児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
独M・ウェーバー欧州人民党党首が英独立党ファラージュを嗤う EU議会の選挙制度の先進性とイギリス下院の小選挙区選挙制度の後進性

 20155月、すなわち今月のことだが、イギリスでは総選挙が実施され、保守党がたかだか36.9%の支持で単独過半数を獲得した。この選挙がイギリスの対EU政策を決めるのだから、触れないわけにはいかない。

 有権者の支持が4割にも満たない政権が、国民の支持を得たとして、単独で国家の政治を指導すること自体が驚きの小選挙区制だ。

 また3,881,129票UKIP1議席、他方スコットランド民族党は1,454,436票56議席という異様異常な得票と獲得議席の乖離を生み出す小選挙区制度については、EUとの関連で、書いておこう。 

 UKIPのファラージュが自国の総選挙で敗北し、負けたら政界を去るといった彼の公約に関連して、欧州議会で最大会派の欧州人民党のウェーバー党首(Manfred Weber CDU)が、同議会の議場に彼の存在を認めて、EUとその民主主義に感謝したらどうだと語っている。

「イギリスの小選挙区制度よりも、はるかに民主的な比例制度に立つ選挙があったればこそで、もしヨーロッパがそうでなければ、貴兄はもはや、どこにも職務を果たす場所さえないではないか」と。

 以下がそれだ。

"Europe has a far better electoral system than the one that exists in the UK because, if Europe didn't have a proportional system for elections, he wouldn't have a job anymore." Leading MEP makes fun of Farage. Euractiv. 21/05/2015.

 UKIP英独立党のファラージュ党首について言えば、EUへの徹底した攻撃で欧州議会イギリス選挙区で支持を伸ばし、耳目を集めた。しかしわずか1年後、今度は、ナショナリストとして、自己が愛してやまない当の母国イギリスの、19世紀的遺物というべき遅れた選挙制度によって、400万票近く集めても徹底して排除され、潰されるというごとき、浮き沈みの激しい政治体験を味わっている。

 ちなみにファラージュ自身が、愛するイギリスの選挙制度について58日、「破たんした」と以下語っている。

"Personaly, I think the first-past-the-post system is bankrupt," he said. "It is bankrupt because one party can get 50% of the vote in Scotland and nearly 100% of the seats, and our party can get 4 million votes and just one seat.

Nigel Farage resigns as UKIP leader as the party vote rises. BBC 8 May 2015.

 私もこの事態を想定して以前からウェーバー同様の指摘をしている。

 EUの民主主義があったればの欧州議会イギリス選挙区でのUKIPの勝利であったことを。

 かくなるうえは、イギリス本国で、自民などとともに、小選挙区排除と比例代表制導入の政治運動に入れということだ。もっとも反EU的メンタリティのために次回はスコットランドが分離して、イギリス自体がリトルイングランドになっている可能性さえあるのだが。それはまさにUKIPが望んだことの論理的帰結ということになる。

 ファラージュを離れても、この総選挙、イギリスの対EU関係では極めて重要なものとなった。

 イギリスの単純小選挙区制度によって、すでにブログしたように、イギリスがユニオン解体の危機にある。

 保守党を3割台の支持で単独過半を与えるというように、グロテスクに勝利させ、方やスコットランドを異常というべくも独り勝ちさせ、労働党は前回よりも得票を上げながら、議席を減らすというごとく。小選挙区制度が、国民の意思をまるでそれが表現していないからである。

 それが実に、小沢氏らが画策した中選挙区制度の廃止と比例代表並立制という小選挙区制度のモデルとなったイギリス下院議会の完全小選挙区制度である。

 そしてこの封建時代の遺制というべき時代錯誤の選挙制度は、その副作用を超えた、劇薬として、イギリスを侵し、イギリスを解体に追いやっている。

  本ブログで以前書いたが、イギリスの有力紙ガーディアンが、「自由主義的瞬間がやってきた」という社説で、前回2010年の総選挙時に単純小選挙区制度の改正の必要のコンテキストにおいて放った言葉を、もう一度、政党と、メディアには書き残しておこう。

 こんな大手新聞が日本に一紙でもあると、私も安んじて、就寝できるのだが。

General election 2010: The liberal moment has come 

Proportional representation while not a panacea would at last give this country what it has lacked for so long: a parliament that is a true mirror of this pluralist nation, not an increasingly unrepresentative two-party distortion of it. The Guardian has supported proportional representation for more than a century.

 「比例代表制、それは、万能薬ではないにせよ、それは、ますますもって国民の意思を代表することがない2大政党制という歪曲された議会ではなく、わが国が長く欠いていた多元主義的な国民の真の鏡となる議会を、すくなくとも付与してくれるものである。本紙は一世紀以上にわたり比例代表制を支持してきた」と。

そしていう。

「本紙に投票権があるならば、(小選挙区制度の撤廃と比例制度導入促進を打ち出す)英自民党に熱狂的にその票を投じる」

If the Guardian had a vote it would be cast enthusiastically for the Liberal Democrats.The Guardian, Friday 30 April 2010.

