児玉昌己研究室

内外の政治と日常について想うことのあれこれを綴ります。
 「ハゲー」事件の本質の理解を妨げる毎日紙福本論説委員の記事

 「ウラから目線 政策秘書のお仕事」と題して、福本容子論説委員による記事が出ている。

 毎日新聞2017627日 東京夕刊

https://mainichi.jp/articles/20170630/k00/00e/010/242000c?fm=mnm

 TVでおなじみの宮家邦彦さんから、FBでお友達となっているが、その通り、といってきた。

 宮家さん、真面目にそう考えておられるのかな。

 毎日紙論説委員の福本記者は言う。

「議員の数を減らしてでも本来の政策秘書を10倍くらいにする。彼らを立派に使いこなせない人は当選させない。絶叫を非難して終わり、じゃ変わらない」

 福本さんよ、実に、軽い軽い議論だ。確かに政策秘書が雑用係になっていることも知っている。それを使えない議員のレベルも知っている。

 だが、問題の本質は議員の数を削減して、秘書を増やすことで解決できることではない。

 議員の数は相対的に人口比でみると欧州の政治先進国からすると、きわめてすくない。これについてはたびたびこのブログで指摘してきた。

 以下を見よ

2010.07.02 Friday 議員歳費と議席の削減論について 4 先進11カ国の人口比別国会議員定数 再録

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2420

自民党の今の「ハゲー」発言にみる問題の本質は、秘書を増やして解決できるものではおよそない。むしろ些末な議論だ。

 問題の本質は、小選挙区制度で4割の支持で7割の議席を得、膨大な死票を背景に、過剰に代表され、なんでも強権的にできると考え、政治における緊張感をまるで失っている安倍自民の現状にある。

 議員を減らし、政策秘書を10倍にすれば、どうなるか。これは「例え」、では済まない。

 10倍分の人件費を増やすことになる。議員こそが選出される国民の代表であり、政策秘書はあくまで従でしかない。

 でないのかね、福本論説委員よ。

毎日新聞の要路にあるものがこんな政治認識ではむしろ心配だ。

毎日紙は社会部や外信部のレベルは飛びぬけていいが、こと政治部、および政治関係の記事についていえば、社を代表するものにお粗末な記事が時に出て、がっかりすることが多い。

 問題の本質は、高学歴にもかかわらず、あんな異様な議員を拡大再生産するのはなぜか。

 それは現在のわが国の選挙制度、すなわち「比例代表小選挙区並立制」という、この本質的には小選挙区制度に区分される選挙制度にある。

 本質を理解せず、議員削減論を唱えるなど論外である。

小選挙区制度は、当初望まれていたような二大政党を生んだのか、冗談ではない。

 「一強他弱」の政治を生んでいるではないか。選挙にカネはかからなくなったのかね。

 今から23年前、1994年1月に公選法改正法が成立した。それにより、まだそれなりに国民の声が議席に反映されていた中選挙区制度が廃止され、現在の、膨大な死票を生む、小選挙区制度が導入されて23年を経過した。この制度比例が頭についているが、実に尾ひれの様についているだけで、基本は小選挙区制度そのものである。

 この尾ひれ部分で野党に投じられた支持票が議席となって、現状への国民の異議申し立てが曲がりなりにもできているわけだが。

 そして今公選法の改正で、小選挙区制度が導入されて、その後、どうなったのか。

 まさに現状の安倍政治そのものである。

 10年前からわたしが危惧していたように、むしろ、膨大な死票の上に、民意をまるで反映しない巨大一党支配を生んだだけでしかない。

 小選挙区制度を捨て、真に民意を議席に反映できる比例制度で、政治的緊張関係を持たせる政治にすべきである。

 それがあのレベルの議員らを排除する最高の方法である。

 ちなみに小選挙区を生かした比例制度をドイツは活用している。実に緊張感があり、しかも政権は政策協定による連立で、比較的安定し、政権の交代も可能となっている。

 現状の選挙区制を不問にしたまま、秘書を増やしてどうするのかね。

 本来政党とは権力奪取のための私的組織であるということの本質も理解せず、国家と国民のためにのみある自衛隊を、自党の所有物と考えて発言している防衛大臣がいる。そのものを任命し、問題が出ても、口だけの謝罪で、首をとることもない政治指導者がいる。

