、構える必要がある。

これは政治、国際政治、そして貧困と格差という経済の問題であり、宗教の問題ではない。

ブログで以下書いた。

そうでないと、人口16億、人類の23%を抱えるイスラム世界との抗争になるのだから。それはイスラム世界も望んでいることではおよそない。

速やかな無事の帰還を願うものである。

参考ブログ

2015.01.11 Sunday シャルリー・エブド襲撃について 「文明の衝突」にしてはならない

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3792

なお以下の仏語サイトもシャルリーエブドで使われた表現と連動したこの言葉を完全に理解し I am Kenjiをそのまま取り上げている。
Le mot d'ordre fait le tour des réseaux sociaux au Japon.
« I am Kenji », en référence au « Je suis Charlie » plébiscité après les attentats à Paris, un message de soutien au journaliste Kenji Goto, retenu en otage depuis plusieurs mois par l’État islamique et dont le sort incertain inquiète une partie de la population nippone.

"Je suis Kenji": le Japon se mobilise pour sauver l'otage de l'EI

http://www.dailymotion.com/video/x2frqex

 








 

| 児玉昌己 | - | 09:25 | comments(0) | trackbacks(0) |
サウジアブドラ国王の死とサルマン皇太子79歳の王位継承

 ロイター電で、ビッグニュースが飛び込んできた。

 石油価格の大幅下落と中東情勢が厳しい中、世界が注目していた病状悪化のサウジのアブドラ国王90歳が死去し、サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウードが王位を継承し、順位2位のムクリン王子が皇太子に任じられたとのことだ。

 サウジの王族は、数千の単位に広がるとアラビストの斎藤力二朗さんから聞いて驚いたことがある。

 実際今回も新国王は高齢で、79歳にしての即位である。

 


 参考記事

サウジアラビアのアブドラ国王が死去、サルマン皇太子が即位ロイター123()832分配信

参考ブログ

2015.01.03 Saturday 緊張するサウジアラビア アラビスト斎藤力二朗さんからのEメイル

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3789



| 児玉昌己 | - | 10:49 | comments(0) | trackbacks(0) |
EUと世界を緊張させる25日の総選挙 ギリシアそして欧州委員会の「政治化」現象

 イスラム国に人質にされ2億ドルの身代金が要求されるというニュースがあるが、今日は、専門とするEUについて。

 国際金融の不安定に直結するギリシアの4日後の25日に迫った総選挙のことだ。

 毎日紙は、旧知の福島良典ローマ支局長がアテネから、ロンドン特派員の坂井記者とともに、最新世論調査を紹介し、以下書いている。

 「急進左派連合の支持率はトップの31.2%。サマラス首相(63)の中道右派・新民主主義党(28.1%)に水をあけ、第1党となる公算が大きい」。

 ギリシアの選挙制度は比例だが興味深いのは、政権を安定させるために、第1党は50議席の「ボーナス議席」が与えられるということで、政権が不安定にならないようにする措置でもある。

 ギリシアが急伸左翼による単独政権となるか、急進左派連合が中道政党と連立を組むかは、25日の総選挙が決めることだが、現状では急進左派の優位は続いている。

 EUの専門家として注目しているのは、このギリシアの政治状況についての、欧州委員会の立場である。

 spitzenkandidatenという新たなEUの行政府の長を選出する新たな手続については拓殖大学海外事情2014年12月号にその概要と意味を書かせて頂いた。それについては以下。

www.takushoku-u.ac.jp/laboratory/jwa201412index.pdf

 その中で政治化する欧州委員会について触れている。

 それを実証するように、欧州委員会は12月頃からギリシアの大統領選挙と今回の総選挙について、あからさまに急伸左翼シリザの政権掌握について危惧を表明し、現政府寄りのその立場を鮮明にしている。すなわち、以前には考えられなかった特定の国家の内政に明らかにその立場を主張し始めているという欧州委員会の変化、脱中立化、政治化の動きである。