 こんな出鱈目な制度を、わずかに比例をつけて、わが国民主主義のモデルとしてふさわしいともてはやし、1994年の公選法改正を実施した。この政治的悪行に手を貸した政治家、学者、メディアは、その不明と無知を国民に詫びる必要がある。

 そして、今も、政治の現実を学ぶことなく、比例定数の大幅削減を何かすばらしいかのごとく、「身を削る」などと、自己のポケットの話を、議会の民主主化とは全く無関係な問題に転化し、比例の大幅削減で、単純小選挙区制度へのさらなる接近を主張する民主党や、維新は、そろって自己の主張の反民主主義性格を理解する必要がある。

参考ブログ

2015.05.09 Saturday 英総選挙2015 当面の総括 36.9%で単独過半 小選挙区制度の異常さ 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3835

2015.05.08 Friday英総選挙開票始まる 小選挙区制度は国家を滅ぼす UK解体に作用する選挙制度

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3832

2014.06.10 Tuesday 2014年欧州議会選挙余滴1 UKIP党首のファラージュのこと

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3684

 

 

 

 

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 16:54 | comments(0) | trackbacks(0) |
明確にEU残留支持を唱え始めたフィナンシャル・タイムズ
 わが国では、連邦形成を日々進めるEUをほとんど理解していない多くの評論家などにより、解体だの壊滅だのと、EUの影響力について、評価が異様に貶められる傾向にあるEUだ。

 しかしこの選挙は、EU加盟国の国内政治に、決定的な影響を及ぼしていることをまさに知らしめるものである。

 イギリスの実業界がEU離脱となればイギリスの国益の基本が侵されると、真剣になってくると同時にフィナンシャル・タイムズも反離脱を唱え始めた。

「英国のEU離脱を引き起こしかねない過ち 国民投票の議論、「戦場」を間違えてはならない」2015.5.18.

 英国はすぐにEU残留を表明せよ(社説) 2015/5/21 UK business must make the case for the EU now.2015/5/20 がそれだ。

日本の経団連に相当するイギリス産業連盟(Confederation of British Industry /CBI)議長のレイクも"Business must be crystal clear that membership is in our national interest. The EU is key to our national prosperityと述べたようだ。 

Business lobby tells British CEOs to 'come out for the EU'EurActiv 20/05/2015

 それはギデオン・ラフマン( Gideon Rachman)のように、ユーロ解体を支持するような無責任極まりない記事を書いていた評論家にも影響を与えているようだ。

フィナンシャル・タイムズのEU残留支持の社説が出るや、一転、同紙で禄を食んでいるだけに、それにすり合わせるような中途半端な記事を書いている。彼は言う。

 「ロンドンは今、恐らく世界で最もグローバルな都市だ。住民の約37%は海外で生まれている。そして金融、輸送、文化、観光、その他多くの産業の中心地だ。 ロンドンは類稀な都市ではあるが、依然、英国は全体として本能的に貿易国であり、人と資本を世界中から引き付ける磁石だ。 政治は国を内向きにさせるのかもしれない。しかし、それ以上に強力な社会的、技術的、人口動態的、経済的な力が、キャメロン氏の英国を今後もグローバル化の最前線に置くだろう。」

 それはイギリスがEUに残留していればの話である。

 EU離脱の場合、金融センターからの外国銀行の大量出国エクソダスも言われている。EUから離れたイギリスの活力については、そうしたことはありえず、ラフマンの希望的観測、つまり幻想に過ぎない。

 ともあれ、中途半端なEU懐疑論者が、まさに現実政治の中でその態度、立場を鋭く問われている。

 ラフマンのような評論家や、扇情的な反EU的記事を大量に出す大衆迎合丸出しのタブロイド紙、そしてイギリス保守党内の陣笠議員は、今、そろって、EUに対するその言説に対して、態度を迫られることになる。 早ければ来年には、言いっぱなしのいい加減さや中途半端を退ける、そんな現実政治の鋭い選択、イギリスの国益がかかった決定が、近々、イギリス人全体に問われ、決断が迫られている。

 他方、今後の独仏ベネルクスというEUの核心部分が、昨日書いたブログのように連邦的統合深化に進むことは明確であるがゆえに、その中核に踏み込めない限り、イギリスのEUでの立場は「厄介者」としてのみ存在することになる。

 このイギリスには厳しい表現は、ミッテラン政権下にあって、首相を務めた老社会主義者ミッシェル・ロカールが、欧州委員会の長を決めるリスボン条約で導入されたSpitzenkandidatenの過程で、「わが友イギリスよ、EUを出よ」、と欧州委員会長候補ユンケルつぶしに奔走するキャメロンに対して放ったその言葉とメンタリティを、私が共有しているのであるが。

 これについては今月出した「欧州統合の政治史」(芦書房)第13章で書いている。英労働党がEUとの距離で保守党ほどでもないのは、EUの持つ社会政策における先進的役割に対する評価が一程度あるからだ。

 今は、21年も遅れてEUに入ったイギリスのことで、EU離脱も、EUの連邦的統合に向けた純化のためには、そして、それに意義を観ず、それに応じないイギリスの双方にとって、望ましいかもしれないという気がしている。

 それほどにEUの中核では連邦的な統合を当然として進みつつあり、その中でイギリスは周辺部、末梢部分にとどまっている。

 実際、独仏など欧州統合推進国は、ユーロ危機を契機として、「欧州連合」という誤った邦語表記を否定しつつ、ユーロ圏における銀行同盟やEU財務相構想などにみられる通貨同盟という政治同盟の、金融主権と財政主権の一体化による財政連邦主義のさらなる強化、すなわち、連邦主義的統合強化への道を明確に示し始めている。

