児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
海鳴庵児玉昌己句歌集2015年前半

2015.06.30 Tuesday もどかしいギリシャ情勢を詠む 

 6月の終わり。ギリシャ債務で暗雲が広がる、誰にも見通せないそのもどかしさを梅雨空にかけて詠む 


 梅雨空の 流れる雲は 不気味色 さてはどちらに 変じゆくかな

                         


2015.06.13 Saturday 週末に庭の花を詠む 

いつの間にか本格的な梅雨の日々。

 

菖蒲去り ドクダミ来たりて 我が庭に 雨は漫(そぞろ)に 降りてゆくなり



2015.06.07 Sunday 慶事あり 終わりて寛ぐ 有馬の湯 

 祝い事で家人ともども兵庫に出向く。終わって有馬温泉へ。酸化鉄の赤湯、金泉で年来のさび落とし。

 


慶事あり 一つ降ろすは 肩の荷の 想い起すは 吾が時の頃

 

祝い事 終わりて浸かる 有馬の湯 金泉(あかゆ)も嬉し 錆も落として

 

 

2015.06.03 Wednesday 水無月の始まり それを詠む 

  昨日から九州は梅雨入り。雨の季節の始まり 大地と心を潤す慈雨の入り 

  

水無月の 名とは離れし この月の 雨は地と身を 潤したまい

 

2015.05.16 Saturday 慶事あり 雲仙富貴屋に遊ぶ 

  過日の日曜日 慶事ありて、雲仙富貴屋に遊ぶ

薫風は 慶事運びて 雲仙(やま)眩し 溢(あふ)る白湯に 

こころ満たされ 


2015.04.26 Sunday 巨大都市への出張から戻り、アザレアに精気を戻す それ詠む

 出張で上京、人の波に疲労する。日曜日の我が家の庭にはアザレア。


巨大都市 その大波に 溺れかけ アザレア紅(べに)に 精気戻りて

2015.04.20 Monday 筆をおいて雲仙の地獄で遊ぶ 

 お気に入りの湯は日本最初の国立公園、雲仙の硫黄泉。近々出版する書を終えて、愛車で一路雲仙へ、地獄の湯を楽しんだ。

筆おきて 一路駆けるは雲の上 地獄の湯舟で 我は仙人


2015.03.30 Monday 年度末は思いでのアルバム その情感を詠む 

3月の小庭は桃。この時期、心に響くはあの「思い出のアルバム」。卒業も含めて、日本では一年の終わり。その見事な情感を味わっている。

 桃の花 咲きて綺麗に 1年の めぐる季節に こころ穏やか


2015.03.16 Monday 梅は散るも、桜がいやす季節の移ろい それを詠む

3月は異動の季節、終わりゆく紅梅に似て、さびしくもあるが、それを癒してくれる桜。それを詠む  

 紅梅(うめ)散るも 代わりは桜 君来たり 庭上嬉し 春の訪れ


2015.03.01 Sunday 3月入り、密やかに去りゆくシクラメンを詠む

 彩乏しき冬の季節、食卓で、他の花を待ちつつ、色を添えていたシクラメン、そっとその生命を終えた。

紅梅の 咲くを待ちたり シクラメン 生をつないで 密か去り往く

2015.02.24 Tuesday 枝をゆらす鶯に春の到来を知る 

 鶯の 紅梅揺らす 日もありて 浅き春とも 春は来たれり



2015.02.08 Sunday 朝は吹き抜けの窓の採光から始まる。その様を詠む 

朝は吹き抜けの窓の採光から始まる。その様を詠む 

 

ブラインド 君は光の 魔術師で 陽光自在に 操りたまい

 

 

2015.01.17 Saturday 芳しい蝋梅は冬にあり それを詠む

冬はこれからさらに厳しくなるだろうが、蝋梅の香り芳しくわずかな清涼となる。


 

庭上は 荒涼景(けい)を 曝すとも 蝋梅(はな)は香りて 

冬も嬉しや       

 

寒風は 辺り樹木を 曝すとも 蝋梅(うめ)の芳(か)いやす 

荒涼の景  

 

 

2015.01.01 Thursday 平成27(2015)年元旦の陽光を詠む 

謹賀新年 久留米は屋根は薄く雪をかぶっているものの、時折青空と陽光が差し込む清々しい。

 

元旦の 雲間輝く 春陽は 草臥れ(くたびれ)人に 気力賜いて




 海鳴庵児玉昌己句歌集2014年後半

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3723


 

| 児玉昌己 | - | 22:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
もどかしいギリシャ情勢を詠む 海鳴庵児玉

