児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
英のEU離脱 個人的には賛成である(最大の皮肉を込めて)

  イギリスといえば、EU残留の可否を問う国民投票が623日と決定した。
   懇意にさせていただいている方々から、どう思うかと問われてた。
   以前なら、逡巡、躊躇していただろうが、還暦もはるかすぎたこともあるのだろう。明確に意見を言いたくなっている。
  イギリスはEUから出るほうが幸せなのだ、つまりEU離脱に賛成であると思っている。
   理由は、簡単である。前日ブログしたボリス・ジョンソンロンドン市長の考えに同意するからである。
  すなわちイギリス人が全く加わる気がない欧州連邦の創設に、独仏ベネルクスなど統合推進派のEU諸国は、鋭意取り組んできたし、これからも連邦的統合は確実に進んでいく、というボリスの認識にまったく同意するからである。 
   EU
は、欧州連合であることを否定しつつ、ユーロ圏を中核として、より整合性のとれた欧州連邦を目指して、確実に進んでいく。
  それに、イギリスの反EU派にとって、EU離脱がいかに経済合理性に反しているのか、身をもって経験する時が来たという気持ちがあるからである。
   キャメロンがイギリスの国民投票を発表するや、直ちに英通貨ポンドは下落した。反EU派のギデオン・ラフマン辺りに紙面を与えていたFinancial Timesもこのところ、EU残留の必要性を言うデータを大量に流し始めた。
    1年半前の報告書が明らかにしている、離脱の場合の、シティにある米有力銀行をはじめとした各国外銀のアイルランドへの大量出国(エクソダス)もみてみたい。
 Financial Times: Britain’s EU exit could lead to banking exodus.EurActiv with Reuters‎2014‎‎8‎‎18‎日がそれだ。
  ちなみに同国の金融サービスは140万を雇用し、201112年では、所得税で275億ポンド、全体の12%をカバーしている。
 関税同盟から離れることで、イギリスを除く、4億4千万のEU市場に無関税でアクセスできた英工業製品が無税の措置の取り消しによる競争力の低下による苦境も、見てみたい。

  それでも、イギリス人がEUと一緒になる意味を見出さない限り、EUにいる意味もない。
   EU
改革 と言いつつ、実のところイギリスの国家利益だけを強引に主張し、あまつさえ離脱となっても首相の椅子を保持すると語ってきたこのピエロ的首相キャメロンが、その地位をボリスらEU脱退派に奪われ、党内分裂さえ引き起こす、その様もみてみたい。 
   EUを通した欧州統合の努力を徹底して攻撃し続けた英独立党UKIPは、EUから離脱すれば、それは歓喜の瞬間となる。  ただし、喜びのその絶頂の瞬間に、 党首ファラージュとこの党は、欧州議会でのイギリス選挙区第1党の地位を直ちに失い、英下院議席650議席中わずかに1議席という元の泡沫政党に逆戻りになる。その様も見たい。
 実際、この政党、膨大な死票を出す自国イギリスの完全小選挙区制度の下で、徹底的に締め出され、他方、欧州では比例制をとる欧州議会という最も民主的なEUの制度の下で、議席を初めて獲得し、自己の大衆迎合のイデオロギーを展開できていたことを思い知ることになるだろう。
 イギリスがEUから離脱すれば、EUこそが、UKIPにとって、その党組織の成功に最も貢献した存在であったことを最大限の打撃で思い知ることになるだろう。

  また、15年の総選挙でスコットランド選挙区定数59の内、56議席とその大半を手中にした親EU派のスコットランド民族党SNPのイングランド政治家への怒りと、イギリスからの分離独立の動きも見てみたい。
 イギリスはUKから、リトル・イングランドに成り下がる可能性もある。EUから離脱したことで国家の分裂、解体となる可能性もある。
   さらには欧州議会で反EU、EU懐疑派が一掃されるのも見てみたい。
 すなわち、欧州議会において、イギリス保守党が中核となって結成した院内会派、欧州保守改革
ECR、およびUKIPが中核となっている欧州の直接民主主義EFDDも消滅する可能性が高い 。この2つの反EUの院内会派が解体することで、欧州議会内の反EU議員の多くが一掃される。その様も見てみたい。
   EUの運営についていえば、共通する仲間だけによるEUの運営も、どれだけ楽になるだろう。
 なお、EUの側からイギリスのキャメロン保守党政権について、シュルツMartin Schulz 欧州議会議長は、ロンドン大学経済学部LSEでの講演の中で、以下 語っている。
 「イギリス人は我々の善意を飽むことのない要求で試している。彼らは押しまくり、主張する。一方的に、常時要求するばかりだ。同僚の多くは陰でいっている。転がる石を止めるなかれ、イギリス人が、もしEU離脱を望めば、そうさせたらいい」と。

"The British often test our patience and good will with their continuous demands. They push hard. They insist. They just don't let go. Many of my colleagues say behind closed doors: 'Don't stop a rolling stone. If the Brits want to leave, let them leave.'"