 たとえ、EUに残留したとしても、金融主権の移譲にも賛成せず、まして財政主権の断固たる死守にこだわるごとく、政治的意思がないイギリスが、その動きに伍していけるはずもなく、EUの中心に存在できるわけがない。

 すでにEUは、1993年にマーストリヒト条約で、経済通貨同盟を書き込み、ECEUと変え、を単一通貨としてユーロを発行することで、ユーロ圏19か国にいまだ限定されているとはいえ、欧州連邦形成に向けて、国家連合を意味する欧州連合からの「帰還不能地点」(the point of no return を超えたと考えている。

 国民投票に戻そう。

 忘れられているようだが、イギリスは1975年にハロルド・ウィルソンが同じくEU残留をかけて、国民投票に臨んだ。その時の残留のイエスがあって、今がある。

 40年後の2015年現在、イギリスが国民投票でEU残留する確率は8割とみている。

その理由の一つは、合理的な立場に立てば、残留以外に経済的な権益を守れないということである。

 また技術的なことだが、国民投票での残留を問う形式において、政府がイエスが残留、ノーが離脱で問うことを明らかにしたからである。

英国の国民投票、EU残留なら「イエス」の回答形式にロイター 528

 国民投票における設問の仕方は重要だ。離脱がイエスと問われるか、残留がイエスと問われるかでは心理的影響は大きいのである。

  ちなみに1975年に発された国民投票での問は「残留すべきと思うか」という設問で、67%の賛成票、イエスの回答を得た。以下がそれである。

"Do you think the UK should stay in the European Community (Common Market)?"

今回は" Should the UK remain a member of the EU?"

とのことだ。

 国民投票の将来はもとより、依然誰にも読めない。世論調査では残留がわずかにリードはしているが。

 ただし、キャメロンはEUとの再交渉で、得るものがないとなれば(その可能性は極めて高いのだが)、それを反EU派やEU懐疑派が政治的に徹底して利用することで、残りの2割のEU

| 児玉昌己 | - | 13:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
 ユーロ圏の連邦的統合深化に踏み出す独仏 イギリスのEU離脱の国民投票を待たずに

   ルモンドは5月26日付で、独仏によるユーロ圏の統治構造の向上を含むユーロ防衛策を16年までに打ち出すことを発表したことを伝えている。すなわちイギリスにとって最大の政治課題となっているEU離脱を問う国民投票とは全く無関係に、しかもEU条約の改正なしにユーロ圏における統合深化を進めようとしていることである。

ユーロ圏の統治構造を含めて4つの領域での課題が指摘されているが、政治学者として関心があるのは、ユーロ圏議会の成否である。

すでに数年前からこれはEUと主要加盟国の政治指導者にとって検討課題とされているものである。ユーロ圏の債務国に対しなされる緊縮要求による当該国の国民経済の疲弊にたいしては、ユーロ圏外の諸国とは無関係に、財政的措置を必要とすることがますます明確になっている。
 しかしそこで活用される財政支援の基礎はユーロ圏の国民のカネであり、加盟国の財政運営については、加盟国の各議会が責任を負うと同様に、欧州議会内のユーロ圏議会の責任となると考えるのは極めて論理的である。
 実際、ユーロ圏加盟国が抱えるユーロ防衛問題の重要性は、イギリスの
EU離脱問題などは比較にならない重要性がある。しかも、イギリスは全く単一通貨ユーロの問題には容喙(ようかい)できない事柄である。
 
加盟国にとって、どの国でもそうであるように、通貨問題が特段の重要性をもつがゆえに、EU28か国の理事会内に、別途ユーロ圏19か国政府の金融担当大臣からなるユーロ・グループができているのである。

 

しかも、理事会内にユーログループを導入するにあたっては、その法的根拠として、リスボン条約とEU運営条約の議定書で明記されたが、イギリスはそれについて異議を挟んでいない。挟みようもないことなのである。

イギリスだけを見ていると、ユーロ圏議会構想など、まったく視野の外にある制度改正である。したがって、イギリスだけでしかものを見ようとしないわが国の多くの評論家が全く捕捉できていないEUの超ど級というべき重要な動きである。

ユーロ問題は、実はポンド・スターリング(pound sterling)の貨幣価値の安定とも関係するとはいえ、イギリスがユーロ圏の外、ユーロ発行国ではないという決定的な一点において、イギリスは全く蚊帳の外の話である。

イギリスがEUから離脱しようがしまいが、19か国の国民がすべからく使用する通貨のユーロであり、その防衛のためには、イギリスの意志が何であれ、独自に財政連邦主義をさらに深める。それがEUの核心部分である独仏を中心とするユーロ圏諸国とイギリスの圧倒的な相違であり、独仏とイギリスのEUへの距離の相違なのである。

すなわち、イギリスがで合理的判断が働き、仮にEUに残留できたとしても、この事実は変わらないし、イギリスが、ユーロ圏外にいることが故に、彼らがいう「ヨーロッパの心臓部」にあるということでなく、実にEUにおいては、イギリスは今後とも、末梢的、つまり周辺の部分でしかないということなのである。

 通貨は国家にとってさほどに重大な事項なのである。

 ユーロ誕生の国家主権との関係では以下の言葉を紹介しておこう。

「共同体の通貨主権の出現は,予見できない効果をもって国家主権の堅い核を打ち破る。」
“ L‘émergence d’une souveraineté monetaire communautaire brise le noyau dur de la souveraineté  étatique , avec des effets imprévisibles.”