 党内からも批判が出ているが、この感覚が官邸以外のものには、全く理解できない。傲慢不遜とはこれを言う。

 民意を反映しない膨大な死票を前提とする前近代的な小選挙区制度が、過剰代表すなわち得票と議席と著しい乖離を生み、政治の中枢での感覚のマヒを生み、そしてこの傲慢さを生む。

 今のまま制度であのレベルの議員を拡大再生産し続ければ、そしてまるで政治責任を負わない政治家の現状が続けば、国民の政治不信はさらに深刻になるだけだ。

そう福本記者、あるいは外交専門家の宮家さんには申し上げたい。

 なお世襲の問題とも関連して書いた以下のブログも参照 

参考ブログ

2008.10.20 Monday 論理に疑義あり 「実は世襲は減っている」山田孝男毎日新聞編集委員に問う 1-4

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1491

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1492

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1493

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1494

| 児玉昌己 | - | 09:30 | comments(0) | trackbacks(0) |
久留米大学比較文化研究所教授のアハマド・ラハミー先生、RKB今日感テレビの密着取材で18:15に登場です

  本学比較文化研究所教授のアハマド・ラハミー先生(カイロ大学元日本語学科長)、RKB毎日の今日感テレビの密着取材で18:15に登場します。

 若き日大阪外大で学び、この春から久留米大学で伊勢物語など、古典日本文学を講じている日本語を上から下まで知り尽くしたアハマド・ラハミー先生ですが、上記の取材にあわせて、日本近現代文学を教授している浦田義和比較文化研究所長とともに、カラオケをご一緒しました。

 アハマド先生は、不明にも、知らなかった早世の詩人大塚博堂(故人)が好きなシンガーということです。

 特に「青春は最後のおとぎ話」が好きだということです。フェイスブックでアップされています。

今日29日、RKB毎日の今日感ニュース1815で、先生の一日に密着取材の模様が放映されます。

なお、カイロ大学といえば、アラブ世界を代表する中東地域の最高学府であり、現在都議選で時の人になっている小池都知事の母校でもありますが、2017年1月に日本研究所を、日本政府、外務省の協力を得て立ち上げました。

 それについては下記で共同通信が報じています。

 その記念国際シンポジウムはカ大と久留米大学との共催で、7月15,16に現地で開催されます。

 「エジプトと日本の近代化の比較」という共通テーマです。

 東北大、広島大、東外大などの教員も参加する、本格的なものとなり、私も永田学長他、関係者の皆さんと、昨年に続きカイロ大を再訪し、永富(鹿島)守之助を話します。

守之助は、ヨーロッパ統合の父の一人で、青山みつ子を母にするリヒャルト・クーデンホーフ・カレルギーによる「パン・ヨーロッパ」を独語原書からわが国に紹介した若き外交官で、鹿島建設の近代化の祖となっています。

参考記事

カイロ大「日本学研究所」設立へ文・理系問わず、両国懸け橋に 共同 2017年1月24日

http://www.shikoku-np.co.jp/national/international/20170124000107

参考ブログ

2017.05.25 Thursday カイロ大学と久留米大学の学術交流の具体化について

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4255

2016.11.07 Monday 学術交流協定でのカイロ大出張から無事帰国しました 

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4148

大学広報は以下

http://www.kurume-u.ac.jp/site/backno/20170629.html

 

 

| 児玉昌己 | - | 14:01 | comments(0) | - |
 「ブレグジットはもはやEU首脳会議の主要議題ではない」(メルケル) そしてマクロン政権4閣僚辞任

 52対48%という僅差でブレグジットを決めた歴史的というべき英国民投票から1年。

 6月23日のあの日はロンドンにその取材にいて、夜アールズコートのパブに集まり、力久昌幸(同志社大)、スティーブン・デイ(大分大)の両先生と状況分析し、その後、深夜ホテルで、未明までBBCの開票を一人食い入るように見ていた。そしてイギリスの徹底的な没落の将来を意識していた。それについては、毎日新聞の森忠彦編集委員に依頼されて、国際電話でやり取りしつつ、同紙6月25日付に書いた。

論点:英EU離脱の衝撃 - 毎日新聞

 あれから一年、EU離脱に至る政治の中枢にいたキャメロンは、離脱になっても職務を継続するという前言を翻し、まさに敵前逃亡というべくも首相を辞め、議員を辞め、政治から姿を消した。