Turbulent Times - Speech at the London School of Economics Speeches. Internal Policies and EU Institutions London 05-02-2016. 
  かくして、32年前、欧州統合の知的シンボル、ベルギーの欧州大学院大学(College d' Europe)に学んだEU研究者と しては、イギリスのEU離脱、大賛成であると、いうことになる。

最後にひとこと
 
有価証券などの金融資産を保有している当ブログ読者の方は、イギリスのEU離脱に伴う世界金融への大きな影響のため、多少の資産目減りを、しばらくの間、覚悟されよ。

参考ブログ
2016.02.26 Friday  坂井ロンドン支局長よ、EUは「国家連合」を目指しているからとはロンドン市長は言っていないよ。「連邦的同盟」federal unionを目指しているから離脱すべきと言っている

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3984
2015.11.11 WednesdayEUに居場所がなくなるイギリス great statesmanordinary politician
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3928

2014.08.25 Monday 金融部門のExodus(大量出国)の危険  FTが報じたキャメロンが進めるEU離脱の悪影響
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3726

 

| 児玉昌己 | - | 00:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
坂井ロンドン特派員よ、EUは「国家連合」を目指しているからとはロンドン市長は言っていないよ 「連邦的同盟」federal unionを目指しているから離脱すべきと言っている

  2016年218-19日の欧州理事会(EU首脳会議)で、EU残留条件がイギリスと27カ国の間で一応まとまり、623日がEU残留を問うイギリスの国民投票が本決まりとなった。
保守党内では、キャメロンの保守党政権の閣内が分裂し、5名が離脱を支持する状況である。この動きに関連して、今最も注目されているロンドン市長がEU離脱を支持することを表明し、EU離脱に大きくシフトした感じのイギリスである。
 ところで、これに関して毎日のロンドン支局長の坂井隆之が「ロンドン市長がEU離脱を支持」毎日新聞2016223日 東京朝刊と伝えてきている。
 ここでは、見過ごせない重要な誤訳がある。

 この記事は、ジョンソン氏が大手紙デーリー・テレグラフへの長文の寄稿でEUを離脱すべきとする理由を語ったことに関連して出されたものである。
 ボリス氏寄稿を伝えるテレグラフの原文見出しは以下だ。
Boris Johnson exclusive: There is only one way to get the change we want – vote to leave the EU. David Cameron has done his very best, but a vote to Remain will be taken in Brussels as a green light for the further erosion of democracy. By Boris Johnson Telegraph. 22 Feb 2016.
 ここで語られるボリスの議論ついて、毎日の坂井氏は以下伝えた。
「我々が求める変化を得るには離脱に投票するしかない。EUは国家連合を目指しており、ほとんどの英国民とは相いれない」と説明した。
 しかし、坂井記者よ、「EUは国家連合を目指しており」というところは明らかな誤訳だ。
 英有力保守紙テレグラフに寄稿したボリスの原文を読むと、欧州人が「 単一の真の連邦的同盟」(
 a truly federal union)を創設したいのである、といっている。
 連邦と国家連合では天と地の差があることを知るべきだ。

 ここを間違うと、EUという政治組織の政治原理とその性格も、そしてイギリスのEU離脱を支持するロンドン市長の主張の理由も全く理解できなくなる。
 関係する箇所の英文を示せば、The fundamental problem remains: that they have an ideal that we do not share. They want to create a truly federal union, e pluribus unum, when most British people do not.
 ちなみに、エ・プルリブス・ウヌム ( e pluribus unum)とはラテン語で「多数から一つへ」ということであり、合衆国を意味するとウィキペディアにある。
 イギリスがEUを離脱すべきとするボリスの理由は、イギリス人が思ってもいない欧州連邦を形成するというそのことにある。
 現在のEUでも、すでに国家の主権的権限の重要な部分が国家の側にいまだある国家連合を超えてさえいる。
 通商政策、農業政策などは完全に
EUが所管している。
 EU代表部がEUを「欧州連合」とする使ってはならない訳語を採用しているから、こうした誤訳が出てくるのかもしれない。
 EUは常時そのうちに欧州連合を否定し、欧州連邦を志向する政治装置、例えば、特定多数決などを内在している。国家主権の絶対性が多数決では貫徹できず、国家主権の最高絶対性が確保できない。国家間組織の国際組織においては特異なことである。

 ちなみにEUを「欧州連合」とする邦語表記は1996年に欧州社会党から欧州連合の使用停止と「欧州同盟」への変更を求める書簡がだされているのである。私事だが私が当時英文論考を準備して現在欧州議会の欧州社会党の有力議員(英労働党)のコルベット氏に問題を提起し、書簡を出してもらったのである。
 EUの統合が、ロンドン市長のボリス・ジョンソンが言う如く、フェデラル・ユニオン「連邦的同盟」に向けて進めば進むほど、国家連合を意味する「欧州連合」という表記と、日々連邦の様相を濃くするEUの実態とのかい離が鮮明になる。
 ever closer unionは、EUの到達地点に対する無(期)限的性格をうたったものであり、その最終到達点は最低でも欧州連邦、最大、到達地点は欧州合衆国となる。
 それだからイギリスはそれでは困るしそれに加わる気はないというのである。

 ユニオンを「連合」とする日本では、「さらに緊密な連合」なとどいう訳語となる。であれば、統合の到達地点は単なる連合にとどまることになる。「さらに緊密な(連邦的)同盟」とすべきなのである。同盟とは明示的、または暗示的に「連邦の」(Federal)という語をEU政治では伴うと理解してよい。
 EUで使用される、関税同盟、銀行同盟、政治同盟、通貨同盟、財政同盟など、ユニオンという語はすべて国家の主権的権限のEUへの譲渡に係り、それに同意するEUと加盟国の関係をあらわす言葉である。
 無理やりフェデラル・ユニオンを「連邦的連合」などとすれば、それこそ政治学の用語としては、まったくのナンセンス。意味不明となる。社会科学は用語に厳密でなければならない。
 遺憾ながら、わが国では、この識別のなさによって、
EUの性格とイギリスの理解とが、意味不明となる。まったく、困ったことだ。
以下参照
2010.11.02 Tuesday欧州連合を否定しつつEU(欧州同盟)は連邦主義的権限強化に向かう 上 金融財政部門でのリスボン条約改正の動き
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2575
 ともあれ、この市長は、国家連合(confederationという言葉を一度もそこでは使っていない。ここを間違われると、まったく意味不明となる。
 ちなみにボリスはこの寄稿の中で、EUについて、federal(連邦の)という形容詞を3回使っていることを指摘しておこう。
 蛇足だが、市長ボリス・ジョンソンの寄稿の中には、テレグラフが見出しに使った「さらなる民主主義の侵食」(the further erosion of democracy)という言葉はない。
 テレグラグフが勝手に付加したものである。