 6月の終わり、ギリシャ債務で暗雲が広がる、今日の空のように 誰にも見通せないそのもどかしさ それを詠む 


 梅雨空の 流れる雲は 不気味色 さてはどちらに 変じゆくかな

                           海鳴庵児玉




海鳴庵児玉昌己句歌集2015年前半

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3802



| 児玉昌己 | - | 22:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
ギリシャ債務危機 国民を危機にさらすチプラス首相の国民投票の賭け 

 土壇場の欧州債権団とギリシャ政府の交渉で、債権団の要求を拒否する形で 一方的に交渉を打ち切り、チプラスが国民投票を発表した。

 しかもその日は7月5日という。6月30日がIMFの返済期限でその額16億ユーロ(約2200億円)。EUなど債権団は、ギリシャ政府が提案条件をのまない場合、期限を超えての支援はしないといっている。

 すなわち、デフォルトが濃厚となる。IMFはデフォルトというより、最近では危機の進行で、より慎重に「滞納」という表現を使い始めているが。

報道によれば、債権団は、ギリシャの緊縮策受け入れを条件に、現行支援を5カ月間延長する案を準備していたが、ギリシャ政府が26日夜に交渉を一方的に打ち切った。

すなわち、チプラス政権について言えば、支払期限を超えて、一方的に国民投票を実施するとし、しかもその日を7月5日と設定することにより、返済期限さえも、無視する挙に出た。

欧州中央銀行(ECB)は28日日本時間深夜、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を現行の水準に据え置くとしたもの、同時に、その決定を再検討する用意も理事会にはあるとした。

EUなどは、同国のデフォルト(債務不履行)に備えて、資本規制や人道援助などの「プランB(代替案)」の検討を始めるなど、次の段階を視野に入れつつある。 

ECBも両にらみで最悪が起きないような流動性支援を述べているだけである。

言い換えればすでにギリシャとの交渉ではgameover とみる見方が支配的となっている。

私にすれば、欧州債権団側の不満と政治的意思を、チプラスと同政権が過小評価しているということになる。欧州債権団との交渉を一方で打ち切りながらも、他方で国民投票を設定し、その5日までは流動性確保の支援をという。

チプラスという南欧のこの若い政治家に、学生運動家のような甘えを見るのは、私だけだろうか。

実際、いつまでも交渉可能だとする自国の危機意識のなさについては、政府ではなく、ギリシャ国民の方がより深刻に受け取っている。

実際、NHKが伝えるように、ギリシャ国民の直近の世論では、債権団の年金削減などの要求を呑むか飲まないかの設問に対して、それを飲んででも、欧州からの支援を得て、デフォルト回避しユーロ圏での継続を望んでいるということである。

30日には今のままでは確実にギリシャは支払い不能で、その呼び名が何であれ、実質的なデフォルトとなり、既に始まっている国内銀行からの大量の資金の引き出しと、国家による資産保全のための資金移動の一時的閉鎖と、ドラクマ再導入にまで進む可能性が出てくる。

そうなれば、国民への打撃は現状処の騒ぎではなくなり、実に惨劇というべきことになる。

今日までの困難と来るべく将来の困難は比較にならないものとなる。これまでは困難ながらもなにより秩序だったものだった。だが、これから来ると考えられる情勢は想像を超えた混乱とカオスを想わせる。

すでに銀行は休業し、ATMの自由引き出しは一日60ユーロ(約8300円)に制限されるなど、日常生活へのしわ寄せが急速に進みつつある。

その苦悩の理由は、単純なことだ。ユーロ圏を離脱すれば、負債はユーロ建てであるため、信用のない通貨ドラクマ換算では天文学的数字に跳ね上がる。国際的に信頼をなくした国債は紙くずとなり、乗り換えるであろうドラクマは、破たん国家の価値のない通貨となり、そのために、ユーロ圏を含む国外からの輸入では、物品は暴騰し、インフレではなくハイパー・インフレになる。密輸も横行する。国境閉鎖も、そして最悪、21世紀にあって、物々交換の可能性もある。すでに以前指摘している。

