日本では黄金週間明けの来月7日と、イギリス総選挙が迫ってきた。カギを握るのは、6300万国家のイギリスにあって人口530万人のスコットランドである。そしてその地域政党SNPスコットランド民族(国民)党である。
先の欧州議会選挙で躍進したのが反EU政党のUKIPであるが、UKIPに支持基盤を奪われたのが、イギリス国民(民族)党BNPである。こちらは、イングランドを基盤にしている人種差別政党で極右政党である。
他方、SNPは、イギリスを構成するスコットランドの地域政党で、イギリスにあっては、他のどの政党にもまして親EU的政党である。ややこしいが、混同してはならない。
またイギリスと呼称しているものの、本来イングランドの政党のUKIPは、昨年5月の欧州議会選挙ではイギリス選挙区で支持を伸ばし最大政党となった。
だが、今回の総選挙では、欧州議会選挙とはちがい、小選挙区制度であるがゆえに、数議席にとどまると予測され、すでに総選挙をめぐるイギリス政治の話題の圏外にある。
今日のブログの主題であるスコットランドに戻っていえば、イギリス(ウエストミンスター)議会でのスコットランドに配分されている議席は59。今回の総選挙の予測ではこのうち50程度を確保するという。ちなみにスコットランドでは伝統的に労働党が強く、前回2010年では40議席を得ているのにたいして、SNPは6。保守党はわずかに1議席。すなわち、今回労働党の議席を大量に食う形で、SNPが伸長するということである。
すなわちスコットランド地域に確実に支持を広げているのが、この政党である。2007年のスコットランド議会での躍進と、2011年の選挙でスコットランド地方議会での最大政党となっている。その余勢をかって、2014年9月にイギリスからの分離独立を問う住民投票を実施した。
今回の総選挙では、事前予測で、政権奪還を目指す労働党と現政権の保守党がつばぜり合いを演じている。
21日のEuractivの記事では労働党は270程度で、合計すると、320程度。単純過半が326議席で、両党を合わせても政権構築の過半数に足らない。
1974年および2010年以来の「宙づりの議会」(ハングパーリアメント)となりそうである。
SNPは労働党と連立を組む意思があるというが、労働党のミリバンド党首はその必要はないという。これにたいして、SNPは誤った判断であると返している。
現在の保守党政権からは、SNPはウエストミンスターの議会の敵というべき存在で、SNPの主張は、国家予算の大規模の増額ということであり、これは「歴史上、最も高額の脅迫状」(ransom note)であると、キャメロンが批判している。
そのSNPだが、今般、総選挙のための親EUの選挙綱領を発表した。
EurActivによると、再度のスコットランド独立を問う住民投票は非民主主義的であると述べたものの、2017年の国民投票導入をいう保守党を、労働党と同じく批判し、もしそうなれば、全国一律の単純過半数による決定ではなく、イギリスを構成するイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの地域での投票での支持が必要という要件を持ち出している。
スコットランドのイギリスからの独立を問う2014年9月の住民投票では44.7%対55.3%で否決されたが、現党首でスコットランド担当相Scottish First Ministerのニコラ・スタージョン女史にその地位を渡したサーモンドAlex Salmondは、保守党が反EUに傾けば、再度のスコットランドのイギリス(UK)からの分離独立を住民投票もありうる旨述べている。
すなわち、保守党がナショナリズムを振りかざし、反EU的態度を深めれば深めるほど、イギリスを構築するスコットランドが分離するよう政治的に作用するという形が明確となってきた。中期的に見れば、スコットランドの分離独立はここ10年の動向を見ていると、十分に起こりうることである。もし、イギリス自身がそうなれば、UKとしての一体性を欠き、欧州政治において決定的にその存在感をなくすということになる。
どう転んでもEU問題が連合王国United Kingdomとしてのイギリスの18世紀初頭からの長年にわたる一体的統治を根幹から揺るがす政治の最重要争点であるということだ。
欧州連合という邦語表記を否定するEUのさらなる連邦的深化がいかにEU加盟国の政治に大きく影響を及ぼしているかを示すものである。
EU政治こそがEU加盟国と、欧州政治の中心的要素になりつつある。
参考記事
SNP manifesto: Pro-EU and no new independence voteEurActiv 21/04/2015
参考ブログ
2014.09.19 Friday スコットランド分離独立否決 世界が注視した住民投票
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3741