 それもそのはずで、11月にチーム・ユンケルという新欧州委員会を立ち上げたユンケル本人がユーログループの長として、2010年に顕在化し、2011年に火を噴いたギリシアのソブリン危機のトラブル・シューティングに携わった本人なのだから。しかも欧州議会でのユンケルを選出する本会議では、急進左派が所属する欧州議会内の院内会派の統一左翼北欧緑は反対に投票している。

 急進左派のシリザのツィプラス党首は、総選挙を前に、3000億ユーロを超える債務総額の現実を前に、その返済の再交渉を掲げて支持を得ているが、選挙が近づくにつれて、反EU的姿勢を現実路線に変えつつあるとも言われる。他方、EUも、もしシリザが勝利した場合に起こるであろう、債務再交渉については、それを想定した「落としどころ」を探っているともいわれる。

 ともあれ、わが国にとって大きな国際的な危険は、「8500キロ」離れたイスラム国と同様、それを遥かに超える同じく海の向こうの欧州にもある。

参考記事

ギリシャ総選挙:急進左派、現実路線に 投票まで1週間 毎日新聞20150119

ギリシャ急進左派政権、ドイツは恐れる必要ない=ツィプラス党首2015年1月13日

参考ブログ

2011.11.19 Saturday 比較文化研究所欧州部会の毎日新聞外信部、福島良典副部長講演の司会に出る

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2996

















| 児玉昌己 | - | 15:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
芳しい蝋梅は冬にあり それを詠む海鳴庵児玉

 冬はこれからさらに厳しくなるだろうが、蝋梅の香り芳しくわずかな清涼となる。それを詠む


 庭上は 荒涼景(けい)を 呈すとも 蝋梅(はな)は香りて 

 冬も嬉しき   
                      海鳴庵児玉


2014.01.26 Sunday

冬にあり 春を先駆く 蝋梅の 姿勢(すがた)凛とし 寒風に立つ

                









| 児玉昌己 | - | 12:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
脇圭平先生ご逝去の報に接する
  脇先生が91の誕生日を迎えられてほどなく、この8日に他界された。

先生のゼミ生で、卒業後も先生との連絡を欠かさなかった友人の同志社同期の栗山君からの電話で知った。

先生は、山口県は柳井の人で、東京大学法学部政治学科で丸山眞男門下として学ばれ、『知識人と政治』(岩波新書)で、1973年に第8回吉野作造賞を受賞された。またウエーバ―の古典的名著『職業としての政治』岩波文庫の翻訳もされ、政治学者でその名を知らぬものはない。

先生には学部時代、そして人以上に長く続いた大学院時代に多くを学ばせて頂き、またお世話になった。実際、先生からご教示いただいた思想史の素養の幾分かがなければ、どれほど貧相な思考になっていたのかと思う。その多くは脇先生から学んだことである。

実際、40年前に、先生の所で、ハナ・アーレントを読んでいたのだから。

13か月ほど前に京都下鴨の先生のご自宅にお伺いし、奥様を交えて、思い出話などで時間を過ごさせていただいた。

その際、奥様から先生の著作やレービットの訳書を頂き、先生にお願いして署名いただいた。写していただいた写真とともにそれを大切にカバンに入れて自宅を辞した。

 電話ではその後も何回かお話できたが、お会いしたのは、それが最後となった。

先生は大正13年(1924年)のお生まれで、早くして逝った同じく大正世代の父と重ね合わせて、そのご長命を、お喜びしていた。

訃報に接して、奥様にお悔やみの電話をすると、大晦日に体調を崩され、ほどなく、入院先の病院で静かに息を引き取られたとのことであった。

恩師の丸山眞男先生(1914-1996)を超えてご長命になられたのは、なによりも、奥様の献身的なお世話の賜物ではなかったかと密かに思っている。

先生は京都大学に奉職された後、在外研究で予定を超えた長期間ドイツに残られ、結局、京大を去られることになる。

帰国後、同志社に請われ定年まで籍を置かれ、政治思想を講じられた。この間、多数の学生を育てられ、十指に余る院生を大学教員として世に送り出された。私もその端くれの一人である。