原則に縛られた現政権は、原則のために政治的現実を直視できず、政治的には限りなく国民の意思から離反するということになる。

先の政権を選んだ国民の意思が何であれ。実際、国民投票の前に債務不履行になれば、国民投票自体も無意味となる。

政治的なバランスを欠いた政治家は国民にとって、実に危険である。

ユンケル欧州委員長がいったように、この政権のことはどうでもいい、案じるのはギリシャ国民のことであると。

  すなわち、政治指導者の個人的こだわりと判断ミスが極めて大きな不幸な結果をもたらすということである。切迫した状況では、今年1月の総選挙で示された国民の政治的意思は半年後の現在の政治的意思ではないのだから。

 ギリシャの混迷が示す政治的意味で我々が学ぶべきことは、以下のことである。

 国民が選んだ政治指導者による政治的決断とその結果は、国民国家においては、良きことも悪きことも、まさに国民すべてに降りかかってくるという単純な政治的事実である。

 参考記事

ECB、ギリシャへの緊急流動性支援を維持 金融安定に注力 ロイター 2015/6/28 ギリシャ議会、国民投票を承認=来月

5日実施の公算―EU、支援延長を拒否時事通信628

ユーロ圏財務相、悪影響の抑制策に重点−ギリシャ国民投票へブルームバーグ2015/06/28

ギリシャ不払いデフォルトでなく滞納-ジンバブエ並みの扱いに Bloomberg626

参考ブログ

2015.04.09 Thursdayギリシアの巨額債務問題 弱者の「恐喝」とEU最弱の環を撃つロシア

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20150409

2015.06.19 Friday 瀬戸際に来たギリシャの債務危機 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3849

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3850


| 児玉昌己 | - | 12:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
BBC「シャーロック」の漫画バイリンガル版を得て嬉しい気分になる
  21世紀BBCカンバーバッチ版「シャーロック」については、録画して、時間のあるとき楽しんでいることは6月14日付のブログで書いた。

このドラマ、天才シャーロックを演じるカンバーバッチが、シャーロックの推理力をワトソン博士を相手に遺憾なくセリフで展開していくのだが、まさにマシンガン・トーク。

一体なんて言っているのかほとんど聞き取れない。それで、イライラしていた。それでスクリプトはないものかと思ってネットサーフィーン。

あったあった。インターネットは現代の神様だ。

なんと、バイリンガルの漫画版があるではないか。610日に発売されたばかりのバイリンガル版がそうである。カドカワは私のことを想ってくれたのかというほどにも、出たばかりのもの。

それを紹介するサイトによれば、「BBC監修の下、ドラマの制作総指揮・企画・脚本を務めるスティーブン・モファット&マーク・ゲイティスの脚本に従い、作中のセリフを再編集」とある。これで現下の渇は癒せる。

現代英語を学びたい諸士にも大いに役立つことだろう。実際、いろんなことを教えてくれる。

textテクストという単語が動詞として頻繁に出てくる。

携帯メールでのメッセージするという動詞として使用しているのだ。知らなかった。send Email messageで済んでいたのだから。ショートメイルを送るも、単にテクスト1語で済む。

テクストとは、元来「草稿」という意味をもつ名詞だが、それが動詞化しているのだ。

googleの事例がわが国でもある。検索することをgoogleから転じて、「ググる」と動詞化しているのと同じ用法で、感心した。もっとも私個人は「ググる」などは耳に不快(sound ugly)で、使わない保守派なのだが。

ともあれ、イギリスでも、日本でもインターネットとIT革命で、言語まで影響を受けているのである。

参考記事

コミカライズ版「SHERLOCK ピンク色の研究」に英日対訳バイリンガル版が登場!2015621日 http://eiga.com/news/20150621/8/

参考ブログ

2015.06.14 Sundayカンバーバッチ版SHERLOCK シャーロックBBC/AXNを楽しむ

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3848
| 児玉昌己 | - | 20:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
今村友香さん(若波酒造第8代杜氏)の講演を同志社久留米クラブで聴く