 2014年の欧州委員長選出の新手続、すなわちspitzenkandidaten過程で、「連邦主義者」とみるユンケルの欧州委員長就任阻止と、EU「改革」を叫び、その実、EU離脱を煽り、最後の1か月、財界からの強い要望で、EU離脱の結果の重要性を学び、一転、閣内の5名の離脱派を残したまま、EU擁護に回り、政府への不信を高めたのは、彼キャメロンだった。

 その彼も消えた。そしてキャメロン内閣ではEU離脱反対だったメイが首相となり、今がある。

 そのメイだが、この英首相が政権基盤の強化と、EU離脱交渉での主導権を握るべく、6月8日下院議会選挙に打って出た。結果は、予想外の敗北で単独過半数を失って、労働党の議席積み増しを許した。そしてすぐに対EU離脱交渉が始まった。

 リスボン条約50条のギロチン条項のゆえ、2019年3月と想定されているEU離脱の交渉期限はすでに3か月消費されてしまっている。そして昨日からのEU首脳会議と続いている。

 すでにEU加盟国でありながら、イギリスはこの3月29日に上記、リスボン条約50条にのっとり、EU離脱を告知した今、別の枠に置かれている。

 そのイギリスのメイ首相はEU離脱の瞬間に必要となるFTAの通商協定は後からとし、離脱条件について、まず市民権の位置づけを、EU側に近づけた提案をしている。すなわち、在英EU市民を登録させることで、内国民待遇を与えるとするという。

 ただし、権利の内容についての最終判断、すなわち司法管轄権はEU側が当然とする欧州司法裁判所ではなく、メイ政権は自国の最高裁とするとのことで、依然隔たりがある。

 ちなみに在英のEU市民は350万、EU内の英市民は150万といわれている。The Guardian 2017623

 加筆しておくべきは、ここ1年、イギリスの国籍からフランスをはじめとする他のEU加盟国の国籍に変更する市民も相当の数に上っていることである。

 離脱後の不自由を意識してのものだ。EU市民権を失えば、それまでのEU28か国の自由往来や職業選択が大幅に制限されるからである。離脱交渉を待たずに、すでに銀行、保険など金融機関に加え、人も大量出国エクソダスが始まっているのである。

 そして始まったこのEUサミット。正確には欧州理事会という。

 EUの首脳会議ではメルケルは「ブレグジットは、もはやEU首脳会議の主要議題ではない、27カ国のEUの将来が重要である」と述べている。独仏は分断されることはないとも述べ、イギリスを牽制している。

 これがイギリスが置かれたEU政治の現状である。 

 ドイツのメルケルが語ったEUの将来で言えば、ヨーロッパ統合を1950年からドイツとともにけん引してきたフランスでは、大統領選挙に続き577のうち350を得るという如く、全くゼロだったマクロンの新政党と友党の民主運動で6割の議席をえた。

 このマクロン与党の共和国前進(REM)と民主運動(DEMO)が議会で多数を得たことは、議員経験のないマクロンが大統領に就任したことと合わせ、「静かな革命」とも形容され、広く報道され、私も仏大統領選挙の決選投票には現地に飛び、フォンテンブロで投開票の模様を実見していた。そしてブログに数回にわたり書いた。

 そして登場したマクロン新政権である。その意味するところは、ドイツとの緊密な協力による、EUの連邦的統合推進の強化に尽きる。この政権ドイツ語を完璧に話す閣僚が数名いる。

 だが、マクロン政権はのっけからつまずいている。友党である民主運動の側に特にその責任があるのだが。

 特に、中道で大統領選挙から自身が降板してマクロン支持に転じマクロン政権下では司法大臣に就任したバイルを含め、欧州議会の秘書給与をめぐり不正疑惑が指摘され、国防大臣、欧州問題担当相を含め、閣僚が4名辞任している。

 これについては、フランス研究者で、この3月7日に名古屋大学大学院の国際問題のセッションでともに招かれ、肩を並べた東外大の渡邊啓貴さんが詳しく書いている。

渡邊啓貴「閣僚続々辞任でマクロン政権に激震」 

http://www.huffingtonpost.jp/foresight/macrons-people-calling-quits_b_17263098.html

 ただし、議会での圧倒的多数をもっていること、政権の最初期ということで、さほどマクロンの政権運営に影響を与えていくとは思われない。

 欧州議会での秘書給与をめぐる不正の容疑については、直接的には国民戦線のメンバーで欧州議会議員Sophie Montelの告発を受けてのことであったが、全く同じことが国民戦線党首ルペンについても当初から存在していた。