Pliakos, A.D., La nature juridique de l‘union européenne .  Revue trimestrielle de droit europeenne. No. 2. 1993, p. 223.

 

参考記事

Philippe Ricard  LE MONDE | 25.05.2015 CameronàLe front commun de Merkel et Hollande face

Franco-German eurozone blueprint rattles Cameron  EurActiv 27/05/2015

スペイン、統合深化に向けEUに経済政策の見直し要請=現地紙 ロイター2015 05 27

 

参考ブログ
2015.05.21 Thursday英保守党政権継続と対EU関係 毎日の斎藤記者よ、英のEU離脱はEUでなくUKにとって壊滅的打撃となる

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3834

2014.06.06 FridayEU懐疑派を代表するギデオン・ラフマン(Gideon Rachman)のFT記事を批判する 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3681

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3682

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 18:28 | comments(0) | trackbacks(0) |
朝は電動歯ブラシ、そしてコーヒーと日経 週末の一日の始まり

  週末の朝のことを書こう。

 5月に入ると、朝は、外も明るい。まして下旬だ。5時過ぎには日が昇ってくる。遅く寝ても、6時半には目が覚める。それ以上寝ていると腰が痛くなる。50台半ばまでは考えられなかったが。

 朝は電動で歯磨き。そしてコーヒーと日経。

長く、手動でやっていた。3年ほど前になるか、電動ブラシに換えた。もっとも前にすればよかったというのが感想。ずぼらな私にぴったりな製品だ。

次に、珈琲。漢字で書く方が、カタカナ表記より洒落(しゃれ)ている。 

コーヒーといえば、愛飲家は長生きとのデータが出ていて、にんまり。 自前でももとより用意しているが、セブンで求める時もある。コンビニは各社が力を入れているが、家から近いということもあり、セブンだ。この美味は息子に教えてもらった。

100円のコストパーフォーマンスがそれを強く意識させる。それは書いた。「セブンよウルトラだ」と。もとよりあの円谷プロのキャラクターを意識してのことだった。しばらく前講義の後、先生あれ見て、私も飲んでみましたという受講者がいて、どうだったかい、と問うたことだった。

次に日経。政治学者こそ経済の相互依存の21世紀にあって経済音痴ではいけないという思いだ。

「朝はコ―ヒーと日経」とは、同紙を喜ばせるキャッチ・コピーだ。

ただし、国際や経済部の記事は高い評価を与えうるが、政治部の記事は、政治家や政党の手のひらで踊っているようで、日経はどこに立っているのかというほど気骨に欠き、評価できないものが多い。これも、これまでもたくさんブログで書いた。ヤフー検索で「日経児玉昌己選挙」と打ち込んだら、アレコレ取り出せる。

もとより公平を期していえば、毎日、産経、読売など他紙にも目を通す。ネットでの情報提供では毎日が抜きんでている。

最近はネットがあり、商売柄当然、海外の主要紙も目を通す。EU専門サイトは言うに及ばず。

言語理解に不自由する場合、翻訳エンジンを活用する。最近のレベルは高い。英独仏のものは言語構造と語彙が近いため、エンジンの向上と相まって、翻訳の精度が格段に進歩している。もっとも、翻訳の質の判定には、当然のことだが、最低限、読む側の言語能力がいる。

日経では、私の履歴書にまず目をやる。履歴書では、作家や芸術家、学者のが断然、面白い。なぜかといえば、芸術的創造の質で名を上げる人生であるから。

相対的にということだが、職業人と違い、日々が保障されていない厳しさの中で、鍛えられ、出世していくその人生経験には、深い尊敬をいだき、共感できる。

実業界の人のものも悪くない。大会社のトップ経験者は、日本経済の動向を映す鏡として貴重だ。秀才ひしめく大組織の中にあって、わずか1名しかないトップの地位に上がることについては、実力を前提とし、しかもそれを超える特別なことだと常に想うことだ。

創業者のものは、もっと面白い。ニトリもそうだったが、 人材派遣業で第2位のテンプホールディングスの創業者での篠原欣子(よしこ)さんのが特に印象に残っている。女性の側からの起業の苦労は頭が下がるばかりだった。

ちなみに欣子さんの読みを確認するため、「派遣篠原」で検索すると篠原涼子が出てきて、おもわず笑ってしまった。確かに「派遣の品格」で、派遣の女王を演じたのだから。

最近では、上記以外のものも印象に残った。

歴代首相から請われて、異例に長く官房副長官を務めた古川貞二郎さんのがそれだ。異色で、知らない官僚の世界を垣間見て、その苦労を想った。最終回には、行政官の在り方を説いておられ、若い行政官僚には必読だ。

 かくして週末の一日が始まる。

参考ブログ

2013.10.17 Thursdayセブンの100円コーヒーの美味なること セブンよ ウルトラだ

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3553


2015.03.11 Wednesday日経よ、日本の国会議員定数は並? 過小ではないかね 

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20150311



| 児玉昌己 | - | 10:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
英保守党政権継続と対EU関係 毎日の斎藤記者よ、英のEU離脱はEUでなくUKにとって壊滅的打撃となる
  毎日はブリュッセルから斎藤義彦記者が「<英総選挙>EUに高まる危機感 離脱国民投票の現実味増し」毎日新聞 58日 と題して記事を出している。