土曜日の夕、同志社久留米校友会の総会に出てきた。若手女性企業家の講演を聴くため。

 大学で禄を食む身だが、大学とは有り難い。昔学んだ大学でも恩恵がある。たかが大学、されど大学だ。

 右も左も知らない久留米に来て14年目になったが、ありがたいことに当地の同志社のOBの皆さんに指南を受けて、アレコレこの地で生活の質を頂いている。

 総会では大川市にある若波酒造第8代の女性杜氏の今村友香さんが講演された。既に日経にも紹介されている逸材だ。

我々と同じ同志社のご出身(厳密には同女)で、同じく同志社出身の父君の不調で偶然に短期だけと請われて大学卒業後に入った実家の若波酒蔵。

ちなみに大正年間創業で、業界では比較的若い(とはいえ90年を超える実績のある酒蔵だが)新しい波をということで、曾祖父が、社名若波で立ち上げられたという。

元来、女性には居場所がなかったとされる男社会の酒造だが、急速に魅せられて、自分の居り場を作るために、積んだ広島の研究所での研さんを経て、今がある。

色落ちするので難しいとされるイチゴ、しかも福岡産で知られるアマオウ・ブランドを使っての酒造の成功が、特筆すべき友香さんの成果である。

若いながらも根を張ってきたご自身の自分史と、日本の伝統産業でもある酒造産業のことを織り交ぜ語られた。

特に、日本で傑出した家具産業のある大川市との連携による、より使いやすい合理的な酒造関係器具の開発、無駄のない果実の使い方や輸送品などの再利用など、まさに地域創生と地域おこしの先端を切っておられ、実に魅力的な講演であった。

久しぶり、活きのいい粋な話を聞いて、気分も高揚し、若波酒造提供のお酒を賞味して、実に愉快な時間であった。

参考記事・ブログ

「若波酒造杜氏今村友香氏 人生に寄り添う酒」日本経済新聞(九州・沖縄版)「肖像」2013.1.27

http://amaow.seesaa.net/article/316350
195.html

2013.01.27 Sunday 同志社久留米クラブの遅い新年会に顔を出し、若波辛口(若波酒造)を堪能する

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20130127

| 児玉昌己 | - | 19:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
瀬戸際に来たギリシャの債務危機 下 危機は通貨財政同盟強化を持ってEUの連邦的統合を加速する
 チプラスの主張とEUの主張

ギリシャの尊厳を守る。チプラスは欧州中央銀行(ECB)やEUが債務軽減を認めないため、ギリシャの財政状況を追い詰めていると批判した。これにたいして、業を煮やしたのが、欧州委員会のユンケル委員長である。

彼は、欧州委員会の提案を、チプラス首相が恣意的に歪曲してギリシャ国民に伝えていると述べ、「医薬品や電気料金の付加価値税引き上げにわたしが賛同していないことはチプラス首相も知っての通りで、そんなことをしたら大失策となる」とした。首相を非難した。

 ユンケル氏、ギリシャ首相を非難 欧州委の提案「恣意的に歪曲」16日ロイター

チプラスによる作為的な情報操作に対する欧州委員長の不満の記事で興味深いのは、ギリシャへの救済支援提案に関して、ユンケル委員長が16日に記者会見で発した言葉だ。

「ギリシャ政府のことはどうでも良い。ギリシャ国民のこと、とりわけ生活が最も苦しい方々を本当に心配している」と語った。

ここに加盟国とEU機関とのせめぎあいからなるEU政治の専門家として、限りない興味を抱くのである。

国家の政治的意志と統合組織EUの政治的意志のぶつかり合いである。国家があたかも地方政府みたいになりつつあることが興味深い。

チプラス政権は緊縮を終わらせるという政権公約にこだわり、もしここで退くと、チプラス与党のシリザが内紛を起こし、有権者の離反を招くというジレンマを抱えている。

 EUIMF側の言い分は、借りたものは返す、継続的な財政改革という支援の条件を受け入れよということである。

 EUの行政府の長である欧州委員長ユンケルは、国家の総選挙で選ばれたチプラス政府をバイパスし、ギリシャ国民に直接呼びかけている。危険な賭けで国民を追い込むこんな政府でいいのかと。 

 支援はするが、無条件の債務減免などはない、自国政府の姿勢では、解決がつかず、現状とは比較にならないほどのギリシャの悲劇を招くというものだ。

 イスタブリッシュメントの側からは、それまで国家の財政など考えもしなかった左翼の若者が政治を弄んでいるということである。

両者の対立はチプラス政権が誕生するころから既に存在した。

 EU側は、公然と債務減免を主張するギリシャの若手指導者に対し、ギリシャでは新国家が成立したのではない、ギリシャ国家の中にその義務を受け継ぐ新政権が成立したに過ぎない、とEU側が応じたように、政権成立直後から続けられてきた基本的対立なのである。

 実際、欧州自民(ALDE)の議長で元ベルギー首相のヘルホフシュタットは、今年の1月5日に、ギリシャ政権が戦時対独賠償22兆円を求めたことに対して、何のための60年のEUの連帯の歴史かとそれをEUの精神に反するといなした。ベルギーはポーランドやチェコスロバキア同様に、ヒトラードイツによって国家を奪われた歴史がある。その国の首相がドイツを擁護し、ドイツに戦時賠償を求めるギリシャをいなしているのである。 

