イギリスといえば、EU残留の可否を問う国民投票が6月23日と決定した。
懇意にさせていただいている方々から、どう思うかと問われてた。
以前なら、逡巡、躊躇していただろうが、還暦もはるかすぎたこともあるのだろう。明確に意見を言いたくなっている。
イギリスはEUから出るほうが幸せなのだ、つまりEU離脱に賛成であると思っている。
理由は、簡単である。前日ブログしたボリス・ジョンソンロンドン市長の考えに同意するからである。
すなわちイギリス人が全く加わる気がない欧州連邦の創設に、独仏ベネルクスなど統合推進派のEU諸国は、鋭意取り組んできたし、これからも連邦的統合は確実に進んでいく、というボリスの認識にまったく同意するからである。
EUは、欧州連合であることを否定しつつ、ユーロ圏を中核として、より整合性のとれた欧州連邦を目指して、確実に進んでいく。
それに、イギリスの反EU派にとって、EU離脱がいかに経済合理性に反しているのか、身をもって経験する時が来たという気持ちがあるからである。
キャメロンがイギリスの国民投票を発表するや、直ちに英通貨ポンドは下落した。反EU派のギデオン・ラフマン辺りに紙面を与えていたFinancial Timesもこのところ、EU残留の必要性を言うデータを大量に流し始めた。
1年半前の報告書が明らかにしている、離脱の場合の、シティにある米有力銀行をはじめとした各国外銀のアイルランドへの大量出国(エクソダス)もみてみたい。
Financial Times: Britain’s EU exit could lead to banking exodus.EurActiv with Reuters2014年8月18日がそれだ。
ちなみに同国の金融サービスは140万を雇用し、2011−12年では、所得税で275億ポンド、全体の12%をカバーしている。
関税同盟から離れることで、イギリスを除く、4億4千万のEU市場に無関税でアクセスできた英工業製品が無税の措置の取り消しによる競争力の低下による苦境も、見てみたい。
それでも、イギリス人がEUと一緒になる意味を見出さない限り、EUにいる意味もない。
EU改革 と言いつつ、実のところイギリスの国家利益だけを強引に主張し、あまつさえ離脱となっても首相の椅子を保持すると語ってきたこのピエロ的首相キャメロンが、その地位をボリスらEU脱退派に奪われ、党内分裂さえ引き起こす、その様もみてみたい。
EUを通した欧州統合の努力を徹底して攻撃し続けた英独立党UKIPは、EUから離脱すれば、それは歓喜の瞬間となる。 ただし、喜びのその絶頂の瞬間に、 党首ファラージュとこの党は、欧州議会でのイギリス選挙区第1党の地位を直ちに失い、英下院議席650議席中わずかに1議席という元の泡沫政党に逆戻りになる。その様も見たい。
実際、この政党、膨大な死票を出す自国イギリスの完全小選挙区制度の下で、徹底的に締め出され、他方、欧州では比例制をとる欧州議会という最も民主的なEUの制度の下で、議席を初めて獲得し、自己の大衆迎合のイデオロギーを展開できていたことを思い知ることになるだろう。
イギリスがEUから離脱すれば、EUこそが、UKIPにとって、その党組織の成功に最も貢献した存在であったことを最大限の打撃で思い知ることになるだろう。
また、15年の総選挙でスコットランド選挙区定数59の内、56議席とその大半を手中にした親EU派のスコットランド民族党SNPのイングランド政治家への怒りと、イギリスからの分離独立の動きも見てみたい。
イギリスはUKから、リトル・イングランドに成り下がる可能性もある。EUから離脱したことで国家の分裂、解体となる可能性もある。
さらには欧州議会で反EU、EU懐疑派が一掃されるのも見てみたい。
すなわち、欧州議会において、イギリス保守党が中核となって結成した院内会派、欧州保守改革ECR、およびUKIPが中核となっている欧州の直接民主主義EFDDも消滅する可能性が高い 。この2つの反EUの院内会派が解体することで、欧州議会内の反EU議員の多くが一掃される。その様も見てみたい。
EUの運営についていえば、共通する仲間だけによるEUの運営も、どれだけ楽になるだろう。
なお、EUの側からイギリスのキャメロン保守党政権について、シュルツMartin Schulz 欧州議会議長は、ロンドン大学経済学部LSEでの講演の中で、以下 語っている。
「イギリス人は我々の善意を飽むことのない要求で試している。彼らは押しまくり、主張する。一方的に、常時要求するばかりだ。同僚の多くは陰でいっている。転がる石を止めるなかれ、イギリス人が、もしEU離脱を望めば、そうさせたらいい」と。
"The British often test our patience and good will with their continuous demands. They push hard. They insist. They just don't let go. Many of my colleagues say behind closed doors: 'Don't stop a rolling stone. If the Brits want to leave, let them leave.'"
Turbulent Times - Speech at the London School of Economics Speeches. Internal Policies and EU Institutions London 05-02-2016.
かくして、32年前、欧州統合の知的シンボル、ベルギーの欧州大学院大学(College d' Europe)に学んだEU研究者と しては、イギリスのEU離脱、大賛成であると、いうことになる。
最後にひとこと
有価証券などの金融資産を保有している当ブログ読者の方は、イギリスのEU離脱に伴う世界金融への大きな影響のため、多少の資産目減りを、しばらくの間、覚悟されよ。
参考ブログ
2016.02.26 Friday 坂井ロンドン支局長よ、EUは「国家連合」を目指しているからとはロンドン市長は言っていないよ。「連邦的同盟」federal unionを目指しているから離脱すべきと言っている
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3984
2015.11.11 WednesdayEUに居場所がなくなるイギリス great statesmanとordinary politician
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3928
2014.08.25 Monday 金融部門のExodus(大量出国)の危険 FTが報じたキャメロンが進めるEU離脱の悪影響
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3726