学者としてはもとより、 VWのビートルを愛用されていたように、生活者としても、先生は幸せな人生であったのだと独り想っているところだ。

奥様やご遺族の悲しみを想い、苦しい院生時代に、優しいまなざしでなされた幾多の助言を脳裏に浮かべている。

その中には、私にとって大きな転換点となるイギリス留学と金丸輝男先生(元日本EU学会理事長)への師事も含まれている。

先生が、人生で最も意気軒昂にしておられたであろう50代の頃、「なんじゃない」という独特の語りかけで、紫煙をくゆらせ、ビールを傾けられつつ、権威に囚われることを意図して否定されるかのように「カントちゃんは云々(うんぬん)」と我々院生を相手に語られたあの若き日々を想い起している。政治はバランスだ、とも語られていた。

二度と帰らぬ日々。同志社で一生モノの出会いをさせていただいた。寂しさは募るばかりである。

参考ブログ

2006.07.23 Sunday 「国家須要の人材」、大学院奨学金と脇圭平先生のこと

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=229

2009.01.02 Friday 09正月2日 脇圭平先生と蔵書 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1641

2013.09.29 Sunday 脇圭平先生をご自宅に訪ね、同志社でのEU研究会で学ぶ

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3543

| 児玉昌己 | - | 21:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
シャルリー・エブド襲撃について「文明の衝突」(The Clash of Civilizations)にしてはならない

”We must completely detach the word 'terrorism' from the word 'Islam'," (MogheriniEU外交代表).

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)は以下今回のシャルリ・エブド(英語発音チャーリー・ヘブド)について、イスラエルの動きを伝えている。

 NYTによれば、ネタヤフ首相は弔意をフランスに示し、ISIS, Boko Haram, Hamas, Al Shabab, Al Qaeda, Hezbollahと名前こそは違うが、イスラエルの敵と同じであると、コメントしている。

 スウェーデンや仏議会、欧州議会(賛成498、反対111、棄権88)による相次ぐパレスチナの国家承認や、独仏を含む6者協議でのイランとの原子力協定への傾斜で、国際的な孤立を危惧するイスラエルとしては、この機会を政治的に最大限活用する意図が明白だ。

 こうした事態では、いつも陰謀説がでるが、そのなかには、イスラエルの諜報機関モサドが仕組んだとさえいうものもいる。

ともあれ、アラブ世界ではパレスチナへの抑圧はイスラエルと米国への憎悪を強めているのは明白であり、米国と違い物理的に近い欧州では、この問題は他人事ではない。

 もとより米国はイスラエルとの伝統的関係があり、政情が極めて不安なサウジとのバランスの中で中東政策を保っている。

 今回の惨劇の舞台となったフランスでは、20145月の欧州議会選挙でフランス選挙区第1党となった国民戦線フロン・ナチオナールFNがさらに勢いを得るよう動いている。

 反EU勢力の国民戦線は、父ジャンマリーが興したが、かってネオナチとして反ユダヤ主義を標榜してきた。

 だが、末娘のマリーヌを得て、そして主権国家であるウクライナのクリミア併合と同国東部の武力占拠に動いているロシアの資金を導入しつつ、現在急速にその軸足と、矛先をイスラム移民やロマにシフトしつつある。

 今回、襲撃の対象となったシャルリ・エブドは、単にイスラム原理主義のみならず、この人種主義的傾向を持つ国民戦線をも強烈な風刺の対象としていた。

 だが、自らを利しその勢力増強に作用するよう、国民戦線はこの事件を徹底して政治的に活用しつつある。かつての政治的敵に向けられた惨劇を利用しているのが国民戦線である。