 そして、それにとどまらず、新政権は債務を継承する義務があるという観点から、次のように述べている。

「ギリシャには新国家ができたわけでない、新政権ができただけだということを理解すべきだ」と。

http://www.liberalmonitor.gr/editor-s-choice/344-verhofstadt-stop-talking-about-a-grexit.html

 ブルームバーグは、ギリシャの政権交代とその経済通貨情勢について、2015年1月の大統領選挙の前、サマラス前政権時にギリシャは債権団と100億ユーロ(約1兆3800億円)程度の融資枠について協議していたが、この第3次救済のコストは今年4月までに400億ユーロに膨れ上がった、としている。

 1人の男のギャンブルでギリシャが失ったもの−代償増大 Bloomberg2015年 2015615

 ギリシャ国民にとってチプラス政権の選択がよかったのか、その意味はもうすこしで、経済状況として、国民に問われる。

 デフォルトはギリシャ国民に今の比ではない惨状をもたらすだろう。

 EUは、これを教訓として、加盟国からの一層の主権的権限の譲渡による、通貨同盟、財政同盟の強化、すなわち、国家の連合である欧州連合からのさらなる決別と、その核心部分における連邦的EU、すなわち連邦的EU「欧州同盟」の強化構築に進むことになる。

 それはイギリス保守党政権のEU条約改正要求など、不可能な意思と要求とは無関係に、そしてそのイギリス意思を脇に置きつつ、劇的に進む。危機が深ければ深いほど、連邦的統合も劇的に進む。EUにおける通貨主権の成立は必然的に国家的政治組織の形成を意味するものであるのだから。1993年のEU条約は、さほどの意味をヨーロッパ政治に持っている。

 ギリシャに戻っていえば、「1人の男のギャンブル」かは別にして、長年の放漫財政という愚昧な政治をやれば、つけは確実に国民に回るということである。なんと、わが国のことでもある。

 ともあれ、6月25日の欧州理事会というEU首脳会議が最後のヤマになりそうである。 

参考記事

ギリシャの6-7月の支払いスケジュールは、木村正人 「ギリシャが限りなくデフォルトに近づいて来た 緊縮より成長こそ正しい戦略だ」20150605日参照。http://blogos.com/article/115065/

木村の認識について言えば、成長が緊縮よりいいことは明らかであるが、健全財政あっての経済成長であり、放漫財政を前提とするものではないのは、ユーロ導入と価値の維持からみれば当然であり、鉄則である。したがって、ギリシャについては、長年の放漫財政の是正と見れば、EU主導の今の政策誘導の方向性は一定の合理性を持っている。

 実際すでにユーロ加盟国では通貨主権は欧州中央銀行に譲渡されていて、発給量、公定歩合については加盟国の排他的決定権は完全に奪われている。

 国家にあって主権的権限である財政主権の予算編成権も、放漫財政の結果として、すでにギリシャでは奪われているのだから。

参考ブログ

2015.02.23 Monday ギリシャの債務問題やEU離脱を問う5月7日の英総選挙のことなど 上

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3806


| 児玉昌己 | - | 10:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
瀬戸際に来たギリシャの債務危機 上 今起きていること

ギリシャ情勢が一段と緊迫している。言うまでもなく巨額の債務の返済ができるか否か。

その借入額が半端ではない。それが7月まで目白押しという状況である。6月中に国際通貨基金(IMF)に支払うべき返済額は、17億ユーロ(約2360億円)。 

すでに同国政府は5日、同日に予定されていた国際通貨基金(IMF)への3億ユーロの融資返済を土壇場で延期している。

ギリシャの人口が1千万だから、わが国風に言うと、10倍に膨れ2兆7千億程度というように考えると、その大きさが知れるというものだ。他国を理解するとき、わが国の人口で勘案してみるといい。

同国政府の債務はそれだけではない。7月中旬にはECBが保有する35億ユーロの国債償還を控えている。資金繰りは一段と厳しくなる。

それで72億ユーロの支援の再開が不可欠になっており、そのための交渉が漸次行われているが、ギリシャの左翼政権が、欧州の債権団がいう条件整備としてのさらなる支出削減などの国内改革という緊縮継続を拒否し、暗礁に乗り上げている。

反緊縮が先のギリシャ総選挙で掲げて支持を得た左翼政権のうたい文句だから、そうそう妥協できないのである。

交渉の最大の山は、2526日のEU首脳会議ということになる。すでにギリシャ支援協議、来週の合意には「奇跡必要」=フィンランド首相と語っている。ロイター2015年 616日。