 オックスフォード大ベリオール・カレッジBalliol College, Oxford出身で、教養があり、イギリスのインテリの立場からEUを正確に見る彼は、テレグラフのような無様なことは言わない。
 彼は「(欧州が目指す)この連邦主義者の構想は恥ずべき理念ではないことを忘れてはならない」(We should remember that this federalist vision is not an ignoble idea.)と述べてさえいるのだから。
 「国家主権の侵食」(erosion of sovereignty ならボリスも否定はしないだろうが。「民主主義の侵食」とは言っていない。

 ともあれ、正確に伝えるべきものが、「連邦」(フェデラル)を、一方的にソ連型と認識して、蛇蝎のごとく嫌うテレグラフというこの新聞社の反EUイデオロギーで、恣意的に操作されてはかなわない。
 これがゆえに、私はことEU報道に関して、テレグラフ紙をあまり評価しないのである。

| 児玉昌己 | - | 07:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
デマゴギーと大衆迎合 誤った「約束」に立った定数削減論議 

 政党間の「約束」を是としたような毎日の記事が年末に出ていた。
衆院改革答申案 現実的な策ではないか 毎日新聞20151219日がそれだ。
 現在でも、民主サイドでは、同じような議論がなされている。約束をもとにという議論の問題を、毎日紙の社説を使い、みてみよう。
 社説氏は以下書く。
「民主党政権下の12年秋、当時の野田佳彦首相と自民党の安倍晋三総裁(現首相)が消費増税に合わせ「国会も身を切る覚悟が必要」として定数削減を合意した経緯がある。約束が口先だけで終われば政治不信は今以上に拡大するはずだ。」
 定数についても、以下いう。
 「日本は先進各国に比べ国会議員数が決して多いわけではない。「何人ならば適正か」は議論の分かれるところだ。単に減らせばいいという考え方は、ひいては議会不要論につながりかねず、短絡的だというべきである。」 
 実際は私がこのブログで提示、指摘してきたように、議員定数は全く過少というべきであり、欧州との比較では特にその少なさは目立つ。スウェーデンは人口比で、日本の議員の6.4倍、英、3.8倍、伊、仏、蘭は2.7-2.3倍。ドイツでも1.4倍を持っているのだから。
 社説氏よ、もし政党間の「約束」の中身がでたらめなら、どうするのかね。
 貴紙が書くように、政治不信を逆に増す。それを正すことを社説氏は思いつかないのかね。社説氏は自らの頭で考えることを放棄している。
なにより、上記にある「身を削ること」が、国民の代表である議員の定数を削減するのと何の関係があるのかということだ。
 議員無能論から、定数過剰論、定数削減論という流れの中で、そして行財政改革という流れの中で、議員の議席がカネの問題にすり替えられ、欧州の議会の議員定数についての理解もまるでなく、民主は当時、政権与党として大衆迎合をぶち上げ、メディアも定数削減が善であるかのごとく、無批判にそれを報じていた。
 いま定数過大論による削減という民主のでたらめな議論は、比較政治をもとにした欧州との議員定数比の事実を提示されることで、ようやく終息しつつある。
 産経も、読売も削減論の問題を指摘し始めた。 以下がその始まりの記事だ。
「一票の格差」があってもいいじゃないか! 紋切り型の是正と定数削減は地方の切り捨てにすぎない 産経20151228
議員定数削減 大衆迎合の主張は嘆かわしい 読売社説20141209
Parties’ demagogic calls to curtail number of Diet seats deplorable.The Japan News 英文読売. December 09, 2014.
 かつて定数削減については、民主は80議席削減といっていた。橋下維新に至っては、参院廃止、衆院半減と500もの、大衆迎合の世迷言を言っていた。まさに漫画的といえる大衆迎合であった。
 過日、国会論戦で維新の松野氏が10議席など簡単じゃないですか、と安倍首相に問うていた。だが、地方の利益の代表者であるからそう簡単には、と首相が反論していた。
 ようやく議席の意味が総理にも理解できて来たかという思いで見ていた。
 毎日よ、以下は4年前に貴紙が伝えた民主の制度「改革」の内容だ。
 「衆院選挙制度改革の与野党協議会座長を務める民主党の樽床伸二幹事長代行は郡山市で記者団に公明党などが求める「小選挙区比例代表連用制」の導入について「比例定数80削減を実現するためにすべてのことを考える」と述べている。