キャメロンの勝利でのEU側での危機感を書いているが、実に首をかしげたくなるほど、情緒的だ。

 斎藤記者は欧州外交筋の話として「EUにとっては壊滅的な英離脱が起こる可能性が出てきた」との言葉を伝えている。

 だが、誰が語ったか、重要な点での引用がない。英離脱がEUにとって壊滅的など、私の知る限り、そんな認識を持つ者はほとんどいない。EU内でのイギリスの力の過大評価でしかない。

イギリスのEUとの関係を言えば、なによりEUはイギリスが1973年に加盟するまえ、実に20年の長きにわたり、イギリスなしでやってきたという事実を想起すべきだ。

 しかもヨーロッパ統合が進むにつれ、イギリスはEUから距離を置き、今ではその中心の核の外にある。

 シェンゲンにも加盟していない。ユーロにも加盟していない。イギリスがなくとも19カ国の通貨として、ユーロは実際に例えば、135円の対円価値を持ち、稼働しているのである。デンマークもポーランドも条件が整えば、ユーロ加盟に踏み出す可能性が高い。

しかもギリシャ問題があり、その解決のために、さらなる連邦的統合の必要が出ており、銀行同盟から、EU財務省構想、ユーロ圏独自予算、そして閣僚理事会の中に、ユーロ圏諸国からなるユーログループができているが、それに相応したユーロ圏の予算を監督するユーロ圏議会構想まで政治日程に上りそうな勢いである。

 こうしたことすべてにイギリスは蚊帳の外であり、口をはさめなくなっている。

イギリスのEU離脱の可能性については、同記者が指摘するように、イギリス自体経済界も反対していて、ネガティブに出る可能性もある。

何より、EU離脱の場合、外銀の大量国外脱出エクソダスも報じられているところである。

今度の総選挙で圧勝したスコットランドのSNPや労働党などの重しもある。保守党が突出すれば、スコットランドの分離を招く。

ギリスのEU離脱よりも、歴史の重みからすれば、イギリスの根幹をなすUNIONの崩壊ということで、こちらがイギリスにとって最も深刻である。

 米政府もそれを心配し、EUからの分離にあからさまに反対している。

今回の選挙では、既にスコットランドでは大半がSNP選出議員によって議席が占められた。

スコットランドがUK から分離すれば、イギリス(UK)はLittle England となり、もしEU加盟を続けたとしても、欧州議会では、スコットランドがデンマーク並の13議程度を得るため、イギリスは73の現有議席を65議席程度、あるいはそれ以下に落とし、独仏伊の遥か後塵を拝し、EUでの影響力はさらに後退する。

斉藤特派員に言うべきことは、イギリスが最悪離脱しても、EUにはさほどの打撃を受けることもなく、EUはやっていく、ということである。

 欧州のインテリの中では、イギリスの離脱は織り込み済みにさえなりつつある。

産経が2年半前に、「英のEU離れに苦慮 『懸念と失望」が交錯」2012.11.5の記事のなかで独ベルリン自由大学のトーマス・リッセ教授(政治学)の言として、以下伝えている。

英国は過去10〜15年、EU内での影響力をほとんど失った。確かに英国の軍事力がなくては、欧州の外交・安保政策は考えられない。だが、大陸側の国々の英国への失望は大きく、すでに英国のEU脱退も恐れなくなっている」と。

  イギリス同様、未だユーロ圏外にあるポーランドの対独、対EU関係の静かな変化を斉藤記者は理解していないようだ。

確かに、歴史的に言えば、相互防衛条約で、ドイツのポーランド侵攻によってイギリスが対独戦争に踏み出す機を作った国家である。

ドイツ空軍とのあの有名な大英航空決戦を闘うパイロットも多く出した国家であり、極めて親英である。だが、ポーランドの対英姿勢は、最近、大きく変化し始めている。

ファンロンパイに代わって欧州理事会議長(いわゆるEU大統領)に就任した同国出身のトゥスクが、キャメロン英首相が言うEU離脱を問う国民投票の前提となるEUとの再交渉については、条約改正が全会一致であるため、「不可能なミッション」(mission impossible)と釘を刺している。それほどにイギリスとの距離を取り始め、EUとドイツにコミットし始めている。

 ポーランドの変化については、イギリスの友人でEU政治研究者のスティーブン・デイもポーランド外相の以下の発言を紹介している。

「私(Radoslaw Sikorski)がおそらくそのように言う最初のポーランド外相となるであろう。私は、ドイツの権力を恐れていはいない。私が憂い始めているのは、むしろ、ドイツが消極的であることだ。」(201112月の演説)

The Polish Foreign Minister Radoslaw Sikorski  ‘"I will probably be the first Polish foreign minister in history to say so, but  here it is: I fear German power less than I am beginning to fear German inactivity.“ (Speech, November, 2011)

斎藤記者よ、欧州委員会のユンケル選出では、その妨害を続けたキャメロン英首相は、民主主義に問題のあるオルバン首相のハンガリーを除いて、完全に孤立し、26のすべての国家から見放され、欧州理事会の議決で惨敗したことも思い出すべきである。

またEUでの議決は、上記の欧州委員会の長候補の提案でも、多く、全会一致ではなく、共同決定手続になっていて、加重特定多数決で行われる。全会一致事項は条約改正などわずかしかない。これも事実認識に問題がある。