歴史的に言えば、ギリシャ自体がユーロ圏入りで無理をし、他の加盟国もそれを見逃して同国のユーロ加盟がなったということだけ簡単に触れておく。すなわち2000年ユーロ加盟時に投資銀行と結託して、課される義務としてのユーロ加盟の3条件を操作して、かろうじて加盟したのがギリシャの真相である。

その後も放漫財政が続き、簡単に言えば、国家の支払限度を超えて赤字が膨らみ、乱発されたギリシャのユーロ建国債が償還能力を超えているということが2009年の総選挙で明らかになって、デフォルト危機に直面した。つまりもう危機が顕在化して6年の歳月を経ている継続的事案なのである。

歴史を離れて、それではギリシャでは何が起きているのか。

 現在ギリシャで起きていることは、EU加盟国で起こりうるデフォルトについてそれに至る過程での格好の学習材料になる。
 デフォルト危機に直面して起きていること

顕在化していることだけで、3点ある。

 第1は国債の金利の暴騰である。3年物は30%に接近したということである。国債は国家が信用保証して、民間の銀行金利などより、比較的高い金利を付けてお願いするものだが、30%などは一般には買い手には魅力的などと思わないでいただきたい。
 ほとんどジャンク債扱いで、いつ紙切れになるかもしれない状況だということである。つまり同国政府は、これ以上の資金調達が不可能になりつつあるということである。実際、放漫財政を赤字国債で補っていたことがことの本質である。ユーロ危機ではなく、ギリシャソブリン債危機として始まったことを思い起こす必要がある。

 第2は証券市場の暴落である。銀行はもとより、ギリシャ証券市場は下げに転じている。ギリシャの銀行株は12日からの2日間で一時3割近く下落した。

 第3は国内預金の国外流出である。

一日2億台でここ数日推移してきた預金流出は、15日には預金流出額は4億ユーロ程度となり、先週から拡大している。

なおHARBOR BUSINESS Online 617日の記事「預金封鎖が現実味を増してきたギリシャ、富裕層の高級車購入」がスペイン紙『エクスパンシオン』を引用しつつ、以下伝えている。

1月にシリザ政権が誕生した時、1月と2月で200億ユーロ(27,600億円)が国外に流出された。これはギリシャのGDP1,824億ユーロ(251710億円)のおよそ10%に相当する額である。3月には10億ユーロ(1380億円)、そしてデフォルトの噂が流れた頃合に更に5億ユーロ(690億円)が流出した、という。

他国への波及

ギリシャの苦境は、同国だけのものではない。ヒト、モノ、カネ、サービスの自由な流通を本旨とするEUにあって、直ちに他の加盟国にも波及する。

「ギリシャ3年債利回り、一時30%に迫る」 債務不履行を警戒 日経2015/6/15

によると、ギリシャ懸念の高まりを受けて、15日の欧米株式市場でも売りが広がった。ドイツの株価指数DAXは一時2%安となり、節目の1万1000を下回る場面があった。米国株にも売りが波及し、ダウ工業株30種平均は一時1%安となった。

 同じ日経によると、欧州の債券市場でも、投資家のリスク回避の動きが広がり、ドイツの10年債利回りが一時0.7%台後半と、今月初旬以来の低い水準をつけた。一方、債務問題の波及を懸念して、スペインでは10年債利回りが2.4%台後半と、昨年夏以来の高い水準をつけた。イタリアやポルトガルでも金利が上昇傾向にある。


| 児玉昌己 | - | 09:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
カンバーバッチ版SHERLOCK シャーロックBBC/AXNを楽しむ

BBCのシャーロック・ホームズを楽しんでいる。言うまでもないが、これは21世紀版のもの。ベネディクト・カンバーバッチがホームズ役、ワトソン博士役はラブ・アクチュアリで「危ない」役を演じていた、マーティン・フリーマン。現在シーズン3だが、ウイットや皮肉の効いた会話やシーンがたくさんある。

クリスマスイブのベイカー街221B(221B Baker Street)の仕事場兼住居腰が痛いという家主のハドソン夫人にたいして、シャーロックに恋心をもつ死体解剖所のモーリーが「(仕事場の)死体よりもましでしょう」といい、皆が沈黙するシーン。