 選挙制度改革>樽床氏、「比例80削減で連用制」検討 毎日新聞 2012128
 維新については以下だ。
大阪維新の会>公約に「衆院の定数半減」明記へ毎日新聞 2012826()217分配信
 もっとも3か月後にはあっという間に、以下のように公約を変更する無様さだ。
「衆院定数半減」盛り込まず=維新公約【12衆院選】(時事通信2012/11/23
  日経の2013年には6月27日付問題社説見出し−「こんな体たらくの参院ならいらない」を掲げ、党利党略の政党政治の問題を参院廃止論にすり替え、誘導する体堕落だった。しかも、あろうことか、別の特集では中国共産党の翼賛機関でしかない代議員数3千余の全人代まで議会の数の国際比較に入れていた。 
 現行の定数削減について戻ろう。
 毎日よ、こんな議論と政策が平然と語られ、メディアはそれを報道という名で、垂れ流してきたのだよ。
 民主は、そんな今から見ると荒唐無稽な、しかも比例に特化した80議席減の論を張り、他党との約束として言い続けている。それが今の「約束」だ。
 そんな誤った認識と議員定数についての理解に基づく反民主の約束にたいして、有権者は2度の総選挙で、徹底した懲罰を与えた。そんな民主の元政権の「約束」に意味があるのかね。
 朝日は、衆院予算委員会での野田、安倍の討論について、定数削減「安倍さん、どや顔で言うな」民主・野田前首相 朝日2016220日という記事を出している。だが、主語が違うのではないか。「野田氏よ、どや顔で言うな」ということだ。
 ちなみに、マニフェストで消費増税をしないといいながら、導入し、党の分裂を招くなど、公党の「約束」を平気で破ったのが、野田民主だった。君が公約違反をいうかねである。
 実際民主が言うように、比例80削減だったら民主党は消滅していただろう。
 忘れないため以下の2012年総選挙でのデータを載せておこう。ほとんどが比例重複の候補者たちだった。比例80減を唱えつつ、その比例で、菅前首相はじめ、救済されたものも多かった。少しは自己の政策とその姿勢について、自己批判せよということだ。実に無様なことだった。
 閣僚8人、経験者10人が落選=菅前首相は比例で復活時事通信20121217
【復活当選した首相・閣僚経験者】 菅直人前首相(東京18区) 荒井聡元国家戦略相(北海道3区) 海江田万里元経産相(東京1区) 松原仁前国家公安委員長(東京3区) 赤松広隆元農水相(愛知5区) 原口一博元総務相(佐賀1区) 高木義明元文科相(長崎1区)

【落選した閣僚経験者】 鉢呂吉雄前経産相(北海道4区) 鹿野道彦前農水相(山形1区)、細川律夫元厚労相(埼玉3区) 田中慶秋前法相(神奈川5区) 小宮山洋子前厚労相(東京6区) 川端達夫前総務相(滋賀1区) 平野博文元官房長官(大阪11区) 平岡秀夫元法相(山口2区)仙谷由人元官房長官(徳島1区)松本龍元環境相(福岡1区)
 
 ところで、本質的な制度改革の中長期的議論も必要だ。
 云われているアダムズ方式の向こうにあるのは何かね。
 アダムズ方式は都道府県の人口比率を反映しやすいのが特長で合理的な方法といわれている。
 「衆院選の選挙制度改革 「アダムズ方式」は一票の格差を埋められるのか」THE PAGE 222日がそれだ。
 だが、何をもって合理的というのか。
 これは小選挙区制度を未来永劫、固定化する極めて危険な方式である。

 小選挙区を前提とし、人口比で定数を定めれば、人口の大きい東京、神奈川、埼玉などが議席を多数持ち、少数県では限りなく議席がゼロに近づくというだけのことだ。しかも、10年ごとの定数調整という。だがそれは、小選挙区内での議席の調整にしか機能しない。
 1票の格差どころか、全選挙区にわたる小選挙区制度の死票問題こそ憲法違反というべきもので、前々回2012年の総選挙では、小選挙区で投じられた票では、全体で実に56%、3730万票という膨大な死票がでた。この問題については、小選挙区間の調整方式に過ぎないアダムズ方式では、まったく問題にもされない。
 この制度は、一見1票の格差を解消するようにみて、さらに徹底して民意の合法的虐殺状況を固定していく制度である。妖怪映画、「アダムズファミリー」並みの時代錯誤のお化け屋敷と私が評すゆえんである。
 ちなみにアダムズ方式とは19世紀の第6代米大統領(1767-1848)の名からきている。200年ほど前に考案された方式で、まさに古色蒼然という方式である。19世紀の時代錯誤の封建遺制を持ち出してこれを改革というのかね。
 問われているのは、21世紀の衆院選挙制度改革である。
 しかもそのアメリカ、下院任期はわずかに2年、人口が3億を超えても、90年近く不変の下院議員定数435では、100万に2人も確保できず、国民の声もはるかに遠い。それがゆえに、格差全開で、人口比で15%が困窮に喘ぐ貧困超大国である。米貧困者4600万人=過去最多、人口比15―2010914  
 行政府が圧倒する大統領だが、選挙は下院選挙同様、いまだに植民地遺制の驚くなかれ、直接選挙でなく間接選挙(投票総数でゴアに負けていたあのブッシュJrを生んだこともある)で、その共和党の有力候補は、特定の宗教をもって、その入国を禁じるなどと大衆迎合丸出しの、憲法感覚を著しく欠く不動産王だ。
 こと国家の政治を決定する選挙制度では、米国は封建遺制の中に眠りこけているという認識を持つ必要がある。
 日本に戻せば、定数是正のたびに地方の代表は削減され、ただでさ、インフラ、モノ、カネをすべて集中的にそして圧倒的に持っている大都市部の議席が積み上げられるだけではないか。そして地方は代表を失い、確実に死滅していく。
 そしてその行き着く先は、イギリスが苦しんでいる完全小選挙区制度へのシフトである。
 比例は民意を完ぺきに反映し、しかも小選挙区制度の厖大な死票を軽減する意味を持っているが、その削減も佐々木調査会さえも提言している。
 メディアが社説を掲げるとすれば、現行の半数を超える国民の声が合法的に死票として抹殺される小選挙区制度の上に立ち、その強化に手を貸し、地方創成どころか、地方総殺に機能するだけの佐々木調査会の答申そのものを問うべきなのである。
参考ブログ
2015.03.11 Wednesday 日経よ、日本の国会議員定数は並? 過小ではないかね 
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3813
2015.02.14 Saturday
アダムズ方式? 「アダムズ・ファミリー」なみの古色蒼然の、子供だましの衆院選制度改革
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3804
2014.12.16 Tuesday
 自民圧勝の虚と怪 これが小選挙区制だ 得票と獲得議席の著しいかい離 全有権者の25%の支持で76%の議席
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3778
2014.12.18 Thursday
 産経の意味不明の選挙制度関連記事 で、山本記者よ、何をどうしたいのかね
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3780
2014.10.13 Monday
 相変わらず時代錯誤の反民主主義の比例定数削減を唱える民主と維新
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3751
2012.09.02 Sunday
 大手新聞社の政治部記者の選挙認識のレベルに驚く 1-4 毎日用語解説と日経坂本英二編集委員にみる選挙解説の問題 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3259
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3260
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3262
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3262
2012.12.18 Tuesday
これが小選挙区選挙の実態だ 上下 死票は半数以上、3730万票、死票率は実に56.0
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3355
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3356
2012.01.30 Monday
比例80削減は、民意の「扼殺」 1-5 衆参の議席は国権の最高機関の機能の保障であり、財政改革の対象ではおよそない
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3063
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3064
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3065
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3066
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3067
2011.10.04 Tuesday
国会議員定数国際比較についての本ブログ記事への反応
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2947
2011.10.07 Friday
 ウォール街デモに思う 上 貧困大国米市民の悲鳴
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2950
 