 むしろ、私にしてみれば、告発したのがルペンの国民戦線であることから、ルペンの疑惑の相対化とも思われる。

 司直のターゲットの本命は、ルペン彼女であり、この一連の欧州議会の予算の不正使用の問題の核心部分はルペンについてではないか、と思っている。

 事実、司直はルペンの欧州議会議員の免責特権の解除を欧州議会に求めているからである。以前ブログで、以下紹介した。

「欧州議会はフランス司直からの要請を受けて、ルペンの欧州議会予算の不正流用で、議員特権の停止を議決しそうである。ちなみに、ブルームバーグによると、欧州議会予算の不正流用は335146ユーロ(約4040万円)。この額はさらに膨らみそうである。」と。

 2017.04.27 Thursday ルペンが敗北する理由  仏選挙を語るに米国をもってする愚 選挙制度の相違を失念するな

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4237

 フランス極右国民戦線のルペンや英独立党のファラージュはEUを徹底して非民主的として攻撃していた。だが、そんな彼らの政治的正当性を保障したのは欧州議会であり、その選挙制度である比例制度であった。

 ルペンなどは、その民主主義を徹底する選挙制度を持つ欧州議会が議員に与えている免責特権を悪用して、フランスの司直の捜査に応じていないということで、このポピュリストの人種差別主義者がいう「民主主義」の認識と二重基準の悪質さが一層際立つ。

 欧州議会でも秘書給与の在り方など検討され始めており、ルペンの欧州議会議員としてもつ免責特権の停止については、関連の欧州議会内委員会での審査も早晩、開かれるものと思われる。

 フランス大統領選挙とイギリスとフランスでの下院議会選挙は終わったが、英EU離脱交渉を含め、欧州政治は目が離せない。

  一つだけ指摘しておくべきは、わが国ではイギリスからEUと欧州統合を語るものが多いが、すでにメルケルが喝破したようにイギリスは、ことEUとヨーロッパ統合に関しては、その蚊帳の外に置かれ、すでにその中枢から離れた。

 したがって、イギリスがEUに未加盟であった1952年から72年までと同様、イギリスからEUを見ていても、ヨーロッパ統合とEUは本質的部分が全く見えなくなるということである。国家機関も、研究者も心しておく必要がある。

参考記事

仏大統領候補ルペン氏、決選投票直前に欧州議会招致か 資金疑惑でロイター 2017 04 17

 ルペン氏の国民戦線本部に家宅捜索−欧州議会の資金流用疑惑でBloomberg 2017221

参考ブログ

2017.02.04 Saturday トランプのアメリカ第一主義の政治はEUの結束と連邦的統合を強化する

  http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4194

2016.06.11 Saturdayマッチポンプのキャメロン、反EUの火をつけて回り、挙句、消火できずに国家が大火災 EU離脱の可能性が高まる英国民投票

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4050

 

| 児玉昌己 | - | 23:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
2017年フランス国民議会選挙決選投票関係データと党派別獲得議席 

日本時間16時半 

 今回、国民議会選挙(定数577)で 当選した議員についてルモンドは以下伝えている。

新人が432名当選し、議席の75%が入れ替わった。ちなみに前回2012年は234名。 また再選を狙った350名の議員の内、200名強が落選、再選を果たしたものは、わずかに145名とのこと。

女性は223名(前回201268で実に4割弱の38.65%。平均年齢は48歳(53)、30歳以下は29(4)、3040代は271197)。

Après les législatives 2017, 75 % de l’Assemblée nationale est renouvelée, un record

 マクロン新党である、共和国前進の躍進の結果として、以前ブログで、新議会では新人議員で溢れると指摘しておいた。

 実際、その通りとなった。最有力紙に「マグニチュード9」と形容されたまさにそのことである。

 同紙が伝える、この時点での獲得議席と議席占有率の数値を出しておこう。ウィキペディアのデータでは共和党がマイナス1と、共産党がプラス1と、数字に微妙に違いがある。

https://fr.wikipedia.org/wiki/%C3%89lections_l%C3%A9gislatives_fran%C3%A7aises_de_2017

  以下が、主要各党(系)19日現地時間、9時8分現在

共和国前進・民主運動 議席350 (議席占有率60,65%

共和党13722,53% 

社会党46 7,97%

不服従の仏 急進左翼17 2,77%

共産党101.73%)