 イスラエルと、ユダヤ人差別主義者の国民戦線の奇妙な「共闘」。

 国際政治というものの難しさをこれほど示す事例はない。

 平穏に他の宗教と共存して暮らす、たとえば、アジアの大多数のイスラム教徒には全く迷惑極まりないことであることは明白である。

 イギリスの有力紙フィナンシャル・タイムズは、 Philip Stephensが、シャルリ・エブドの名物編集長で自身が風刺画家であり、今回犠牲になったシャルボニエについて触れ、以下のように今回の事件を書いている。

「シャルリ・エブドに数年前に火炎瓶が投げ込まれたとき、ステファン・シャルボニエ編集長は、犯人グループはフランスのイスラム教徒ではなく「間抜けな過激主義者」だという考えを示した。シャルボニエ氏は今回の襲撃で命を落とした。残された我々は、彼の考え方を守っていくべきだ。」

 全く同感である。

 毎日新聞 20150110日付によると、エジプトにあるイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルも銃撃事件の翌日、「あらゆる暴力を非難する」と声明を発表した。イスラム教の2大聖地を抱えるサウジアラビア政府も「卑劣なテロ攻撃は容認できない」と表明している。

 当事国のオランド大統領が、そして冒頭に記したようにEU外相のモゲリーニ女史も、無差別テロを非難しつつ語ったように、我々は、この事件を宗教的対立ととらえるべきではない。

 そうでないと、人口16億、人類の23%を抱えるイスラム世界との抗争になるのだから。それはイスラム世界も望んでいることではおよそない。

参考記事

Israelis Link Attacks to Their Own Struggles NYT. JAN. 9, 2015

過激な反近代思想で結びつく邪悪な勢力フィナンシャル・タイムズ紙2015年1月9日付

National Front hopes to capitalise on the massacre of its 'worst enemy' EurActiv: 09/01/2015

極右・カトリックも風刺の的 奔放な漫画、仏の伝統 朝日新聞デジタル201519

EU外交、イスラエルに圧力 パレスチナ国家承認決議可決・ハマスのテロ組織指定解除もNewsphere20141223


参考ブログ

2008.12.28 Sunday 「峻厳の」政治学者サミュエル・.ハンチントンの訃報 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1633

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1634

| 児玉昌己 | - | 10:14 | comments(0) | trackbacks(0) |
日常の一端とフランス風刺週刊紙シャルリーエブドへのテロ

  朝のテラスは0.1マイナスを記録していた。この時間、この時間、陽が燦々と差して嬉しい。,

 私といえば、英仏共同で出版されている学術誌から依頼のあった仕事が終わりほっとしている。が、教科書作成の次の仕事が待っている。忙しいばかりの熟年時代である。

 1時半には西鉄電車で、勤務校が天神エルガーラ・オフィスに開設しているサテライト教室での欧州部会の講演会に出向くつもりだ。佐賀大の畑山教授にお願いしている。3時から、フランス政治を話していただく。

 それにしても、フランスといえば、一部の狂信的な暴力集団により、風刺画でなる風刺週刊紙シャルリーエブドへの凶悪な無差別宗教テロが、世界の観光メッカというべきパリで起きた。画家をはじめ警備の警官をはじめ12名の市民がまさに虐殺された。

 宗教間の対立を深めるよう作用することは必至で、パリで、そして欧米各地で生きている、善良なイスラムを信仰する市民には、つらい冬になりそうだ。

 本来宗教は、人の心を安らかにし、人を幸せにするものだろう。だが、無差別に他の思想信条を暴力で殺傷し抑えるというのは、宗教の本来の教えではないだろう。まったく本末転倒なことだ。

 テロでは人や社会は変えられない。まして一般市民を対象にするなどとんでもないことだ。

追記

欧州議会は議長のマーチンシュルツ議長(ドイツ社民)をはじめ、議員多数が屋外に出て、犠牲者に対し、1分間の追悼の黙とうを行い、「私はチャーリーである」(Je suis Charlie)と,以下ステッカ-を張って、言論へのテロに抗議し、連帯を表明した。

"I am Charlie", the slogan of solidarity.