| 児玉昌己 | - | 00:54 | comments(0) | - |
宮崎賢太郎先生最終講義に出る
 友人の最終講義と書いた。純心時代に懇意にしていただいた宮崎賢太郎先生のことだった。
 幼児受洗者としての葛藤を抱えた30年の先輩である作家遠藤周作に重ねて、隠れキリシタン研究の35年の蓄積と成果を語られた。そしてその研究成果について、周作存命ならば、喜んでいただけただろうとされた。
 殉教者の美としてとらえられてきた「愛とロマン」の隠れキリシタン認識と決別して、現実のカクレのその後を長期にわたり研究され、群を抜く一書を上梓されている。
 それについてはすでに書いている。
2014.02.01 Saturday 宮崎賢太郎『カクレキリシタンの実像-日本人のキリスト教理解と受容』吉川弘文館 2014 届く
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3613

 
 周作の 存命ならば 喜ぶと カクレの研究 その自負嬉し
                   海鳴庵児玉

 
 追記
 なお最終講義には、片岡瑠美子学長、長野秀樹学科長の他、多くのかつての同僚や友人に交じり、95歳におなりの越中哲也先生(長崎歴史文化協会理事長、元純心女子短期大学教授)
が出席されておられ、ご挨拶できたことがことのほか喜びであった。


 
| 児玉昌己 | - | 13:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
友人の最終講義 それを詠む 海鳴庵児玉
 
 今日は、友人の最終講義。組織に身をおけば、誰にでも定年退職の日は来る。学士会報を見ていると、漢詩でそれを詠まれた方もおられた。それぞれの感慨を秘めたこの日である。  

教壇で 花を頂く 日のあらば いかに想わん 最終講義 

                     海鳴庵児玉
        
| 児玉昌己 | - | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
2階の書斎からの紅梅の様を詠む 海鳴庵児玉
書斎の窓からわずかに視線を下げると紅梅が今年も見事に花をつけ、語り掛ける。それを詠む
 

紅梅は 辺り染め上げ 二階家の 書斎の我に 春を告げたり
                     海鳴庵児玉


海鳴庵参考句歌
2014.02.05 Wednesday
寒む空も 陽光長く なりぬれて 梅の花(か)紅は 輝き増して
梅の髭 君の笑顔の ようであり
2011.02.08 Tuesday 
梅の花 花紅(くれない)の 春の紅 季節誘(い
ざな)う 紅ぞ嬉しき



                 
| 児玉昌己 | - | 00:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
韓国の対北朝鮮政策(2) 韓国の優柔不断、北朝鮮融和主義の結果としての開城工業団地の北朝鮮による接収
 開城工業団地の閉鎖については韓国メディアは漫画的というほどに、悲壮である。
 自国による中断なのか、あるいは北朝鮮による接収なのか。それだけでも地元有力紙は右に左に動いている。

 韓国による主体的な「中断」か、北朝鮮による「接収」かということで、結論から言えば、この施設その地理的条件から、主体は北朝鮮であり、北朝鮮による接収といってよい。
 中央日報の見出し、「開城工団全面中断>朴大統領が強硬対応
開城を置いたまま制裁要求は矛盾」という言葉もむなしく響く。
 むしろ同紙が続報で掲げた 「
北、開城を「軍事統制区域」に南側資産を凍結」 212日というのが、実態なのである。
 開城工業団地について知らない方のために、まず開城工業団地について事実関係を書いておけば、現地の報道を総合すれば、以下である。 
 団地で働く南北の労働者数は2015年現在約5万5000人で、前年より約2000人増、開城団地の年間生産額は、2005年の1491万ドルから昨年は4億7000万ドルに拡大。累計生産額も今年4月時点で28億5000万ドルとなったという。進出企業は 2005年の18社から124社といわれる。
 出所は、ソウル聯合ニュース
2015/07/09 など。
 開城工業団地をめぐる、事業の中断問題は、初めてのことではない。
 北朝鮮の国際法無視のミサイルと核実験の展開では、開城工業団地は、2013年に一時閉鎖されている。その際、進出企業は約7000億ウォン(約668億円・統一部試算)の被害を受けた。そして今回のミサイル発射での韓国側からの初の中断である。
 もとより、中断という表現は主観的で、上述のように北朝鮮にその施設のすべてが接収の対象となり、軍事的統制地域となったということである。