その他91,73%

国民戦線81,39%

Source: IPSOS/SOPRA STERIA

ちなみに日経もこの数字を出しているが、見出しは以下。

仏下院選、投票率最低に マクロン新党の圧勝予想が影響か 日経 2017/6/19 11:12

今朝開票直後に出されていた数値と比較すれば、共和国前進系は議席を11減らした。

 メランションの急進左翼、「不服従のフランス」が健闘している。

 ルペンの国民戦線2から8と伸びたが、大統領選挙の勢いはなくなった。社会党は事前予測のとおり、解党的惨敗というべきで、実に240議席を失った。規制の2大政党にノーを有権者が突き付けたのは明瞭だ。

投票率は48.71で、8.5%のマイナス。50%を切った。

 これは、共和国前進の驚異的な伸びの予測、および大量の新人候補が、有権者の意欲をそいだ結果といえる。

 あとは5年間のマクロンの政権運営で、驚異的数字を挙げたこの新党が、国民の期待に応えうるか。 失敗すればその反動も怖い、そんな数字である。

参考ブログ

仏議会選挙第1回投票開始 EUと欧州統合の動向分析では、英より仏国民議会(下院)選挙が重要

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4262

2017.06.12 Monday  フランス下院、大統領選挙に続き「マグニチュード9」(ルモンド)の巨大地震級の政治変動が進行中 ルモンド415超予測

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4263

 

| 児玉昌己 | - | 16:21 | comments(0) | trackbacks(0) |
仏国民議会選挙マクロン新党「共和国前進」は歴史的圧勝 だが史上最低の投票率

 朝7時半

 この時間フランスは日付が変わったばかりの深夜だ。 フランス国民議会選挙の決選投票での開票が進んでいる。

昨夜、投票時間が締め切られる頃に就寝。ルモンドと、レゼコー(経済紙)はライブで、大量の女性を含む新人候補、そして投票率は大幅下落ということを受けて、以下、伝えていた。

「投票する相手はどんな人だか知らないよ、彼女がいい仕事をしてくれることを望むだけ」

« Je ne connais pas la candidate pour qui je vote. J’espère juste qu’elle fera le job »  

「低投票率はマクロンにとって有利か否か。」

l'abstention aidera-t-elle ou non Emmanuel Macron ? Les Echos  18/06.

 今朝19日の7時過ぎに目覚めると、開票が進んでいる。

 ルモンド(現地時間2139)によれば、報じられていた予測は下方に振れ、マクロンの共和国前進は361で、400にとどかない。しかし過半数の289は超え、議席占有率は62.56%1年前には存在さえしなかった政党である。直近の予測の400超えはならなかったものの、ゼロからの数値、どれをみても過半数は確実で、実に、歴史的ともいうべき圧勝。

 ちなみに共和党は現有議席を100ほど失う、126(2012年の前回229

 最悪20台とも予測されていたオランド政権を支えた与党社会党(2012年の前回331)は46と踏みとどまったようだ。

 もっともそれでも解党的打撃である。 実際、BBCは先月、「フランス社会党は死んだのか」、という刺激的テーマで記事を出していたが、満身創痍だ。

Is France's Socialist Party dead? By Hugh Schofield BBC News, Paris 16 May 2017

ルペンの国民戦線は8。資金、演説時間などが確保される15を必要とする院内会派形成が不可能となり、EU解体論者で、人種差別主義者を封じ込めることはできた。

 レゼコーが昨夜見出しで伝えていたように、43.4という記録的な低投票率は組織政党に有利に働いたようだ。

ルモンドが伝える主要政党の予測値を出しておこう。18日 2145分現在の暫定値で、定数577。

共和国前進・民主運動 議席361 (議席占有率62,56%

共和党12622,84% 

社会党46 7,97%

共産党16 2,77%

国民戦線81,39%

Source: IPSOS/SOPRA STERIA

追記

数値はルモンドが掲示している暫定値であり、確定したら、また紹介したいと思います。

なお共和国前進の躍進が注目されているが、セーヌ・サンドニ選挙区で15年にわたり議席を有し、1990年代から2000年代にEU統合で活躍していた社会党のエリザベート・ギグーÉlisabeth Guigou女史が第一回投票で議席を失ったことを知った。ENA出身の才媛で魅力的だった彼女も齢70。人は来たりて去る。政治家も同様である。

 彼女のツイッターで敗戦の弁を語っている。

活動家、有権者、友人に感謝していること、時代の1頁がめくられたこと、そして一緒に達成してきたことを誇りに思う、というものです。

Merci à tous les militants, électeurs et amis. Une page se tourne. Je suis fière de tout ce que nous avons accompli ensemble. 