 







| 児玉昌己 | - | 09:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
人類史に革命をもたらす近未来のスパコンと人工知能 NHK NEXT WORLDをやはりかと、驚嘆しつつ観る
  正月録画していた、NHKスペシャル『NEXT WORLD 私たちの未来』 NHK総合 夜7:30スタート(全5回)第1 201513日(土)未来は どこまで予測できるのか。第2201514日(日)寿命はどこまで延びるをみていた。実に劇的な未来を提示している。しかも具体的事例で。

量子コンピュータは現在のスーパーコンピュータが千年かかるものを瞬間的に計算できるという。

 またこのコンピュータの性能の驚くべき計算能力で、若返りの遺伝子を抽出し、それを刺激し、糖尿病のマウスを健康にし、若返らせたりする薬NMNを開発できたり。

 さらには、3次元プリンタで臓器再生が15年後には全面開花するだろうという指摘もある。

 さらに人工知能の発展がもたらす人類への危険性も取り上げていた。

 すでに生産工場では、単純労働はロボットに置き換わっているし、法務事務の判例検索などでは、人工知能が大きな役割を果たしているという。そして、究極的には弁護士も一部の例外を除いて、いらなくなるとのことだ。その世界では、とすれば、大学教授も同様の運命をたどるということだろう。 

 大学自体が自宅の端末に置き換わっているのかもしれない。

 決してサイエンスフィクションやバーチャルリアリティではない現実世界で展開されていることの凄まじさに、やはりと思いつつも、ただただ驚いていた。

 

| 児玉昌己 | - | 23:25 | comments(0) | trackbacks(0) |
緊張するサウジアラビア アラビスト斉藤力二朗さんからのEメイル
 正月3日、みなさんも徐々に日常を始動されているのではないかと。

周囲は穏やかだが、世界はそうでもない。

 北朝鮮情勢は、米オバマ政権は北朝鮮の独裁者暗殺のコメディ映画を配給するソニーへの脅迫が北朝鮮機関からのものであると断定し、制裁強化に入っている。

 またサウジアラビアに詳しいアラビスト斉藤力二朗先生からEメイルが届いた。

 在位9年で、すでに御年90の国王アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール・サウード(舌を巻きそうで、とても一度では覚えられないが)の健康状態はいつも関係者をピリピリさせている。年末、一時危なかったということだ。

 また反サウド家の街頭デモもあったということだ。

 斎藤さんによると、サウジでは王位継承は長子と決まっていないがゆえに、80歳での即位などのケースが出てくるという。

 またデモ自体厳しい弾圧の対象で、デモを正当化した宗教指導者は逮捕され、15年の刑ということである。

 未知の世界だが、若いころに、サウジとエジプトに長く留学し、アラビア語の達人の斉藤さんだけに、アラビア語紙からの情報は貴重だ。

 サウジといえば、OPECの盟主で、イランなどの意向を無視し、減産に応じず、ロシアのルーブルの暴落を招く一因を作っている。ちなみにサウジアラビアとはサウド家のアラビアという意味だ。

 わが国の経済にも直結する国家だ。

 そのサウジ、米国の友邦として、台頭するあの異様、異常なイスラム国封じ込めの要でもあり、我々としては、国家が安定的に運営されることがなにより望まれる。

 中東における民主主義の導入が混乱とカオスに転化する危険があるのをアラブの春の事例で我々は見てきた。

 民主主義を受け入れる社会の基盤があってこその民主主義であることを意識させる。

 なお斉藤先生には久留米大学の公開講座で講演を今年もお願いしている。



| 児玉昌己 | - | 13:13 | comments(0) | trackbacks(0) |

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