イギリスのEUにおける地位と影響力を過大視する勿れである。情緒的に報道する勿れである。

EUにとっては壊滅的な英離脱」など全く愚にもつかない表現である。可能性が高い表現で言えば、「イギリスにとって壊滅的なEU離脱」である。

イギリスはすでにEUの中核であるユーロ圏諸国にはユーロの価値の維持を妨害する「厄介者」になりつつある。

 ユーロ価値の維持のため、ユーロ防衛のために必然的にユーロ圏諸国は通貨と財政主権のさらなる譲渡による連邦的統合を進める。すでにEU内でのイギリスの立ち位置は、ネグリジブルになっているというのが、本当の所である。

ナショナリズムの過度な感情が合理的思考を曇らせ、経済合理性を損なう。わが国も対岸の火事ではない、教訓としてのイギリスの対EU政治である。

なお、イギリスのEU離脱(Brexit)については、GDPの2.2%を消失するという報道も含め以下紹介しよう。

英国がEU離脱なら格付けに影響も=ムーディーズ2015 05 9

ドイツ銀、英国のEU離脱に備えワーキンググループ立ち上げロイター 2015/5/19

Brexit could wipe 2.2% off UK GDP Euractiv 24/03/2015

参考ブログ

2013.01.18 Friday イギリスのEU脱退論 EUは「イギリスなきEU」を21年経験上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3374

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3375

| 児玉昌己 | - | 18:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
橋下氏よ、政治とは継続だよ 忍耐だよ ある大衆迎合政党の終焉

 私にとってこの政党がなんからの意味を持っていたとすれば、維新は、徹頭徹尾大衆迎合的であり、大阪に特化した地域政党であったことだ。 

 私にとってこの党が強烈(に醜悪)であったのは、参院全廃、衆院半減と、なんと合計で500議席もの国権の最高機関の代表の議席削減を平然と打ち出していた。しかも、総選挙前に、平然とそれを下すという無責任丸出しの公約で、そのいかがわしさを、国民の前に曝したことだった。

 定数の大幅削減については、今も、何か是であり善であるかのごとく、世界の民主主義諸国との比較では事実誤認というべき認識に基づき、国会議員3割削減などと、その主張を民主党と同様に主張し続けている。
 もしそうなれば、現在の小選挙区制度の下で、総選挙で真っ先に議席を奪われるのは、小党である諸君らであるということ理解できずにである。

 大政党でさえそうだ。右から左へと、劇的に選挙で動く。小泉チルドレン、小沢チルドレンのその後を見ればいい。

 まして小政党に激烈に冷酷に作用する小選挙区制度は、これを強引に強行した小沢氏の今をみれば容易に理解できる。

 森元総理をして日経の履歴書にあえて書き残したほどの強引さで小沢氏が導入に奔走したその制度の過酷さについては、小沢氏自身が身をもって一番感じていることだろう。小沢党のほぼすべてが討死し、岩手では彼一人が残っているという状況だ。

 民主も維新も、野党第1党、第2党の地位にありながら、比例制を持って現代選挙制度としている欧州の先進国の現状も理解できずに、今もって小泉氏が言った「国会リストラ論」の延長というべき反民主的な、お門違いの問題にすり替え、その観点から議席の大量削減を主張している。しかも、それがなにか積極的な意味でもあるかのごとく。

 小選挙区下の議員定数削減は民主主義の死を招く。国会は国権の最高機関にして唯一の立法機関であるが、それをリストラするなど、反民主主義そのものである。

 実際、メディアも、欧州の議会と選挙制度と定数の事例が理解でき始め、ようやく定数過大論の誤りを認識しつつある。読売にみられるように、特に英文読売社説2014.12.9は、定数削減論をdemagogic callと表現している。

 そして、今夜の大阪都構想を問う選挙での敗北での橋下氏の政界引退発言だ。
 橋下氏についていえば、実に、大衆迎合を地でいった維新という特異な政党は、実質的なオーナーを失い、よほどのことがない限り、求心力を失い、これで四分五裂となり、政治の世界から消滅していくだろう。

  まさに維新が橋本氏の個人商店としてのみ存在してきたことに起因する。

 政治とは継続だ、耐えることだ、とこの政党とその党首橋下氏にはいいたいところだ。まして都構想は、敗北したとはいえ、ほぼ僅差で、半分近くは橋下氏を支持しているのだから。

 作って、自己の意志が有権者に否定されれば、わずか7年程度でソサクサと引退し、後は知らない、勝手にというほど、有権者や市民にとって、無責任なことはない。維新とは、徹頭徹尾、本来あるべき政党とはかけ離れた特定の個人の、まさに個人商店であったということができる。

 有権者が今は理解できなくとも、将来にかけるという息の長い態度こそが、政党と政治家に求められるべき姿勢なのであるが。

 本来の政治と政党の在り方とはまるで異なる、大衆のムードで動く政党が必然的に大衆のムードの変化の中で、消えていく。

 実に、宜(むべ)なるかなということである。

 それにしても、政治資金スキャンダルで野に下った渡辺喜美代表との確執のなかで、消滅したみんなの党から離脱し、その優秀さで直ちに維新の顔の党代表となっている江田憲司氏はどう動くのだろう。