| 児玉昌己 | - | 08:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
日本応用経済学会に招かれ、BrexitとEUの将来を話す

 日本応用経済学会の全国大会が、昨日今日と勤務校で開催され、招待講演に招かれ、昨日17日Brexitの背景、意味、EUの将来というテーマで講演させていただいた。

 数学を使うことの多いこの学会だが、専門外のテーマについて、学会とは異なる講演者を求めるという慣行があるとのことで、実行委員長の本学経済学部教授の秋本先生の依頼を受けてたものだった。

 ちょうどフランスの国民議会の決選投票の前日ということで、マクロン大統領選出後のフランスの状況も踏まえて、話をさせていただいた。

  秋本先生の教え子ら、本学学生によるミニ管弦楽の生演奏も披露された楽しい懇親会だった。

 この間、一言といわれ、応用経済学といえば、数学の塊のような学問領域であり、それにもかかわらず、父の期待を裏切り、数学が苦手だった私が講演者として招かれ、三度の食事より数学が好きであろう皆さんの前で、お話で来て光栄であり、泉下の父に少しうれしい報告ができますと、あいさつさせていただいた。

 なお、立命館大に移籍して、メール等やり取りする以外に、会う機会がなくなっていた松尾匡教授とも再会できてうれしいことだった。

 拙著「欧州議会と欧州統合」(2004年)の書評を最初に学内広報誌に掲載してくれたのは彼だった。

2012.07.26 Thursday 『新しい左翼入門』(講談社新書)と著者松尾匡先生のこと 「由緒正しき人」のこと 上下

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3225

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3226

 

| 児玉昌己 | - | 22:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
ドクダミの さしもその花 萎(しお)れおるなり 梅雨の合間を詠む 海鳴庵児玉

 梅雨の合間は夏そのもの 本当に梅雨かと思いたる日々 それを詠む

 

 梅雨の間の 日差しは苛烈  ドクダミの さしもその花 

萎(しお)れおりたり

                     海鳴庵児玉

 

2017年前半海鳴庵児玉昌己句歌集

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4198

2013.05.26 Sunday ドクダミを再び詠む 海鳴庵児玉

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3468

| 児玉昌己 | - | 09:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
ルペンの敗北と低投票率(国民議会選第1次2017年)そしてマクロンによるEUの危機打破と活性化の可能性

The Guardianはフランス国民議会選挙(総選挙)について、マクロン党の勝利と低投票率という題で、この選挙を分析している。

 すでに多くが分析記事を提供しているから、ルペンの国民戦線についてのコメントを紹介しよう。

 The Guardianによれば、先の大統領選挙の決選投票では極右国民戦線のルペンは1060万票(34%)を獲得したが、それを活かすことができなかった。今回13.9%弱300万票余にとどまっている(前回2012年は12.3%)。

 同党は資金や質問時間などで優遇されている院内会派を形成できる要件である15議席の獲得を目指したが、果たせそうもないという。

 第1回投票では、118の選挙区で決権投票に進出できる資格を得たものの、左右両翼からの国民戦線排除のための投票呼びかけで、最悪、ルペン自身の1議席にとどまる可能性を指摘している。

 しかし同時に、重要なことは、今回の下院議会選挙は投票率でみると、60年で最低の5割を割り込んでいることである。 

投票数・率 23,170,977 48.71%
棄権票・率 24,400,342 51.29%

この低投票率の詳細な分析は、フランス政治の専門家に譲りたい。

 EU専門家として選挙のEUを通した欧州統合への影響について私見をいえば、マクロンの圧勝は、ドイツ主導で進められてきたEUにおいて、フランスの声を高めることになることは確実である。

 周知のとおり、EUにおいては、経済力を反映して、ドイツの影響が圧倒的である。 

 しかもドイツが与えた経済的影響力はEUの金融政策に如術に反映している。すなわち、ドイツ財務大臣ショイブレにみるように、 債務過剰国家に対しては、過酷な緊縮一点張りで、ギリシャに見られるように、EU加盟国内での経済格差を拡大し、反EU的ムードの高まりを生んでいる。EU条約は「域内における均衡のとれた発展」を明記しているのにかかわらずである。