  10日付聯合ニュースでは、洪容杓(ホン・ヨンピョ)統一部長官は「今まで開城工業団地を通じて北に6160億ウォンの現金が流入し、昨年だけでも1320億ウォン(1億1000万ドル)が流入した。政府と民間で合計1兆190億ウォン(約1000億円)の投資が行われた」とし「これが核兵器と長距離ミサイルを高度化するのに使われたとみられる」と述べたと報道。
  同じく報道では、「開城工業団地の稼働が全面的に中断され、現地工場の生産設備、原材料や資材、完成品などを韓国側に回収できなければ、被害額が1兆ウォン(約950億円)に達するという。
 また政府当局者は「開城工業団地の全面中断は北の勤労者の賃金など毎年1億ドルにのぼる資金源を遮断する効果がある」と説明しているとのことである。

 開城操業中断:「死刑宣告」に進出企業呆然、設備撤収に懸念も朝鮮日報 211
 そして 洪長官は10日の声明で「政府はこれ以上開城工業団地の資金が北の核とミサイルの開発に利用されることを防ぐため、開城工業団地を全面中断することにした」と発表した。
 
 本ブログで問題にしたいのは、であれば、稼働
13年目になる開城工業団地はいったい何であったかということである。
 開城工業団地が北朝鮮領内におかれると決定された時点から、この施設が、韓国人ともども、有事には、簡単に人質となることは明白であって、この結果は分かったではないかということである。
 無様極まりない金大中の太陽政策に発する北朝鮮への歴代政権の融和政策であるが、軽水炉提供をEUも入る形で、国際的に約束し、その施設の完成までほぼこぎつけ、しかも施設がトラックターなどすべて北朝鮮の手に落ちた朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)プロジェクトの事例もあった。今回の開城工業団地接収は、その最大のものであった。
 その歴代政権の対北朝鮮政策自身が、根源的に問われているのである。
   この国家には対日関係の歴史的総括はあっても、敵として向き合うべき、北朝鮮への自国の政策の総括という言葉は、およそ無縁なのかと、問わざるを得ない。 すでに「主敵」という言葉はなくなっているようだが。
  この自国の生存に直結する事件であるにもかかわらず、さらに深刻なのは、野党の反応である。
 韓国野党の開城工業団地閉鎖の反応については、同じく中央日報が報じている。
  それによると、「共に民主党」の金聖洙(キム・ソンス)報道官は「今回の措置は開城工業団地の永久閉鎖につながる可能性が非常に高い」とし「全面的に再検討することを強く促す」と語ったという。
また国民の党も、金根植(キム・グンシク)統一委員長が「開城工業団地閉鎖方針は実効性のない自害的制裁」とし「政治・軍事的な緊張の中でも最後まで守ってきた南北関係の最後の砦を政府が自ら閉鎖するのは南北関係の完全破綻を意味する」と述べたと伝えられている。
 ため息の出る親北朝鮮独裁丸出しの韓国野党の動揺ぶりだ。
 対日強硬姿勢のこれらの野党。穿っていえば、
北朝鮮が開発している核ミサイルが自分たちに向けられているということも知ろうとせず、この核ミサイルも、同じ民族のもので、いずれは、我々のものとなるとでも思っているのだろうか。
 はたまた、北朝鮮独裁の維持が、北朝鮮の同胞を、圧政と隷属の中に置き続けるということに、韓国の自称人権派、自称進歩派が手を貸し続けているということも知ろうとしない、ということだ。罪深いことだ。
 
 衛星打ち上げもロシアの手を借りて、さらに失敗している韓国である。
 他方、民生を顧慮せず、持てる収奪した経済資源を核開発の一転に傾注しているのが、北朝鮮だ。
 そして確実にその力を増大させている北朝鮮の弾道ミサイル開発と、軌道に乗せたというこの結果は、韓国の歴代政権と野党が自らが招いたという冷厳な事実を、メディアともども理解すべきだろう。 
 韓国の原則を欠いた優柔不断は、対中政策も同様である。 

  蛇足だが、北朝鮮の脅威を受けて、対中関係で逡巡していた戦域高高度防衛ミサイル(THAAD/射程距離
200250キロメートル。迎撃高度は40150キロメートル)の在韓米軍配備決定にようやく韓国政府も動き始めた。
 もっとも、それでさえ、韓国政府関係者によると、「中国からなるべく遠い東海(日本海-児玉)側に」ということである。それによって、首都のソウルがTHAADの射程外に置かれるというこれまた漫画的な状況も朝鮮日報が伝えている。
 自らの確固たる外交スタンスは、侵略政策を放棄して70年になる日本に対する反日の政策があるだけにみえる。
 そしてその結果、韓流はおろか、不必要に日本人の嫌韓を強め、親韓派まで遠ざけ、経済では、日韓スワップも自ら放棄し、危機時における通貨防衛さえ厳しくなり、対日赤字は積み上がっている。
  他方で、北朝鮮と中国にはもとより、仁川上陸作戦で、韓国という国家自体の物理的消滅を防いでくれた同盟国の米国に対しても、右顧左眄に終始している。
 実際、
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、あろうことか、2015年93
日に中国・北京で行われる軍事パレードに出席さえしていた。朝鮮戦争では父君も参戦し、同胞や米軍や国連軍将兵が多数血を流した相手なのにである。
まさに、「蝙蝠」国家というべきであろう。