 他の政党からの脱党組が党代表にあっという間に座ること、それほどに維新の側に人がいないということだが。そういえば、松野幹事長も民主からの鞍替え組だった。すでに党勢は急速に萎んできており、党首の退場は決定的だろう。

 江田氏については、優秀が故に、落ち着き先をじっくり腰を据えて考えてほしいところだ。貴兄にも橋本氏の政治家としての在り方は、実に教訓だよ。

 有権者は、政治状況の推移如何で、あちこちと動くのを、そうそう許容することはないことを理解すべきだろう。イデオロギー的にはリベラルだろうが、政策で自民とも、民主とも違う、そうした政党を形成してもらいたい。 もとより、その時は、まったくみんなとは選挙制度で考えが違う維新のような政党ではなく、比例代表制を掲げた政党であるべきだろう。

参考記事

議員定数削減 大衆迎合の主張は嘆かわしい 読売社説2014年および英文版129Parties’ demagogic calls to curtail number of Diet seats deplorable.The Japan News. December 09, 2014

参考ブログ

2015.03.11 Wednesday日経よ、日本の国会議員定数は並? 過小ではないかね

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20150311

2013.01.14 Monday 森喜朗元総理の日経私の履歴書 比例削減での小沢一郎氏の役割への言及

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3373

2013.06.24 Monday維新ブームの終焉と、公・共躍進で改憲シフトに待ったをかけた都議選

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3481

2012.12.26 Wednesday 政策に一貫性がない維新 201年総選挙雑感http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20121226

英総選挙2015 当面の総括 36.9%で単独過半 小選挙区制度の異常さ
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3835




| 児玉昌己 | - | 01:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
本を出しました 欧州統合の政治史(芦書房)
 



http://img.junkudo.co.jp/book/9784755612787-B-1-L.jpg


| 児玉昌己 | - | 20:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
慶事あり 雲仙富貴屋に遊ぶ 海鳴庵児玉
  過日 慶事ありて、雲仙富貴屋に遊ぶ



薫風は 慶事運びて 雲仙(やま)眩し 溢(あふ)る白湯に 

こころ満たされ 

                      海鳴庵児玉






海鳴庵児玉昌己句歌集2015年

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3802







| 児玉昌己 | - | 20:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
英総選挙2015 当面の総括 36.9%で単独過半 小選挙区制度の異常さ

 「1週間は政治にとっては長い時間だ」といったのは、労働党党首から首相を務めたハロルド・ウィルソンである。

 しかし1週間ではなく、24時間でも長いとスティーブン・デイが言い換えて、笑った。わずか1夜で、3人の党首の首が飛ぶのだから。

 本旨に戻そう。選挙結果は、BBCとウィキペディアを使おう。速報性も高く正確だ。

 今回の選挙はいつでもそうだが、ドラマテックである。ハングパーリアメントの再来を見込んでいた事前予測だが軒並み外れた。

 低俗だが、影響力はあるタブロイド紙SUNは全面見出しで大変動(swinging)と伝えた。だが、得票率でみると、そうではない。

 単独過半数を得た保守党は、今回36.9%(前回201036.10.8%の増加に過ぎず、ほとんど動いていない。ちなみに、労働党26%(29%)で3%の減。接戦の選挙区で保守党が1位を得ていったということである。

 キャメロンは、「ひとつのUK(イギリス全体)を統治したい」(I want to govern one UK Cameron BBC)と、勝利後その希望を語った。それは昨日ブログで紹介した。

 だが、3割強程度の国民の支持で「ひとつのUK」を統治すると主張すること自体、幻想である。小選挙区制度が必然的に生む悪弊である。言い換えれば、6割以上の有権者の票が政権を支持せず、不満を内部に鬱積させているということである。

 もう1つ注目してほしいのは、単独過半数の326を5議席超えたキャメロン保守党と、第2党に甘んじた労働党の得票である。保守11,334,920、労働党9,344,328。その差は200万票余りでしかない。得票率では6%の差であるが、46議席の差が出ている。しかも労働党の得票は、1.4%とむしろ増えているのである。  

     保守党    労働党

Last election

306 seats, 36.1%

258 seats, 29.0%

Seats before

302

256

Seats won

331

232

Seat change

25

26

Popular vote

11,334,920

9,344,328

Percentage

36.9%

30.4%

出所 http://en.wikipedia.org/wiki/United_Kingdom_general_election,_2015

 次に、第3政党、第4政党を観ていこう。今回59のスコットランド選挙区のうち56議席を得て旋風を起こしたのが、SNPである。前回1.7%の得票率で6議席。 

 今回わずか、3%の伸びで56議席。如何にSNPはスコットランドに特化し、かつ単純小選挙区制を利用して、議席を得ているかである。

 他方惨敗したのが英自民。ニッククレッグは党首を引責辞任という。前回23%で56議席を得ていたが、7.9%で8議席。しかし見て頂ければわかるが、SNPよりも100万票近く多く獲得しているのである。にもかかわらず。

 SNPと違い全国政党であるがゆえに、各選挙区で膨大な死票がでているといえる。

 小選挙区制度はわが国でも示されているように、小政党を根絶やしにするほど過酷な影響を持つ。その最大の犠牲者がUKIPである。

 そのUKIPをみていこう。現有2議席を1議席減らした。欧州議会選挙で2大政党を凌いでイギリス選挙区で堂々の1位となった。わずか1年前のことだ。独立という名は、EUからの独立という意味で、徹底した反EU政党である。今回、党首のナイジェル・ファラージュが落選し、党首を降りるとしている。