 この悪しき現状の改善に一定の影響力を及ぼすものと考えられる。

 実際、こうした問題はルペンが先の大統領選挙で一千万票を得ることに見られるように、極右の台頭を招き、EUの危機を強めている。

 しかるに、EUは将来ビジョンが欠落していると指摘されて久しい。

 EUの「変わらないフランス旧体制」にたいする構造改革を促進しつつ、他方で、マクロンは、EUレベルでは、自己の確固たる構想を持ち、EUの財務相や、ユーロ圏議会、さらにはイギリス離脱で浮く欧州議会議席73を単一欧州選挙区で選出させるなど、連邦的統合を進める施策を大胆に打ち出している。

 単一欧州選挙区(a pan-European list/  transnational seats はアンドリュー・ダフなど、EUの連邦主義者はEU政治を活性化できるものとして、早くも1990年代後半には欧州議会で構想、検討されていたものの、法案化の作業過程で、時期尚早で、国家主権派からは夢物語とされ棚上げにされ、爾来20年余の間、政治指導者レベルでは今まで誰も公にしないものであった。

 いずれにせよ、マクロンをフランス政治の頂点に戴き、国内および対EUで、そのムードが一変すると考えられる。

  しかも長年EU統合においてその抵抗勢力として機能してきたイギリスのEU離脱も加わり、EU内の一層の所得再配分と、南欧諸国を中心とするEU内の格差是正と弱者救済、すなわち、経済通貨同盟の信頼性と、なによりここ25年全くそれ以降のビジョンを欠いていたヨーロッパ統合において、具体的構想を示し、全体としてのEUの正統性を強化にことに資することになるとみている。

参考記事

French elections: Macron's party buoyant but turnout slumps. The Guardian, 12 June 2017

One head, two votes: The case for a pan-European list for EU election EurActiv.10 January 2017.

Macron proposes 73 transnational seats to replace British MEPs after Brexit europeanpost - 5 October 2016

参考ブログ

2017.05.03 Wednesday マクロンのEUの将来構想 欧州市民とEUを直結させる革命的欧州議会選挙制度改革構想

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4241

2017.02.28 Tuesday 関心高まる仏大統領選挙 エマニュエル・マクロンへの期待

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4206

 

| 児玉昌己 | - | 09:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
 フランス下院、大統領選挙に続き「マグニチュード9」(ルモンド)の巨大地震級の政治変動が進行中 ルモンド415超予測

  昨夜は風呂に入り、2時前に就寝。朝起きたら、時事が以下のニュース。

「マクロン党」過半数濃厚=安定政権樹立へ前進仏下院選第1回投票6/12() 3:23配信

フランスのルモンドの2017年総選挙ライブのサイトに向かうと以下。

マクロンの共和国前進は、415以上を獲得見込みとある。

Résultats des législatives 2017, en direct : En marche ! pourrait obtenir plus de 415 députés.

日本の書き方はおとなしすぎる。過半数ではなく、3日の時点の世論調査を受け、私が書いていたように、最大7割をとる見込みとしている。

 しかして、前日紹介したフランスのルモンド紙の表現をブログのタイトルにしよう。

「マグニチュード9」の巨大地震の政治変動が進行中ということだ。最大のヘコミは社会党である。事前調査、および出口調査はほぼ正確に今日の日を予測している。大勝ではなく、圧勝。

 マクロンの共和国前進党は、昨年は存在しなかった政党である。

 そして5月初旬には14名しか、また11日までに下院選の全選挙区577(欧州のフランス領は535海外領42)の内、428人の立候補者しか揃えられなかった。ちなみに候補者総数は7882名。

 全くの新参のその政党が、総選挙が終わってみれば、3分の2の圧倒的な勢力で与党を構成し、マクロン新大統領を支えるという、空前絶後の状況が出現しそうである。

参考ブログ

2017.06.11 Sunday仏議会選挙第1回投票開始 EUと欧州統合の動向分析では、英より仏国民議会(下院)選挙が重要http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4262

2017.05.19 Fridayマクロン政権成立 進む総選挙準備 仏大統領選挙決選投票の現地調査から一週間

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4253

  なお投票率と棄権は以下

Turnout 23,170,977 48.71%
Abstentions 24,400,342 51.29%

 

| 児玉昌己 | - | 08:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
仏議会選挙第1回投票開始 EUと欧州統合の動向分析では、英より仏国民議会(下院)選挙が重要