他方、片思いのモーリの気持ちもわからないシャーロック。特別な日で、わざわざ彼に対するプレゼントを用意し、ドレッシーに決めて偶然を装いホームパーティに訪れた彼女にたいして、辛辣極まりないプロファイリング。愛のメッセージを最後にみて、驚きをかみ殺して、珍しく「ありがとう」という、愛に鈍感なシャーロックのこれまた皆を驚かせる言葉。

同じAXNミステリー・シリーズでも、「ロンドン警視庁犯罪ファイル」

(原題:Trial Retribution制作:1997年〜2009年)は実に心が重たくなる凶悪犯罪の山。これにたいしてシャーロックは痛快だ。 

年が行くと、あまりに暗く、重いものは敬遠したい。ただシリーズ3の「最後の誓い」は頂けない。頭脳明晰を持ってなるシャーロックが引き金を引くということだが、詳しく書くのはやめておこう。

ともあれ、イギリスのみならず世界を奇抜さで沸かせている21世紀のカンバーバッチ版のシャーロック・ホームズ。

個人的には、その斬新さ、奇抜さで、第1シリーズが出色だと思うが、どれも楽しめる。 

参考ブログ

2014.04.28 Monday「刑事フォイル」(Foyle’s War 2002年放映開始)が面白い

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3656

2010.08.12 Thursdayフィナンシャル・タイムズ、アンジェラ・リッポン、そしてAXNミステリーのことなど

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2476

2011.06.11 Saturday気分転換の時間AXNのBBCTVドラマ Matin ShowのJudge John Deed とAmanda BurtonのSilent Witness

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2847

 

 

 

| 児玉昌己 | - | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
週末に庭の花を詠む 海鳴庵児玉

 週末だが保護者懇談会。いつの間にか本格的な梅雨の日々。



 

菖蒲去り ドクダミ来たりて 我が庭に 雨は漫(そぞろ)に 降りてゆくなり

                    海鳴庵児玉





 参考歌(海鳴庵)

 どくだみや 枯れた菖蒲に 十の文字 広がる草に 白映えて咲き

| 児玉昌己 | - | 18:21 | comments(0) | trackbacks(0) |
トルコの大統領制強化を目指す改憲を阻む総選挙 与党AKPの敗北とクルド系国民民主主義党(HDP)の勝利

海の向こうでは、トルコに関し、以下の大ニュースが飛び込んできた。

与党AKP、過半数割れ=大統領の権限強化困難にトルコ総選挙時事通信68日、がそれだ。

 時事によると、クルド系政党の国民民主主義党(HDP)が、国会での議席獲得に必要な全国得票率10%を上回り、初めて政党として議席を得る見通しとなった、とのことだ。

 このニュース、トルコ政治において、2つの点できわめて重要である。

1つは統治制度を揺るがすトルコ国内の政治的意味。第2はEUへの加盟交渉への意味である。

トルコのEU加盟については、1987年にEUに加盟申請をしたが、その時はEU12か国。それから30年ほどが経ち、28か国になった今もなお、トルコ加盟は進んでいない。

 今日は、EUから離れて、今回のトルコ議会の総選挙の国内政治への意味について書こう。

トルコが議院内閣制から強力な大統領制をもたらす憲法改正に向かうことを阻止したといえる。

基礎データを言えば、現在のトルコ議会は1982年の憲法改正で一院制として改組。

定数550名、任期4年(2007年の憲法改正で5年から改められた)。選挙制度は、大選挙区拘束名簿式の比例代表制(ドント方式)。憲法改正には330議席(5分の3)で発議権が付与され、単独での可決には、367議席(3分の2)が必要とされる。

この状況下でエルドアン大統領率いるイスラム系与党・公正発展党(AKP)が13年続いた議会過半数を割り込み、それだけでなく、同党が推進してきた憲法改正の動きが、デミルタシュ共同党首率いるクルド系政党の「国民民主主義党」(HDP)によって完全に阻まれたということだ。

ちなみにトルコでは7700万余の人口に対して、クルドは1100万から1500万といわれ、国家を持たないクルド人の中では、トルコが最大勢力を擁している。

トルコではそれゆえ、クルド問題が、国家の存立にもかかわる深刻さをもってその政治に影を投げかけてきた。

特にトルコ在住のクルド系住民については、1991年までクルド語の使用が禁じられ、少数民族として存在すら認められていなかったという過去がある。

現代におけるトルコのクルド問題については、小島剛の「トルコのもう一つの顔 (中公新書1991)の驚くべきルポを参考のこと。

ついでに言えば、同国における最近の少数者保護、人権擁護の強化については、EU加盟を意識した政府与党による環境整備の賜物であり、EUによる側面支援ということもでき、EUの政治的影響力の大きさも忘れてはならない。