 実はこの党、昨年5月の欧州議会選挙での圧勝の余勢をかって、本当は健闘しているのである。議席1という惨敗に目が奪われ、注目されることがない。共同通信も、「独立党党首落選 ファラージ氏、辞任表明 昨年5月の欧州議会選で勝利も人気急落」と配信し産経が伝えている。2015.5.8 20:32

 だが、表層的記事で、そうではない。比例の欧州議会選と、小選挙区制度の英総選挙の相違が背景にある。確かに26.6%を得た欧州議会選挙からは支持率は下げているが、それでも実に3,881,129を得て、得票率で全体に占める割合は12.6%。これは前回比で+9.5%である。なにより、小選挙区制度がUKIP をつぶしたのである。

 この党が嫌悪したEUとその比例の選挙制度のおかげで、その力を得た。

 他方で、ナショナリストとしての彼が愛した自国の選挙制度で潰された。これを皮肉と言わずに、なにをいうかである。いかに自国の選挙区制度が、彼のUKIPに苛烈というべくも冷酷であったか。

 この事態を見越して、UKIPはEUに少しは感謝せよとブログしたことがある。

 スコットランドを中心にSNPが獲得したのが1,454,436票。それで56議席を得た。他方、UKIPSNPの2.5倍ほどの3,881,129の支持集めて、わずかに1議席。 大敗して党首のニック・クレッグの首が飛んだ英自民が得票2,415,8887.9%で8議席であることを考えても、小選挙区制度の得票と獲得議席の乖離の異常さが理解できるというものだ。

 これが、小政党を根絶やしにする危険を常時秘めた小選挙区制度の不合理極まりない不合理である。比例なら75議席程度にもなる計算である。  

Party

SNP

  自民

Leader's seat

Did not stand

Sheffield Hallam

Last election

6 seats, 1.7%

57 seats, 23.0%

Seats before

6

56

Seats won

56

8

Seat change

50

49

Popular vote

1,454,436

2,415,888

Percentage

4.7%

7.9%

 出所 同上

 総括

 イギリスの小選挙区制度は1994年の公職選挙法改正による中選挙区制度の廃止と比例が尾ひれとしてつくわが国の小選挙区制度を生むモデルとなった。

 小選挙区制度は2大政党政治を生み、政治を安定させ、カネもかからない制度だといわれた。しかし、それはハナから誤った理解であったことが歴然としつつある。ついでにいえば、議席過大論に基づく、削減論などは全く出鱈目そのものが明らかとなり、現在その処理に、大慌てだが。

小選挙区制度の下では、得票と獲得議席の異様なかい離を生むことがまたしても明確となった。

 わが国では、1980年代末からのリクルートスキャンダルで、本来成すべき政治資金規正法の強化がなされずに、あろうことか、議席と得票の乖離で膨大な死票を出していたイギリスを美化した小選挙制度の導入にすり替えられ、わが国の政治を決定的に不安定なものにした。

 その当時の政治家、評論家、そしてみずから民主主義を口にしつつ制度改悪に手を貸したメディア、学者すべてがその愚昧さと不明さを恥じる必要がある。すでに物故者もいるのだが。

 そしてイギリスの場合、対EU政策での賛成反対の亀裂を深く残しつつ、EU離脱に傾斜する保守党については、キャメロンが強硬に動けば、ただでさえ緊縮財政の要請の下で、域振興予算の配分をめぐり対立する労働党や地域政党などの反発を生み、イギリスUKの国家解体にも作用するということである。

 そしてこの総選挙はイギリス解体の不吉な動きを秘めた政治の始まりを告げる選挙となったということである。

参考ブログ

2015.05.03 Sunday 英総選挙2015年 SNPの大躍進の次に来る事態 2つの可能性、SNPとの連立か年内再選挙か 日本政治への意味

| 児玉昌己 | - | 13:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
英総選挙2015 保守党単独過半をかろうじて確保しそう 現地時間7時30分(3:30JT)現在
 

 刻々と最後の議席確定に向けて、BBCのライブスタジオは報道を続けている。

 残り60議席弱で、保守党は事前予測よりも議席を伸ばしており、過半数の326を超え、329と予測、単独政権を確保しそうである。

 選挙報道がイギリスにおいても難しいという結果となりつつある。

 現有議席を20ほど減らして、233が労働党の予測である。SNPは59のスコットランド選挙区のうち56となりそうである。

しかし、であればなおさら、キャメロン党首が言う2017年末までのEU離脱を問う国民投票がイギリスを解体に導く可能性(危険性)を高くしている。

キャメロンはこれをうけて一つのUKを統治したいと述べている。I want to govern one UK - Cameron

30%台の支持しかないのが、イギリスUK全体を統治したいなどという方が小選挙区制度で成立する政権と政治権力の欺瞞性を示すものであり、むしろ問題とされるべきである。

 実際、スコットランドはSNPが圧勝し、スコットランド全体がほぼ保守党の反EU政策に反対の意思を示したである。

キャメロンの希望は分かるが、幻想でしかない。そしてその幻想で政治をすれば、英国の解体は確実となる。


| 児玉昌己 | - | 15:42 | comments(0) | trackbacks(0) |

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