2017.06.30 Friday
「ハゲー」事件の本質の理解を妨げる毎日紙福本論説委員の記事
「ウラから目線 政策秘書のお仕事」と題して、福本容子論説委員による記事が出ている。 毎日新聞2017年6月27日 東京夕刊 https://mainichi.jp/articles/20170630/k00/00e/010/242000c?fm=mnm TVでおなじみの宮家邦彦さんから、FBでお友達となっているが、その通り、といってきた。 宮家さん、真面目にそう考えておられるのかな。 毎日紙論説委員の福本記者は言う。 「議員の数を減らしてでも本来の政策秘書を10倍くらいにする。彼らを立派に使いこなせない人は当選させない。絶叫を非難して終わり、じゃ変わらない」 福本さんよ、実に、軽い軽い議論だ。確かに政策秘書が雑用係になっていることも知っている。それを使えない議員のレベルも知っている。 だが、問題の本質は議員の数を削減して、秘書を増やすことで解決できることではない。 議員の数は相対的に人口比でみると欧州の政治先進国からすると、きわめてすくない。これについてはたびたびこのブログで指摘してきた。 以下を見よ 2010.07.02 Friday 議員歳費と議席の削減論について 4 先進11カ国の人口比別国会議員定数 再録 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=2420 自民党の今の「ハゲー」発言にみる問題の本質は、秘書を増やして解決できるものではおよそない。むしろ些末な議論だ。 問題の本質は、小選挙区制度で4割の支持で7割の議席を得、膨大な死票を背景に、過剰に代表され、なんでも強権的にできると考え、政治における緊張感をまるで失っている安倍自民の現状にある。 議員を減らし、政策秘書を10倍にすれば、どうなるか。これは「例え」、では済まない。 10倍分の人件費を増やすことになる。議員こそが選出される国民の代表であり、政策秘書はあくまで従でしかない。 でないのかね、福本論説委員よ。 毎日新聞の要路にあるものがこんな政治認識ではむしろ心配だ。 毎日紙は社会部や外信部のレベルは飛びぬけていいが、こと政治部、および政治関係の記事についていえば、社を代表するものにお粗末な記事が時に出て、がっかりすることが多い。 問題の本質は、高学歴にもかかわらず、あんな異様な議員を拡大再生産するのはなぜか。 それは現在のわが国の選挙制度、すなわち「比例代表小選挙区並立制」という、この本質的には小選挙区制度に区分される選挙制度にある。 本質を理解せず、議員削減論を唱えるなど論外である。 小選挙区制度は、当初望まれていたような二大政党を生んだのか、冗談ではない。 「一強他弱」の政治を生んでいるではないか。選挙にカネはかからなくなったのかね。 今から23年前、1994年1月に公選法改正法が成立した。それにより、まだそれなりに国民の声が議席に反映されていた中選挙区制度が廃止され、現在の、膨大な死票を生む、小選挙区制度が導入されて23年を経過した。この制度比例が頭についているが、実に尾ひれの様についているだけで、基本は小選挙区制度そのものである。 この尾ひれ部分で野党に投じられた支持票が議席となって、現状への国民の異議申し立てが曲がりなりにもできているわけだが。 そして今公選法の改正で、小選挙区制度が導入されて、その後、どうなったのか。 まさに現状の安倍政治そのものである。 10年前からわたしが危惧していたように、むしろ、膨大な死票の上に、民意をまるで反映しない巨大一党支配を生んだだけでしかない。 小選挙区制度を捨て、真に民意を議席に反映できる比例制度で、政治的緊張関係を持たせる政治にすべきである。 それがあのレベルの議員らを排除する最高の方法である。 ちなみに小選挙区を生かした比例制度をドイツは活用している。実に緊張感があり、しかも政権は政策協定による連立で、比較的安定し、政権の交代も可能となっている。 現状の選挙区制を不問にしたまま、秘書を増やしてどうするのかね。 本来政党とは権力奪取のための私的組織であるということの本質も理解せず、国家と国民のためにのみある自衛隊を、自党の所有物と考えて発言している防衛大臣がいる。そのものを任命し、問題が出ても、口だけの謝罪で、首をとることもない政治指導者がいる。 党内からも批判が出ているが、この感覚が官邸以外のものには、全く理解できない。傲慢不遜とはこれを言う。 民意を反映しない膨大な死票を前提とする前近代的な小選挙区制度が、過剰代表すなわち得票と議席と著しい乖離を生み、政治の中枢での感覚のマヒを生み、そしてこの傲慢さを生む。 今のまま制度であのレベルの議員を拡大再生産し続ければ、そしてまるで政治責任を負わない政治家の現状が続けば、国民の政治不信はさらに深刻になるだけだ。 そう福本記者、あるいは外交専門家の宮家さんには申し上げたい。 なお世襲の問題とも関連して書いた以下のブログも参照 参考ブログ 2008.10.20 Monday 論理に疑義あり 「実は世襲は減っている」山田孝男毎日新聞編集委員に問う 1-4 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1491 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1492 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1493 http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=1494 |