すなわちEU崩壊、ユーロ壊滅などと、赤子の一つ覚えみたいにのたまうEU評論家がおよそあずかり知らない世界であり、周辺国へのEUの影響力の巨大さである。

話を戻そう。

今回、HDPはこの選挙で初めて、政党として候補者を立てて、全国的に戦っていた。しかも、HDPの政界進出についていえば、国会での総選挙では、議席獲得には全国得票率10%が必要という異常に高い敷居値が設定されていることで、大きなハードルとなっていた。

すなわち、同党の得票がそれに達しなければ、同党支持のすべてが死票となり、議席は一挙に与党AKPに有利に配分されることになり、同党が反対する与党による大統領権限の強化を内容とする憲法改正を結果的に促進する危険をはらんでいたのである。まさにHDPにとっては、大きな賭けであった。

今回、その賭けにHDPが勝ち、初めて政党として議席を得る見通しとなった。しかも産経によれば、13%程度を得票するとのことで、一挙に80議席程度の議席獲得になると伝えている。

総選挙における敷居値は、比例代表制を採る国家においては極めて重要である。

比例代表制を採る欧州の国家の政治においても、4%の敷居値をクリアして、極右勢力が一挙に議会進出する事例を我々は、オーストリアでみた。

ちなみにドイツのワイマール憲法下の選挙制度は、敷居値がない完全比例制で大量の少数党が成立し、政局を極端に不安定にし、結果、ナチスを生んだという苦い経験があり、それゆえ現在、国内の総選挙では5%条項がある。

比例制度を持って選挙法の準則とするEUの議会の欧州議会でも、ドイツなどの5%を上限として敷居を認めており、15の加盟国が5-%の間で、これを採用している。

さらに言えば、それがゆえに、EUを争点とするべきにもかかわらず、加盟国を選挙区とすることで、EUの選挙では市民の政治的意思表明における差異が残っていて、ゼロから5%まで加盟国で差がある敷居値の統一(調和化)もEU選挙法の課題である。究極的解決法は単一欧州選挙区での統一された投票規則の導入ということになる。

トルコのEU加盟が認められるとすれば、その条件は10%という異常な敷居値の大幅縮減にも及ぶはずである。

ただし、トルコのEU加盟国の可能性について言えば、私はそれはEU側の全会一致制度であるがゆえに、特に仏の国民投票があるがゆえに、ありえないと考えている。

トルコの国内政治に戻れば、敷居値が高くなれば、少数政党の国政進出が厳しくなる。10%の敷居というのは、いかにも合理的根拠を欠くというほどに異常であり、明らかに少数者の排除というべき制度である。

ちなみに2002年のトルコの選挙には10%の敷居値が故に、投票の半数近くの46.3%(1400万票余)の票が死票と化したという、反民主的結果を生んでいる。http://en.wikipedia.org/wiki/Election_threshold

今回、トルコでの総選挙でのHDPの得票が10%を超えた事実は、同国政治史上空前の瞠目すべき出来事で、政府与党のAKPへの強い不満と、憲法改正への危惧がその背景にあるとみてよい。

ともあれ、HDPが今回、国政選挙に打って出て、しかも13%余を得票したというのは、クルド系市民以外の支持も広く獲得した結果であると考えられる。

 トルコ政界へのHDPの大量進出のインパクトがどんなものとなるか、今後の同国の行方に直結することになる。しっかり見極めていく必要がある。

 トルコは、世俗化したNATO加盟国として、中東の地政学に決定的に重要な地位を占めているのであるから。

 なお、トルコの総選挙の結果については楽天に以下の数字が出ている。

NTV調査

総有権者数:        5,663万2,889人
開票率:                  100%
投票数(開票率により変化)  4,653万8,610票
有効投票数(同上)      4,520万  383票
投票率(同上)                 84%
           (%)        獲得議席
AKP        40.7        255
CHP共和人民党   25.1        133
MHP民族行動党   16.4         82
HDP        12.9         80

http://plaza.rakuten.co.jp/istanbul1453/diary/201506080000/

参考記事

トルコ総選挙7日投票 クルド系躍進の兆し 強権与党へ反発強く産経新聞67

参考ブログ

2007.10.29 Monday 開けられたもう一つのパンドラの箱−クルドとトルコ 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=923

2006.12.15 Friday トルコのEU加盟とその問題

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=380






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