2016.08.30 Tuesday
Brexit(英のEU離脱)考 英文記事の邦語見出しの差異は英の論理かEUの論理かの相違
英のEU離脱、すなわちBrexitに関して、同じことを扱った記事がBBCとロイターで出ている。 だが、邦語のタイトルの付け方がまるで違う。したがって印象も違う。 それぞれのイデオロギーを示している。 BBCは以下伝えている。 英EU離脱】対応間違えばEU崩壊=独副首相BBC News 8月29日 原文は以下だ。 Brexit may send EU 'down the drain' - German vice chancellor) 他方、ロイターの見出しは以下だ。 UK must pay for Brexit or EU is in 'deep trouble', says German minister Reuters.29 August 2016 英は離脱の対価を払うべきである、でなければ、EUが「深刻な困難」を抱える(児玉訳) どうだろう。 両者は同じことを扱っていても、受ける印象が全然違う。 これは、ドイツの副総理で、CDUと連立を組んでいるSPD出身のジグマー・ガブリエル副首相の言葉で「ブレグジット(英国のEU離脱)は良くないが、経済的な悪影響は一部が懸念するほどではない。心理的な側面の方が大きく、政治的には大問題だ」とした上で、「ブレグジットをうまく整理できなければ、大変なことになる。なので、英国が責任を取らずに、いいところ取りとも言えるようなことを許さないよう気を付ける必要がある」というものである。 どちらが正確かといえば、当然後者だろう。 前者はEUが崩壊するというのに強調があるし、対応次第の意味が不明だ。 後者は、EUはイギリスに強く対峙せよということで、主体はEUにある。付随的にそうでなければEUはだめになるというものだ。 英系のニュースサイトを見ていると、当然イギリスがすべてを決めるような論調である。 だが、相手のEUの立場もある。2019年5月には欧州議会選挙がある。 離脱する英国が英に割り当てられた73名の議員を選出するなどありえないことだろう。 EUの論理に立てば、2019年までにはけりがつくということになる。そうでなくとも、欧州議会選挙のころには離脱する英国と、他の27か国の立ち位置、スタンスはまるで異なるものとなる。 上記の記事に関連して、「英EU離脱、19年後半にずれ込むとの報道に離脱派反発」BBC News 8月16日という記事がある。原文はBrexit delay claims are 'idle chatter,' says John Redwood BBC.15 August 2016 訳せば、EU離脱の遅延要請はレッドウッド議員によると、「無駄話」(idle chatter)でしかない。 ということで、BBCが付した日本語タイトルは十分意を汲んでいない。「反発」というより「無駄話」ということで、EU離脱派の憤りが明らかで、強い原文になっている。 この記事の背景には、EU離脱に向けた正式交渉申し入れ時期が当初予想よりも大幅に遅れ、実際の離脱は2019年後半まで実現しないという報道があるからだ。それで即時の離脱を求める議員が、遅延話は「無駄話」だと反発しているのである。 実際、記事の中では、離脱を支持してきたジョン・レッドウッド下院議員は、テリーザ・メイ首相は離脱通告を「さっさと」"get on with it"したがっている旨、述べている。 はたして、その行方は・・・・。 なお、EU離脱に関しては、外務省と国際貿易省にデイビス担当相が率いるEU離脱省を加えた3部署の管轄であり、国際貿易省とEU離脱省の2組織は、6月の国民投票の後に設置されている。 |