 結論

  開城工業団地については、まったく同じ指摘を、9年前に以下ブログしているのだが、ため息の出る韓国の無原則なる対北朝鮮政策である。
  韓国のこの目も当てられない優柔不断。
 その結果は、年ごとに脅威を増していく。自国のみならず、日米に対してもである。対
北朝鮮融和政策の政策は、東アジアどころか、米国本土への射程を持つ核ミサイルの脅威へと自ら手を貸して、事ここに至っている、と述べて結論としよう。


2007.10.13 Saturday 南北和解のシンボルの惨憺たる現状 開城工業団地
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=896

 
参考記事

THAAD配備問題を協議 韓米が月内に共同実務団稼動」朝鮮日報 2016/02/11
<開城工団全面中断>北、開城を「軍事統制区域」に南側資産を凍結中央日報日本語版 212
開城工団全面中断>1320億ウォンの金正恩の金脈を遮断 中央日報20160211
開城工団全面中断>韓国政府、184人の安全帰還が最優先北が拘束すれば対策なし20160211日中央日報
開城工団全面中断>朴大統領が強硬対応「開城を置いたまま制裁要求は矛盾」
20160211/中央日報
開城操業中断:「死刑宣告」に進出企業呆然、設備撤収に懸念も朝鮮日報日本語版 211
北朝鮮ミサイル発射費用 開城団地収益の2〜3年分 ソウル聯合
北朝鮮、期限40分前に追放を通知関係者は身一つで開城工団を後に ハンギョレ新聞 212

追記
なお、中央日報は  【中央時評で】なぜ対北朝鮮政策は失敗するのか(1)(2)を掲載した。
「4回も北朝鮮が核実験をし、光明星ミサイルを発射するまで、我々の政治と政府は同じ失敗を繰り返した。」とは米国帰りの キム・ビョンヨン・ソウル大経済学部教授の言だ。
 失敗はなぜ繰り返されるのか。それは北朝鮮の独裁者が I die, but you die という思想にあり、核のみを自己の王朝の維持の最重要課題と金正恩が考えていることであり、なにより民生を考え、選挙による政権交代がある合理的な国家であるという認識を捨て、北朝鮮認識を根底から改めるべきである。 


2016.02.12 Friday
韓国の対北朝鮮政策 (1) EU専門家が見る北朝鮮弾道ミサイル実験2016.2.
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3976



 
| 児玉昌己 | - | 00:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
韓国の対北朝鮮政策 (1) EU専門家が見る北朝鮮弾道ミサイル実験2016.2.
 北朝鮮の弾道ミサイル実験の後、開城工業団地が北朝鮮によって軍事的に支配された。
 韓国は右往左往だ。

 皆さん、開城工業団地ご承知だろうか。今日は朝鮮半島について書こう。
実はこの問い、2007年にもこのブログで発しているのだ。 
南北経済協力の象徴として、このプロジェクトは基本的には金大中の「太陽政策」に発し、13年の実績がある。
 特に、大統領時代の不正で拘束され、拘束中に命を絶った盧武鉉ら独裁容認の親北派によって推進されてきたものだ。

彼についての、私の評価は以下。
2007.02.17 Saturday 歴史語りの歴史知らず 盧武鉉韓国大統領
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=453
開城工業団地についていえば、それが北朝鮮国境内にあることから、南北有事の場合施設と人が丸ごと「人質」とされることは以前から指摘されていた。私も同様に当然、そう書いていた。
 EU専門家の私が北朝鮮情勢を語ることについては、理由がある。拉致被害者の苦痛、苦悶、悲劇に何かEU研究者としてできないかと思っていたからである。
 ベルギーの欧州大学院大学で在外研究をしていた20052月にFinancial Timesがテポドンの射程をイラスト化した記事が出て、さらに刺激されていたのである。
実際、フィナンシャル・タイムズが掲示したその射程は、東アジアのみならず、欧州全域をほぼカバーするほどのものとなっており、NATOも注意を向け始めていた。彼らは、ミサイルについては、北朝鮮独裁政権の「意思」だけでなく、攻撃を受ける危険性があるかどうか、その「能力」にも関心を払っていたのである。
 通常朝鮮半島といえば、当然米国が前面に出てくる。しかし、28を束ねるEUの外交力は圧倒的で、北朝鮮も上手にEUの議会である欧州議会を活用していた。しかし遺憾ながら、当時は、そして今も同じだろうが、日本では、北朝鮮問題でEUの活用がまるでできていないことを感じていたのである。
 それで、外務省も含め、EUの活用の重要性を広く、知らせておきたかったのである。朝鮮専門家にはそれはできないことで、私にとってできる手立てであった。

 その年、帰国して、懇意にしていたEU法研究者の金大淳(キムデスン)延世大教授(ロンドン大LSEでは中村民雄早大教授と同期)の計らいで、韓国EU学会が開催した国際学会(2015.11.25)ソウル・プレジデントホテル)で英語で報告をし、その論文は、以下同学会誌に掲載されている。
Kodama Masami, The EU' Relations with the DPRK: Involvement of the EU and its Implications on the International Politics over the Korean Peninsula, The Journal of Contemporary European Studies (South Korea). Vol. 22. Winter 2005. pp.177-207.
 また「EUの北朝鮮政策−EU外交の可能性と限界」日本EU学会年報2008年第20号 として出した。
EUの北朝鮮政策を扱った邦語文献はほとんどなく、関係者によってレファレンスされている。
その後も折に触れて、欧州からどう見えているのかという視座で、北朝鮮関係の論文を発表してきた。
最近では、パリ政治学院が英語で出している国際問題欧州研究誌ERISに依頼されて北朝鮮をめぐる安全保障問題に以下の書評を出している。
 North Korea and Security Cooperation in Northeast Asia eds .Tae-Hwan Kwak and Seung-Ho Joo. Ashgate 2014. European Review of International Studies.Vol.2.2015. pp.152-156. Reviewed by Masami Kodama (Kurume Uiversity)
 ちなみに、上記の書は、10名余の寄稿者間には対北朝鮮認識には相当の差異があるとはいえ、肝心の編著者については、北朝鮮が粛清された張成沢がいるから合理的選択ができるという前提に立った希望的観測で書かれていて、北朝鮮の国際法規範への順守の感覚の欠如にたいして、目を背け、EUを安保論のモデルになりうるというように、民主主義国家からなるEUについての基本的理解に問題がある内容であった。
 それゆえ、その旨、朝鮮半島での北朝鮮を入れる安全保障協力構想について、米映画「遠すぎた橋」(1977年)のタイトル、A Bridge too farという句をもって結び、批判した。