 イギリスの下院議会選挙が終わったばかりで、メディアはまだ十分報じていないが、フランスの国民議会選挙の第1回投票が、日本時間の午後3時から始まった。

 EUと欧州統合の動向分析という観点で言えば、英の総選挙よりこちらの方がより重要となっている。特にユーロの動向をウオッチしている金融関係者は特にそうである。

 イギリスではメイ首相が過半数を取れなくなって、宙づりの議会、すなわちハングパーリアメントの状態となり、対EU交渉に不透明感が出てきている。

しかしイギリスでは保守党も労働党も、ともにEU離脱を問う再度の国民投票は実施しないということでは、先の総選挙でもEU離脱のベクトルは動かない。

 他方、フランスでは、大統領に選出されたとはいえ、下院議会に自身の政党の基盤が全くないマクロンの新党がどれほど議席をとるかは、マクロン政権の安定と政権運営、とりわけ欧州統合の連邦的深化につながるユーロ圏議会やユーロ圏財務担当相導入の構想の実現に直結してくるのである。

とくに、反EUで、ユーロ離脱、フラン復帰を求めた排外主義者のマリーヌ・ルペンが先の大統領選挙で一千万票をとっていることを考えると、なおさらである。

 フランスについては、わが国ではイギリスの総選挙関係記事と比較して、日経の白石パリ支局長以外、あまり記事を見ない。

 わが国ではいまだイギリスを中心に欧州政治が語られる傾向が強い。 英語に特化して欧州を語る傾向の強いわが国の学者については特にそうであえる。

 だが、すでにイギリスは、3月29日にリスボン条約50条に基づき、欧州理事会に離脱の通告をして以降、みずからEUの中心勢力から完全に離脱している。

 したがって、イギリスの政治だけを見ていても、EUはおろか欧州統合の政治は見えてこない。言い換えれば、仏独の政治状況をみずには、仏語や独語メディアをフォローしない限り、欧州政治を十分には語れない。

 なによりEUは仏独とベネルクスの6か国が創設したものであり、イギリス自身は21年遅れてEUに加盟した。しかもサッチャー以降、イギリスでは、特に保守党はEUの連邦的統合深化に一貫して反対してきた。そしてキャメロンはEU離脱を国民投票という政治的ギャンブルに賭け、52対48という僅差で、イギリスはそのEUからの離脱を決した。

 他方、フランスについていえば、目下、マクロン新党の圧勝が現地の世論調査で示されており、大きな政治変動が進行中である。

 それについては、8日前、フランスの世論調査の結果を受けて、私のブログで以下に記した。

「実に、わが国を含む世界中の図書館や書店で並んでいるあらゆるフランスの政治関係書籍を、歴史書に変える革命的というべき地殻変動が進行中である。 まさにパリは燃えているのである。」

2017.06.03 Saturdayパリは燃えている 米トランプパリ条約離脱声明 そして仏マクロンの反撃、新党下院400超えの圧勝予測

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4259

 私のブログから1週間後の610日ルモンドでは、1年前には存在すらしなかった共和国前進という名のマクロン新党の圧勝の予測をだし、超巨大地震を言うマグニチュード9という表現をしている。また経済紙レゼコーは同じく8日付で400議席も可能という数字を出している。

 すなわちここ1か月の世論調査で示されたマクロン新党勝利の基調は、ほぼ動いていないということである。

Législatives : profond renouvellement en perspectiveLE MONDE | 10.06.2017 Par Patrick Roger

Sondage législatives : En Marche pourrait compter jusqu'à 400 députés. LesEchos. 08/06.

フランスの国民議会の定数は577。過半数は289。400といえば、過半数どころか、7割に近い議席ということになる。

フランス議会は2回投票制の小選挙区制度。第1回の動向でほぼ決選投票での予測がつくことになる。

 政局混迷に顔を曇らせるイギリスと、若干39の、トランプにも果敢に挑戦する新鋭大統領を戴くフランスとが好対照のヨーロッパ政治である。

 決選投票の結果が出る来週日曜日以降、フランス国民議会史上初となる多数の女性議員を含む新人議員で、議場が埋め尽くされる場面を目撃することになる。

参考ブログ

2017.05.13 Saturday

 ユーロ圏議会構想をマクロンとショイブレが協議 EU懐疑論者を青ざめさせるユーロ圏における連邦通貨主権創造への一歩

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4250

2017.02.04 Saturday トランプのアメリカ第一主義の政治はEUの結束と連邦的統合を強化する

http://masami-kodama.jugem.jp/?day=20170204

2017.05.09 Tuesday フランス大統領選挙2017年余話

http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=4247

| 児玉昌己 | - | 21:04 | comments(0) | trackbacks(0) |

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