参考ブログ
2007.01.17 Wednesday韓国EU学会のこと
http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20070117
2014.05.29 Thursday川崎晴朗先生(外務省OB)からEU北朝鮮関係論文をご恵贈いただく        
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3675
2007.11.20 Tuesday EU北朝鮮関係でのある発見 下
http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20071120
2007.10.13 Saturday 南北和解のシンボルの惨憺たる現状 開城工業団地
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=896

2015.07.30 Thursday北朝鮮関係文献の書評をパリ政治学院が出している国際誌に掲載しました
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3876



 
| 児玉昌己 | - | 17:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
"United we can influence events, divided we become totally insignificant." EU創設6カ国会合での伊外相発言
EU’s founding members seek ‘more Europe’, even if it is smaller
EurActiv.com with AFP との記事が出た。
EUの前身である欧州経済共同体を創設した、EU原加盟6カ国の外相はローマに結集した。
そして、記事表題にあるように、「小さくなっても、さらなる欧州統合を求める」と英首相キャメロンが嫌う、
ever closer union
(一層緊密なる連邦的同盟)
の維持と発展を誓い合った。すなわち、イギリス抜きのEUを正式に打ち出したということだ。
 理由は簡単だ。
 「一体となってこそ影響力を行使でき、バラバラでは意味をもたない。」

"United we can influence events, divided we become totally insignificant."
このイタリア外相の言葉に表されている。
 2月のイギリスの離脱を決める再交渉を前に、6カ国の立場を明確にしたということだ。
実際、イギリスはユーロにも関与することもなく、フランス元首相ミッシェルロカールが2014年欧州委員会の新選出過程spitzenkandidat processで語ったように、「欧州統合では、自国の権益のみを考える妨害者でしかない」からである。
 キャメロンのいう
Ever Closer Unionの除去とは以下を意味する。
 すなわち欧州連邦へ向かう
1957年の欧州経済共同体条約前文に導入された欧州統合の無期限性格にたいしてその義務から逃れることを意味する。
 この欧州統合へのキャメロン英首相がしめした無責任さにたいして、あらためてEUを創設した
6カ国がこの言葉にコミットしたことの意義は大きい。
 一種、イギリスへの決別宣言であるといえるかもしれない。

 実際、条約前文の文言の除去は、全会一致が条件である条約改正を必要とする。つまり不可能な使命mission impossibleなのだ。
 イギリスが求めてきた条約改正には応じないということを宣言したことを意味する。

 私見だが、これ以上のEU統合の進展を拒否するイギリスについては、脱退やむなしの立場を採るべきだと思っている。
 でないと、欧州統合は常にイギリスの国家利益により妨害されるということになる。
 それはEU統合の何かを学ぶことなく、EU予算と、自己利益獲得のためだけに加盟しているハンガリーなど、中・東欧国家の同様の主張を認めることになり、欧州統合は、結成時からEUが内含してきた連邦的実質と連帯を欠いた、まさに主権国家の連合体でしかない文字通りの「欧州連合」(European Association)に堕してしまうからである。

 これ以上の、統一性を欠いた例外規定をEUの中に、持ち込むべきではないのである。
参考記事

EU’s founding members seek ‘more Europe’, even if it is smaller
EurActiv.com with AFP, by Georgi Gotev
http://www.euractiv.com/sections/future-eu/eus-founding-members-seek-more-
europe-even-if-it-smaller-321727
参考ブログ

2013.01.18 Friday イギリスのEU脱退論 EUは「イギリスなきEU」を21年経験 上下
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3374
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3375


 
| 児玉昌己 | - | 17:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
「我々は欧州のために戦わねばならない。欧州が問題ではなく、欧州が解決策である」スタインマイヤー独外相
 フェイスブックで世界中の友人からあれこれ、重要記事が送られてくる。
 深夜、欧州議会議員でフェイスブックで友人となっている欧州議会のジョー・ライネン
(ドイツSPD,欧州社会党所属)からフランクフルト・アルゲマイネの記事が送られてきた。
今日ローマ条約での欧州経済共同体創設を記念して原加盟6カ国が会合予定との記事。
その中で、スタインマイヤー独外相がミラノの新聞 "Corriere della Sera"とのインタビュー
で語った
以下の言葉がいい。
 Steinmeier "Wir müssen wieder für Europa kämpfen,denn Europa ist nicht
 das Problem, sondern sie Lösung."
「我々は欧州のために戦わねばならない。なぜならヨーロッパが問題ではなく、解決策
なのである。」と。同感だ。
http://www.faz.net/agenturmeldungen/
unternehmensnachrichten/eu-gruenderstaaten-beraten-in-rom
-ueber-krisen-und-die-zukunft-europas-14060528.html
| 児玉昌己 | - | 09:17 | comments(0) | trackbacks(0) |

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